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フィフティー・シックス(56)

2008/1/5 赤桐

 インドのケーララ地方南部でプレイされているトリックテイキングゲームです。オランダから伝わったヤスのゲームが変化したものだと考えられていますが、かなり違ったゲームです。

 ルールは主にJohn McLeod氏のホームページ(http://www.pagat.com/)によります。


人数

 4人、6人、8人。2つのチームに分かれて戦います。各チームのプレイヤーは交互に座ります。

カード

 2組のトランプを使います。各スート10のカードだけを使うので48枚となります。8人でプレイする時だけは各スートのを加え、64枚のカードを使用します。

カードのランクと点数

 各スートのカードの強さのランクと点数は次のようになります(Jが最強)。切札でもそれ以外のスートでも変わりません。

ランク 10
点数 2 1 1 0 0 0 0

 点数は全部で56点になります。

ティール

 ドローして最もランクの高いカードのプレイヤーがディーラーになります。最高ランクが同ランクの場合はそのプレイヤーたちが引き直しを行います。ドローのときのカードのランクも前記と同じです。次回からのディーラーは、反時計回りに交代します。

 ディーラーは左隣のプレイヤーにカットしてもらった後、右隣のプレイヤーから反時計回りに、1枚ずつ全部のカードを配ります。4人ゲームの時には各プレイヤーの手札は12枚となり、6人ゲームや8人ゲームのときには手札は8枚となります。

ビッド

 ディーラーの右隣のプレイヤーから反時計回りの順に ビッドを行います。

 ビッドはチームで取るつもりの点数と切札にするつもりのスートを宣言します。切札のスートのかわりにノートランプ(切札なし)を宣言してもかまいません。宣言したくなければパスを行います。

 ビッドの最低点数は28です。誰かがビッドした後は、最後にビッドされた点数より高い点数のビッドしかできません(切札のスートやノートランプの宣言を変えても点数が高くなければだめです)。

 1度パスをしても、またビッドに参加することもできます。パートナーが最後にビッドしていても、それより高い点数でビッドすることもできます。このとき切札を変えてもかまいません。

 誰かがビッドした後、他のプレイヤー全員が続けてパスをしたらビッドは終了します。

ダブルとリダブル

 ビッドのときに、相手チームがビッドして味方がそれより大きいビッドを行っていない場合、ビッドをする代わりに「ダブル」を宣言して、プレイの結果の得失点を2倍にすることができます(プレイで取るべき点数を2倍にするわけではありません)。

 ダブルのあとでも通常通りビッドの順番が進行します。ダブルのあと他の全員がパスをしたら、ビッドが終了します。また、どのチームのプレイヤーでも普通のビッドを行うこともできますが、この場合には、ダブルの宣言は無効になります。

 ダブルの宣言が有効な間ならば、相手チームのプレイヤーは「リダブル」を宣言して、さらに得失点を2倍にすることができます。リダブルの宣言があると、ビッドはただちに終了します。

ビッダーチーム

 ダブルやリダブル以外で最後にビッドされた点数と切札が有効になります。このビッドを行ったチームをビッダーチームと呼びます。

 ビッダーチームはビッドの数字以上の点数を得ることを目的としてプレイします。相手チームはそれを阻止しようとします。

全員がパスの場合

 全員が最初からパスをした場合には、ディーラーの相手チームがノートランプで28をビッドしたとみなして、プレイを行います。

 コンベンション

 自分の手の内容を味方に伝えるため、次のようなコンベンション(情報交換用の約束ごと)を使うことができます。  

1.「28スペード」というように数字を先にビッドしてそのあとにスートをビッド

  そのスートの最も強いカードを1枚以上持っているという意味になります。ビッド可能な最も低い点数でビッドを行った場合は最強のカード1枚だけを持っていることを示し、それより大きいビッドを行った時にはビッドを大きくした分だけ最強カードを多く持っていることを示します。

 誰もパス以外のビッドを行っていない時にこのようにビッドするには、そのスートで4枚程度以上のカードが必要です。

 最強のカードとは、コンベンションで今まで情報が伝えられていないカードのうち最強のカードということです。

2.「プラス1スペード」というようにプラスをつけた数字を先にビッドしてそのあとにスートをビッド

 プラスのあとの数字だけ今までのビッドよりも増やした点数をビッドすることになります。たとえば今までに28がビッドされていて「プラス1スペード」なら、点数が29でスペードのスートのビッドということです。(もちろん最初のビッドには使えません。)

 コンベンションの意味としては、そのスートの最も強いカードをプラスのあとの数字だけ持っていて、そのスートにはそれ以外のカードを持っていないということになります。たとえば「プラス1スペード」ならば、スペードのカードは1枚だけでそれが最強のカードだということを示します。

 この場合も、最強のカードとはコンベンションで今まで情報が伝えられていないカードのうち最強のカードということです。

3.「スペード28」というようにスートを先にビッド

 そのスートが良いけれど、最強カードは持っていないことを示します。誰もパス以外のビッドを行っていない時にこのようにビッドするには、そのスートの5枚程度以上のカードが必要です。

4.「28ノートランプ」というように数字のあとに「ノートランプ」をビッド

 特に良いスートはないが比較的強い手を表します。

5.「29ノーズ」というように数字の後に「ノーズ(noes)」をビッド

 ノーズはノートランプという意味です。ビッドとしては「29ノーズ」は「29ノートランプ」と同じです。

 コンベンションの意味としては、直前にビッドされたスートが1枚もないことを示します(相手チームのビッドでも味方のビッドでも、とにかくパス以外の直前のビッドです)。ただし、ビッドされた点数がビッド可能な最も低い点数より1つ高かった場合は、それより1つ前にパス以外でビッドされているスートが1枚もないことを示し、2つ高かった場合はそれより1つ前のビッドのスート、などとします。

6.「プラス1ノーズ」というように「プラス」をつけた数字を先にビッドしてそのあとに「ノーズ」をビッド

 今までのビッドよりもプラスのあとの数字だけ増やした点数でノートランプをビッドすることになります。(もちろん最初のビッドには使えません。)

 コンベンションの意味としては、数字が1のときはパス以外の2つ前のビッドのスートが1枚もないことを示し、2のときは3つ前にビッドされているスートが1枚もないことを示すというようになります。(つまり、「29ノーズ」などというビッドと同様の意味になります。)

 上記のような言い方以外でビッドをすることはできませんが、必ずしもコンベンションに従ってビッドする義務はありません。相手を惑わすためにわざとコンベンションに従わないビッドをすることもできます。

プレイ

 このゲームはトリックテイキングゲームです。最初にリードするのはディーラーの右隣のプレイヤーで、反時計回りにプレイは進行します。

 切札は最後にビッドされたものとなります。ノートランプがビッドされていたら、切札はありません。

 プレイのルールは次のようになります: 

  1. リードするときは、どのカードを出してもかまいません。
  2. 他のプレイヤーは、リードされたスートのカードがあれば、そのスートのカードを出します(2枚以上あれば、どれを出してもかまいません)。
  3. なければ、どのカードを出してもかまいません。
  4. 切札が出ていない場合は、リードされたスートの最も強いカードを出したプレイヤーが勝ちます(トリックを取ります)。
  5. 切札が出ている場合は、最も強い切札を出したプレイヤーが勝ちます。
  6. 勝ったプレイヤーが次のリードを行ないます。

 なお、同じスートで同じランクのカードが2枚出たら、先にプレイされたほうが強いカードになります。

得点

 プレイが終わると、ビッダーチームは取ったトリックの点数を合計します。合計点がビッドした点数以上ならば、ビッドは成功になり、そうでなければ失敗となります。

 ゲーム点はビッドした点数により決まります。ビッダーチームがそれ以上の点数を取っても追加のゲーム点はありません。

ビッド 成功時のゲーム点 失敗時のゲーム点
28〜39 1 2
40〜47 2 3
48〜55 3 4
56 4 5

 ビッダーチームが成功した場合は、ビッダーチームが上記の成功時のゲーム点を得点します。 相手チームの得点はありません。

 ビッダーチームが失敗した場合は、相手チームが上記の失敗時のゲーム点を得点します。ビッダーチームの得点はありません。

 ビッドのときに有効なダブルがあった場合は、ゲーム点は2倍となります。リダブルがあった場合は、ゲーム点はさらに2倍、つまり4倍となります。

ゲーム

 どちらかのチームの累計ゲーム点が12点以上になったら、そのチームの勝ちでゲームは終了します。


得点の記録方法

 現地では次のように得点を記録しているようです。

 1.ゲームが始まる前に、プレイで使用しないのカードを12枚ずつ各チームに配ります。このとき、1つのチームに赤(ハート、ダイアモンド)のカード、もう1つのチームに黒(スペード、クラブ)のカードを配るようにします。このカードはテーブル(Table)と呼ばれ、1枚が1ゲーム点を表します。

 2.相手が得点をしたときには、自分のチームのカード(もともと配られた色のカード)を、ゲーム点の分だけ相手チームに渡します。

 3.自分のチームのカードがなくなったら、そのチームの負けでゲームは終わります。


注1

 Rajagopal N. Nairしのサイトhttp://web.archive.org/web/20040220163727/www.iwaynet.net/~raj_nair/fifty_six.htmlのルールは本文と次のような違いがあります。

1.ゲーム点は次のようになります。

ビッド 成功時のゲーム点 失敗時のゲーム点
28〜39 1 2
40〜48 2 3
48〜56 3 4

2.4人ゲームのときはを除いた32枚でプレイしてもよいと書かれています。

注2

http://www.56cards.com/のルールでは、本文と次のような違いがあります。

1.時計回りにディールやプレイが進行します。

2.6人ゲームが標準的なゲームだと紹介しています。4人ゲームのときはを除いた32枚でプレイします。8人ゲームでは6人ゲームと同じカードを使っても、各スートのを加えてもよいということです。

3.あるプレイヤーの配られたカードがだけだった場合、および点数のあるカードを1枚も配られなかった場合は、配り直しとなります。同じディーラーが配ります。

4.ビッドで最初からパスが続いた時は、ディーラーの左隣のプレイヤーは必ずパス以外のビッドをしなければなりません。

5.ゲーム点は次のようになります。

ビッド 成功時のゲーム点 失敗時のゲーム点
28〜39 1 2
40〜55 2 3
56 3 4

 2008年1月8日、なかよし村でプレイしました。

 カードの強さのランクはとても変ですが、ゲームとしてはオーソドックスなビッド付きポイントトリックゲームです。普通に楽しんでプレイできました。コンベンションもよくできています。

 推薦できるゲームの1つだと思います。