2004/9/4 赤桐
スペインのカタロニア地方でプレイされているトリックテイキングゲームです。当地ではデュプリケイトでの大会などもあって、かなり盛んなようです。
比較的簡単なルールですが、とても面白く、非常に理知的なゲームです。
ルールは John McLeod氏のホームページ(http://www.pagat.com/)によります。
4人。向かい合った2人がパートナーになります。
普通のトランプから各スートの10のカードを取り除いた48枚のカードを使います。正式にはスパニッシュパックのカードを使用します。
各スートのカードの強さは:
(強)9、A、K、Q、J、8、7、6、5、4、3、2(弱) の順です。
9のカードのことをマニーラ(Manilla)と呼びます。
各スートの以下のカードをトリックで取ると、次の点数がつきます。その他のカードには点数がありません。
9 |
5点
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エース(A) |
4点
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キング(K) |
3点
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クイーン(Q) |
2点
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ジャック(J) |
1点
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1トリックにつき |
1点
|
全点数は72点になります。このゲームの目的は、できるだけこの点数をたくさん取ることです。
ディーラーは右隣のプレイヤーから配り始め、各プレイヤーに4枚ずつ全部のカードを反時計回りに配ります。各プレイヤーの手札は12枚になります。通常、ディーラーの右隣のプレイヤーがシャッフルし、左隣のプレイヤーがカットします。
ディーラーは反時計回りに交代します。
ディールが終わって自分の手札を見た後、ディーラーは切札をどのスートにするかを宣言します。切札なしにしてもかまいません。切札なしのことをボティファーラと呼びます。
ディーラーは、自分が切札を決めたくないときは、パスをしてもかまいません。この場合、ディーラーのパートナーが切札(またはボティファーラ)を決めます。パートナーはパスをすることはできません。
切札が決まったあと、ディーラーでないほうのチームのプレイヤーは、得点を2倍にすることを宣言することができます。得点を2倍にすることをコントラール(Contrar)と呼びます
コントラールが宣言された場合、ディーラーのチームのプレイヤーは、得点をさらに2倍つまり4倍にすることができます。これをレコントラール(Recontrar)と呼びます。
レコントラールが宣言された場合、ディーラーでないほうのチームのプレイヤーは、得点をさらに2倍つまり8倍にすることができます。これをサント・ヴィセンス(Sant Vicens)と呼びます。それ以上の宣言はありません。
コントラールなどの宣言の順序は次のとおりです:
ディーラーの右隣のプレイヤーが最初のリードを行い、トリックテイキングゲームのルールに従ってプレイします。ただし、プレイは反時計回りです。
切札がプレイされている場合は、最も強い切札を出したプレイヤーがトリックに勝ちます。切札が1枚も出ていない場合には、リードされたスートで最も強いカードを出したプレイヤーがトリックに勝ちます。
トリックに勝ったプレイヤーは、取ったカードを裏向きに自分の前に置きます。直前のトリックでプレイされたカード以外は、取ったカードを見ることはできません。
フォローの規則は次のようになります:
全点数の半分の36点より多くの点数を取ったチームは、36点を越した分の点数が得点になります。例えば50点とった場合は、50-36=14点の得点になります。
ボティファーラ(切札なし)の場合には、この点数の2倍が得点になります。
コントラール、レコントラール、サント・ヴィセンスの場合には、さらに2倍、4倍、8倍となります。
36点以下のチームには得点はありません。
ディールが終わって累計点が101点以上になったチームがあればゲーム終了となります。
パートナーを代えて、3ゲーム行うことも多いようです。
48枚のカードです。このゲームは現地ではこのカードでプレイされているようです。
コイン(oros)、カップ(copes)、剣(espases)、棍棒(bastons)のスートがあり、各スートは12枚のカードからなっています。強い順に並べると:
9、1(エース)、レイ(Rei)、カバロ(Cavall)、ソータ(Sota)、8、7、6、5、4、3、2
9のカードのことをマニーラ(Manilla)と呼びます。
レイには12、カバロには11、ソータには10というインデックスが入っていることが多いようです。
普通のカードとは、レイ=キング、カバロ=クイーン、ソータ=ジャックという対応になります。
本文で説明したルールはカタロニア東部で主にプレイされている東部ルールです。カタロニア西部でプレイされている西部ルールでは、フォローの規則がもっと緩やかになり、次のようになります:
東部バージョンのほうが、他のプレイヤーの手札を推測しやすくなり、論理的なプレイが可能になりますが、西部バージョンの方が自由な想像力を働かしたプレイが可能になるようです。
東部バージョンでのバリエーションとして、「トリックで2番目にプレイするプレイヤーは、4番目にプレイするパートナーが勝つことを期待して、最初にプレイされたカードより弱いカードであっても、点数のあるカード(9、A、K、Q、J)をプレイすることができる」というルールを採用することもあります。
コントラール、レコントラール、サント・ヴィセンスにより得点が2倍、4倍、8倍になる代わりに、2倍、3倍、5倍となったり、2倍、4倍、10倍となったりすることもあります。
何ゲームか続けて遊ぶ場合、101点を越した点数は、次のゲームに繰り越すというやりかたをすることもあります。
カタロニアのチャンピオン戦では、デュプリケーション・ブリッジのペア戦と同じように、同じ内容のハンドを多くのプレイヤーがプレイしてプレイの優劣を競います。
片方の側の手を持ってプレイしたパートナーたち(N-S側)とその相手側の手を持ってプレイしたパートナーたち(E-W側)のそれぞれについて、得点をつけるわけです。
デュプリケーションの場合、取ったカードの点数が36点未満の場合にはマイナス点(得点- 36 の点数)をつけます。
ボティファーラはそれを宣言した側つまりディーラー側だけが点数(マイナス点も含む)が倍になります。コントラールもそれを宣言した側つまりディーラーでないほうの側だけが点数(マイナス点も含む)が倍になります。レコントラールは宣言することはできますが、点数には全く影響しません。つまり、パートナーに情報を与えるためだけに宣言することになります。サント・ヴィセンスは宣言できません。
同じハンドでプレイしたパートナーの点数のうち最も高い点数を MAX、最も低い点数を MIN として、あるプレイヤーの点数を X とすると、そのプレイヤーのデュプリケーションでの得点は次のようになります:
デュプリケーションの得点 = 1 + (X - MIN) / (MAX - MIN)
このようなハンドをいくつか行って、デュプリケーションの得点の合計が最も高いパートナーが優勝になります。
2004年9月4日になかよし村でプレイしました。決して派手ではないですが、すばらしいゲームだと感じました。
トリックテイキングゲームは他のプレイヤーの手がある程度分かったほうが、プレイヤーの考察力が発揮できる面白いゲームになりますが、このゲームではそれをプレイの規則を細かく決めることにより実現しています。
他のプレイヤーがどのカードをプレイしたかによって、プレイの規則から考えて、どのようなカードを持っているかを部分的には確実に推理することができます。それを基に、不確実な推理も深く掘り下げることができます。
プレイの規則がいささか煩雑だとはいえ、パートナーとの複雑な取り決め(シグナルなど)やコントラクト・ブリッジのように1人分の手を公開するといった大掛かりな仕掛けなしで手を推測する手がかりを与えているという点で、非常に優秀なシステムだと思います。