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コアフュール・シーバー・ヤス
(Coifeur-Shieber Jass)

1997/1/27 赤桐

 このゲームは、非常にたくさんの種類のある、スイスのヤスというカードゲームの一種です。

 各プレイヤーが10種類のゲームを全部選択してプレイし、得点を競うという ゲームです。ちょうどダイスゲームのヤッティーのようなものですが、1つの プレイがトリックテイキングゲームの1ディールになります。3人でプレイす る場合には30ディール行うことになります。

 また、普通のヤスゲームでは、手札の組み合わせによる得点があるのですが、 このゲームではありません。

 ルールはJohn MaLeod氏のWWW(http://www.pagat.com) における Nick Wedd氏の記述に基づきます。

人数

 3人または4人。まず3人ゲームを説明します。

カード

 普通の52枚のカードから、各スートの2、3、4、5を除いた36枚のカード を使用します。

 正式には、スイス固有のカードを使用しますが、これについては注1で述べ ることにします。なお、スイスでもドイツ語圏以外では、普通のカードを使用 します。

カードの強さの順位

 各スートのカードの強さの順位は、切札とそうでないスートでは異なります。

 切札以外の場合の場合:
  (最強)10(最弱)

 切札の場合:
  (最強)10(最弱)

カードの点数

 各カードには次の点数があります。このゲームはトリックを取る事によりカードの点数をたくさん集めることが目的になります。

切札のジャック20点
切札の14点
エース各11点
キング各4点
クイーン各3点
切札以外のジャック各2点
10各10点
切札以外の0点
0点

 ただし切札がない場合には,のカードは各8点となります。

 最後のトリックを取ったプレイヤーには、さらに5点のボーナス点が与えられ ます。

 従って、1つのディールの合計点数は157点になります(切札のあるゲームで も、ないゲームでも同じです)。

ゲームの概要

 各プレイヤーは、ビッドにより10の種類のコントラクトのうち1つを宣言し てプレイする機会を与えられます。

 各プレイヤーは、最終的には10種類全部を自ら宣言してプレイしなければな りません(一度宣言した種類のものを再び選択することはできません)。

 3人のプレイヤーがいますので、ゲーム終了までには30ディールをプレイする ことになります。

 得点盤には、コントラクトの種類を宣言したプレイヤー(デクレアラー)の 得点だけを記します(従って、他の2人は協力してこのプレイヤーに対すること になります)。

 全部のディールが終わると、10の種類のコントラクトそれぞれについて、誰が最も高得点で、誰が最も少ないかという、点数の順位をつけていき、それにより最終得点を決めます。

 なお、このゲームでは、すべての回り順は反時計回りです。

得点盤

 次のような得点盤を使用します。紙に書くこともできます。

 太郎次郎花子太郎次郎花子
スペード      
ハート      
ダイアモンド      
クラブ      
ノートランプ      
リバース      
スラローム      
グスタフ      
ジョーカー1      
ジョーカー2      
マッチ      

 1行目はプレイヤーの名前ですが、同じものが右と左の2個所にあります。

 左の3列はプレイ中の点数を記入するために使い、右の3列はプレイ後の得点を記入するために使います。

 左端の列は、コントラクトの種類が書かれています(「マッチ」は別)。

ディール

 最初の ディーラー任意のやり方で決めます。次回からは反時計回りの順に交代します。

 ディーラーは、右隣のプレイヤーから反時計回りに、3枚ずつすべてのカードを配りきります。各プレイヤーの手札は12枚になります。

ビッド

 ディールのあと、ディーラーの右隣のプレイヤーが、10のコントラクトのうち、そのプレイヤーがプレイしていないコントラクトの1つを宣言することができます。

 そのプレイヤーが既に全部のコントラクトを宣言してプレイしている場合や、コントラクトを宣言したくない場合には、パスを宣言します。

 パスの場合には、そのプレイヤーの右隣のプレイヤーが宣言できます。このプレイヤーもパスの場合には、ディーラーが宣言できます。

 全員がパスした場合には、再び最初のプレイヤー(ディーラーの右隣)に戻ります。このプレイヤーは必ずコントラクトを宣言しなければなりません。

 ただし、そのプレイヤーが既に10ののコントラクト全部を終了していた場合には、最後にビッドするプレイヤー(ディーラー)は、パスをすることはできません。

 1人しかコントラクトの残っているプレイヤーがない場合には、そのプレイヤーが必ずコントラクトを宣言します。

 コントラクトを宣言したプレイヤーを、デクレアラーと呼ぶことにします。

コントラクトの種類

 コントラクトの種類としては、次の10種があります。(ただし、プレイの種類としてはもっと少なくなります。)

1)スペード 
2)ハート
3)ダイア
4)クラブ

 それぞれのスートを切札にしてプレイします。

5)ノートランプ

 切札なしでプレイします。

6)リバース

 切札なしでプレイします。

 各スートにおけるカードの強弱の順位が反対になります。つまり、が最強で、10と続きます。

 カードの点数は通常の切札なしのゲームと同じです。

7)スラローム(ジクザグ)

 切札なしでプレイします。

 1トリックごとに、各スートにおけるカードの強弱の順位が、通常のものと反対のものと、交代します。最初のトリックをどちらの強弱の順位にするかは、プレイの始まる前にデクレアラーが決めます。

 カードの点数は通常の切札なしのゲームと同じです。

8)グスタフ

 切札なしでプレイします。

 各スートにおけるカードの強弱の順位が、最初の6トリックと、後の6トリックで、通常のものと反対のものと、交代します。最初の6トリックをどちらの強弱の順位にするかは、プレイの始まる前にデクレアラーが決めます。

 カードの点数は通常の切札なしのゲームと同じです。

9)ジョーカー1
10)ジョーカー2

 上記のプレイの種類の1つを自由に選ぶことができます。プレイの始まる前に、デクレアラーがプレイの種類を決めます。

 ジョーカー1もジョーカー2も同等ですが、どちらを選択するかはビッドのときに宣言しなければなりません。

プレイ

 デクレアラーが最初のリードをして、はトリックテイキングゲームのプレイを行います。反時計回りにプレイは進行します。

 切札なしのゲームでは、リードされたスートがあれば、必ずフォローしなければなりません。なければ、何を出してもかまいません。

 切札があるゲームで、切札がリードされた場合にも、フォローの義務があり、なければ何を出してもかまいません。

 切札のあるゲームで、切り札以外がリードされた場合で、リードされたスートを持っている場合、そのスートをフォローしてもよいし、切札があれば切札を出してもかまいません。それ以外のスートを出すことはできません。リードされたスートがない場合には、何を出してもかまいません。

 ただし、切札以外がリードされたときに、2番目のプレイヤーが切札を出した場合には、3番目のプレイヤーの出すカードは、次のような制約を受けます:

  1. リードされたスートのカードを持っている場合には、そのスートをフォローするか、場に出ている切札よりも強い切札をプレイすることができます。他のスートや、場の切札より弱い切札をプレイすることはできません。
  2. リードされたスートのカードを持っていないが、切札でない他のスートのカードを持っている場合には、どのカードでもプレイできます。ただし、場に出ている切札よりも弱い切札をプレイすることだけはできません。
  3. 手札に切札だけしかない場合には、場に出ている切札よりも弱い切札を出さなければなりません。これができなければ、どのカードを出してもかまいません。

点数の記入

 プレイが終了するとデクレアラーは点数を計算して、得点盤のその時のコントラクトの行のデクレアラーのところに記入します。

 点数は取ったカードの点数の合計(最後のトリックを取ったらさらに5点)です。

 他の2人は点数を計算する必要はありませんが、合計して157点になることをチェックするために通常は計算しておきます。

 デクレアラーが全トリックを取ったら、マッチ(Match)と呼ばれ、100点のボーナスを受け取ります。つまり、257点を記入します。さらに、得点盤のマッチと書かれた行の、デクレアラーのところに2つの棒を記入し、他の2人のところに丸を1つずつ記入します(左側の3列です。既に何か記入されていれば、それに追加して書き入れます)。

 もしもデクレアラーが1トリックも取れなかったならば、逆マッチとなり、0点を記入するだけではなく、マッチの欄に丸を2つ記入し、他の2人には棒を1つずつ記入します。

 棒は、最終得点におけるプラス1点を表わします。丸は、最終得点におけるマイナス1点を表わします。

 点数の記入後、1つのコントラクトの3人全員のところがふさがったら(全員がそのコントラクトをやってしまったら)、そのコントラクトの最終得点を右側に書くことができます。

 スペード、ハート、ダイアモンド、クラブのコントラクトにおいては、3人の点数を比べて、1位のプレイヤー(点数が最も高いプレイヤー)のところに棒を1つ記入し、最下位のプレイヤー(点数が最も低いプレイヤー)のところに丸を1つ記入します。2位のプレイヤーのところには何も記入しません。

 ノートランプ、リバース、スラロームのコントラクトにおいては、1位のプレイヤーに棒を2つ記入し、最下位のプレイヤーに丸を2個記入します。

 グスタフ、ジョーカー1、ジョーカー2のコントラクトにおいては、1位のプレイヤーに棒を3つ記入し、最下位のプレイヤーに丸を3個記入します。

 同点の場合には、カードをドローまたはカットして順位を決めます。(シャッフルしたカードから各プレイヤーが裏向きで1枚を選び、そのランクの高い方が、順位が上になります。同ランクならば、やり直し)。

 次の得点盤は、プレイ中の記入例です:

 太郎次郎花子太郎次郎花子
スペード 105    
ハート 44122   
ダイアモンド96     
クラブ25710267I o
ノートランプ123 88   
リバース 33    
スラローム8910392ooII 
グスタフ120     
ジョーカー1  102   
ジョーカー215055    
マッチIIoo   

ゲーム終了後の得点計算

 ゲームが終了したら、まず各コントラクトについて、順位による得点(棒と丸)がまだついていないところがあれば、すべて記入します。

 次に、各プレイヤーについて、各コントラクトの右側の列と、「マッチ」の左側の列にあるすべての棒と丸を数え、棒をプラス1点、丸をマイナス1点として計算します。これが、各プレイヤーの合計した最終得点です。

 この合計した最終得点は、「マッチ」の行の右側の3列に記入します。

 次は、すべての得点計算が終わった得点盤の例です:

 太郎次郎花子太郎次郎花子
スペード5210589oI 
ハート2244122o I
ダイアモンド969862 Io
クラブ25710267I o
ノートランプ123088IIoo 
リバース923348IIoo 
スラローム8910392ooII 
グスタフ12061122 oooIII
ジョーカー1108132102 IIIooo
ジョーカー215055257 oooIII
マッチIII
o
ooooo
III
3-74

 この得点盤では、太郎:3ポイント、次郎:-7ポイント、花子:4ポイント が、最終得点です。


注1

 スイスのカードのスートは、どんぐり(Eichel)、花(Rose)、楯(Schilte)、鈴 (Schelle)、の4つのスートからなっています。

 各スートはアス(As=エース)、ケーニッヒ(Koenich=キング)、オーバー(Ober, クイーンに対応)、ウンター(Unter,ジャックに対応)、バナー(Banner=旗, 10に対応)、9、8、7、6からなります。オーバーはスートのマークを上の 方に持った士官、ウンターはスートマークを下の方に持った士官です。

注2

 参照したルールのコントラクトの名称がわかりにくかったので、英語風の言 葉に直したり、英語風に読んだりしています。(読み方が分からない、何語か も分からないというのもあったので)

 元来の名称は次の通りです:

ノートランプObenabe
リバースUndenufe
スラロームSlalom(読み方が少し違います),Zig-Zackとも言う
グスタフGustav(そのままです)、Mittendurch,Gusti,Marie,Muttiなどとも言います
ジョーカーJoker(そのままなのか読みが違うのかわかりません。本来1と2の区別はなく、上下の位置で区別します。)

 また、マッチ(Match)もドイツの辞書によると「メッチ」に近い音のようですが、英語風に読みました。

 ほかのゲーム用語(ビッド、コントラクト、デクレアラーなど)は、参照したルールに英語で書かれていたので、そのまま採用しました。

注3

 本来の得点盤の左端の列には、スイスのカードなので、上から順に、どんぐり、楯、鈴、花の絵が書かれています。その下には、他のコントラクトが順に頭文字で、O,U,S,G,J,Jと書かれ、その下にMatchと書かれています。

 また、参照したルールによれば、最終の得点(マッチの右の3列に記入する得点)も、棒と丸で書かれていたのですが、書きくいので本文では数字で書くように記述しました。

 なお、棒は最初の4本は縦に書きますが、5本目の棒は横に長く引いてして縦棒4本を串刺しにします。つまり++++というようになります。それ以降の棒も、次の4本はまた縦に書き5本目は横に串刺しに書くというようにします。

 また、マッチの左半分の列の記入で、棒の書いてある欄に追加で丸を書くときや、その逆の場合、棒と丸を重ねて書いて±0を表わしてもかまいません。φのようになります。

注4

 コアフュール(Coiffeur)という名前は、フランス語で床屋を表わしますが、スイスのドイツ語圏でも使われる言葉です。

 しかし、本当の語源はフランス語の"quoi faire"(どうしようか?)という言葉だということです。これは、コントラクトを選択するときに発しそうな言葉です。

 このゲームはドイツのフランス語圏で生まれ、ドイツ語圏で改良されたゲームですが、フランス語圏でこのような名前がついたということです。


4人ゲーム

 通常、4人ゲームは向かい合った2人が味方になるパートナー戦で行います。

 コントラクトは、スラロームとグスタフを除いた8種類になります。各チームが8種類のコントラクトをすることになるので、1ゲームは16ディールとなります。

 得点は、各コントラクトにおいて3人ゲームのように順位を決めるのではなく、得られた点数の合計となります。ただし、この点数はプレイの結果の点数そのままでなく、それを10で割り、小数点以下を切り捨てたあと、コントラクトの種類により次の乗数を掛けたものです。
コントラクト乗数
スペード(どんぐり)1
クラブ(花)2
ダイアモンド(楯)3
ハート(鈴)4
ノートランプ 5
リバース6
ジョーカー17
ジョーカー28

 例えば、ダイアモンドを宣言して118点だった場合、10で割って11となり、それにダイアモンドの乗数である3を掛けて、33ポイントが得点となります。

 ビッドは、ディーラーの右側から反時計回りに、1人ずつ行います。4人全員がパスの場合には、ディーラーの右側のプレイヤーがコントラクトを宣言しなければなりません。

 片方のチームが全コントラクトを終了している場合にも、同じようにビッドを行いますが、コントラクトを終えているチームは、もちろんパスをすることしかできません。

 4人ゲームは個人戦で行うこともできます。やり方は上記と同じです。32ディール行うことになります。

4人ゲームの注

 参照したルールには書かれていなかったので、推測なのですが、次のようなルールを追加しておきます:

 片方のチームが全コントラクトを終了している場合、コントラクトを終えていないチームの最初にビッドするプレイヤーがパスをした場合には、もう1人のプレイヤーは必ずコントラクトを宣言しなければなりません。

 プレイにおいて、切り札以外のリードで、2人目のプレイヤーが切り札をプレイした場合、3人目のプレイヤーの出すカードの制約は、3人用のルールを適用します。

 プレイにおいて、切り札以外のリードで、2人目または3人目のプレイヤーが切り札をプレイした場合(またはその両方が切り札をプレイした場合)、4人目のプレイヤーの出すカードの制約は、3人用のルールで2人目が切り札を出したときのルールを適用します。ただし、「場に出ている切り札」を「場に出ている最も強い切り札」と読み替えます。