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ドライアーレス(Dreierles)

2019/1/5 赤桐

ツェゴの祖先に当たるタロットカードのゲームです。バーデン地方では最近までプレイされていました。


プレイヤー

3人または4人。4人のときはディーラーはプレイに参加しませんが、ゲーム点の受け取りや支払いは発生します。

カード

タロットカードを用います。 通常のゲーム用のタロットカードが使用できますが、現地ではツェゴパックと呼ばれる54枚のドイツのカードを用います。 (占い用のカードを使用することもできます)。

カードは、4つのスートと、それとは別の切札のスートから成っています。

4つのスート

4つのスートは、普通のトランプと同様に、スペード、クラブ、ダイヤモンド、ハートです。 (占い用のカードを使うときには、スペード=剣、クラブ=棍棒、ダイアモンド=貨幣、ハート=聖杯として使ってください。)

絵札には、普通のトランプの絵札にカバロというカードが加わり、キングクイーンカバロジャックの4枚になります。 ドイツ語ではそれぞれ、ケーニッヒ(Könich)、ダーメ(Dame)、カバル(Cavall)、ブーベ(Bube)と呼びます。 (占い用のカードでは、カバロのことをナイトと呼んでいるかもしれません。)

数札は普通のトランプと同様ですが、となります。 黒いスートの10のカードと赤いスートのしか使用しません。

スペードとクラブのカードとその強さは次の通りです(赤いカードでは数札の強さの順が普通と逆になることに注意してください):

   (強)キングクイーンカバロジャック10((弱)

ハートとダイアモンドのカードとその強さは:

   (強)キングクイーンカバロジャック(弱)

切札のスート

切札のスートは22枚あります。この切札のスートのことを、現地ではドルック(Druck)と呼びます。

切札の最強のカードは数字が入っていない音楽家の描かれたカードで、 シュティースまたはグシュティース(Stiess/Gstiess)と呼ばれます。 (占い用のカードでは、「愚者」と呼ばれるものです。)

その他のカードには21の数字が大きく書かれています。 この中で最も強いのが21のカードです。以下、数字が小さくなるほどと弱くなっていきます。 (占い用のカードやオーストリアのカードでは、ローマ数字になっています。)

のカードが切札で最弱のカードとなりますが、このカードはプファイフェ(Pfeife=笛/パイプ)と呼ばれます。

シュティース、21の3枚のことを、ドロル(Droll)と呼びます。

ディール

最初のディーラー任意の方法で決めます。次回からディーラーは右隣のプレイヤーに移っていきます。

ディーラーの左隣のプレイヤーがカットしたあと、ディーラーはまず6枚のカードを、上下の順序を変えずに、裏向きにテーブルの中央に置きます。 これをタロンと呼びます(現地では、ブリンデ=Blinde と呼ばれます)。

つぎに、ディーラーの右隣から反時計回りに、各プレイヤーに8枚ずつまとめてカードを2回配ります]。 各プレイヤーの手札は16枚になります。 4枚ずつ4回配ることもあるようです。

ビッド

ディールが終わると、プレイを始める前にビッドを行います。

ビッドの目的

ビッドに成功したプレイヤーはデクレアラーとなります。 デクレアラーは他の2人を敵に回してプレイをすることになります。

このゲームはトリックテイキングゲームです。取ったカードにはそれぞれ点数があり、その点数をたくさん取ることが目的となります。 全点数の合計は70点になりますが、デクレアラーは少なくともその半分を超える点数(36点かそれ以上)を得なければプラスの得点が得られません。

デクレアラー以外の2人は臨時のパートナーとなって、デクレアラーと戦うことになります(以後、この2人をディフェンダーと呼びます)。

ビッドの種類

ビッドは、弱いものから順に、3枚(Dreier)、2枚(Zweier)、1枚(Einer)、ソロ(Solo)の4種類があります。

枚数は、プレイの前にビッドに成功したプレイヤーがタロンと交換できる枚数を示します。 ソロのときは、交換しません。

ビッドの方法

ディーラーの右隣のプレイヤーからビッドを始め、反時計回りにビッドを進めます。 各プレイヤーは1度しかビッドの機会はありません。

誰かがビッドしたときは、そのあとのプレイヤーはそれより強いビッドしかすることができません。 ビッドしたくなければパス(現地ではベク=Weg)を宣言します。

最後にパス以外のビッドを行ったプレイヤーがデクレアラーになります。

全員がパスをしたときは、あとで述べるロイバー(Räuber)のプレイを行います。

カード交換

ディフェンダーの1人がデクレアラービッドした枚数のカードをタロンの上から取り、全員に公開します。 デクレアラーはそれを手札に加え、裏向きに同じ枚数のカードを捨て札します。 切札のキングは捨て札できません。

残りのカードはディフェンダーの2人が見ることができます。見るだけで、交換はできません。

プレイのあと、デクレアラーが捨てたカードはデクレアラーのものになり、 残りのカード(ディフェンダーが見たカード)はディフェンダーのものになります。

ソロのときはカード交換はなく、ディフェンダーがすべてのタロンを見て、プレイ後にそれをもらうことになります。

手役

各プレイヤーは配られた手札(デクレアラーなら交換後の手札)に次のどれかのカードがあれば、得点することができます。

それぞれは1ゲーム点です。 このゲーム点は自分以外の全プレイヤーからもらいます。 パートナーやプレイしていないディーラーからももらいます。 例えば4人ゲームなら、他の3人からもらうのでプラス3ゲーム点となり、 他のプレイヤーはマイナス1ゲーム点です。 (このゲームでは、すべてこのようにしてゲーム点のやりとりをします。 現地ではこのゲーム点のことをファッハ=Fachと呼びます。)

手役の発表はプレイ後に行います。 ただし、デクレアラーの10枚以上の切札の手役のときだけは、プレイ前に行います。 そのとき手札を公開する必要も正確な切札の枚数を公表する必要もありません。 10枚以上切札があっても手役の発表をしなくてもかまいません(得点はできませんが)。

最後のトリックのプファイフェ

デクレアラーが最後のトリックでプファイフェ(切札)をプレイしてトリックに勝つと、 1ゲーム点を得点します。 最後のトリックにプファイフェを出して負けたときは、1ゲーム点を失点します。

デクレアラーは、プレイ前に最後のトリックでプファイフェを取ることを宣言することもできます。 この場合、成功したら2ゲーム点の得点、失敗したら2ゲーム点の失点です。

宣言があったときは、最後のトリックより前にプファイフェをプレイしたときも失敗となります。 このとき、プファイフェをプレイしたトリックおよびそれ以降のすべてのトリックは、 デクレアラーの負けとなります。

なお、ゲーム点の得点とは、その点数を他の全プレイヤー(プレイしていないディーラーも含む)からもらうことです。 失点とは、その点数を他の全プレイヤーに支払うことです。 これ以降の説明のときも同様になります。

コントラとレ

カードの交換、10枚以上の切札の宣言、最後のトリックのプファイフェの宣言が終わったら、 デクレアラーは「準備完了(fertig)」を宣言します。

そのあとプレイまでに少し時間を置きます。 このときディフェンダーは誰でも、机を叩くことによってコントラ(Kontra)を宣言することができます。 コントラとはプレイの結果によるゲーム点を2倍にするということです。 ただし、「3枚」のビッドをすることができたのにパスをしたディフェンダーは、コントラの宣言をすることができません。

コントラの宣言のあったら、デクレアラーは机を叩いてレ(Re)を宣言することができます。 これによりプレイ結果のゲーム点はさらに2倍になります。

これに対してディフェンダーは再度コントラをしてさらにゲーム点を2倍にすることができ、 デクレアラーも再度レを行うことができます。

これを何度繰り返してよいかは、プレイ前に決めておく必要があります。

プレイ

コントラとレの時間が終わったら、プレイを行います。 プレイはトリックテイキングゲームのルールに従いますが、次の規則があります。

  1. 最初のリードはデクレアラーが行います。
  2. プレイは反時計回りに行います。
  3. 切札がリードされたときには、切札を持っていれば、切札のカードを出さなければいけません。持っていなければ、何を出してもかまいません。
  4. 切札以外のカードがリードされたときには、リードされたスートを持っていればそのスートのカードを出さなければなりません。リードされたスートを持っていなくて、切札を持っていれば切札を出さなければいけません。それ以外の時には何をだしてもかまいません。

トリックに勝ったら、勝ったプレイヤーが出されたカードを回収し、手札から1枚出して次のリードを行います。 ディフェンダー側の2人の取ったカードはまとめて扱います。

得点

プレイの結果の得点(ゲーム点)は、デクレアラーの取ったカードの点数とビッドの種類によって決まります。

カードの点数

各カードの点数は次の通りです:

カード カード点
シュティース 5
切札の21 5
切札のプファイフェ 5
キング 5
クイーン 4
カバロ 3
ジャック 2
上記以外のカード 1

さらに、取ったカードを3枚1セットにして、それぞれのセットにつき2点を引きます。 1枚か2枚余ったら、1点を引きます。

この結果全点数の合計は70点になります。

デクレアラーのゲーム点の得失点は、カード点の合計とビッドの種類により、次の表のようになります。

デクレアラーのカード点 「3枚」 「2枚」 「1枚」 ソロ
65-69 +7 +14 +21 +28
60-64 +6 +12 +18 +24
55-59 +5 +10 +15 +20
50-54 +4 +8 +12 +16
45-49 +3 +6 +9 +12
40-44 +2 +4 +6 +8
36-39 +1 +2 +3 +4
31-35 -1 -2 -3 -4
26-30 -2 -4 -6 -8
21-25 -3 -6 -9 -12
16-20 -4 -8 -12 -16
11-15 -5 -10 -15 -20
6-10 -6 -12 -18 -24
1-5 -7 -14 -21 -28
0 - - -24 -32

この得失点はコントラやレによって倍加します。 手役や最後のトリックのプファイフェの点数はコントラやレに影響されません。

ロイバー(Räuber)

ロイバーはビッドのとき全員がパスをしたらプレイされます。 最も多くの点数を取ったプレイヤーが失点します。

最後にパスをしたプレイヤー(3人プレイならディーラー、4人プレイならディーラーの左隣)から 反時計回りの順に、コントラを宣言することができます。 既にコントラが宣言されていても、さらに宣言することができますが、1巡だけです。 4人プレイのディーラーも、プレイには参加しませんが、コントラは宣言できます。 (常に支払いを受けるだけなので、必ず宣言すべきです。)

タロンのカードは使用しません。 タロンは誰も見ません。 手役や最後のトリックのプファイフェはありません。

下記以外は通常のプレイと同様です。

  1. 最初のリードはディーラーの右隣のプレイヤーが行う。
  2. プファイフェ(切札)は3回目に切札がリードされたときにプレイしなればならない。 自分からリードすることはできない。(シュタインマウアーン市のルール)
  3. 切札21は、シュティースがプレイされているトリックではプレイできない。

ただし、上記2、3のルールより、通常のプレイの規則が優先されます。 (つまり、プレイの規則でそのカードしか出せないような場合は出します。)

プレイが終わると、最もカードの点数を多く取ったプレイヤーが、2ゲーム点を失点します。 (他の各プレイヤーに支払います)。 最も点数の多いプレイヤーが同点で2人いたときは、1ゲーム点ずつ他の各プレイヤーに支払います。 3人同点で4人プレイなら、ディーラーが2点受け取るようにプレイした各プレイヤーが支払います(2/3ゲーム点ずつ)。

上記ゲーム点はコントラが1回あるごとに2倍されます。

ゲーム

各プレイヤーがディーラーを1回ずつプレイすると1ラウンドが終了します。 何ラウンドでゲームが終了するかは、特に決まりはなく、プレイヤーの合意によります。

最後のラウンドでは「ロイバーかソロ」のルールになることがあります。 つまり、ビッドはソロしか許されません。

このとき、ソロのゲーム点が2倍になることがあります。

コントラを宣言できるのは、先にソロが宣言されて、ビッドの機会がなかったプレイヤーだけになります。