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エストニアン・ビント(Estonian Vint)

2014/1/4 赤桐

ビントはコントラクト・ブリッジ(ラバー・ブリッジ)の得点システムに影響を与えたゲームです。 1900年ごろにロシアに生まれ、一時はかなりヨーロッパに広まりました。現在はプレイ人口は減りましたが、独自の進化を遂げています。

ルールは David Parlett氏の本"The Penguine Book of Card Games"によりました。エストニアでプレイされているものを記述したスエーデンの本を基にしているということです。


人数

4人。向かい合った2人がパートナーになります。

カード

普通の52枚のトランプを使います。各スートの強さは、強いものから順に、A、K、Q、J、10、9、8、7、6、5、4、3、2です。

ディール

各プレイヤーに1枚ずつ12枚のカードを配ったあと、テーブルに4枚のカードを裏向きに配ります。

ビッド

ディールが終わるとビッドを行います。 ビッドはディーラーの左隣のプレイヤーから時計回りに行います。

ビッドの時には、パートナー2人で取るつもりのトリック数から6を引いたものと、 切札のスートの名前をビッドします。 例えば、切札をハートにして10トリック取るつもりならば、「フォー・ハート」と発言します。 ビッドしたくないときは「パス」と発言します。

ビッドできるのは4(フォー)から7(セブン)までで、切札は4スートの他に、切札なしを意味する「グランド」を ビッドすることもできます。

また、ミゼール(misääri)のコントラクトもあります。 これは、切札なしでそのトリック数以上を負けるというビッドです。 例えば、ツー・ミゼールなら、8トリック以上を負けるというコントラクトです。

誰かがビッドした後は、それより強いビッドしか行うことができません。 ビッドの強さは、まず数字の大きいほうが強いビッドになります。 同じ数字ならば、切札のスートが強いほうが強いビッドになります。 スートの強さは、強いものからグランド、ハート、ダイアモンド、クラブ、スペード、ミゼールの順です。 つまり「フォー・ミゼール」が最も弱いビッドで、「セブン・グランド」が最も強いいビッドです。

8回パスが続いたときに、ビッドが終わります。つまり、最後にビッドしたプレイヤーがそのあと2回パスを 行うことになります。 最後にビッドを行ったプレイヤーがデクレアラーになります(ここはブリッジと違うので注意してください)。

最初から8回パスが続いたときには、プレイを行いません。次のディーラーが新しいディールを始めます。

交換

デクレアラーはテーブルの4枚のカードを表向きにして全員に見せたあと、手札に加えます。 そのあと、手札から4枚のカードを裏向きにパートナーに渡します。 パートナーはそのカードを手札に加えてから、 手札から3枚のカードを1枚ずつ他のプレイヤーに裏向きに渡します。

2回目のビッド

次に、デクレアラーから2回目のビッドを行います。 このビッドはデクレアラーとパートナーの2人だけで行います。 ビッドは1回目のビッドで決まったコントラクトより強いものでなくてはなりません。

4回続けてパスがあったとき、つまり各プレイヤーが2回ずつパスをしたときにビッドが終わります。

ディフェンダーの交換

デクレアラーの左隣のプレイヤーがエルディスト・ハンドになります。 ただし、ミゼールの時は右隣のプレイヤーになります。

2回目のビッドのあと、エルディスト・ハンドが自分のパートナーに手札から1枚を裏向きに渡し、 パートナーは裏向きに1枚のカードを返します。 ただし、この交換はビッドが6または7の時には行いません。

ダブル・リダブル

交換のあと、エルディスト・ハンドはダブルを宣言することができます。 これはプレイの結果のすべての得失点を2倍にすることです。 エルディスト・ハンドがダブルを宣言しなければ、そのパートナーがダブルを宣言することができます。

ダブルがあれば、デクレアラーのパートナーはリダブルを宣言できます。 これはプレイの結果のすべての得失点を4倍にすることです。 このプレイヤーがリダブルを宣言しなければ、デクレアラーがリダブルを宣言することができます。

プレイ

エルディスト・ハンドが最初のリードを行い、普通のトリックテイキングのプレイをします。 プレイは時計回りです。

  1. リードされたスートのカードがあれば、そのスートを出します。
  2. なければ、どのカードを出してもかまいません。
  3. 切札が出ていない場合は、リードされたスートの最も強いカードを出したプレイヤーが勝ちます(トリックを取ります)。
  4. 切札が出ている場合は、最も強い切札を出したプレイヤーが勝ちます。
  5. 勝ったプレイヤーが次のリードを行ないます。

トリック点

1トリック取るごとに得られるトリック点はコントラクトの数字になります。 例えば、スリー・クラブのコントラクトなら、トリック点は3点となります。

達成ボーナス、オーバートリック・ボーナス、アンダートリック・ボーナス

コントラクト成功した時は達成ボーナスがあり、 オーバー・トリックがあればオーバートリック・ボーナスが得られます。 6や7のビッドで失敗した時には相手チームに特別のボーナスもあります。

スラム・ボーナスはありません。

コントラクト 成功 失敗
達成ボーナス オーバートリック・
ボーナス
特別ボーナス アンダートリック・
ボーナス
4 1000 なし なし 400
5 2000 200 なし 500
6 3000 200 400 600
7 4500 - 1000 700

オーバートリック・ボーナス、アンダートリック・ボーナスは1トリック当たりです

コロネット・ボーナス(Coronet Bonus)

1人のプレイヤーの手札にAが3枚あれば200点、4枚あれば400点になります。

また、どのスートでも同じスートのA、K、Qがあれば100点、 それより下に連続するカードがあれば1枚ごとに100点ずつ追加されます。 切札のスートの場合には、このボーナスは2倍になります。

グランドの場合には、すべて2倍になります。

アナー・ボーナス

切札のコントラクトの場合

切札のA、K、Q、J、10の5枚と4枚のAがアナーになります。 切札Aは2回数えるので、アナーは9つとなります。 アナーを5個以上手札に持っていたチームは、アナーの数にトリック点を掛けて10倍したものを得点します。 例えば、ファイブ・クラブでアナーが6枚なら、5 x 6 x 10 = 300点になります。

グランドのコントラクトの場合

チームで3枚以上Aがあると、Aの数にトリック点を掛けて10倍したものを得点します。

ミゼールのコントラクトの場合

アナーボーナスはありませんが、プレイで自分のAを相手チームに取らせたときは、 1回につき、その時何トリック目のプレイであったかという数に100を掛けたものを得点します。

パス・ミゼール(Pass-Misère)

ビッドで全員がパスだった場合には、ディーラーは裏向きのままテーブルの4枚を各プレイヤーに1枚ず つ配ります。各プレイヤーは手札を1枚、パートナーに裏向きに渡します。このときパートナーからのカード は見ないで渡します。

ディーラーの左隣のプレイヤーが最初のリードを行い、切札なしでプレイを行います。

取ったトリック数の少ないチームが、各チームのトリック数の差に100を掛けた点数を、ボーナス点として得点します。 アナーボーナスはありませんが、ミゼールの時と同じように、Aを相手チームに取らせたときの得点があります。 横線の下に記入する得点はありません。

ゲームとラバー

ラバー・ブリッジと同じように、各チームの得点欄の中央に横線を引き、 トリック点はその線の下に書き、それ以外のボーナス点は線の上に書きます。

トリック点の累計点(ボーナス点を含まないもの)が60点に達すると、ゲームになります。 ただし、その時のボーナス点はありません。 ゲームになると、得点欄のトリック点の部分の下にさらに横線が引かれ、各チームのトリック点の累計点は0に戻ります。

2ゲーム先取したチームがラバーに勝ったことになり、400点をボーナス点として得点します。 プレイはそのあと4ディール続きます。 この4ディール中に、3ゲーム目を取ったチーム(チームが3回ゲームを達成したということで、 ラバーに勝ったチームとは限らない)は600点をその時点で得点します。 4ゲーム目:800点、5ゲーム目:1000点、6ゲーム目:1200点とそれぞれの時点でもらうこともできます。

パートナーを変えて、ラバーを3回プレイします。