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フレンチ・タロット(French Tarot)

1996/10/4、2023/2/19改訂 赤桐

フランスは16世紀にイタリアからタロットのゲームが伝わり、少なくとも17世紀前半までは非常に盛んにプレイされていました。 しかしその後人気が衰え、東部のアルザス、フランシュ=コンテ、ブルゴーニュ、プロヴァンス などだけでプレイされ、他の地域では全く忘れ去られていました。

しかし、第二次世界大戦以降、再び盛んにプレイされるようになりました。 アルジェリア戦争中(1954年-1961年)に兵士に贈られた慰問品に遊び方のついたタロットカードが入っていたたために盛んになったとも言われています。

簡単ですが近代的なビッドと得点システムを持っています。 手札は18枚と多いのですが、 ブリッジなどと違ったマスト・ラフ(マスト・オーバーラフ)のプレイをじっくりと楽しめます。

いろいろなルールがあるのですが、ここでは現在最もよく行われていると思われるルールを載せておきます。 ほぼ、フランスタロット連盟のルールやPagat.comにあるルールと同じです。


プレイヤー

3人〜5人。普通は4人でプレイするので、まず4人用ゲームを紹介します。

カード

フランスの78枚の競技用タロットカードを使います。 スートはスペード、ハート、ダイアモンド、クラブです。

各スートのカードとその強さは:

(強)キング(R)、クイーン(D)、カバロ(C)、ジャック(V)、10(弱)です。

フランス語ではキングルワ(Roi)、クイーンダム(Dam)、カバロはカバリエ(Cavalier)、ジャックバレ(Valet)となります。

その他に21枚の切札のスートと、エクスキューズ(Excuse)のカードがあります。 切札のスートの各カードにはには大きくアラビア数字で21の数が書かれています。 21の数が書かれたものが最も強く、数が小さくなるほど弱くなります。切札ののことをプチ(Petit)と呼ぶことがあります。

エクスキューズのカードは、音楽家の絵が描かれていて、インデックスには黒い星印が書かれています。このカードは特別な働きをするカードです。

占い用のタロットを使う場合には、大アルカナのカードが切札のスートになります。 数字はローマ数字で書かれているはずです。ただし、愚者のカードはエクスキューズになります。 小アルカナには4つのスート(貨幣、聖杯、棍棒、剣)があるので、 スペード、ハート、ダイアモンド、クラブの4つのスートの代わりに使います。

カードの点数とゲームの目的

カードの点数は次の通りです。

切札21 4.5点
切札1(プチ) 4.5点
エクスキューズ 4.5点
キング 各4.5点
クイーン 各3.5点
カバロ 各2.5点
ジャック 各1.5点
その外のカードすべて 各0.5点

全部のカードの合計点数は91点です。

切札21と切札(プチ)とエクスキューズの3枚のカードは、ウドレ(oudler)と呼ばれます。

プレイにおいては、最も強いビッドを行ったプレイヤー(デクレアラー)が、他の3人を敵にまわして戦います。 プレイに成功するためには、デクレアラーは決められた点数以上のカードを取らなければなりませんが、 その点数は取ったウドレの数により変わります。

取ったウドレの数 必要点数
0枚 56点
1枚 51点
2枚 41点
3枚 36点

例えば、ウドレを3枚取っていれば、その3枚のウドレの点数を含めて、36点かそれ以上の点数を取っていればプレイに成功したことになります。もしウドレが1枚もなければ、56点以上を取っていなければ成功になりません。

ディール

最初のディーラー任意の方法で決めます。次回からは反時計回りの順に交代します。

ディーラーは、ディーラーの右隣のプレイヤーから、各プレイヤーに3枚ずつ6回配り、 手札が18枚になるようにします。配っている間に、適当にテーブル中央に1枚ずつ配っていき、テーブル中央にも6枚のカードが配られるようにします。 ただし、テーブル中央に配るカードは最初のカードや最後のカードであってはなりません。

このテーブル中央のカードをタロンと呼ぶことにします(現地では今はシエン chien つまり犬と呼ばれています)。

例えば次のように配れば良いでしょう

  1. 右隣のプレイヤーに3枚配る
  2. 向いのプレイヤーに3枚配る
  3. テーブル中央に1枚配る
  4. 左隣のプレイヤーに3枚配る
  5. 自分に3枚配る
  6. 上記の配りかたを、あと5回繰り返す。

切札のを配られて、他の切札やエクスキューズを全く配られなかったプレイヤーは、これを宣言して、 このディール流さなければなりません。 つまり、全員がプレイをやめて、この回のディーラーの右隣のプレイヤーが新しいディーラーになって、配り直しをします。 これをプチ・セック(petit sec=乾いたプチ)と呼びます。

ビッド

ビッドはディーラーの右隣から反時計回りの順に行います。 各プレイヤーは1回だけビッドの機会が与えられます。 ビッドしたくなければパスを宣言します。

ビッドは、後で説明する4種類のゲームのうち、デクレアラーになってどの種類かをプレイするという宣言です。 最初は自由にどれでも選択できますが、他のプレイヤーがパス以外のビッドを宣言していたら、それ以降のプレイヤーは今までのビッドより強いビッドしか宣言できません(もちろんパスはできます)。

最も強いビッドを行ったプレイヤーがデクレアラーになります。 デクレアラー以外の3人をディフェンダーと呼ぶことにします。

全員がパスをしたら、全部のカードを配り直して、再びビッドから行います。 このとき、ディーラーは右隣のプレイヤーに移ります。

ビッドの種類は弱いものから順に以下の通りです。

プリーズ(la prise/la petit)

ビッドのあと、タロンの6枚のカードを公開したあと手札に入れて、6枚捨て札することができます。 捨て札したカードは、プレイが終わったあとに、デクレアラーのものになります。

後で詳しく説明しますが、プリーズのビッドでプレイに成功した場合には、25点に必要点数よりオーバーしている点数を加えたものがもらえます。

ガルド(la garde/la pousse)

プレイはプリーズと全く同じです。得点だけが違います。

プリーズの2倍の得失点になります。

ガルド・サン(la garde sans/la garde sans le chien)

タロンの6枚のカード誰も見ることができず、交換も行いません。 タロンは、プレイが終わったあとに、デクレアラーのものになります。

プリーズの4倍の得失点になります。

ガルド・コントル(la garde contre/la garde contre le chien)

タロンの6枚のカード誰も見ることができず、交換も行いません。 タロンは、プレイが終わったあとにも、デクレアラーのものにはなりません。(ディフェンダーのものになります)。

プリーズの6倍の得失点になります。

カードの交換

ビッドが終わると、プリーズやガルドを行う場合には、カードの交換を行います。

デクレアラーは、まずタロンの6枚のカードを表向きにして、全員が見えるようにします。 そのあとタロンを手札に入れ、タロンを含めた手札の中から6枚のカードを他のプレイヤーには見せずに捨て札します。

ウドレやキングを捨て札してはいけません。 ウドレ以外の切札は、手札に切札やキングがありすぎて捨てざるを得ない場合だけ捨て札できます。 この場合、捨て札した切札はみんなに見せます。

スラム宣言(le chelem)

カードの交換が終わると、スラム宣言を行うことができます。

プレイで全トリックを勝つという宣言です。 普通はもちろんデクレアラーが行いますが、ディフェンダーが3人で全トリックを取るという意味で宣言してもかまいません。

成功すると400点のボーナス点がありますが、失敗すると200点の罰点になります。 なお、宣言しなくてスラムを達成しても200点もらえます。

手役の宣言

各プレイヤーは自分の最初のプレイの直前に手役の宣言を行うことができます。 手札に10枚以上の切札があるときに宣言できます。 このときに限り、エクスキューズは切札とみなすことができます。 次の種類があります。

10枚切札(simple poignée) 20点
13枚切札(double poignée) 30点
15枚切札(triple poignée) 40点

手役の点数は、宣言した側ではなく、プレイに成功した側につきます。 例えば、デクレアラーが手役を宣言して、プレイに失敗した場合には、ディフェンダーがこの点数をもらえます。 手役の宣言は義務ではなく、可能な宣言より小さい枚数の宣言を行ってもかまいません。

手役を宣言した場合には、宣言した数の切札を順序よく並べてみんなに見せますが、プレイが始まる前に手札に戻します。 宣言する枚数より切札の数が多いときは、宣言する枚数だけの切札を見せます。どの切札を見せるかは、プレイヤーの自由です。

エクスキューズは、宣言する手役の枚数に本当の切札が1枚足りないときだけ切札とみなすことができます。 したがって、エクスキューズを見せたときは、見せた切札以外の切札を持っていないことが保証されます(保証しなければなりません)。

プレイ

プレイはトリックテイキングゲームの原則に従って行われます。プレイの順序は反時計回りです。

最初のリードは、ディーラーの右隣のプレイヤーが行います。 例外として、スラムの宣言のあったときには、スラムを宣言したプレイヤーがリードを行います。

フォローの義務は次のようになります。

切札以外がリードされた場合:

  1. リードされたスートを持っていれば、その中の1枚を出します。
  2. リードされたスートを持っていなければ、切札を出します。
  3. リードされたスートを持っていなくて、誰かが既に切札を出している場合には、今まで出ている最強の切札より強い切札を出します。 そういう切札を持っていなければ、他の切札を出します。
  4. リードされたスートも、切札も持っていなければ、どのカードでも自由に出します。

切札がリードされた場合:

  1. 今まで出ている最強の切札より強い切札を出します。そういう切札を持っていなければ、他の切札を出します。
  2. 切札を持っていなければ、どのカードでも自由に出します。

トリックに勝つのは、通常通り、切札がプレイされていれば最も強い切札を出したプレイヤー、切札がプレイされていなければリードされたスートで最も強いカードを出したプレイヤーです。

トリックに勝ったプレイヤーが次のリードを行います。

エクスキューズ

エクスキューズは、上記のフォローの規則をすべて無視して、いつでもプレイすることができます。

エクスキューズがリードされた場合には、次のプレイヤーはどのカードでも出すことができます。このカードのスートが、リードされたスートとして扱われます。

エクスキューズをプレイしたプレイヤーは、そのトリックには勝つことができません。 しかし、相手側が勝った場合でも、エクスキューズは自分側の取ったカードとして扱い、自分の側に置きます。 その代わり、自分の側がそれまでに取っていた0.5点のカードを相手側に渡さなければなりません。 自分の側にまだ渡すカードがなければ、0.5点のカードが手に入ったときに相手側に渡しまが、それまではエクスキューズを表向きにしておきます。 (最後まで渡すカードがなければ、自分側の合計点数を0.5点少なくし、相手側は合計点に0.5点を加えます。 エクスキューズがあればスラムされても4点を確保できることになります。)

ただし、最後のトリックでエクスキューズを使った場合には、エクスキューズは勝った側のものになります。 (その例外として、それまで全トリックを片方の側が勝っていて、勝っている側が最後のトリックでエクスキューズを出したときは、エクスキューズがトリックに勝ちます。)

プチ・オ・ブ(petit au bout)

最後のトリックで切札(プチ)がプレイされた場合は、トリックに勝った側が10点を得点します。 (ディフェンダーの1人が切札を出して他のディフェンダーが勝った場合も、ディフェンダー側の得点となります。)

最後のトリックでエクスキューズを出してスラムを達成した場合、最後より1つ前のトリックで切札を出して勝っていたら、 プチ・オ・ブに成功したことになります。

プチ・オ・ブの10点の得失点はゲームの種類により1倍、2倍、4倍、6倍されます。

得点計算

1つのディールが終わったときの得点計算は、次のように行われます。点数などはもう一度書いておきます。

1)デクレアラーの取ったウドレの数と点数を数えます。点数が下記の必要点数に達しているかどうかチェックします。

取ったウドレの数 必要点数
0枚 56点
1枚 51点
2枚 41点
3枚 36点

2)必要点数以上取った場合には、取った点数から必要点数を引き、それに25点を加えます。そうでない場合には、必要点数から取った点数を引き、25点を加えます。これはもちろん失点となります。

なお、スラムの宣言に失敗していた場合でも、この計算は変わりません。 スラムの成功/失敗と必要点数獲得の成功/失敗は無関係です。

3)プチ・オ・ブの成功/失敗があれば、これに10点を加えるか引くかします。(加えるか引くかの判断は、もちろん、成功した側に有利/失敗した側に不利となるように行います。)

4)それを、ゲームの種類により、次のように何倍かします。

プリーズ 1倍
ガルド 2倍
ガルド・サン 4倍
ガルド・コントル 6倍

5)手役があれば、これに手役の点数を加えます。(この点数はプレイの成功失敗や、誰が宣言したかに関わりなく加えます。)

10枚切札(simple poignee) 20点
13枚切札(double poignee) 30点
15枚切札(triple poignee) 40点

6)スラムがあれば、次のスラムボーナスを加えます。

宣言のないスラム 200点
宣言したスラム 400点

スラム宣言に失敗した場合は、マイナス200点となります。

つまり、ここまでの得点は次の式であらわされます。

  (25点 + 取った点数と必要点数との差 +/- プチ・オ・ブの点数) x ゲームの種類の倍数 + 手役の点数 +/- スラムの点数

7)デクレアラーがプレイに成功した場合には、この点数の3倍がデクレアラーの得点になり、各ディフェンダーは、この点数がマイナス点となります。

デクレアラーがプレイに失敗した場合には、この点数の3倍がデクレアラーのマイナス点になり、各ディフェンダーは、この点数が得点となります。

全プレイヤーの点数の合計は常に0になるはずです。

ゲームの終わり

ゲームがいつ終わるかについては、定まった規則はありません。プレイヤーの話し合いで決めてください。

精算を行う場合は、各プレイヤーの点数がそのまま支払ったり受け取ったりする額となります。


3人ゲーム

各プレイヤーに4枚ずつ24枚のカードを配り、タロンに6枚配ります。

手役は次のようになります。

13枚切札(simple poignée) 20点
15枚切札(double poignée) 30点
18枚切札(triple poignée) 40点

1点未満の端数がでることがありますが、デクレアラーが必要点数以上取った場合には切り上げ、取れなかった場合には切り下げます。

もちろん、0.5点でも必要点数より下ならプレイ失敗です。

プレイに成功した場合のデクレアラーの得点は、他の2人から貰うため、計算した点数の2倍になります。失敗した場合はこの逆です。

5人ゲーム

各プレイヤーに15枚のカードを配り、タロンに3枚配ります。

手役は次のようになります。

8枚切札(simple poignée) 20点
10枚切札(double poignée) 30点
13枚切札(triple poignée) 40点

1点未満の端数の扱いは、3人ゲームと同じです。

デクレアラーは、タロンのカードを開ける前に、キングの1枚のカードを指定して、それを持っているプレイヤーをパートナーに指定します。 デクレアラーがキングを全部持っている場合には、クイーンを指定することができます。 パートナーにされたプレイヤーは、指定されたカードをプレイするまでは、パートナーであることを言ってはいけません。

得点は、プレイに成功した場合は、デクレアラーは計算した点数の2倍をもらい、パートナーは計算した点数をもらいます。 ディフェンダーは計算した点数分がマイナスになります。 失敗した場合はこの逆です。

指定したカードがタロンか手札にある場合には、1人でプレイすることになります。 この場合、プレイに成功した場合のデクレアラーの得点は、他の4人から貰うため、計算した点数の4倍になります。 失敗した場合はこの逆です。

これとは別に、ディーラーがゲームに参加しないで、残りの4人で4人ゲームを行うというやりかたもあります。


用語

「ウドレ」は少し古い言い方で、今は普通「ブ(bout)」と呼ばれています。しかし、1文字の外来語は異様なのと、プチ・オ・ブのブとの混同をさけるため、「ウドレ」としました。ウドレと同じ「ブ」もプチ・オ・ブの「ブ」も同じ bout で、元来は「端(はし)」という意味ですが、使われかたが違います。

「タロン」は英語でもフランス語でも今でも普通に使われる用語で、フレンチタロットでも以前はそう呼ばれていましたが、 現在は普通「シエン(chien=犬)」と呼ばれているようです。 ここでは、他のタロットゲームの説明と共通になるように、タロンという言葉を使いました。

カード

現在のフレンチタロットでは、タロー・ヌーボー(tarot nouveau)と言われているデザインパターンのカードが主に使われます。 これは19世紀後半にドイツのメーカーが作ったのに始ります。

切札の各カードは上半分と下半分に違う絵が描かれていまが、同一のテーマに基づいた違うシーンの絵になります。 (Wikipediaでは田舎と都会のシーンだとしていますが、必ずしもそうとは言えないようです)。

各カードのテーマは次のようになるようです。

1.個人的愚かさ、2.幼年期、3.青年期、4.壮年期、5.老年期、6.朝、7.昼、8.夕方、9.夜、10.土/空気、11.水/火、 12.踊り、13.買い物、14.野外の楽しみ、15.美術、16.春、17.夏、18.秋、19.冬、20.ゲーム、21.集団的愚かさ

ディールの細かい規則

フランスタロット連盟のルールでは、最初のディーラーはカードをドローして一番低いカードを引いたプレイヤーがなります。

この時のカードのランクは、切札の方が他のスートのカードより高くなります。切札の中では21が最高で切札が最低です。他のスートのカードではが最高でが最低です。同じランクのカードは、スペードが最高で、以下ハート、ダイアモンド、クラブの順になります。エクスキューズのカードを引いたプレイヤーは引き直します。

連盟のルールでは、カードのシャッフルはディーラーの向かい側のプレイヤーが行い、左隣のプレイヤーがカットします。

シャッフル

英語版Wikipediaによれば、2回目以降のディールでは、前回のカードを集めるだけでほとんどシャッフルしないで、カットだけをして配ることが多いようです。 カードの偏りを大きくして、ビッド不成立での配り直しを少なくする目的があります。

よく使われるバリエーション

ミゼール(Misère)

切札の枚数とは別の系統の手役として、ミゼール(Misère)を採用することがあります。ミゼールには次の2種類があります。

  1. 絵札なし(misère detetes):絵札(ジャックカバロクイーンキング)が1枚もない手札のとき。
  2. 切札なし(misèred'atout):切札が手札のとき。

点数は10点でゲームの種類により何倍かはしません。 誰がデクレアラーかに関係なく宣言したプレイヤーが得点します。 つまり、宣言したプレイヤーが30点を得、その他のプレイヤーはマイナス10点となります。

フランスタロット連盟のルールには採用されていませんが、よく使われるルールです。

スモールスラム(le petit chelem)

3トリック以下しか相手側に取られない、つまり15トリック以上を取るというものです。 スラムと同様に宣言できます。

宣言があれば成功で300点、失敗でマイナス150点です。 宣言がなければ150点です。 スラムと同様の点数が付きます。

スラムとスモールスラムの両方を宣言することはできません。

スラムを宣言していたらスモールスラムの点数はつきません(宣言することもできません)。 宣言なしでスラムを達成していても、スラムの点数だけがつき、この点数はつきません。 スモールスラムを宣言してスラムを達成しても300点です。

1トリックしか相手側に取られてはいけないというルールもあります。

その他のバリエーション

プレイの向き

ディール、ビッド、プレイなどすべてを、時計回りに行うこともあります。

プチ・エンプラナブル(petit imprenable)

切札のを配られて、他の切札やエクスキューズを全く配られなかった場合でも、ディールを流さなく、プチ・エンプラナブルを宣言してもよいというルール。

この場合、切札ので負けてもも、エクスキューズと同様に、0.5点のカードを渡して切札のを保有することができます。

マルドン(maldonne)

配られたカードに切札が1枚もなかったとき、ディールを流すことができるというルール。 切札と絵札の合計が決められた枚数以下なら、流すことができるというルールもあります。

パロル(marole)

最初のビッドを行う代わりにパロル(ポーカーのチェックに相当)を宣言できるというルールです。 これを宣言すると、2巡目にビッドを行うことができます。

パロルの宣言のあとには、プリーズしか宣言できないというルールと、何でも宣言できるというルールがあります。

ピュス(pusse)

プリーズとガルトの間にピュスのビッドを可能にするルールです。 プレイの条件はプリーズやガルトと同じです。

倍数は、プリーズ:1倍、ピュス:2倍、ガルト:4倍、ガルト・サン:8倍、ガルト・コントル:16倍(または12倍)となります。

再ビッド

ビッドしたあとに(そのビッドがまだ有効な時に)他のプレイヤーがそれより強いビッドをしたら、 前にビッドしたプレイヤーが直ちにそれより強いビッドを行うことができるというルールもあります。 後にビッドしたプレイヤーがそれに対してもっと強いビッドをすることもできます。

ガルド・コントルの倍数

6倍でなく8倍や5倍にすることもあります。

手役の発表のタイミング

プレイが始まる前に手役を発表するというルールもあります。

得点

プリーズ:40点、ガルト:80点、ガルト・サン:160点、ガルト・コントル:320点として、ターゲットの点数より超過/不足の点数は10の位に丸め、何倍かにはしないというルールもあります。 このとき、スラムは1000点(失敗や宣言なしは500点)、スモールスラムは500点(失敗や宣言なしは250点)などになります。

得点の点数や数えかた(どの種の点数をゲームの種類により何倍かするかなど)はかなり色々なやりかたがあるようです。

得点の記録のやりかたとしては、上記で説明したゼロサム法の他に、スカートなどと同じように、 得点した側の各プレイヤーの欄に得点の額をそのまま記入し、得点しなかったプレイヤーには何も記入しないという方法もあります。 精算する場合には、各プレイヤーが他の各プレイヤーとの差額を精算します。 この場合、ゲームの終了を誰かの得点がある点数に達するまでとすることもあります。

ムシュ(mouches)

19世紀のころから、今でも行われているルールです。 カウンター(ポーカーチップなど)やお金をテーブル上に拠出しておき、プレイに成功したがそこから貰うやりかたです。 (テーブルに置かれる場所を一般的なゲーム用語でポットと呼びます)。

最も単純なやり方は、ポットが空のときはプレイ前に全員が(例えば)5点のチップをポットに拠出します。 空でないときはディーラーが5点をポットに入れます。 成功したプレイヤーは、ポットのチップをすべて貰います。 失敗したら、ポットと同額をポットに支払います(ポットは2倍になります)。

これでは、ポットが急激に大きくなりすぎることがあるので、次のようにポットを分割する方法が使われました。 この方法をムシュ(mouches=ハエ)と呼びます。 この方法では、ポットは2つ以上に分割されて存在することがあります。 古いやり方よりはゆっくりですが、ポットの額は大きくなる可能性があります。

  1. ポットが1つもないときはプレイ前にディーラーが(例えば)20点のチップをポットに入れ、他の全員が10点のチップをポットに入れて、1つのポットを作ります。
  2. ポットが存在するときはディーラーはプレイ前に(例えば)5点のチップを最後に作られたポットに入れます。
  3. プレイに成功したときに複数のポットがあるときは、最も多くのチップの入っているポットを獲得します。1つしかポットがなければ、それを獲得します。
  4. プレイに失敗したとき、ポットが2つでそれがまだ2倍になっていないときは、ポットと同額をそのポットに入れて、ポットの額を2倍にします。そうでないときは、最も多くのチップの入っているポットと同額を支払い、新しいポットを作ります。

なお、このようにポットでの収支はプレイの成功と失敗に関するものだけです。目標点数よりも多く/少なく取った分の点数や、手役、スラム、プチ・オ・ブの点数は、本文と同じように計算して、プレイヤー間でやり取りされます。

エクスキューズ

フランス語&英語Wikipediaでは、最後のトリックでエクスキューズを出した時は、トリックの勝敗に関係なく、 エクスキューズを出した側の相手側がエクスキューズを取るとなっていると書かれています。

スラムを宣言して、エクスキューズを持っていたら、最後のトリックまでエクスキューズを使うことはできないというルールもあります。

エクスキューズをプレイしたが、全トリックを相手側が取った(スラム)のときは、エクスキューズも相手に渡さなければならないというルールもあります。 しかし、最近のルールにはこの記述はなく、フランスタロット連盟のルールでは、スラムされたときエクスキューズの点数は4点となるという記述があったので、本文のようにしました。 (スラムした側は0.5点の端数が出るはずですが、これを切り上げると考えると、本文と同じになります)。

実はスラム以外の場合で0.5点のカードのカードが1枚も取れなかった場合のルールはどこにもなかったのですが、本文のようにすればつじつまが合うので、そう書いています。

コンベンション(シグナル)

ディフェンダー間での意思疎通のため、コンベンションが用いられることがあります。 ここで紹介するのはEmmanuel Jeannin-Naltet氏の1990年の本“Le Tarot moderne: la signalisation”を“A History of Games Played with Tarot Pack”で要約したものです。

  1. のディフェンダー側からの初めてのスートでのリード:キングかクイーンの所有を示す。
  2. 10のディフェンダー側からの初めてのスートでのリード:キングかクイーンを所有しないことを示す。
  3. 奇数の番号の切札のリード:少なくとも7枚の切札を持つか、6枚の切り札を持ちそのうち2枚が15以上であることを示す。 (切札のリードを続けてほしい)。
  4. 偶数の番号の切札のリード:特に重要性はないが、他のプレイヤーに切札リードの可否を尋ねることになる。
  5. キングのリード:そのプレイヤーが強い手札を持っていることを示す。
  6. カバロのリード:クイーンを持っていることを示す。 ディーラーの左隣のプレイヤーのカバロリードなら、強い手札を持っていることも示す。
  7. ジャックのリード:キングもクイーンも持っていないことを示すが、カバロを持っていることが多い。弱い手を示す。
  8. ピータリング(自分が勝っていない1つのスートで最初に高位のカードをプレイして次に低位のカードをプレイすること):ディフェンダーがリードしたスートで行った場合、ダブルトン(そのスートの手札が2枚)を示し、そのスートを続けることを要望。
  9. ピータリング:最初にデクレアラーがリードしたスートの場合、そのスートにキングかクイーンがあり5枚以上持っているか4枚とエクスキューズを持っていることを示し、他のディレンダーがラフ(切札を出す)できるだろうと知らせることになる。
  10. ピータリング:切札の場合、切札を持っていて取られそうなので、切札をリードしないことを要望。
  11. ディフェンダーが最初に切札でリードしたトリックでエクスキューズをプレイ:切札を持っていて取られそうなので、切札をリードしないことを要望。
  12. 普通はディフェンダーが最初にリードしたスートを返す(リードをするときそのスートをリードする)が(偶数の切り札リードを除く)、別のスートをリードしたときは強い手を示し、同じスートを続けてくれることを要望する(最初のリードがキングで強さを示していたときは特にそうである)。ただし、最初にリードされたスートが手札になくてそうすることもある。
  13. 奇数の切り札がリードされたときに切り札を続けないのは、切り札を持っていて取られそうだから続けないでほしいことを示す。

切り札を持っていることを示すには次の方法がある(上記と重複あり)。

  1. ディフェンダーからの最初の切り札リードのときにエクスキューズを出す。
  2. 切り札でピーピングする。
  3. ディフェンダーの奇数切り札リードのあと、切り札以外を返す。
  4. 最初の切札のトリックで不必要に強い切札を出す。

4の手段は、ディフェンダーの中で最後にプレイするときに特に有効。 最後でないときは、味方に無駄に強い切札を使わせる場合もある。 デクレアラーに強い切札を使わせる目的で強い切札を出す場合もあるので注意。

キングを最初にリードしてた強い手を示したのに、他のディフェンダーが別のスートをリードしたときは、そのプレイヤーが切り札を持ってて、 そのスートが切り札を守るのに最もよいスートかもしれない。

フランスタロット連盟の旧ルール

フランスタロット連盟は1973年に結成され、現在のルールの普及に大きく寄与しました。ただし、初期のころのルールは次のようなところが現在のルールと違っていました。

1.グランドスラム(grand chelem)

スラムの宣言はありません。

グランドスラムは通常のビッドですが、ガルデ・コントルより強いビッドになります。

普通のカードの点数による得点はなしで、全トリックを取ったら600ゲーム点。 失敗しても600ゲーム点になります。

このビッドをしないで全トリックを取ると300ゲーム点です。

2.手役

手役の宣言をしたプレイヤーは、誰がデクレアラーかやプレイの成否に関係なく、他の3人からゲーム点をもらいます。

次の手役もあります。各10ゲーム点です。

19世紀のルール

最初に書いたように17世紀後半ごろからは、 フランス東部のアルザス、フランシュ=コンテ、ブルゴーニュ、プロヴァンスなどでしかプレイされていませんでしたが、 そこで独自の進化を遂げました。

これらの地方の現代のゲームの祖先となるゲームは、19世紀後半から書籍としてルールが残されていますので、そのころのルールを紹介します。

基本ルール

19世紀後半のルールは、次のような点ではすでに現代と変わりません。

  1. 78枚のタロットカード全部を使う
  2. エクスキューズのカードは古くからのルール(負けるが取られない)で使用。リードされた時のルールも同じ。
  3. カードの点数の数え方も同じ
  4. 切札21、切札、エクスキューズの3枚はウドレと呼ばれる(今はboutsと呼ばれるが)
  5. ウドレの獲得数により目標点数が56,51,41,36と変わる。
  6. 6枚のタロン(今はchienと呼ばれるが)が存在する。デクレアラーが手札と交換できることがある。
  7. リードされたスートがないとき、切札を出さなけばならない。
  8. 切札をプレイするとき、すでにプレイされている切札より強い切り札を出す義務がある。
  9. 手札の切札の数が多いいとき宣言して見せると役になり、プレイで勝った側が得点する。
  10. 切札はpaguetと呼ばれ(今はpetitと呼ばれるが)、最後のトリックにこれで勝つ(あるいはこれを取る)とボーナス点がある。

得点方法は前述のムシュが使われました。当時はベット(bêtes=動物)と呼ばれていました。

タロー・ダペル(tarot d’appel)

1950年以前から1939年頃までプレイされていた4人ゲームのルールです。

前述の基本ルールとムシュが採用されますが、以下の特徴があります。

  1. イタリアのオリジナルの絵柄・スートを使用し。カップとコインの数札の順序は逆順になる。
  2. ビッドはアペル(appel)、アシャ(achat)とソロ(solo)の3種類
  3. アペルではデクレアラーカードを指定してそのカードを持っているプレイヤーをパートナーにする。
  4. アシャでは、デクレアラーは切札やエクスキューズ以外のカードを指定し、 そのカードの持ち主は定められたゲーム点をもらうかわりに、そのカードをデクレアラーに渡し、 デクレアラーから不要なカードをもらわなければならない。
  5. どのビッドでもデクレアラーはタロンと交換できる。
  6. ビッドはスカートと同様にビッドの順が早いプレイヤーに有利な勝ち抜き戦で行われる。 あるいは、ビッドが何巡も行われ、ビッドの早いプレイヤーはホールド(最強のビッドと同じビッドをする)ができる。
  7. アペルで成功したときは、デクレアラーとパートナーはポットを半分ずつ取得し、 それぞれが目標点数より多い額のゲーム点をディフェンダーの1人からもらう。 アペルで失敗したときは、デクレアラーだけがポットへの支払いを行い、 それぞれが目標点数より少ない額のゲーム点をディフェンダーの1人に支払う。
  8. アシャやソロのときは、目標点数より多い/少ない額のゲーム点をディフェンダー3人からもらう/支払うが、 失敗したときは、アシャのときは10ゲーム点ソロの時は20ゲーム点を余分に支払う。
  9. プチ・オ・ブ(当時の呼び方はcompter le paguet en detansなど)のときは、成功/失敗により、目標点数が10点増えたり減ったりする。 なお、パートナーが出した切札を取ったときは、成功でも失敗でもない。
  10. スラムの達成によるデクレアラー側とディフェンダー側の収支がある。スラムの宣言もある。

3人用ゲーム

フランシュ=コンテで1850年以前から1900年頃までプレイされていた3人ゲームのルールです。

前述の基本ルールとムシュが採用されますが、以下の特徴があります。

  1. イタリアのオリジナルの絵柄・スートを使用し。カップとコインの数札の順序は逆順になる。
  2. デクレアラーはパートナーを持たない。
  3. ビッドはプリーズ(prise)、サン・アシャ(sans achat)とサン・エカール(sans écart)とスラム(chelem)の4種類。
  4. プリーズではアシュ(前述と同じ)ができる。
  5. プリーズとサン・アシュではデクレアラーはタロンとの交換ができる。 サン・エカルトでは交換できないが、プレイ後デクレアラーのものになる。
  6. スラムでは全トリックを取らないとプレイ失敗になる。
  7. ビッドはスカートと同様にビッドの順が早いプレイヤーに有利な勝ち抜き戦で行われる。
  8. プチ・オ・ブ(paguet en dedans)のときは、成功/失敗により、目標点数が10点増えたり減ったりする。
  9. スラムのビッドの成否やビッドなしのスラム達成に対するデクレアラー側とディフェンダーの収支がある。

作戦

筆者はEryod Soft社製のFrench Tarotのスマホゲームを時々プレイしています。 これにはアドバイスをしてくれる機能があるので、どのようにアドバイスされることが多いかを少し書いておきます。 (このソフトがどの程度の強さなのかは分かりませんが、初心者と比べれば、かなり強いように思われます。)

  1. デクレアラーの交換時の捨て札は、1つのスートを全部捨ててボイドにし、最も長いスートは捨てないことが多い。 絵札は残すことも点数温存のため捨て札することもある。
  2. デクレアラーがリードするときは、最も長いスートをリードすることが多い。相手に切札を使わせるためである。
  3. デクレアラーから切札をリードして切札狩りをすることは少ない(切札が10枚以上あるときなどは例外)。 逆に、ディフェンダー側からの切札リードは時々ある。
  4. ただし、デクレアラーが切札を持っていないときは、切札の中上位のカードをリードして相手に強いカードを出させた後、切札を取りに行くことがある。
  5. ディフェンダーはデクレアラーが切札を出すようなカードをあえてリードすることが多い。 つまり、ディフェンダーはデクレアラーに切札をできるだけ使わせようとし、デクレアラーはできるだけ自分の切札を使わないでディフェンダーに切札を使わせようとする。
  6. とは言っても、結局は点数なので、点数を取ること・取られないことも重要である。
  7. スカートなどでは味方が取るトリックに対し、スートで最も強くなるカードでも出して、点数を味方に取らせたほうが良いことも多いが、 フレンチ・タロットではそうでないことも多い。 (スカートより1つのスートのカードが多いので、デクレアラーに切札を出される可能性が少なくなるため。)

私が1985年に書いたルールからの変更点

  1. 最後のトリックまで全トリックを取っていたら、エクスキューズで取れるという記述を入れていなかったので、入れました。
  2. エクスキューズと交換する0.5点のカードが最後までない場合の説明がなかったので入れました。
  3. 最後のトリックで切札を出して自分の側のプレイヤーが勝った時、相手側にプチ・オ・ブの得点がつくと書きましたが、単純に勝った側にプチ・オ・ブの得点がつくと訂正しました。(修正前の記述のようなルールもまれにあったようですが)。
  4. 手役の宣言のタイミングを最初のプレイの直前としました。
  5. 切札1を配られて他の切札やエクスキューズがないときに流すのは任意のように書いていましたが、義務であるとしました(フランスタロット協会のルールに従いました)。

2023年1月6日、なかよし村で何回目かのプレイをしました。

私のプレイしたところでは、あまり接戦にはならず全員が初心者なので大雑把なプレイになりましたが、とても楽しめました。

今回は、別府さいさんの作ったカードと、フランスの子供向けカードを使用しました。 子供向けカードは切札21が柔道の絵というような意味不明のカードでした。