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 マリアーシュ(Mariáš)

2004/7/3 赤桐裕二

 チョコとスロバキアで最もポピュラーなゲームだそうです。ハンガリーのウルティというゲームと似ていますが、ビッドなどがもう少し簡単です(もっと複雑な Licitovany Mari というゲームもあるようですが)。ウルティと同様に最後のトリックを一番弱い切札で勝つと得点になります。

 ルールは http://www.pagat.com/によりました。


人数

 3人。4人ゲームや2人ゲームもあります。

カード

 各スートを除いた32枚のカードを使います。強さは強いものから順に10。ただし、ノートランプゲームの時には、10の順になります。

 現地ではドイツパックと同種のカードを使用しています。スートはチェルベネー(erven=赤、ハート)、クレ(kule=ボール koule の転訛か、ベル)、ジャルディ(aludy=どんぐり)、ゼレネー(zelen=緑、葉っぱ)です。絵札はキングの代わりにクラール(krl、王)、クイーンの代わりにスブルシェク(svrek / filek、オーバー、上士官)、ジャックの代わりにスポデク(spodek、ウンター、下士官)になります。

点数

 10のカードはトリックで取ると1枚10点です。また、最後のトリックを取ると10点になります。

 また、同じスートのの両方を手札に持っていて、そのうちのを最初にプレイして宣言すれば、点数を得ることができます。これをマリアーシュと呼びます。切札のマリアーシュは40点、それ以外のマリアーシュは20点です。

 これらの点数はノートランプのゲームでは無意味になります。

目的

 各ディールにおいて、最も高いビッドを行ったプレイヤーがソロイスト(デクレアラー)になり、他の2人と戦います。

 ソロイスト以外の2人は協力します。

ディール

 最初のディーラー任意の方法で決めます。ディーラーは1ディールごとに左隣に移ります。

 カードは通常シャッフルしません。前回プレイしたカードを集めてカットしてもらってから配るだけです。伝統的には、ゲームを始めるときと、夜中の12時と、それ以降の2時間おきにだけシャッフルを行います。

 ディーラーの左隣のプレイヤーをフォアハンド(forhont)と呼びます。

 ディーラーは最初にフォアハンドに7枚のカードをひとまとめにして配り、他の各プレイヤーに5枚のカードを1まとめにして配ります。配る順序は時計回りです。その後、5枚のカードをひとまとめにして各プレイヤーに配ります。

切札決め

 フォアハンドは、後で配られた5枚のカードは見ないで、最初に配られた7枚のカードだけを見て、その中から1枚を裏向きにテーブル中央に出します。このカードのスートが切札になります。

 こうする代わりに、フォアハンドは後で配られた5枚のカードから1枚をテーブルに出して、そのスートを切札にすることもできます。ただし、この場合にもフォアハンドはこの5枚のカードを見てはいけません。何が切札になるかはフォアハンドにもわからないことになります。

 フォアハンドは、切札のカードをテーブル中央に出した後に、自分のカードを全部見ることができます。後の5枚から切札になるカードを出した場合、そのカードも見ることができます。(他のプレイヤーにはまだ見せません。もちろん見た後で手札と交換することはできません。)

コントラクト

 プレイヤーは以下のコントラクトのいずれかをビッドすることになります。下位のコントラクトから順に紹介します。

 コントラクトをビッドしてプレイに成功した場合は、決められたゲーム点を他の2人それぞれからもらいます。失敗した場合には他の2人それぞれにゲーム点を支払います。

[スート]

 ソロイストは、カードの点数+最後にトリックを取る点数(10点)+マリアーシュの点数の合計で、他の2人の点数の合計よりも多い点数を得ることを目的とします。切札決めで出したカードのスートが切札になります。ゲーム点は1点です。

 後で述べるようなボーナス点を得る可能性もあります。

[ベトル(Betl)]

 ノートランプでプレイして、全トリックに負ける事を目的とします。ゲーム点は5点です。

[デュルヒ(Durch)]

 ノートランプでプレイして、全トリックに勝つことを目的とします。ゲーム点は10点です。

[オープン・ベトル]

 ノートランプでプレイして、全トリックに負ける事を目的とします。ゲーム点は10点です。

 最初のトリックを負けたら、ソロイストは手札を公開します。このとき、すべてのスートについて、ソロイストのすべてのカードが他のプレイヤーの最も弱いカードより弱ければコントラクトは成功になります(あるいはソロイストだけがそのスートのカードを持っていてもかまいません)。そうでなければ、たとえプレイして全トリック負けることが確実でも、失敗となります。

[オープン・デュルヒ]

 ノートランプでプレイして、全トリックに勝つ事を目的とします。ゲーム点は20点です。

 最初のトリックに勝ったら、ソロイストは手札を公開します。このとき、すべてのスートについて、ソロイストのすべてのカードが他のプレイヤーの最も強いカードより強ければコントラクトは成功になります(あるいはソロイストだけがそのスートのカードを持っていてもかまいません)。そうでなければ、たとえプレイして全トリック勝つことが確実でも、失敗となります。

ビッド

 切札決めが終わった後、フォアハンドがコントラクトの1つをビッドします。パスをすることはできません。

 スートをビッドした場合、フォアハンドは切札決めで出したカードを表にして見せたあとそれを手札に入れ、手札から2枚のカードを捨て札します。捨て札するカードが切札かA10の場合にはそれを見せますが、それ以外の場合は裏向きに捨てます。捨て札したカードの点数は相手方のものになります。

 スート以外をビッドした場合も同じようにしますが、切札決めで出したカードは公開しないで手札に入れます。また、何を捨て札しても、他のプレイヤーに見る必要はありません。

 以上のことは、フォアハンドのビッドの後、他のプレイヤーがビッドする前に行います。

 次にフォアハンドは他のプレイヤーにもっと上位のビッドをするかどうか聞きます(まず自分の左隣のプレイヤー、次のその左隣つまりディーラー)。

 プレイヤーは「グッド」または「バッド」と答えます。グッドはフォアハンドのビッドを承認すると言うことです。2人がグッドを宣言するとビッド終了になります。

 バッドを宣言したプレイヤーがいた場合、そのプレイヤーはすぐにフォアハンドの捨て札2枚を取って手札に入れ、裏向きに捨て札を2枚したあと、高位のコントラクトをビッドします。

 そのプレイヤーはフォアハンドがしたように他のプレイヤーにもっと上位のビッドをするかどうか聞きます(左隣が先)。

 このようにして、ビッドのあと残りのプレイヤー2人がグッドを宣言するまでビッドを続けます。

 なお、バッドのプレイヤーは必ず捨て札2枚を交換することができます。

ボーナス

 スートのコントラクトでは次のボーナスがつくことがあります。ボーナスはコントラクトの成功・失敗とは無関係につきます。ソロイストもその相手方もどちらもボーナスをもらうことができます。ソロイストの相手側は同じチームなので、同じボーナス点をもらったり払ったりします。

 ソロイストがボーナスを得た場合には、そのゲーム点を他の2人それぞれからもらいます。他の2人がボーナスを得た場合には、ソロイストからそれぞれゲーム点をもらいます。

 逆に罰点になることがありますが、ソロイストが罰点を払う場合には、そのゲーム点を他の2人それぞれに払います。他の2人が罰点を払う場合にはそれぞれがソロイストのそのゲーム点を支払います。

 また、ボーナスを得ることを予め宣言しておいて成功すると、さらに高得点になります。ソロイストだけでなくその相手方2人も宣言を行うことができます。

セドマ(7)

 最後のトリックに切札のを出して勝った場合、1ゲーム点のボーナス点がもらえます。

 前もって宣言しておいて成功した場合にはボーナス点は2ゲーム点になりますが、最後のトリックまでに切札を使ってしまった場合には罰点(2ゲーム点)になります。

キルド・セドマ

 最後のトリックに切札のを出して負けた場合には1ゲーム点の罰点がつきます。ソロイスト以外の2人のチームで、1人が切札のを出して、もう1人がもっと強い切札でそれに勝った場合も、キルド・セドマになります。

 前もってセドマを宣言しておいてキルド・セドマになった場合は、3ゲーム点の罰点になります。

スト(100)

 100点以上の点数を得ると2ゲーム点のボーナス点がもらえます。マリアーシュがないと100点には達しませんが、ストになるかどうかを判定するためには、マリアーシュの点数は1つのマリアーシュしか認められません。

 100点より10点越えるごとに2ゲーム点が追加のボーナス点としてもらえます。このときの点数としては、2つ以上マリアーシュを宣言している場合には、全部のマリアーシュを数えることができます。

 前もって宣言しておいて成功した場合には4ゲーム点のボーナス点になりますが、100点にならない場合には罰点になります(4ゲーム点)。宣言があったときでも、100点から10点を越えるごとにもらえるボーナス点は2ゲーム点で変わりません。

フレック(ダブル)

 ソロイスト以外のプレイヤーは、コントラクトが失敗すると考えたらフレック(flek)を宣言してコントラクトの得失点を2倍にすることができます。フレックを宣言されたらソロイストはレ(re)を宣言して更に得失点を2倍にすることができます。

 これは、どちらかがやめるまで何度でも行うことができます。

 ボーナスの宣言があった場合も、その点数に対して、フレックとレを行うことができます。

ボーナス宣言とフレックの宣言方法

スートのコントラクトの場合

ビッドが終了したあとでソロイスト(フォアハンド)がボーナス宣言を行い、そのあと時計回りの順に宣言を行っていきます。

 ソロイスト以外のプレイヤーの最初の番では、自分の側のボーナス宣言およびソロイストのコントラクトやボーナス宣言に対するフレックを宣言できます。

 2順目以降では、相手のフレックに対するレや、レに対するフレックを行うことができます。フレックやレが続かなくなれば宣言終了です。

スート以外のノートランプのコントラクトの場合

この場合には、ビッドの途中でグッドやバッドの代わりにフレックを宣言します。

これに対してコントラクトをビッドしたプレイヤーはレを宣言できますが、他のコントラクトに変えることはできません。レに対してフレックを宣言したプレイヤーやもう1人のプレイヤーがさらにフレックを宣言することもでき、どちらかがやめるまでいつまでもフレックとレを続けることができます。

途中でバッドのビッドがあるとそれまでのフレックなどは無効になります。

プレイ

 プレイは時計回りに行います。トリックテイキングゲームです。

 ソロイストが最初のリードを行い、以降は各トリックの勝者がリードを行います。

 リードされると他のプレイヤーは、リードされたスートがあれば必ずそのスートのカードを出さなければなりません。リードされたスートがない場合に切札があれば、必ず切札を出さなければなりません。どちらの場合でも、可能ならば、場に出ている最強のカードより強いカードを出さなければなりません。(切札以外のリードで、2番目のプレイヤーが切札を出している場合で、3番目のプレイヤーがリードされたスートを持っている場合には、リードされたカードより強いカードを出す必要はありません)。リードされたカードも切札もなければ、何を出してもかまいません。

 ノートランプのコントラクトの場合にも、切札を出す義務以外は同じです。つまり、リードされたスートがあれば必ずそのスートのカードを出さなければなりませんし、可能ならば、場に出ている最強のカードより強いカードを出さなければなりません。

 セドマのボーナス宣言の時には、ソロイストは最後のトリックまで切札のをプレイしてはなりません。ただし、上記のフォローの義務に従って出さねばならない時を除きます。

 マリアーシュの場合にはそのKQのうちQを先にプレイしなければなりません。Qをプレイするときにマリアーシュを宣言します。(Qをリードするつまりトリックの最初に出す必要はありません。)

得点

 プレイが終わると、コントラクトの成功・失敗により前記のようにゲーム点をやりとりします。

 また、これとは別に、ボーナスの発生やボーナス宣言の成功・失敗によってもゲーム点をやり取りします。

 フレックやレがあった場合には、ゲーム点が2倍、4倍などになります。

 ゲーム点をまとめると次のようになります。

  ゲーム点

コントラクトによるもの

スート 1
ベトル 5
デュルヒ 10
オープン・ベトル 10
オープン・デュルヒ 20

宣言なしのボーナス点

セドマ 1
キルド・セドマ 2
スト 2
ストで100点を越える10点につき 各2

ボーナス宣言があったとき

セドマ 2
キルド・セドマ 3
スト 4
ストで100点を越える10点につき 各2

 セドマの宣言をして、最後のトリックまでに切札の7を出してしまったときにはセドマ宣言の失敗として2点になりますが、最後のトリックに切札7を出して負けた場合にはキルド・セドマとして3点になります。

プレイされない場合

 次の2つの場合にはプレイが最後まで行われません。

1.スートのコントラクトでボーナス宣言やフレックがない場合、コントラクトは成功とみなされソロイストは1ゲーム点ずつもらいます。ハートが切札の場合は2ゲーム点ずつもらいます。

2.スートのコントラクトで、ソロイストがセドマを宣言していて、ゲームに対するフレックが宣言されていて、それ以外の宣言がない場合、ソロイストはコントラクトには失敗するがセドマには成功するとみなされます。スート失敗のゲーム点とセドマ成功のゲーム点は等しいので、支払いは行われません。


注:

 マリアージュはmari または hlka ですが, どちらもゲーム用語以外のチェコ語の意味はないようです。


 2004/7/3 なかよし村で4組12人でプレイしました。シャッフルしないと言う効果は絶大です。とてもできそうにないと思われたオープンベトルやオープンデュルヒも成功例がいくつもできました。ベトルなどはかなり普通にビッドされます。

 こういう大きなコントラクトも良かったですが、スートコントラクトでセドマやストを宣言したものもl興味深くプレイできました。

 何と評価していいのか分からないゲームですが、面白いことは確かです。


4人ゲーム

 まず、ディーラーは4枚ずつまとめてカードを全プレイヤーに配ります。

 フォアハンドはこの4枚の中から切札カードを決め、テーブル中央に置きます。そのあとカードのランクを宣言します(Aとか10とかKとかです)。スートのコントラクトをプレイすることになった場合には、切札のスートでそのランクのカードを持っているプレイヤーがソロイストのパートナー(同じチーム)になります。

 そのあと、ディーラーは4枚ずつまとめてカードを全プレイヤーに配ります。

 ビッドのやりかたは3人ゲームと同じですが、捨て札や、捨て札との交換はありません。

 スートでプレイするときには2人対2人の戦いになり、それ以外の場合はソロイスト対3人の戦いになります。

 スートの場合には、ソロイストチームの合計点数が他の2人の合計点数より高ければコントラクト成功です。

 コントラクトおよびボーナスのゲーム点は、2人対2人のときにはそれぞれが相手の1人に対して支払うことになります。ソロイスト対3人の場合は、ソロイストが他の3人それぞれからゲーム点をもらうか、他の3人それぞれにゲーム点を支払うことになります。

 それ以外のルールは3人ゲームと同じです。