1996/9/10 赤桐
ムスはスペインでポピュラーなゲームです。バスク地方で生まれたと言われています。パートナー戦で行うポーカーのようなゲームです。お金を賭けなくても十分に楽しめます。
John MaLeod氏のWWW(http://www.pagat.com/)からの情報です。
4人。向かい合った2人がパートナーになります。
40枚のスパニッシュパックのカードを使います。剣、棍棒、聖杯、貨幣の4つのスートからなり、各スートは、レイ(R)、カバリョ(C)、ソータ(S)、7、6、5、4、3、2、Aからなります。(スパニッシュパックは8と9を含む48枚のこともありますが、多くのゲームではこのように40枚しかカードを使用しません。)
普通のカードを使う場合は、レイ=キング、カバリョ=クイーン、ソータ=ジャックとして、8、9、10のカードを取り除けばよいでしょう。
ムスのゲームでは、スートは意味がありません。また、3のカードはレイ(キング)と同一視されて最も強いカードとなります。2のカードはAと同一視されて最も弱いカードになります。
カードの順位は次の通りです:
レイ(または3)、カバリョ、ソータ、7、6、5、4、A(または2)
各チームは先に40点取ることを目指します。
1つのハンドで、次の4つのカテゴリーで点数を得ます。グランデ(ハイ)、チカ(ロー)、パレス(ペア)、ユエゴ(ゲーム)です。
各カテゴリーについて順にビッドを行ってから、ショーダウンを行います。
ディーラーがシャッフルし、ディーラーの左隣がカットしたあと、ディーラーは、自分の右隣から始めて、1枚ずつ4枚のカードを反時計回りに配ります。
ディーラーの右隣のプライヤーは各ラウンドで、最初の発言権があります。このプレイヤーをマノと呼びます。
マノから始めて、反時計回りに、ムスを行うかどうかを発言していきます。だれか1人でも行わないと宣言すると、誰もムスを行う事はできません。
ムスとはカードの交換です。まず、何枚でも捨て札を行って、そのあと配り残りのカードからディーラーに補充してもらいます。(交換を行わないことは不可)。
ムスを行った後にも、さらにムスを行うかどうか発言を行う機会があります。このようにして全員がムスを行いたいという限り、何回でもムスをおこなうことができます。
ムスを行っているときにカードがなくなったときは、残りのプレイヤーが1人だけのときには、そのプレイヤーの捨て札以外の捨て札をシャッフルして配ります。残りのプレイヤーが2人以上いる場合は、捨て札全部をシャッフルして配ります。
得点可能な4つのカテゴリーは次の通りです。
最も強いカードを持っているプレイヤーが勝ちます。強いカードが同じならば、それ以外のカードで、次に強いカードを比べるというようにします。(ポーカーの比べかたと同じです)
つまり、手札を強い順に並べて、強いものから順に比べていくわけです。
たとえば、RR34はRCCCに勝ちます。
最も弱いカードを持っているプレイヤーが勝ちます。弱いカードが同じならば、それ以外のカードで、次に弱いカードを比べるというようにします。(ポーカーのローボールとは違います。)
つまり、手札を弱い順に並べて、弱いものから順に比べていくわけです。
たとえば、A45CはA556に勝ちます。
パレスは2枚以上の同じランクのカードをを比べます。(Rと3、Aと2は同じランクになります。)
次の3つの役があります(弱いものから順に)。
パル・シンプレ(ペア)
2枚が同じランクで、残りの2枚が異なるランクのときです。ペアのカードのランクの高い方が強いハンドになります。ペアのカードのランクが同じ場合には、残りの2枚のカードは無関係で、同じ強さのハンドになります。
メディアス(スリーカード)
3枚が同じランクの場合です。同じメディアスのハンドでは、3枚セットのカードのランクが高い方が、強いハンドとなります。残りの1枚はハンドの強弱には無関係です。
ドゥプレス(ツーペア)
同じランクのペアが2枚あるハンドです。4枚全部が同じランクの場合もこれになります(2つのペアと考えます)。ドゥプレスどうしを比べるときには、強い方のペアが強い方が強いハンドになり、それも同じならば、低い方のペアを比べます。
ユエゴのためには、各カードは次の点数をもちます。
Rまたは3、C、S | 10点 |
7 | 7点 |
6 | 6点 |
5 | 5点 |
4 | 4点 |
Aまたは2 | 1点 |
手札の得点を合計して、31点ちょうどになるのが最高のユエゴのハンドです。32、40、37、36、35、34、33がそれに続きます。(39と38はありえません。)
30以下の場合はユエゴのハンドではないということになります。
だれもユエゴのハンドを持っていないとき、「プント」のハンドを競います。プントとは30点以下のハンドですが、30点が最高で、4点が最低のハンドになります。つまり点数が低くなるほど弱くなります。
なお、すべてのカテゴリーにおいて、同じ強さのハンドがある場合には、マノが1番強いハンドを持っているとみなされます。以下、座り順で反時計回りに弱くなっていきます。
ビッドは、グランデ、チカ、パレス、ユエゴの順に行います。
マノから初めて、反時計回りにビッドを行います。
まず、パス(パソ)またはベット(エンビド)のビッドを行います。
全員がパスの場合には、グランデのビッドは終了します。(グランデの得点はどのチームにもつきません。)
ベットとは、グランデに勝った方のチームに何点かを与えようという提案です。最低2点であり、特に指定しなければこの点数になります。それ以上の点数にしたいときには、例えば、「5点のベット」というように宣言します。
ベットに対して、相手側のチームは次の宣言を行うことができます。
パートナーの意見が分かれた場合には、積極的なほうの宣言が有効になります。(つまり、コールよりレイズの方、フォールドよりコールのほうです。)ただし、パートナーの片方が「絶対なになににする(我々はなになにする)」と言えば、それが通ります。
レイズがあった場合には、相手チームはやはり上記の3種類の宣言の1つを行います。この場合、フォールしたときには、そのチームが最後にベットまたはレイズした点数を相手に与えることになります。
こうして、どちがかがフォールドするかコールするまで、宣言は続きます。
フォールドの場合は、勝ったチームは直ちに得点を得ます。
チカのベットもグランデと全く同じように行います。
まず最初に、各プレイヤーは、少なくとも1つのペアを持っているかどうかを正直にイエスかノーかで宣言します。
両方のチームの少なくとも1人ずつがペア以上を持っていた場合には、グランデと同じようにビッドを行います。
片方のチームだけがペア以上を持っている場合は、ビッドは行われません。そのチームが後述する点数を得ます。
全員がペアを持っていない場合には、ビッドは行われず、もちろん得点もありません。
まず最初に、各プレイヤーは、ユエゴのハンドを持っているかどうか(31点以上かどうか)を正直にイエスかノーかで宣言します。
両方のチームの少なくとも1人ずつがユエゴのハンドを持っていた場合には、グランデと同じようにビッドを行います。
片方のチームだけがユエゴのハンドを持っている場合は、ビッドは行われません。そのチームが後述する点数を得ます。
全員がユエゴのハンドを持っていない場合には、プントの点数を競います。グランデと同じようにビッドを行います。
ビッドの時にはいつでも、通常の宣言の代わりに、「オルダゴ」の宣言をすることができます。
オルダゴの宣言に対して、相手側はフォールドかコールかを選択できます。
フォールドの時には通常のフォールドの宣言と同じになり、そのカテゴリーの点数を失います。
コールを選択した場合には、直ちにショーダウンを行います。そのビッドのカテゴリーで勝ったチームが直ちにゲームに勝ったことになります。(40点に達したのと同じになります。)
4つのカテゴリーのビッドが終ると、グランデ、チカ、パレス、ユエゴの順にショーダウンを行い得点をつけます。
コールの場合には最後にベットまたはレイズされた点数が、最も強いハンドを持っているプレイヤーのチームにつきます。
フォールドの場合には、降りたチームが最後にベットまたはレイズした点数がすでに相手側についているはずです。最初のベットに対して降りた場合は1点が相手側についています。
ビッドがあった場合には、グランデやチカと同じように得点します。
それに加えて、勝ったチームは、パル・シンプレのハンドは1点、メディアスのハンドは2点、ドゥプレスのハンドには3点の得点が与えられます。勝ったチームの両方のプレイヤーがパル・シンプレ以上のハンドであった場合は、両方についてこの得点を得ることができます。
ビッドがなかった場合には、ペア以上のハンドを持っているチームは、上記の追加得点の分と同じだけの得点のみを得ることができます。
パレスと同様の得点方法になります。
勝ったチームの追加得点や、片方だけがユエゴのハンドを持っていたときの得点は次の通りです。(勝ったチームの両方のプレイヤーについて、この得点を得ることができます。)
31点のユエゴ | 2点 |
それ以外のユエゴ | 1点 |
プントのときの得点は、ビッドによる点数のみになります。
ビッドやショーダウンの途中でも、どちらかのチームが40点に達すると、そのチームの勝利になります。
あるチームの得点が35点に達すると、そのチームは「ディエントロ」と言って、この事を相手チームに伝えなければなりません。
伝統的には、得点は次のように数えます。
小石(やそのような小さな物)を22個使用します。テーブルの上に皿のようなものを置き、最初はその中に小石を全部入れておきます。
各チームは、どちらのプレイヤーが5点を受け持ち、どちらが1点を受け持つかを決めておきます。
得点が入ると、皿から小石をとって、プレイヤーの前に置きます。5点を受けもつプレイヤーの前に置かれた小石は1つにつき5点を表わし、1点を受け持つプレイヤーの前に置かれた小石は1つにつき1点を表わします。
1点のプレイヤーの前には4個以上置かないようにして、5点の方に繰り上げます。(したがって、皿に小石を返すこともあります。)
得点をいれるときには必ず、相手チームに得点の理由と点数を宣言しなければなりません。
ディエントロの宣言のとき(35点以上になった場合)には、5点の方の小石はすべて皿に返しておきます。
体を動きによるシグナルを使って、パートナーと情報を交換することが可能です。相手チームに悟られないように体を動かそうとしてもかまいませんが、シグナルによる情報は正しいものでなければなりません。
ただし、使ってよいのは決められたシグナルだけです。使ってよいシグナルの種類は、プレイするグループによって異なります。以下に上げるのは、代表的なものです:
バスク地方のいくつかの地域では、3や2をレイやAと同一視しないで、本来のランクで用います。従って、ランクは強い順にR、C、S、7、6、5、4、3、2、Aとなります。
この場合、ユエゴのための点数は、3は3点、2は2点となります。
また、ゲームの最初のディールではシグナルを使うことが禁止されるというルールも、多くの場所で行われているようです。