1995/2/8 赤桐
ピケットは、16世紀の始めごろから現在まで生きのびている非常に歴史のあるゲームです。フランスのゲームといわれてきましたが、英国でも人気があります。
勝つためには技術の必要なゲームです。現在のカードゲームの愛好家の間でも、2人ゲームのベストワンであると考えている人がたくさんいます。
なお、英語圏においても「ピケ」とフランス風に発音されることも多いのですが、私の好みで「ピケット」と表示しておきます。
2人
各スートのA、K、Q、J、10、9、8、7の32枚のカードを使います。
(強い)A、K、Q、J、10、9、8、7(弱い)の順です。
通常1ゲームは6ディール行います。同点の時は2ディールずつ延長します。
なお、ディール中の得点はメモしておき、1ディールが終わったら、そのディールの合計得点をスコアシートに書き入れるようにすればよいでしょう。
カットして高位の札を引いた人が、最初のディーラーを誰にするかを決定できます。1ディール毎にディーラーは交替します。
このゲームではディーラーをヤンガーと呼び、ディーラーでないほうをエルダーと呼びます。
カードは、エルダーから先に、まとめて2枚ずつ6回配り、各プレイヤーの手札が12枚になるようにします。
残った8枚は裏向けてテーブル中央に置きます。これをタロンと呼びます。
配られた手札にK、Q、Jが1枚もないときカルトブランシュ(Carte Blanche)として10点の得点が得られます。
カルトブランシュを宣言する人は、カードの交換を行なう前に、手札を1枚ずつ、すばやくテーブルの上に表向きに数え下ろして、相手に見せます。そのあと、再びカードは相手に見えないように手札に戻します。
ヤンガーがカルテブランシュを宣言するのは、エルダーが交換を行なってからでもかまいません。
まずエルダーが、何枚かのカードを手札から裏向きに捨て札してから、同じ枚数のカードをタロンから引いてきます。少なくとも1枚はこうして交換しなければなりません。最高で5枚まで交換できます。
そのあと、ヤンガーも同じようにタロンと手札の交換をします。ヤンガーは1枚も交換しなくてもかまいません。交換できる最高の枚数は残っているタロン全部です。
ヤンガーが交換したあとにタロンにカードが残っていたら、ヤンガーは、残りのカードを表向きにして全員に公開することができますが、しなくてもかまいません。
交換の時に自分が捨てた札は、あとで見てもかまいません。
交換の後、手札の役を、ポイント、シークエンス、セットの順で宣言します。
なお、宣言は実際よりも低く申告してもかまいません。これをシンクと言います。
各人の一番長いスートの長さを競います。同じ長さならば、A=11、K、Q、J=10、それ以外=数字のまま、として合計の多いほうが勝ちます。勝った方はそのスートのカード1枚につき1点を得点できます。点数も同じならばどちらも得点しません。
ポイントの宣言はつぎのように行ないます。
1)エルダーが長いスートを何枚持っているかを言います。例えば、「6枚」というようにです。
2)ヤンガーが「私の勝ちです」("Not Good")とか、「あなたの勝ちです」("Good")とか、「同じです」("Equal")とか答えます。
3)同じ枚数ならば、エルダーはカードの点数を告げ、ヤンガーはさほどと同じように答えます。
4)勝っているほうが得点を得ます。要求があれば、どのスートで得点をあげたかを、相手に告げなければなりません。
長いシークエンスを持っているほうが勝ちます。シークエンスとは3枚以上の同じスートの順並び札です。AはKにつながります。同じ長さならば、1番高位のカードを比べて、強いほうのシークエンスが勝ちます。強さも同じならば、どちらも得点しません。
勝ったプレーヤーの手札の中に他のシークエンスがあれば、それも得点できます。
点数は、3枚=3点、4枚=4点、5枚=15点、6枚=16点、7枚=17点、8枚=18点です。(5枚以上だと急に得点が増えます。)
シークエンスの宣言はつぎのように行ないます。
1)エルダーが自分のシークエンスの長さと強さを宣言すします。例えば、クイーンを頭にした4枚のシークエンスがあれば、「クイーンの4枚シークエンス」と宣言します。
2)ヤンガーが「私の勝ちです」とか、「あなたの勝ちです」とか、「同じです」とか答えます。
4)勝っているほうが得点を得ます(他のシークエンスの得点も得ることができます)。要求があれば、得点するシークエンスの長さと強さを相手に告げなければなりません。
A、K、Q、J、10の3枚または4枚の同位札です。3枚より4枚が勝ちます。同じ枚数ならば高位のカードのセットが勝ちます。
勝ったプレーヤーの手札の中に他のセットがあれば、それも得点できます。
点数は、3枚=3点、4枚=14点です。
セットの宣言はつぎのように行ないます。
1)エルダーが自分のセットの長さと強さを宣言します。例えば、キングの4枚のセットがあれば、「キングの4枚セット」と宣言します。
2)ヤンガーが「私の勝ちです」とか、「あなたの勝ちです」とか、「同じです」とか答えます。
4)勝っているほうが得点を得ます(他のセットの得点も得ることができます)。要求があれば、得点するセットの長さと強さを相手に告げなければなりません。
トリックテイキングゲームです。
エルダーが最初のリードをします。以後は勝った方がリードをします。切札はありません。フォローの義務だけはあります。
プレイで次の点数が発生します。
最初のリード.......1点 (自動的にエルダー)
自分のリードで勝つ...1点
敵のリードで勝つ.....2点
得点を分かりやすくするために、自分のリードで勝った場合は取ったトリックを横向きにしておき、相手のリードで勝った場合には取ったトリックを縦にしておくとよいでしょう。
7トリック以上勝つと、さらに10点もらえます。これをカードの得点と呼びます。どちらも7トリック以上勝たなければ、この得点は発生しません。
全トリックを勝つと、10点のカードの得点の代わりに、40点もらえます。これをカポット(Capot)の得点と呼びます。
あるディールで相手が何も得点しないうちに自分が30点以上得点したときに、次の点数がもらえます。
プレーの前なら...リピック(Repique)...60点
プレーの後なら...ピック(Pique).......30点
リピックかどうか判定するためには、カルトブランシュ、ポイント、シークエンス、セットの順に正しく得点を計算しなければなりません。
ピックを判定するためには、プレイの得点が発生するごとに点数をつけていきます。
プレーで7トリック以上取った時の点数(10点)や全トリック取った時の点数(40点)は、ピックのための点数にはなりません。
なお、エルダーは最初のリードで得点するので、ピックされることはありません。
負けた方の点数が100点以上の場合、勝った方の得点は
2人の点数の差+100点
負けた方の点数が100点未満の場合、勝った方の得点は
2人の点数の合計+100点 となります。
(勝ったほうも100点未満であっても、こうなります。)
シークエンスとセットにはそれぞれ名前がついています。
以上は英語化されたフランス語です。フランス語の現代の用語では、それぞれ、Tierce(ティエルス)、Quatrieme(カトリエーム)、Quinte(ケント)またはCinquieme(センキエーム)、Sixieme(シジュエーム)またはSeizieme(セジュエーム)、Septieme(セティエーム)またはDix-Septieme(ディセティエーム)、Huitieme(ユイティエーム)またはDix-Huitieme(ディジュイティエーム)、Brelan(ブレラン)またはTrio(トリオ)、Quatorze(カトルズ)です。
英語圏でも、1ゲームのことを、フランス風にPartie(パルティ)と呼ぶことがよくあります。
ピック、リピックはフランス語ではPic(ピック),Repic(ルピック)となります。カポット(Capot)はフランス読みでは「カポ」となります。
カルトブランシュのことを単にブランク(Blank)と呼ぶこともあります。
カードは3枚ずつまとめて配るやりかたもあります。また、2枚、3枚、2枚、3枚、2枚というように配る流儀もあります。
最も厳格なルールでは、カルテブランシュは次のように宣言します。
ヤンガーがカルトブランシュの時:
1.カルトブランシュを宣言する
2.エルダーが手札を交換するのを待つ
3.自分の手札を相手に見せる
4.自分の手札の交換をする
エルダーがカルトブランシュの時:
1.カルトブランシュを宣言する
2.自分が何枚手札を交換するつもりかを相手に告げる
3.ヤンガーがその残りの範囲内で手札の捨て札をする。
4.自分の手札を相手に見せる
5.自分の手札の交換をする
6.ヤンガーがタロンから手札の補充をする
From "All the Best Games" by David Parlett
交換のときに、次のようなルールが行われることもあります。
「エルダーが交換するとき、5枚より少なく交換した場合、交換する権利のあった山札を見ることができる。」
David Parlettの著書による
シークエンスの宣言は、エルダーがまず枚数だけを告げ、それが同じだったら、シークエンスの最高位のカードのランクを告げるというやり方もあります。
セットの宣言も、エルダーがまず枚数だけを告げて、それが同じだったら、ランクを告げるやり方もあります。
メモを取らないで、口頭だけで得点を計算する場合には、ポイントやシークエンスやセットの宣言のときには点数を計算しません。
宣言が終わってから、まずエルダーが自分の勝った宣言の点数を発表し、累計を計算していきます。そのあと、最初のリードを行い、1点を加算します。
そのあと、ヤンガーが同じように点数を発表し、累計を計算したあと、プレイを行います。
ただし、これはあくまで便宜的なものであり、リピックを判定する目的では、ポイント、シークエンス、セットの順に得点が入ったもととします。
プレイ中の点数の数え方を次のようにするやり方もありますが、結果は同じです。口頭で点数を数える場合には、この方がやり易いかもしれません。
古いルールでは、注6の点数の数え方をした時に、10のランク以上の強さのカードをリードしないと、リードの1点がもらえません。
ここで紹介したような、6ディールで1ゲームとなり、負けたほうが100点取っているかどうかで得点計算が変わってくるというピケットは、正確にはルビコン・ピケット(Rubicon Piquet)と呼ばれます。現在最も普通に行われているピケットです。
古くは、ディールを終わって、どちらかが100点を超えていたらゲーム終了となるピケットも行われていました。ピケ・オ・サン(Piquet au Cent)と呼ばれます。勝ったほうの得点は、点数の差額となりますが、負けたほうが50点未満だと、得点が倍になります。