1993年7月3日 赤桐裕二
イタリアのシシリア島でプレイされていたタロットのゲームです。現在でも少数ながらプレイする人がいます。
ルールについては、ほぼ全面的にMichael Dummett 氏の著作 "Twelve Tarrot Games"に基づいています。(ただし、本稿は翻訳ではありません。赤桐が書きおろしたものです。)
4人でプレイします。(3人のゲームもありますが、ここでは紹介しません。)
このゲームでは63枚のシシリアンパックのカードを使います。
パックは次のカードからなります
1)逃亡者(愚者)
2)21枚の切札。20(ジュピター)が最も強く19,18, ... 1(ピチオッティ)と続きます。その下に「ミゼリア」という名の最も弱い切札があります。
最も強い5枚の切札(16--20)は「アリエ」と呼ばれます。
3)43枚の切札以外のカード
ソード、バトン、カップ、コインの4つのスートがあります。各スートのカードと強さは次の通り:キング(最強)、クイーン、カバロ、メイド、10、9、8、7、6、5、(4)(最弱) (4があるのはコインのスートだけ)
普通のタロットカードでプレイするときには、21のカードを最も弱い切札(ミゼリア)にしましょう。また、ジャックがメイドの代りになります。
スートが、スペード、ハート、ダイヤモンド、クラブのカードを使うときには、ダイヤモンドをコインのスートの代りにします(ダイヤモンドだけ4を使います)。
このゲームはトリックテイキングゲームですが、取ったトリックに含まれるカードの点数により得られる得点が決まってくるゲームです。
各カードの点数は次の通りです(下記以外のカードには点数はありません):
切札の20(ジュピター) |
10 |
切札の1(ピチオッティ) |
10 |
逃亡者(愚者) |
10 |
切札の19(地球) |
5 |
切札の18(太陽) |
5 |
切札の17(月) |
5 |
切札の16(星) |
5 |
各キング |
5 |
各クイーン |
4 |
各カバロ |
3 |
各メイド(ジャック) |
2 |
さらに、取ったカードを3枚1セットにして、それぞれのセットにつき次のように点数を修正します。どのようにセットを作っても結果の点数は変わりませんので、計算しやすいようにセットを作っておきましょう。
点数のあるカード3枚 |
-2 |
点数のあるカード2枚とないカード1枚 |
-1 |
点数のあるカード1枚とないカード2枚 |
0 |
点数のないカード3枚 |
+1 |
3枚セットで割り切れないときには、点数のないカードを端数(セットにならないカード)とします。端数のカードが2枚のときには+1点の修正をします。端数のカードが1枚のときには修正点はありません。
これに加えて、最後のトリックを取ったプレイヤーに5点がつきます。
この結果、全点数の合計は109点になります。
最初のディーラーは何らかの合意された方法で決めます。次のディールからはディーラーは反時計回りに交代していきます。ただし、後述するような理由で実際にプレイが行われなかった場合には、次回のディーラーは同じプレイヤーが行います。
ディーラーは左隣のプレイヤーにカットしてもらいます。カット後の一番下のカードはディーラーは見ることができます。
ディーラーはまずカードを5枚ずつ2回、すなわち各プレイヤーに10枚ずつのカードを配ります。配る順序は、ディーラーの右隣から始めて反時計回りです。
ディールの後、実際にプレイを行うかどうかのビッドを行います。ビッドは座り順とは無関係に自由に行います。ただし、各プレイヤーは1回しかビッドできません。
まず、プレイを行うとマイナス点になりそうな人から、「xx点出します」というようにビッドします。これは、場にxx点出すからプレイをするのをやめようという誘いです。
また、この時に「シャッフル」というビッドをしてもかまいません。これは点数は出さないけれど、プレイはやめようという誘いです。
これらのビッドが終わった後、今までビッドしなかったプレイヤーがビッドを行います。
このビッドは、「xx点貰います」というように行います。ビッドの点数は、約束された出される点数の合計の範囲内でなければなりませんし、ほかにもビッドしていないプレイヤーがいる場合には、彼らも最低1点を貰えるように、残しておかなければなりません。
ほかのプレイヤーが「xx点貰います」とビッドした後にビッドする場合には、残った点数の範囲内でなければなりません。(ほかにもビッドしていないプレイヤーがいる場合には、彼も最低1点を貰えるように残しておかなければなりません。)
最後にビッドするプレイヤーは当然、残った点数全部をビッドすることになります。
また、点数を貰うよりもプレイを行いたいときには「プレイします」とビッドを行います。このビッドがあった場合には、まだビッドしていないプレイヤーがいてもビッドは終了し、プレイを行うことになります。
全員がビッドして、プレイを行わないことになった場合には、ビッドした点数を各プレイヤーのスコアシートに記入した後、同じディーラーがカードを配り直します。
プレイを行うことになった場合には、ディーラーは残りのカードからまとめて5枚ずつ各プレイヤーに配ります。残りの3枚のカードは場に伏せて置いておきます。
ゲームの種類はソロのゲームとパートナーのゲームの2種類しかありません。ソロのゲームでは1人が残りの3人を敵に回してプレイします。パートナーのゲームでは2対2の戦いとなります。
ディールのあと、まず、ソロのゲームをするかどうかのビッドを行います。
まず、ディーラー以外の3人のうちソロのゲームをしたいプレイヤーが「ソロ」とビッドできます。誰からビッドしてもかまいません。もしも、2人以上のプレイヤーが「ソロ」をビッドしたときには、ディーラーの右隣のプレイヤーを優先し、次に、ディーラーの向かい側のプレイヤーを優先します。
ディーラー以外がソロのビッドをしなかった場合には、ディーラーにソロのビッドをする機会が与えられます。
誰もソロのビッドをしなかった場合は、パートナーのゲームになります。
ソロのビッドの後、ソロのゲームとなってもパートナーのゲームの場合でも、場札交換を行います。
ディーラー以外のプレイヤーがソロのプレイを行う場合、そのプレイヤーはまず場札の3枚を表にして全員に見せます。そのあとそのカードを手札に加え、この3枚を含む手札から3枚のカードを裏向きに捨て札します。
ディーラーがソロのプレイを行う場合も同じようにしますが、場札は他のプレイヤーに見せる必要はありません。
パートナーのプレイの場合には、ディーラーが場札の交換を行います。この場合も場札は他のプレイヤーに見せる必要はありません。
どの場合でも、交換されて捨てられたカードはゲーム終了後、交換したプレイヤーのものとして計算されます。
また、捨てるカードには次の制限があります。
場札交換のあと、パートナーのゲームの場合には、つぎのような複雑なやりかたでこのディールでのパートナーを決めます。
まず、ディーラーの右隣のプレイヤーから反時計回りの順に「20」または「ゼロ」のビッドを行います。「20」のビッドが行えるのは、手札のカードの点数(トリックで取ったときの点数と同じ)を合計して、20かそれ以上になったときだけです。ただし、クイーンやカバロやメイドの点数は数えず、10点と5点のカードのみ数えます。また、20点以上であっても「ゼロ」のビッドをしてもかまいません。
誰も「20」のビッドを行わなかった場合には、プレイは行われず、同じディーラーが新しいディールを始めます。
誰かが「20」のビッドを行ったら、すぐに次のビッドの段階に入ります。残りのプレイヤーで、「20」のビッドをしたプレイヤーの右隣から順に、「15」または「ゼロ」のビッドを行います。この場合、「15」をビッドできるのは、「20」のときと同じ点数の数え方で、ちょうど15点の手札を持っているプレイヤーだけです。ちょうど15点あっても「ゼロ」をビッドしてもかまいません。
誰かが「15」をビッドしたら、ビッドは終了し、「20」のプレイヤーと「15」のプレイヤーがパートナーになり、残りの2人と戦います。
「20」のビッドのあと、残りの3人が誰も「15」をビッドしなかった場合、「20」のプレイヤーは自分の持っていないキングを指名して、それを持っているプレイヤーをパートナーにします。
どのスートのキングを指名するかは次の規則に従います:
もし、キングを自分で4枚持っている場合には、クイーンを指名します。クイーンの指名の方法も上記と同様の規則に従います。
キングかクイーンを指名した場合には、誰がパートナーかは、そのカードがプレイされるまでは判りません。
プレイはトリックテイキングゲームのルールに従いますが、次の規則があります。
ソロのゲームの場合には、最初のリードはソロのプレイヤーの右隣のプレイヤーが行います。
パートナーのゲームの場合には、最初のリードは「20」をビッドしたプレイヤーの右隣のプレイヤーが行います。
プレイは反時計回りに行います。
切札がリードされたときには、切札を持っていれば、切札のカードを出さなければいけません。持っていなければ、何を出してもかまいません。
切札以外のカードがリードされたときには、リードされたスートを持っていればそのスートのカードを出さなければなりません。リードされたスートを持っていなくて、切札を持っていれば切札を出さなければいけません。それ以外の時には何をだしてもかまいません。
ただし、「逃亡者」のカードには特別な規則があります。
トリックに勝ったら、勝ったプレイヤーが出されたカードを回収し、裏向きにそのプレイヤーの前に置きます。パートナーが判っている場合には、パートナーどうしのカードはいっしょにしてかまいません。
なお、パートナーゲームの時にもう1つ特殊なルールがあります。このルールはキングかクイーンが指名され、指名されたプレイヤーがディーラーの時だけに適用されます。
つまり、このプレイヤーがプレイ開始後始めてリードをするときには、もし指名されたキング(クイーン)のスートのリードがその時までに1度もなければ、そのスートのカードをリードしなけれなならないというものです。(ただし、キングをリードする義務はありません)。
パートナーゲームのとき、切札の20(ジュピター)や切札の19(地球)を持っているプレイヤーは自分がリードするときにテーブルをノックしてそれを知らせることができます。
ノックするときに「切札の20」を持っているとか、「切札の19を持っている」とか言ってもかまいません。また、単に「ノックしているよ」と口にだしてもかまいません。
ただし、両方の切札をもっていても「両方持っている」と言うことはできません。(リードの機会が2回あれば、1つずつ知らせることはできます。)
各ディール毎にプレイヤー毎に次のように得点を記録しておきます。
得点はマイナスになることもあり、全プレイヤーの得点の合計は必ず0になります。
ソロのプレイヤーの基本点は55点になります。取った点数から基本点を引き、それを3倍したものが得点となります。
他のプレイヤーの基本点は54点になります。各プレイヤーは3人のカードの点数の合計から基本点をひいた点数が得点となります。
ディーラーを含むパートナーの基本点は55点となり、その相手側のパートナーの基本点は54点となります。
各プレイヤーはパートナーと合計した点数から基本点をひいた点数が得点となります。
ゲームは任意の回数のディール続けることができます。
清算は累計された得点により行います。