1996/2/28 赤桐
スペードは米国で盛んにプレイされているにもかかわらず、出版物で紹介されることが少いゲームです。
米国では少なくともハート(ブラックレディー)やピノクルなどと同じくらいの人気があるようです。ハートよりも難しいけれどブリッジほど難しくないゲームと言われています。
プレイは普通のトリックテイキングですが、ビッドに特徴があります。普通のゲームのように、誰か1人(1チーム)のビッド(コントラクト)だけが有効なのでなく、すべてのビッドが有効になります。つまり、各プレイヤー(チーム)は、自分のしたビッドを達成することが目標となるわけです。
わりあい単純で分かりやすいゲームですが、その割には面白いゲームです。
ただし、非常に多くのローカルルールがあります。というよりは、標準的なルールというものが存在しません。
それでも、今回はまず、私が最も標準的と考えるルールを紹介します。
4人。向かい合った2人がパートナーになります。
通常の52枚のカード。各スートにおけるカードの強さは、強いものから順に、A、K、Q、J、10、9、8、7、6、5、4、3、2です。
最初のディーラーは任意の方法で選びます。次回からは、ディーラーは時計回りに交代します。
カードは1枚ずつ、各プレイヤーの手札が13枚になるように配ります。
ディーラーの左隣のプレイヤーから時計回りの順に、すべてのプレイヤーがビッドを行います。パートナーのうち、最後にビッドするプレイヤーのビッドが最終的なビッドとなります。ビッドはパートナー2人で取ることを宣言するトリック数です。
パートナーのうち最後にビッドするプレイヤーは、最初にビッドしたパートナーのビッドと同じか、それ以上の数をビッドしなければなりません。
普通は、パートナーのうち最初のビッドする人は、自分が取れると考えるトリック数をビッドし、最後にビッドする人は、それに自分が取れるトリック数を加えて最終的なビッドを行います。
「0」というビッドも可能です。
例えば、ディーラーの左隣から時計回りにプレイヤーをA、B、C、Dとすると、Aは5をビッド、Bは3をビッド、Cは5をビッド、D(ディーラー)は7をビッド、というようになります。この例では、ACのペアは5トリック、BDのペアは7トリック取ることを宣言したことになります。
なお、2チームのビッドの合計が13トリックよりも上でも下でも、問題ありません。
ビッドの時にパートナーの片方のプレイヤーがニルの宣言をすることができます。
ニルは、宣言を行った個人が、1トリックも取らないというビッドです。1トリックでも取ると、ニルのビッドは失敗します。
パートナーの片方がニルを宣言しても、もう1人のプレイヤーは通常通りのビッドを行います。(あるいは、もう1人のプレイヤーもニルの宣言を行うこともできます。)
つまり、パートナーのうち最初にビッドするプレイヤーがニルを宣言したら、最後にビッドするプレイヤーは、そのチームが取るトリック数を予想して(実際には自分1人で取るつもりのトリック数を予想して)、ビッドを行います。
パートナーのうち最後にビッドするほうのプレイヤーがニルを宣言したら、最初のビッドがそのチームの最終的なビッドとなります。
相手より100点以上負けているチームの1人(または2人)は、ダブル・ニルの宣言を行うことができます。
ダブル・ニルとは、自分の手札を見ないでニルの宣言を行うことです。したがって、手札を見たあとにこのビッドを行うことはできません。
ダブル・ニルの宣言があったチームは、プレイの前に、各プレイヤーの手札から2枚を相手と交換します。(互いに相手からもらうカードを見ないで、相手に2枚のカードを渡します。)
最初のリードはディーラーの左隣のプレイヤーが行います。プレイは時計回りです。
スペードが常に切札になり、通常のトリックテイキングゲームと同様に次のようににプレイします:
ただし、まだ誰もスペードをプレイしていない時には、スペードのリードはできません。つまり、誰かがスペードのラフ(他のスートのリードの時に切札を出すこと)をしてはじめて、それ以降のトリックで、スペードのリードができることになります。
とはいえ、もちろん手札にスペードしかない場合には、スペードのリードができます。この場合も、それ以降のトリックでは、誰でもスペードのリードができるようになります。
あるチームが、ビッドしたトリック数と同じかそれ以上のトリック数を取った場合、つぎの1,2の合計点数が得られます。
例えば、6をビッドして、8トリックを取った場合は、6x10+2=62点を得点します。
逆に、ビッドしたトリック数かそれ以上を取ることができなかった場合、ビッドしたトリック数を10倍した点数が、マイナスの得点となります。(ビッドしたトリック数に何トリック足りなかったかは関係ありません。)
例えば、7をビッドして5トリックしか取れなかった場合は、7x10=70点のマイナス点となります。
ニルのビッドが成功したときは、100点を得点します。失敗したときには、マイナス100点となります。
ニルのビッドがあった場合も、パートナーのもう1人が行った通常のビッドに対する得失点も計算します。ニルのビッドを行ったプレイヤーがニルに失敗した場合、そのプレイヤーが取ったトリックも、もう1人のプレイヤーが宣言した通常のビッドに対する、取ったトリック数に含めます。
ダブル・ニルも同様に得点しますが、成功したときは200点、失敗したときはマイナス200点となります。
ディールを何回か行い、どちらかのチームの累計点が500点以上になったら、ゲーム終了です。
累計点の多いチームの勝ちとなります。
オプショナルルールですが、よく行われています。オーバートリックを罰するルールです。
あるチームのオーバートリックの数(ビッドしたトリック数よりたくさん取ったトリック数)の累計が10を超える毎に、そのチームにマイナス100点がつきます。
つまり、そのチームの得点の1の位が10に繰り上がるごとに、マイナス100点となるわけです(チームの得点がマイナスの場合を除く)。
次に、バリエーションや別のルールやオプショナルルールを紹介します。
4人でプレイする場合でも、パートナー戦ではなく、個人戦で行うこともあります。この場合はもちろん、各個人が自分1人で取るトリック数をビッドしてプレイします。ダブル・ニルの場合も、カードの交換はできません。
3人で行うこともできます。もちろん上記のような個人戦になります。各プレイヤーに17枚ずつ配り、残りのカードはプレイに使用しません(誰も見ることもできません)。
あるいは、2のような弱いカードを1枚最初から抜いておくやり方もあります。
2人の場合は、普通にカードを配る代わりに、シャッフルしたカードをテーブル中央に山札として裏向きに置いて、ノンディーラーから交互に次のようにします。
1)まず、山札から1枚のカードを取ります。そのカードは手札に加えることができます。その場合、次にまた山札から1枚のカードを取って見ることができますが、それは裏向きに捨てなければなりません。
2)最初に取ったカードは、手札に加えないで、裏向きに捨てることもできます。この場合、次にもう1枚のカードを山札から取り、それを手札に加えます。
これを山札がなくなるまで繰り返します。山札がなくなると、各プレイヤーの手札は13枚ずつとなります。
4人または3人の個人戦と同じようにゲームを行います。ダブル・ニルは山札のカードを1枚も取らないうちに宣言しなければなりません。
2人ゲームには次のような別のやり方もあります。
1.3人ゲームと同じように17枚ずつ3人分の手札を配ります。ディーラーの左隣をダミーの手札として、その分も配ることになります。(ダミーを右隣にするルールもあります。)
2.ダミーを含めて3人でプレイをすることになります。ダミーの手札は裏向きのままにしておき、必ず、その1番上からプレイします。したがって、ダミーはフォローの義務はありません。
ジョーカーを2枚加えることがあります。2枚のジョーカーは強いほう(ビッグジョーカー)と弱い方(リトルジョーカー)の区別があります。
使用しているカードの2枚のジョーカーが同じでなければ、強そうな方(色がついている方など)がビッグジョーカーになります。2枚が同じならば、カードにマークを書き込む必要があります。
ジョーカーを使用した場合、スペード以外の2枚の2のカード(2と2など)は抜いておきます(使用しません)。
別のやり方としては、ディーラーだけが2枚多いカードを配られて、ビッドの前に2枚を捨て札するという方法もあります。
ジョーカーは、プレイの時には、切札(スペード)のスートに属するカードとして扱われます。
切札(スペード)のスートのランクは、いろいろなルールがあります。(切札以外のスートのランクは、変わることはありません。必ず、A、K、...、2です。)
ジョーカーが入った場合、ビッグジョーカーが一番強い切札で、リトルジョーカーがそれに続きます。
切札の2がAよりも強くなるルールもあります。(ジョーカーよりは弱くなります。)
また、ジョーカーのない場合、他のスートの2のカードを、切札の一番強いカードとして使うことがあります。2枚以上の他のスートの2をこのように使うこともありますが、この場合には、強さの順位を決めておく必要があります。
パートナー戦でも、ビッドのとき、各プレイヤーが自分の取れると思うトリック数を宣言するやりかたもあります。この場合、パートナー2人のビッドの合計が、そのパートナーのビッドとなります。
ビッドを2巡させることもあります。2順目に各プレイヤーは、今までの自分のチームのビッドより高いビッドを宣言することができます。もちろん、パスもできます。
このように時計回りの順にビッドする方法の他に、パードナーどうしが相談して次のようにビッドするやりかたもあります。
ディーラーを含まない方のパートナーがまずビッドを行います。ビッドは、2人で相談してから、2人合わせて取ることができると考えるトリック数を、どちらかのプレイヤーが宣言します。
相談においては、自分の取れそうなトリック数を相手に言うことができます。例えば「私は3トリック取れそうです」というようにです。また、「4トリックと半分くらい取れそう」とか「最低で2トリック、最高で5トリック、普通に見積もって3トリックくらい取れそう」などと言うこともできます。
しかし、それ以外の自分の手の情報を言うことはできません。例えば、「切札がとても強い」とか、「ハートがない」とか言うことは禁止されます。
相談は、相手のパートナーも聞こえるように行わなければなりません。
ディーラー側でないパートナーのビッドが終ると、ディーラー側のビッドを全く同じように行います。
ダブル・ニルのビッドが認められないことがあります。
ダブル・ニルが100点以上負けているときでない場合でも認められたり、100点でなく200点など別の点数以上負けているときに認められるというルールもあります。
ダブル・ニルだけでなく、ニルのビッドも認められないことがあります。
ニルやダブル・ニルの点数はさまざまです。
ダブル・ニルの場合だけでなく、ニルの場合もパートナーとカードを交換できるというルールもかなり一般的です。逆にダブル・ニルの場合もカードを交換できないというルールもあります。
交換の枚数も、1枚から3枚までさまざまです。
ダブル・ブラインド・ニルというビッドもあります。このビッドは、ダブル・ニルのように、配られた手札を見ないで行わなければなりません。手札はビッド終了後も見ることができず、配られたままテーブルに置いておきます。パートナーとの手札の交換もありません。
プレイのときには、必ず手札の1番上のカードをプレイしていきます。フォローの義務などはありません。こうして、1トリックも取らなければ成功です。得点・失点は400点(または200点)です。200点以上負けていなければこのビッドができないというルールもあります。
パートナーのどちらも手札を見ないうちに、2人で相談して(あるいはどちらかの独断で)、ブラインド6というビッドをすることができるというルールもあります。
このパートナーが6トリック以上(別ルールではちょうど6トリック)取った場合、ビッドによる点数が2倍になります。つまり、1トリックにつき20点で120点となりますが、オーバートリックの点数は変わりません。失敗した場合も通常の2倍となります。
あるいは、成功した場合に、100点のボーナスがつくというルールもあります。失敗したときには通常通りの点数です。
ブラインド6ができるルールの時、ブラインド7やブラインド8なども可能です。
ブラインド7以上のビッドしか許されず、ブラインド6はできないというルールもあります。
このようなビッドは普通、チームが100点以上負けている場合だけ可能です。
ムーンというビッドが可能なことがあります。ムーンは13トリック全部取るという宣言ですが、成功した場合は200点、失敗した場合はマイナス200点となります。(通常の得点はありません。)
13のビッドが自動的にムーンのビッドになることもあります。
ブラインド・ムーンというビッドも可能なことがあります。パートナーのどちらも手札を見ないうちに宣言しなければならないビッドで、13トリック全部を取るという宣言です。成功した場合は400点、失敗した場合はマイナス400点となります。
ブラインド・ムーンは、チームが100点以上負けている場合だけ可能です。
ビッドできる最低のトリック数を決めておくことがあります。例えば、ミニマム・ビッドを4と定めると、3以下のビッドは、最終的なものとしては、不可能になります。
パートナーの1人がニルやダブル・ニルのビッドを行った場合でも、ミニマム・ビッドは満たさなければなりません。
最初のトリックは、すべてのプレイヤーがその人の手札で一番弱いクラブのカードをプレイしなければならないというルールもあります。クラブがなければ、ダイアモンドかハートを捨て札します。厳密にプレイするときには、2をもっているプレイヤーが最初にプレイし、そのあと時計回りに順にプレイします。
最初のトリックを通常通り行う場合、2を持っているプレイヤーが最初にリードするというルールもあります。最も高いビッドをしたプレイヤーが最初のリードを行うというルールもあります。
切札(スペード)のリードは、まだ誰もスペードを使っていなくても、いつでも行えるというルールもあります。
ビッドしたトリック数を取れなかった場合、宣言したトリック数に足りなかったトリック数を10倍したものがマイナス点になるというルールもあります。例えば、8をビッドして6トリック数しか取れなかったら、(8-6)x10=20点のマイナス点となります。
ビッドしたトリック数より多くのトリックを取った場合、オーバートリックの数を得点に加える代わりに、引き算することもあります。例えば、5のビッドで8トリック取った場合、5x10-(8-5)=47点となります。
また、オーバートリックの数を10倍したものを引くこともあります。例えば、5のビッドで8トリック取った場合、5x10-(8x5)x10=20点となります。
上記のようなオーバートリックを得点から引くルールを採用した場合は、サンドバッグルールは採用されません。
10トリック以上ビッドして成功した場合に、200点のボーナス点がつくというルールです。失敗した場合には、マイナス200点となります。
10トリックちょうどをビッドして、ちょうど10トリック取った時だけ、200点のボーナス点がつくというルールもあります。
10トリック以上ビッドして成功した場合に、ビッドによる点数が2倍になるというルールもあります。つまり、1トリックにつき20点となりますが、オーバートリックの点数は変わりません。これを、10フォー2(10 for 2)と呼びます。
ビッドしたトリック数ちょうどのトリックを取った場合で、最後のトリックを9以上の切札で勝ったら、10点のボーナス点となるというルールがあります。
ビッドしたトリック数ちょうどのトリックを取った場合で、最後の2トリック以上を9以上の切札で勝ち、その切札がシークエンス(続き札)であった場合は、そのシークエンス1枚につき10点のボーナスになるというルールもあります。
7以上のビッドをして成功した場合、6より上の1トリックにつき10点のボーナスがつくというルールもあります(ビッドしたトリックに対して)。
2のビッドをしてちょうど2トリック取った場合は40点、1のビッドをしてちょうど1トリック取った場合は60点、0のビッドをしてちょうど0トリックだった場合は100点となるルールもあります。普通の点数は計上しません。
500点でなく、300点や400点でゲーム終了になることもあります。
13トリック全部取ると、そのチームの勝利でゲーム終了になるというルールもあります。
ムーンやブラインド・ムーンの成功でゲーム終了というルールもあります。