1994/12/20 赤桐裕二
タロットカードのうち54枚のカードを使う3人用のゲームです。オーストリアでよくプレイされています。
イタリアで生まれたタロットカードのゲームは、ドイツやオーストリアに伝わると枚数が78枚から54枚に減り、それまで複雑であった「愚者(スキュース)」のカードの役割が単純化されました。
タップタロックはこの新しいタロットゲームの初期のもので、1800年頃からプレイされています。それからルールの変革はありましたが、それ程複雑化することもなくオーストリアで現在まで続いています。
次のような点から、初心者に薦めたいゲームです。
ルールについては、ほぼ全面的にMichael Dummett 氏の著作 "Twelve Tarrot Games"に基づいています。(ただし、本稿は翻訳ではありません。赤桐が書きおろしたものです。)
3人でプレイします。
54枚のオーストリアパックのカードを使います。
スペード、クラブ、ダイヤモンド、ハートの4つのスートがあり、各スートには8枚のカードがあります。それ以外にタロックと呼ばれる切札のスートが22枚あります。
黒のスート(スペードとクラブ)のカードとその強さは次の通りです:
キング(最強)、クイーン、カバロ、ジャック、10、9、8、7(最弱)
赤のスート(ハート、ダイアモンド)のカードとその強さは:
キング(最強)、クイーン、カバロ、ジャック、1、2、3、4(最弱)
タロックの最強のカードは数字が何も入っていない「スキュース(愚者)」のカードです。次に強いのがローマ数字でXXI(21)の数字の書かれているカード(「モンド」と呼ばれる)です。以下、数字が小さくなると弱くなっていき、I(1)のカード(「パガット」と呼ばれる)がタロックでは最弱のカードとなります。
なお、オーストリアのカードの絵札には何も文字が書かれていないことがありますが、冠をかぶっているのがキング、女の人がクイーン、馬に乗っている男がカバロ、馬に乗っていない男がジャックとなります。(道化師の絵が描かれているのがスキュースです。)
なお、このようなパックがない場合には、通常の78枚のタロットカードから不要なカードを除いて使用します。フランス製などの競技用タロットからカードを除くほうが、本来のオーストリアパックより使いやすいかもしれません。タロックの番号がアラビア数字で書かれており、見出しもあるからです。フランスのカードでは、キングはR、クイーンはD、カバロはC、ジャックはVです。
イタリア製のものや占い用のもののように、ソード、バトン、カップ、コインというスートを持ったタロットカードでも使えないことはありません。ソードとバトンをスペードとクラブの代りに使い、カップとコインをハートとダイアモンドの代りに使います。
カットして最も強い切札を引いた人がディーラーになります。切札を誰も引かないときには引き直します。
次回からディーラーは右隣のプレイヤーに移っていきます。
ディーラーの左隣のプレイヤーがカットしたあと、ディーラーはまず6枚のカードを3枚ずつに分けてテーブルの中央に置きます(これをタロンと呼びます)。
つぎに、ディーラーの右隣から反時計回りに、各プレイヤーに8枚ずつのカードを2回(計16枚ずつ)配ります。
ビッドに成功したプレイヤー(デクレアラー)は、他の2人を敵に回してプレイをすることになります。このゲームはプレイにおいてカードを取ることを目的とするトリックテイキングゲームです。
カードにはそれぞれ点数があり、その点数をたくさん取ることが目的となります。全点数の合計は70点になりますが、デクレアラーはそのプレイによる点数の半分を超える点数(36点以上)を得ることを目的にプレイを行います。
デクレアラー以外の2人は臨時のパートナーとなって、デクレアラーと戦うことになります(以後、この2人をディフェンダーと呼びます)。
ビッドには「スリー(ドライアー)」、「ローアー(ウンテラー)」、「アッパー(オーベラー)」、「ソロ」の4種類があります。
スリー、ローアー、アッパーのビッドが成立すると、デクレアラーはタロンのカード3枚と手札の3枚とを交換できます。この3種はゲームの進行としては全く同じなのですが、最終的な得点だけが異なります。
ソロのビッドが成立すると、タロンとの交換なしにプレイが行われます。
ビッドは次のように行われます:
1)ディーラーの右隣のプレイヤーからビッドを始め、反時計回りにビッドを進めます。
2)ビッドはパスをするか、スリー、ローアー、アッパー、ソロの内1つを言うか、後で述べるように「ホールド」と言います。
3)1度パスをしたプレイヤーは2度とビッドには参加できません。パスをしない限り何度でもビッドを行えます。
4)今までにパス以外のビッドがあった場合は、今までのビッドより強いビッドをしなければなりません。スリーが一番弱いビッドで、ローアー、アッパー、ソロの順に強くなります。
5)しかし、席順が上位のプレイヤーは下位のプレイヤーのビッドに対して「ホールド」を宣言できます。ホールドとは下位のプレイヤーのビッドと同じビッドをすることですが、そのまま決まれば、ホールドをビッドしたプレイヤーがデクレアラーになります。席順は、ビッドの順と同じように、デクレアラーの右隣が1番上位で、以下反時計回りに下がっていきます。
6)ただし、ソロのビッドはいつでも自由にすることができますが、それ以外のビッドをするときには可能な限り低いビッドをしなければなりません。例えば、最初にパス以外のビッドをするプレイヤーは、スリーまたはソロのビッド以外はできません。また、ローアーのビッドの後では、席順が下位のプレイヤーはアッパーかソロのビッドしかできず、席順が上位のプレイヤーはホールドかソロのビッドしかできません。
7)1人を除いた他の2人がパスをするか、パスをしていない人の中で席順が最上位のプレイヤーがソロを宣言すれば、デクレアラーとゲームの種類が決まりビッドが終了します。
8)3人全員がパスをした場合にはこのディールは終了し、ディーラーは次のプレイヤーに移ります。
スリー、アッパー、ローアーのビッドのときにはデクレアラーは手札のカードとタロンのカードの交換を行います。
デクレアラーはまずタロンを全員が見えるように表向きにします。タロンのカードは最初に配られた3枚と、次に配られた3枚が分けて置かれますが、そのどちらか3枚をデクレアラーは取って手札に加えます。(なお、古いルールではアッパーのビッドの場合は上に置かれた3枚しか取れず、ローアーのビッドの場合は下に置かれた3枚しか取れませんでした。)
次に、自分の手札の中から3枚のカードを裏向きに捨て札します(タロンから取ったカードを捨て札してもかまいません)。捨て札したカードはプレイの後、トリックで取ったカードと同じようにデクレアラーの点数に加えます。なお、デクレアラーが取らなかった3枚のカードは、同様にディフェンダーの点数に加えます。
デクレアラーの捨て札には次の制限があります。
1)キングやスキュースやタロックのXXI(モンド)やI(パガット)は絶対に捨ててはいけません。
2)他のタロックのカードも捨て札してはなりません。ただし、キングやタロック以外のカードが3枚未満しかない場合には、前項のタロック以外のタロックを必要最小限捨てることができます。タロックを捨て札した場合には、捨て札したタロックを他の2人に見せなければなりません。
ソロのゲームの場合には、タロンのカードは誰も取らず、誰も見ないでプレイします。タロンのカードはプレイ終了後、ディフェンダーのものとして得点を計算します。
タロンのカードの交換の後、プレイが始まる前に、次の宣言を行うことができます。宣言によりゲームの得点が変わってきます。
1)パガットウルティモの予告
デクレアラーは「パガットウルティモ」の予告を行うことができます。これは、デクレアラーが最後のトリックでタロックのI(パガット)を出して、トリックに勝つことを予告するものです。
この予告があると、デクレアラーは最後のトリックまでタロックのIを出すことはできません(ただし、プレイのルール上どうしても出さなくてはならないときには出します)。
2)バラットの予告
全トリックを取ることをバラットと呼びます。デクレアラーはバラットを予告することができます。
3)コントラ
ディフェンダーの1人は、デクレアラーが36点取るのに失敗すると思ったら、「コントラ」を宣言することができます。この宣言があると、ゲームポイント(プレイ後に得られる得点や失点。カードの点数とは全く別のものです)が2倍になります。
これに対してデクレアラーは「リコントラ」を宣言して、ゲームポイントを4倍にすることができます。
リコントラに対してディフェンダーの1人は、「スブコントラ」を宣してゲームポイントを8倍にすることができます。
バラットの予告があったときには、コントラ、リコントラ、スブコントラはバラットの成功や失敗についてのものになり、それに対するゲームポイントを2倍,4倍,8倍します。
4)パガットウルティモに対するコントラ
ディフェンダーはデクレアラーのパガットウルティモの予告に対してもコントラを宣言することができます。「パガットウルティモに対するコントラ」と宣言します。
これはパガットウルティモの予告の成功や失敗によるゲームポイントを2倍にします。これに対してもリコントラ、スブコントラと続けることができます。
まず、デクレアラーがパガットウルティモかバラットかあるいはその両方の宣言を行うことができます。
つぎに、ディフェンダーが反時計回りにゲームやバラットに対するコントラか、パガットウルティモに対するコントラか、あるいはその両方かの宣言を行うことができます。
コントラがあった場合には、デクレアラーはリコントラを宣言することができますが、これに対してもディフェンダーは反時計回りにスブコントラを宣言することができます。
このゲームではプレイは常に反時計回りに行います。トリックテイキングゲームです。
まず、ディーラーの右隣のプレイヤーが自由に手札の中の1枚のカードを選んでテーブルに出します(これをリードすると呼びます)。
つぎにその右隣のプレイヤーが手札からカードを1枚出します。
リードされたカードがタロックであった場合は、手札にタロックがある場合にはタロックを出さなければなりません。ない場合にはどのカードを出してもかまいません。
リードされたカードがそれ以外のスート(マーク)のカードであった場合には、そのスートのカードが手札にあれば、そのスートのカードを出さなければなりません。ない場合にはタロックを出さなければなりません。タロックも持っていない場合にはどのカードを出してもかまいません。
3人目のプレイヤーもリードされたカード(最初に出されたカード)に従って同じようにプレイします。
こうして3枚のカードが出されると1トリック終わったことになります。
出されたカードの中にタロックがある場合には、一番強いタロックを出したプレイヤーがこのトリックに勝ちます。タロックがない場合には、リードされたスートで1番強いカードを出したプレイヤーがこのトリックに勝ちます。
勝ったプレイヤーはこのトリックに出された3枚のカード(これもトリックと呼ぶ)を取ったことになり、自分のところに裏向け向けに置きます(手札には加えない)。
トリックに勝ったプレイヤーが次のリードを行い(手札から自由に1枚を出し)、同様にプレイが続きます。
16トリックのプレイを行って、手札を使いきったらプレイは終了です。
プレイが終わったらデクレアラーはカードの点数を計算して36点以上取ったかどうかを調べます。
各カードの点数は次の通りです(下記以外のカードには点数はありません):
スキュース(愚者) |
5 |
タロックXXI(モンド) |
5 |
タロックI(パガット) |
5 |
各キング |
5 |
各クイーン |
4 |
各カバロ |
3 |
各ジャック |
2 |
さらに、取ったカードを3枚1セットにして、それぞれのセットにつき次のように点数を修正します。どのようにセットを作っても結果の点数は変わりませんので、計算しやすいようにセットを作っておきましょう。
点数のあるカード3枚 |
-2 |
点数のあるカード2枚とないカード1枚 |
-1 |
点数のあるカード1枚とないカード2枚 |
0 |
点数のないカード3枚 |
+1 |
(セットによる修正の結果は、点数のないカードを1点と数えて、1セットにつき2点ずつ減点していくのと同じことになります。)
修正後の全点数の合計は70点になります。
デクレアラーがプレイに成功した場合(36点以上のカードの点数を取った場合)には次の得点を得られます。
このような得点ををゲームポイントと呼びます。ゲームポイントとカードの点数は別であることに注意してください。
スリー |
3 ゲームポイント |
ローアー |
4 ゲームポイント |
アッパー |
5 ゲームポイント |
ソロ |
8 ゲームポイント |
デクレアラーだけが、上記の点数をスコアシートに記入します。(ディフェンダー側がマイナスの点数を記入する必要はありません。)
コントラ、リコントラ、スブコントラが宣言されていた場合には、上記のゲームポイントが2倍、4倍、8倍になります。
逆に、デクレアラーがプレイに失敗した場合(35点以下しかカードの点数を取れなかった場合)には、ディフェンダーの2人が上記の点数をそれぞれスコアシートに記入します。
上記のゲームの得点以外に次のようなボーナス得点があります。
デクレアラーが全トリックを取った場合には(これをバラットという)、前記のゲームの得点の代りにそれを4倍したゲームポイントを得ることができます。
コントラなどがあれば当然その影響も受けます。
バラットをプレイの前に予告していた場合にバラットに成功すると、4倍ではなく8倍のゲームポイントを得ることができます。
しかし、バラットを予告したのに全トリック取ることに失敗した場合には、カードの点数にかかわりなくプレイに失敗したとみなされ、ディフェンダー側の2人に通常の場合の8倍のゲームポイントがそれぞれつきます(デクレアラーには通常のゲームポイントもつきません)。
あるプレイヤーが最後のトリックにパガット(タロックのI)を出して、そのパガットでトリックに勝ったときにパガットウルティモのボーナスが発生します。
パガットウルティモのボーナス得点は4ゲームポイントです。ただし、ソロのゲームを行っていた場合には8ゲームポイントとなります。
デクレアラーがパガットウルティモを予告しておいて成功させた場合には8ゲームポイント(ソロのときには16ゲームポイント)となります。
デクレアラーがパガットウルティモを成功させたときにはこの点数をスコアシートの自分の所に記入します。ディフェンダーの1人が成功させたときには、そのプレイヤーだけでなくもう1人のディフェンダーもこの点数をスコアシートに記入します。
最後のトリックにパガットを出して、そのパガットがほかのプレイヤーに取られた場合にはパガットウルティモに失敗したとみなされます。ただし、ディフェンダーの1人がパガットをだして、それをもう1人のディフェンダーが取ったときには失敗とは見なされません(もちろん成功でもありません)。
また、デクレアラーがパガットウルティモを予告していて、パガットウルティモを成立させることができなかった場合も、失敗したとみなされます。
デクレアラーがパガットウルティモに失敗した場合には、ディフェンダー側の2人がそれぞれ、成功の場合と同じだけのゲームポイントをスコアシートに記入します。ディフェンダー側の1人が失敗した場合には、デクレアラーが成功の場合と同じだけのゲームポイントをスコアシートに記入します。
パガットウルティモに対するコントラ、リコントラ、スブコントラが宣言されていた場合には、今まで述べたゲームポイントがすべて2倍、4倍、8倍になります。
ゲームが成功したかどうかと、パガットウルティモに対するボーナスとは無関係です。
プレイの前に手札の中にあるカードによって次の3種の手役があります。手役のつく手札はタロンとの交換をしたあとの手札でもかまいません。ただし、手役を公表するのはプレイが終わってからです。
手役はデクレアラーでもディフェンダー側でも無関係で、その手役のあった個人だけがゲームポイントをスコアシートに記入します。
トルルとはスキュース(愚者)、タロックのXXI(モンド)、タロックのI(パガット)の3枚のことです。この3枚をすべて手札に持っていると3ゲームポイントもらえます。
前記のトルルの3枚のうち2枚を持っていると、1ゲームポイントもらえます。
もちろん、トルルを3枚全部持っているときにはこの役による点数は貰えません。
キング4枚をすべて持っていると、3ゲームポイントもらえます。
ゲームはプレイヤーの合意により何ディールでも行うことができます。
ゲームが終了したら、各プレイヤーは他の2人のプレイヤーと、それぞれとの点数の差だけの額を清算します。
例えば、Aのゲームポイントが10点、Bのゲームポイントが20点、Cのゲームポイントが50点だとすると。AはBに(20-10=)10点払い、AはさらにCに(50-10=)40点払い、BはCに(50-20=)30点払います。