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タロキー(Taroky)

2001/11/16
赤桐裕二

 チェコのタロットカードゲームです。オーストラリアやハンガリーのゲームと同じ系統の、54枚のカードを使用する新しいタイプのゲームです。

 ルールは http://www.pagat.com によります。


プレイヤー

 4人でプレイします。通常は2人がパートナーになりますが、パートナーは一定していません。

カード

 オーストリアのタロットカードと同種の54枚のカードを使います。スペード、クラブ、ダイヤモンド、ハートの4つのスートがあり、各スートには8枚のカードがあります。それ以外にタロキーと呼ばれる切札のスートが22枚あります。

 黒のスート(スペードとクラブ)のカードとその強さは強い順に次の通りです。

   キング(král)、クイーン(dáma)、カバロ(kavall)、ジャック (kluk)、10987

 赤のスート(ハート、ダイアモンド)のカードでは、次のようになります。

   キング(král)、クイーン(dáma)、カバロ(kavall)、ジャック (kluk)、1234

 切札の最強のカードは数字が何も入っていないスキューズ(škýz=愚者)のカードです。次に強いのがローマ数字でXXI(21)の数字の書かれているカードです。このカードはモンド(mond)」と呼ばれることもあります。

 以下、数字が小さくなると弱くなっていき、I(1)のカードが切札では最も弱いカードとなります。これはパガット(pagát)と呼ばれます。

カードの点数

 プレイの目的はトリックに勝ち、取ったカードの点数を得ることです。全部で70点ありますが、チームで36点以上取ると成功になります。

 各カードの点数は次の通りです:

スキューズ(愚者)

5

モンド(切札21

5

パガット(切札

5

キング

5

クイーン

4

カバロ

3

ジャック

2

それ以外のカード

1

 さらに、取ったカードを3枚1セットにして、それぞれについて2点を引いていきます。2枚または1枚残ったら1点を引きます。

ディール

 ディーラーおよび席順は任意のやり方で決めます。1つのディールが終わるとディーラーは反時計回りに右隣のプレイヤーに移っていきます。

 ディーラーは向かい側のプレイヤーにカットしてもらったあと、まず6枚のカードをテーブルの中央に裏向きに置きます。これをタロンと呼びます。そのあと、ディーラーの右隣から反時計回りに、各プレイヤーに6枚ずつ2回、裏向きに配ります。各プレイヤーの手札は12枚になります。

ゲームの目的

 このゲームではトリックテイキングゲームのプレイを行って、取ったカードに含まれる点数をたくさん得ようとします。

 2人対2人または3人対1人のチーム戦になり、チームで全点数の過半数の点数を得るのが目的となります。

ビッド

 ディールが終わると、プレイを始める前にビッドを行います。

 ビッドの種類は次のとおりです。前に書いているほうが弱いビッドです。

1)ファースト・デューティ(povinnost/ zakladni povinnost=最初の義務)

 パートナーを指名して、2人対2人で戦います。タロンのカードと手札を4枚交換することができます。

2)セカンド・デューティ(druha povinnost=第2の義務)

 ファースト・デューティと同じです。ただし、後述する「パガットの予告」という宣言も行ったことになります。つまり、最後のトリックをパガット(切札の1)を出して勝つことを約束します。

 プレイの成功や失敗はあくまでもチームで過半数の点数を取ることです。プレイによる得失点とパガットの予告の成功・失敗による得失点は別々に計算します。

3)トロイカ (trojka/preferanc)

 1人で他の3人と戦います。タロンのカードと手札を3枚交換することができます。

4)ソロ (solo)

 トロイカと同じですが、タロンのカードと手札の交換はできません。

 ビッドはディーラーの右隣から反時計回りに1人ずつ行いますが、各プレイヤーは1回しかビッドの機会がありません。

 ディーラーの右隣のプレイヤーは必ず、ファースト・デューティかトロイカかソロのビッドをしなければなりません(セカンド・デューティのビッドはできません)。

 他のプレイヤーはパスをすることもできます。パス以外のビッドをするためには、以前のビッドよりも強いビッドをしなければなりません。

 パス以外の最後のビッドだけが有効になります。そのビッドをしたプレイヤーをビッダー(vydrazitel)と呼びます。

パートナーの指名

 ファースト・デューティまたはセカンド・デューティをビッドしたビッダーは、ビッドのあとパートナーを指名します。

 ビッダーは切札19のカードを指定して、その持ち主のプレイヤーをパートナーに指名しなければなりません。ただし、そのカードをビッダーが持っていた場合には、切札18を指定します。それも持っていたら切札17を指定します。それも持っていれば切札16を指定します。

 切札16〜切札19をすべて自分が持っていた場合は、切札19を指定しなければなりません。この場合、ビッダー1人で残り3人と戦うことになります。

 切札19を持っていた場合でも、切札19を指定して1人で戦うこともできます。ただし、切札19を持っていなくて切札1618のいずれかを持っていた場合には、1人で戦うことはできません。

 なお、指名されたプレイヤーは、プレイや宣言で明らかになるまでは、指名されたことを誰にも告げてはいけません。ビッダー自身を指名した場合にも、ビッダーはそれを秘密にしておきます。

タロンとの交換

 ファースト・デューティ、セカンド・デューティまたはトロイカのビッドの時には、ビッダーは手札とタロンとの交換を行うことができます。

 交換するプレイヤーはタロンから決められた枚数のカードを他のプレイヤーに見せないで引いてきます。それを手札に加えて、その手札の中から同じ枚数のカードを裏向きに捨て札します。

 点数が5点のカードを捨て札することは出来ません。また、切札を捨て札することもできません。ただし、5点でない切札は他に捨てるものがなければ捨てることができます(この場合、捨てた切札は見えるように表向きにします)。

 捨て札は、捨て札したプレイヤーのものとして得点に計算されます。

 ファースト・デューティやセカンド・デューティの場合、ビッダーはタロンの上のほうから4枚のカードを交換します。そのあと、ビッダーの右隣のプレイヤーもタロンの上のカード1枚と手札を交換します。最後にその右隣のプレイヤーが残りの1枚を交換します。

 ビッダー以外のプレイヤーは交換を断ることもできます。誰かが断った場合、ビッダーの左隣のプレイヤーがタロンの最後のカードを交換することになります。2人以上が交換を断ることはできません。(交換を断ることがあるのは後で述べるバルウィーという手役を確定させるためです。)

 トロイカのビッドの場合、ビッダーは次のいずれかの行動を取ることができます。

 1)タロンの上のほうの3枚のカードを見て、それと手札を交換する(第1レベル)。下の3枚は誰もみることはできません。

 2)タロンの上のほうの3枚のカードを見た後、タロンの下のほうの3枚のカードも見て、それと手札を交換する(第2レベル)

 3)タロンの上のほうの3枚のカードを見た後、タロンの下のほうの3枚のカードも見るが、上のほうの3枚と手札を交換する(第3レベル)

 トロイカの場合、交換しなかった3枚は他のプレイヤーが交換することは出来ませんが、ビッダーの相手方のものとして得点に計算されます。

 ソロの場合には、タロンのカードは誰も見ることが出来ません。ビッダーの相手方のものとして得点に計算されます。

降伏

 ファースト・デューティのビッドのとき、パートナー指名のために指定したカードをビッダーがタロンから引いてきた場合には、「降伏」をすることができます。この場合、ビッダーは他の3人のプレイヤーにそれぞれ10チップずつ支払って、プレイを行わないでこのディールを終了します。(降伏しない場合には、ビッダーは他の3人を相手に戦うことになります。)

 セカンド・デューティではこのような場合でも降伏することはできません。

宣言

 タロンのカードの交換の後、プレイが始まる前に、次の宣言を行うことができます。宣言により得点が変わってきます。

 宣言には次の種類があります。

  1. ボーナスの予告: ボーナスの得点を得ることを予告して得点を多くしようとするもの
  2. 手役: 自分の手札のカードの組み合わせを宣言して得点を得るもの
  3. ダブル: ゲームの得点やボーナスの得点を倍にするもの

 ボーナスの予告やダブルの宣言を行うときには、自分がどちらのチームであるかを言わなければなりません(それまでに明らかになっていない場合)。

ボーナスの予告

 1)パガットの予告

 パガット(切札1)のカードを持っているプレイヤーは、「パガット」の予告を行うことができます。これは、最後のトリックでパガットのカードを出してトリックに勝つことを予告するものです。

 パガットの予告をしたプレイヤーは、プレイの規則が許す限り、最後のトリックまでパガットを使わないようにしなければなりません。

 2)バラットの予告

 1つのチームが全トリックを取ることをバラットと呼びます。プレイヤーはだれでもバラットを予告することができます。

手役の宣言

宣言 内容 得点
タロキー(Taroky)  10枚か11枚か12枚の切札 10
タロッチー(Tarocky)  8枚か9枚の切札 5
バルウィー(Barvy)  切札がないか、パガットしかない 10
バルウィッチー(Barvichky)  1枚(パガット以外)か2枚の切札 5
トルル(Trul)  スキューズ、モンド(切札21)、パガット(切札1)の3枚 5
ハネリー(Honery)  5点のカードが4枚以上 5
クラォブスケ・ハネリー(Kralovske honery)  キングが4枚 10

  1人のプレイヤーの手札に上記のカードがあれば、そのプレイヤーは手役を宣言できます。手役を宣言しても、手札を見せる必要はありません。手役の得点もチームに対してつきます。

 手役は重複することができますが、ハネリーとクラォブスケ・ハネリーの重複だけはできません。

ダブル

 プレイによる得点、パガットの予告、バラットの予告のそれぞれに対して、ダブル(flek/kontra)を宣言して得失点を2倍にすることができます。プレイによる得点は誰でもダブルをかけることが出来ますが、パガットの予告やバラットの予告に対してダブルをかけることができるのはその宣言を行ったプレイヤーの相手側のチームのプレイヤーだけです。

 ダブルの宣言があると、その相手側のチームのプレイヤーはそれに対してリダブル(reflek/rekontra)をかけて得失点を4倍にすることができます。

 リダブルの宣言があると、最初にダブルをかけたチームのプレイヤーはそれに対してリリダブル(super/superkontra)をかけて得失点を8倍にすることができます。

 「セカンド・デューティ」の場合には、プレイによる得点とパガットの予告による得点は別々にダブルの対象になります。

宣言の順序

 宣言はビッダーから始めて反時計回りにおこないます。ダブル(リダブル、リリダブル)以外は1巡しか回りません。

 ダブルなどは、宣言する権利のある各プレイヤーに1度だけ機会を与えるように順番を回します。

プレイ

 プレイはトリックテイキングゲームのルールに従いますが、次の規則があります。

 最初のリードはディーラー(ビッダーではない)の右隣のプレイヤーが行います。

 プレイは反時計回りに行います。

 切札がリードされたときには、切札を持っていれば、切札のカードを出さなければいけません(マスト・フォローと言います)。持っていなければ、何を出してもかまいません。

 切札以外のカードがリードされたときには、リードされたスートを持っていればそのスートのカードを出さなければなりません(マスト・フォロー)。リードされたスートを持っていなくて、切札を持っていれば切札を出さなければいけません(マスト・ラフと言います)。それ以外の時には何を出してもかまいません。

 トリックに勝ったら、勝ったプレイヤーが出されたカードを裏向きにして回収しますが、そのカードはそのプレイヤーの前に置かれます(チームごとにまとめて置いてもかまいません)。

得点

 プレイ後の得失点は、得点を得るほうのチームのそれぞれのプレイヤーが、相手チームのそれぞれのプレイヤーから決められた点数のチップをもらうことで行われます。

 例えばAチーム、Bチーム2人ずつのチームの場合、Aチームが5点の得点ということになれば、Bチームの1人のプレイヤーがAチームの1人のプレイヤーに5点のチップを与え、Aチームのもう1人のプレイヤーがBチームのもう1人のプレイヤーに5点を与えます。

 Aチームが1人の場合で、5点の得点ならば、Bチームの3人のプレイヤーがそれぞれ5点のチップをAチームの1人だけのプレイヤーに与えることになります。逆にBチームの5点の得点ならば、Aチームの1人だけのプレイヤーがBチームの3人のプレイヤーそれぞれに5点ずつ与えます。

プレイによる得点

 取ったカードの点数が多かったほうのチームが、35点を超える1点ごとに次の得点を得ます。

ファースト・デューティ 1
セカンド・デューティ 1
トロイカ 第1レベル 1
トロイカ 第2レベル 2
トロイカ 第3レベル 3
ソロ 6

 どちらも35点だった場合には、ビッダーのいないほうのチームが得点1を得ます。

 ダブル、リダブル、リリダブルのかかっている場合にはこの点数を2倍、4倍、8倍します。

パガット

 最後のトリックにパガット(切札1)を出して、トリックに勝った場合、そのチームは10点得点します。もしパガットが負けたら(同じチームのプレイヤーが勝った場合でも)、相手チームが10点得点します。

 パガットの予告をしてこれに成功した場合は、10点でなく20点の得点になります。パガットの予告をしていて、最後のトリックにパガットを出せなかったり、出しても負けた場合には、相手側の20点得点になります。

 ダブル、リダブル、リリダブルのかかっている場合にはこの点数を2倍、4倍、8倍します。

バラット

 全トリック(全点数ではない)を取ったチームは70点得点します。これはプレイの得点に加えてもらうことができます。

 バラットの予告をしていた場合、成功すれば140点得ますが、全トリック取れなければ相手側が140点得ます。

 ダブル、リダブル、リリダブルのかかっている場合にはこの点数を2倍、4倍、8倍します。

手役

 手役を宣言したプレイヤーの属するチームは、手役の表にあった点数を得点します。プレイで失敗した場合でもこの点数は得ることができます。

ワルシャワ (Varsava)

 ビッドのとき、ディーラーの右隣のプレイヤーがファースト・デューティのビッドを行い他の3人がパスをしたとき、ディーラーの右隣のプレイヤーはワルシャワを宣言することができます。

 ワルシャワでは、各プレイヤーがチームを組まないで戦い、できるだけ点数を取らないようにプレイします。カード交換はしません。

 通常どおりディーラーの右隣が最初のリードを行います。フォローできなければ切札を出さなければならないことも同じですが、さらに次のプレイの規則が加わります。

  1. 可能ならば、そのトリックで今までに出ているカードよりも強いカードを出さなければなりません(マストウィン)。
  2. パガット(切札1)を持っていた場合、他の切札を使い切ってしまうまでは、パガットを出すことはできません。
  3. モンド(切札21)しか切札を持っていない場合やモンドとスキューズしか切札を持っていない場合を除き、モンドをリードすることはできません。また、モンドしか切札を持っていない場合を除き、そのトリックですでにスキューズが出されているときにモンドを出すことはできません。

 ワルシャワではパガットやバラットのボーナスや宣言や手役はありません。

 最もたくさん点数を取ったプレイヤーが他の3人のプレイヤーそれぞれにチップを払います。取った点数が29点以下なら10チップ、39以下なら20チップ、それ以上なら40チップずつです。1トリックも取らなかったプレイヤーに対しては2倍のチップを払います。

 最もたくさん点数を取ったプレイヤーが2人同点の場合には、半分ずつ支払います。


注1

 タロキー(taroky) は複数形で、単数形は tarok です。

注2

 ディールのとき向かい側のプレイヤーがカットしないでカードの上を触るだけだった場合、タロンに6枚を配った後、ディーラーはまとめて12枚ずつ配り、12枚の山を4つ作ります。ディーラーの右隣から、自分の手札にする山を選んで受取ります。

注3

 時間節約のために、ファースト・デューティのビッドが成立して、ダブルやパガットやバラットの宣言がなにもなかった場合には、プレイを行わないで、ビッドしたチームが1ポイントだけ得点し、手役も支払って終わりにするのが一般的だということです。