2002年3月2日 赤桐裕二
スイス東部のグリソン州カルトンで行われているタロットカードのゲームです。イタリアのタロットの系統の78枚のカードを使います。ここはロマンシュ語の圏内なので、用語の多くはこの言葉です。
3人〜6人でプレイしますが、ここでは4人ゲームを紹介します。
4人ゲームの場合には向かい合った2人がパートナーになります。
このゲームでは78枚のカードを使います。
パックは次のカードからなります
1)21枚の切札。21が最も強く20,19,18, ... 2,1と続きます。フランス系のタロットカードはこのようにアラビア数字でかかれていますが、現地で使われているカードではローマ数字でXXI,XX,..Iなどと書かれています。
2)「愚者」のカード。フランス語で"La Mat" と書かれていますが、ロマンシュ語では"il narr"と呼んでいるようです。
3)56枚の普通のカード
ソード、バトン、カップ、コインの4つのスートがあります。
ソードとバトンのカードは、強いカードから順に、キング、クイーン、カバロ、ジャック、10、9、8、7、6、5、4、3、2、Aです。フランス系のタロットカードでは、スペードとクラブがこれに当たります。
カップとコインのカードは、強いカードから順に、キング、クイーン、カバロ、ジャック、A、2、3、4、5、6、7、8、9、10です。フランス系のタロットカードでは、ハートとダイアモンドになります。
このゲームはトリックテイキングゲームですが、取ったトリックに含まれるカードの点数により得られる得点が決まってくるゲームです。
各カードの点数は次の通りです:
切札の21 |
5 |
切札の1 |
5 |
愚者 |
5 |
各キング |
5 |
各クイーン |
4 |
各カバロ |
3 |
各ジャック |
2 |
上記以外のカード |
1 |
さらに、取ったカード4枚を1セットにして、各セットにつき、3点を減点していきます。2枚の余りカードが出ることがありますが、その場合には1点減点します。
全点数の合計は72点になります。
誰かがカードをシャッフルして各プレイヤーに1枚ずつ表向きに配っていきます。切札がプレイヤーに配られたら、そのプレイヤーにはもう配りません。
全員に切札が配られたら、最も強い切札を配られたプレイヤーと次に強い切札を配られたプレイヤーがパートナーになり、残りの2人もパートナーになります。最初のディーラーは最も弱い切札を配られたプレイヤーです。
ディーラーは ディールごとに反時計回りに交代していきます。
ディーラーはシャッフルを行い、左隣のプレイヤーがカットします。ディーラー以外のプレイヤーはカットした後のパックの1番下のカードを見ることができます。ディーラーは各プレイヤーに12枚ずつ配ったあとではじめて、そのカードを見ることができます。(普通の3回に分けて配るやり方のときはこのようにしますが、2回に分けて配るときや1回で配ってしまう場合には、ディーラーも最初からそのカードを見ることができます。)
ディーラーは各プレイヤーに19枚ずつカードを配りますが、自分にだけは21枚配ります。通常は3回に分けて配ります。つまり、6枚ずつ2回配った後、3度目は7枚ずつ配り、自分には9枚配ります。配る順序は自分の右隣からはじめて、反時計回りになります。
各プレイヤーに最後に配るカード(各プレイヤー1枚ずつ)は表向きに配ります(これは2回に分けて配るときや1回で配る場合も同じです)。
9ポイント以上負けているほうのチームは、2回に分けて配るようにさせることができます。最初に9枚配り、次に10枚(ディーラーには12枚)配るわけです。
18ポイント以上負けているチームは、1回で配るようにさせることができます。つまりディーラー以外には19枚ずつまとめてl配り、ディーラーには残りの21枚を配るわけです。この場合には、ディールの前にシャッフルはしません。カットだけです。また、負けているチームは前回自分たちが取ったカードを自由に並べ替えておくことができます。
1回ずつカードが配られるごとに、プレイヤーは配りなおしをするかどうかのビッドを行います。(3回に分けて配られる場合には3回ビッドがあるわけです)。配りなおしをすることになったら、ディーラーはカードを回収してシャッフルし、最初から配りなおします(同じディーラーが配りなおしをします)。
ビッドはディーラーの右隣のプレイヤーから初めて反時計回りに1人ずつ行います。
まず最初のプレイヤーは、「続行する」と宣言するか、パスをします。「続行する」と宣言した場合には、直ちに次のカードが配られます(最後の配りだった場合には、プレイが始まります)。パスをする場合には後述するように自分の手の情報を一部述べることができます。
最初のプレイヤーがパスならば、次のプレイヤーも同じように「続行する」と宣言するか、パスをすることができます。パスをするならば同様に自分の手の情報を言うことができます。
2番目のプレイヤーもパスならば、3番目のプレイヤーは、続行することにするか、配りなおしをするかを決めることができます。あるいはパスをしてディーラーに決定をまかせることもできます。
3人パスの場合には、ディーラーが配りなおしをするかどうかを決定します。
なお、全部のカードを配った後でディーラーに1枚も切札が配られていなかった場合には、上記のビッドとは別に、ディーラーは配りなおしをすることができます。
プレイを行う前に、ディーラーは2枚のカードを裏向きに捨て札します。捨て札したカードをスカルト(scart)と呼びます。
5点のカード(切札21、切札1、愚者、キング)を捨て札することはできません。その他のカードは自由に捨て札できます。
スカルトは、プレイの後に、ディーラーの取ったカードとして点数を計算します。ただし相手チームが全トリック取った場合には、スカルトは相手チームのものとなります。
プレイはトリックテイキングゲームのルールに従いますが、次の規則があります。
最初のリードはディーラーの右隣のプレイヤーが行います。
プレイは反時計回りに行います。
切札がリードされたときには、切札を持っていれば、切札のカードを出さなければいけません。持っていなければ、何を出してもかまいません。
切札以外のカードがリードされたときには、リードされたスートを持っていればそのスートのカードを出さなければなりません。リードされたスートを持っていなくて、切札を持っていれば切札を出さなければいけません。それ以外の時には何を出してもかまいません。
プレイされたカードに切札が含まれているときには、最も強い切札を出したプレイヤーがトリックに勝ちます。切札がない場合には、リードされたスートで最も強いカードを出したプレイヤーが勝ちます。
トリックに勝ったら、勝ったプレイヤーが出されたカードを回収し、裏向きにそのプレイヤーまたはパートナーの前に置きます。同じチームのカードはいっしょにしておきます。
「愚者」のカードには特別な規則があります。
各スートのカードが最初にリードされたときに、そのスートのキングがトリックに勝った場合、もしプレイされたカードのなかにジャックがなければ、勝ったプレイヤーは「ジャック交換(lecra)」と宣言できます。この場合、そのスートのジャックを持っているプレイヤーは自分のプレイしたカードとジャックを交換しなければなりません。(キングを出したプレイヤーがジャックを持っている場合にはこの宣言はできません)。
「ジャック交換」のかわりに「条件つきジャック交換」と宣言することもできます。この場合には、交換すべきカード(プレイしたカード)がクイーンかカバロだった場合には、交換しません。
同じスートのキングとジャックを持っているプレイヤーは、そのスートの最初のリードの時に、両方のカードを出すことができます。トリックのプレイ終了後、そのプレイヤーはプレイされたカードのなかから絵札以外のカードを1枚取って手札に入れます。
プレイが終わると、各チームは自分たちの取ったカードの点数を数えます。各チームはカードの点数から36点を引いた点数をプラスまたはマイナスの得点とします。各チームの得点の絶対値は同じになるはずです。
4ディールで1ゲームの終了とします。
配りなおしをするかどうかのビッドのときに、最初の2人がパスをしながら言えることは、切札の内容や、キングに関連する絵札の内容などだけです。スートの名前を言うことはできません。
言えることは次の中のいずれかとしておきます。
切札の枚数について言う
特定の切札の強さについて言う
切札の1について言う
愚者について言う
絵札について言う
全体的な手の内容について言う
なお、実際のスイスでのゲームではもう少し複雑であり、スイスの谷の名前と、その谷の中の地名を使って表現したりします。低い場所の地名ほど強いカードを表すようです。