1999/10/2 赤桐裕二
スイスのタロットカードですが、今ではほとんどプレイされていないようです。
愚者のカードの扱いに独特のルールを持ったゲームであり、愚者を特殊なカードとして扱う古いタイプのタロットカードから、愚者を最も強い切札とする新しいタイプのタロットゲームへの移行途中のルールといえます。
それ以外のルールはきわめてオーソドックスなものであり、ビッドや得点の分かりやすさや、プレイヤーの人数の融通がきく点などから、プレイしやすいゲームです。面白くてお勧めできるゲームです。
ルールはJohn McLeod氏のホームページ(http://www.pagat.com/)によります。
3人〜8人。7人か8人がベスト。
7人以上の場合は、臨時のパートナーを作ってプレイを行います。まずは6人以下のルールを紹介します。
イタリア風のスートを持ったスイスのタロットカードを使います。62枚のカードを使います。
カップ(聖杯)、コイン(貨幣、スイス風に言えば「花」または「薔薇」)、ソード(剣)、バトン(棍棒)の4つのスートがあります。各スートは10枚です。
カップとコインのカードは、強いものから順に次の通りです(数札は実際のスイスのタロットではローマ数字になっているようです):
キング、クイーン、カバロ、ジャック、1、2、3、4、5、6
ソードとバトンのカードは、強いものから順に次の通りです:
キング、クイーン、カバロ、ジャック、10、9、8、7、6、5
その他に、21枚の切札のカードがあります。1(I)から21(XXI)までのローマ数字が大きく書かれています。数字の大きいほうが強いカードです。
さらに、ベトラー(Baetler、愚者)と呼ばれるカードがあります。このカードも切札として扱われ、最強の切札となりますが、後で述べるように特別な使い方もできます。
なお、プレイを行うためには、フランスのタロットカードを使ったほうがやり易いでしょう。その場合にはスートはカップとコインの代わりにハートとダイアモンド、ソードとバトンの代わりにスペードとクラブとなります。
それぞれのカードには次の点数があります。
ベトラー、切札21、切札1 | 5点 |
各キング | 5点 |
各クイーン | 4点 |
各カバロ | 3点 |
各ジャック | 2点 |
それ以外のカード | 1点 |
全カードの合計点は114点になります。
最初のディーラーは任意のやり方でランダムに決めます。次回からは反時計回りに交代します。
ディーラーはまず何枚かのカードをタップ(Tapp=タロン)としてテーブルに裏向きに置き、残りのカードをプレイヤーに全部配ります。
タップの枚数と、プレイヤーに配る枚数は次の通りです。
プレイヤーの数 | タップの枚数 | 各プレイヤーに配る枚数(1度にまとめて配る枚数) |
3人 | 8枚 | 18枚(6枚、6枚、6枚) |
4人 | 10枚 | 13枚(4枚、4枚、5枚) |
5人 | 7枚 | 11枚(4枚、4枚、3枚) |
6人 | 8枚 | 9枚(4枚、5枚) |
7人 | 6枚 | 8枚(4枚、4枚) |
8人 | 6枚 | 7枚(4枚、3枚) |
ディールが終わると、プレイを始める前にビッドを行います。
ビッドに成功したプレイヤーをタッピスト(Tappist)とよびます。タッピストは、他のプレイヤー全員を敵に回してプレイをすることになります。
カードには前に説明したような点数がありますが、タッピストはプレイでカードを取って、全点数の半分以上つまり57点以上を得ることが目的になります。
ビッドは、ディーラーの右隣のプレイヤーからビッドを始め、反時計回りにビッドを進めます。各プレイヤーは1度だけしかビッドに参加できません。
ビッドの番になったプレイヤーは「やります(ich nehm's/ich gehe)」と宣言するか「ソロ(Solo)」と宣言することができます。どちらも言いたくないときには「パス」と言います。
「やります」と言ったプレイヤーがいた場合には、それ以降のプレイヤーは「ソロ」を宣言することしかできません(もちろんパスはできます)。
最後に「ソロ」または「やります」と宣言したプレイヤーがタッピストになります。
全員がパスをした場合には後述するミゼールのゲームを行います。
タッピストは、プレイの始まる前に手札とタップとの交換を行うことができます。ただし「ソロ」を宣言したプレイヤーは交換できません。
タッピストはまずタップ全部を取って手札に加えます。タップは他の人に見せる必要はありません。それからタップの枚数と同じだけのカードを捨て札します。捨て札も他の人には見せません。
5点のカードを捨て札することはできません。ただし、キングが4枚あった場合に限り、4枚のキング全部を捨て札することはできます(この場合も見せる必要はありません)。それ以外の捨て札の制限はありません。
捨て札されたカードの点数は、タッピストのものになります。
ソロの場合は、タップの交換はできず、プレイが終わるまで誰もタップを見ることはできませんが、タップのカードの点数はタッピストのものになります。
このゲームではプレイは常に反時計回りに行います。プレイはトリックテイキングゲームです。
まず、タッピストが自由に手札の中の1枚のカードを選んでテーブルに出します(これをリードすると呼びます)。
つぎにその右隣のプレイヤーが手札からカードを1枚出します。
リードされたカードが切札であった場合は、手札に切札がある場合には切札を出さなければなりません。ない場合にはどのカードを出してもかまいません。
リードされたカードがそれ以外のスートのカードであった場合には、そのスートのカードが手札にあれば、そのスートのカードを出さなければなりません。ない場合には切札を出さなければなりません。切札も持っていない場合にはどのカードを出してもかまいません。
それ以降のプレイヤーもリードされたカード(最初に出されたカード)に従って同じようにプレイします。
こうして全員が1枚ずつカードを出すと、トリック終わったことになります。
出されたカードの中に切札がある場合には、一番強い切札を出したプレイヤーがこのトリックに勝ちます。切札がない場合には、リードされたスートで最も強いカードを出したプレイヤーがこのトリックに勝ちます。
勝ったプレイヤーはこのトリックに出された全部のカード(これもトリックと呼ぶ)を取ったことになり、自分のところに裏向け向けに置きます(手札には加えない)。
トリックに勝ったプレイヤーが次のリードを行い(手札から自由に1枚を出し)、同様にプレイが続きます。
このようにプレイを続けて、手札を使いきったらプレイは終了です。
ベトラーは最も強い切札ですが、次の特別ルールがあります。
前記のルールに従えば、切札をリードされた場合や、切札以外をリードされてそのスートのカードを持っていない場合、切札を持っていれば必ず出さなければなりませんが、手札に残っている切札が1枚だけでそれがベトラーだった場合に限り、それを出さないで自由に他のカードを出すことができます。
ただし1度でもそれを行うと、それ以降、プレイの最後のトリックまでベトラーを使うことができません。最後のトリックでは、ベトラーを出したプレイヤーはトリックに勝つことはできませんが、ベトラーはトリックに勝った人のものにはならないで、ベトラーを持っていた人のものになります。ベトラーを持っていたプレイヤーは、その代わり、自分の側のプレイヤーの取ったカードの中で最も点数の低いカードを1枚、トリックに勝ったプレイヤーに渡します。(もしベトラーを持っていた側が1トリックも勝っていなければ、ベトラーはトリックに勝ったプレイヤーのものになります。)
なお、このような場合で、最後のトリックでベトラーをリードしたときには、その次にプレイするプレイヤーはどのカードを出してもかまいません。そのプレイヤーが出したカードをリードされたカードとして扱います。この場合も、ベトラーは最も弱いカードになります。
ゲームが始まる前に、プレイヤーに同数のポーカーチップを配っておきます。(実際には現金をそのまま使っていたようですが。)
プレイが終わったら、タッピストは取ったカードの点数と捨て札(ソロの場合はタップ)の点数を合計します。それが58点以上ならタッピストの勝ち、56点以下なら負け、57点なら引き分けとなります。
タッピストが勝った場合は、他の全プレイヤーの1人1人から、1チップずつをもらううことができます。相手側が30点以下しか取っていない場合には2チップをもらうことができます。相手側が1トリックも取らなかった場合には3チップになります。
タッピストが負けた場合には、タッピストは1チップずつ他の全プレイヤーの1人1人に払わなければなりません。タッピストが30点以下しか取っていない場合には2チップ、1トリックも取らなかった場合には3チップになります。
ソロの場合には、上記のチップの数はさらに2倍となります(2チップ/4チップ/6チップになるわけです)。
引き分けの場合は、チップの受け渡しはありません。
ビッドのとき全員がパスをしたら、ミゼールのプレイを行います。タップは使いません。
ディーラーの右隣のプレイヤーが最初のリードを行います。プレイのルールは通常のプレイと変わりませんが、プレイの目的は点数をできるだけ取らないことです。
プレイが終わると、取った点数の最も高いプレイヤーが、他の全プレイヤー1人ずつに、1チップずつ払わなければなりません。(最も高い点数が同点の場合の扱いはよく分からないのですが、同点のプレイヤー全員がそれ以外のプレイヤー全員に1チップずつ払うことになると思います。)
全員がパスをした場合、ベトラーを持っているプレイヤーがタッピストになります。ベトラーがタップの中にある場合は、切札の1を持っているプレイヤーがタッピストになります。それもタップの中ならば、ミゼールのプレイを行います。
タッピストになったプレイヤーは、タップとの交換のあと、カードを指定して、そのカードの持ち主をパートナーにすることができます。ただし、ベトラーや切札の21のカードを指定することはできません。
パートナーは、指定されたカードをプレイするときまで、自分がタッピストのパートナーであることを明かしてはなりません。
手札や捨て札(ソロの場合は取らなかったタップ)にあるカードを指定することもできます。この場合、パートナーなしでプレイすることになります。
タッピストのチームが勝った場合(タッピストとパートナーの点数を合わせて58点以上になった場合)には、それ以外のプレイヤーはそれぞれ1チップずつを支払います。支払われたチップのうち、パートナーは2チップをもらい、タッピストは残り全部をもらいます。
タッピストのチームが負けた場合は、パートナーは2人の敵に1チップずつ払い、残りの敵へはタッピストが1チップずつ払います。
相手の点数やソロのプレイによって、通常通り、チップは何倍かになることがあります。