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トルッコ(truco)

2006/4/1 赤桐

 南アメリカで広くプレイされているゲームだそうです。トリックテイキングゲームですが各種のビッドで点数が変わります。ここではアルゼンチンやブラジル南部でプレイされているルールを紹介します。ルールはJohn MaLeod氏のサイト(http://www.pagat.com/)によります。


人数

 2人、4人、6人。4人ゲームをまず紹介します。

 4人ゲームでは、向かい合った2人がパートナーになります。

カード

 40枚のスパニッシュパックのカードを使います。剣、棍棒、聖杯、貨幣の4つのスートからなり、各スートは、レイ(12)、カバリョ(11)、ソータ(10)、アス)からなります。(スパニッシュパックはを含む48枚のこともありますが、多くのゲームではこのように40枚しかカードを使用しません。)

 普通のカードを使う場合は、レイ=キングカバリョ=クイーンソータ=ジャックとして、10のカードを取り除けばよいでしょう。

 このゲームでは4枚の特別に強いカードがあります。それをカルテス・ブラバスと呼びます。強い順に次の4枚です:

  1. 剣のアス(SA
  2. 棍棒のアス(CA
  3. 剣のS
  4. 貨幣のD

 それ以外のカードの強さの順位は次の通りです。スートは関係ありません:

  3アス)、12レイ)、11カバリョ)、10ソータ)、

パートナー決め

 各プレイヤーは1枚ずつ順にカードを取っていき、最初にキングを引いたプレイヤーと2番目にキングを引いたプレイヤーがパートナーになります。最初にキングを引いたプレイヤーが最初のディーラーになります。

 このようにしないで、合意によってパートナーを決めてもかまいません。

ディール

 ディーラーは、右隣のプレイヤーから配り始めて、1枚ずつ3枚のカードを反時計回りに配ります

 ディーラーはディールごとに反時計回りに交代します。

 ディーラーの右隣のプレイヤーをマノ(mano)と呼びます。

ゲームの概要

 トリックテイキングゲームの一種ですが、配られた手札には点数があり、その点数が多いプレイヤーはビッドをすればプレイの前にそれによって得点することができます。これをエンビド(Envido)と呼びます。

 トリックテイキングのプレイを始めてからも、プレイの結果の点数を増やすようなビッドを行うことができます。

 なお、元来のルールでは、フロールと言って配られたカード3枚がすべて同じスートだと得点できるようなルールがありましたが、アルゼンチンではこのルールを使わないことが多いということや、あまり起こらないような点で非常にルールが煩雑なので省略しました。オプショナルルールとして後に記述します。

 各チームのゲームの目的は先に30点を取ることです。

エンビド(Envido)

 配られた手札にはエンビドの強さの点数があります。エンビドについてのビッドを行えば、それに基づいて得点できることがあります。(エンビドの強さの点数と得点の点数は違います。)

 手札の中で2枚のカードが同じスートの場合、エンビドの強さの点数はその2枚の点数を足したものに20点を加えたものになります。カードの点数はのカードはその点数。それ以外は0点です。手札の3枚がすべて同じスートの場合は、点数の高い2枚の合計に20点を足したものががエンビドの強さの点数となります。3つのカードがすべて違うスートの場合には、そのなかの最も高い点数のカードの点数がそのままエンビドの強さの点数になります(20点は足しません)。

 エンビドについてのビッドは誰でも順序に関係なく行うことができます。最初のビッドのあとは、各チームが交代でビッドすることになりますが、チームのどのプレイヤーがビッドしてもかまいません。ただし、プレイを始めていたり後で述べるトルッコについてのビッドを行っているプレイヤーは最初のエンビドのビッドをすることはできません(あとでビッドに参加することはできます)。

 エンビドについての最初のビッドは次の3種類の1つを行えます。得点が異なるだけです。

エンビド(Envido)
得点を2点とします。
レアル・エンビド(Real Envido)
得点を3点とします。
残り点数(ファルタ・エンビド Falta Envido)
得点を、今までの累計得点が多いほうのチームが30点に到達するのに必要な点数分とします(30点 - リードしているチームの累計点)。

 これに対して、相手チームは次の5つのビッドの1つで答えなければなりません:

エンビド(Envido)
得点を2点多くします。
レアル・エンビド(Real Envido)
得点を3点多くします。
残り点数(ファルタ・エンビド Falta Envido)
得点を、今までの累計得点が多いほうのチームが30点に到達するのに必要な点数分とします(30点 - リードしているチームの累計点)。
受けます(キエロ Quiero)
相手のビッドを受け入れビッドを終了します。
降ります(ノ・キエロ No Quero)
相手チームのエンビドのほうが強いと認めます(実際にはそうでない場合でも)。 最初のビッドに対してこのビッドをしたときは得点は1点になります。そうでない場合には、得点は相手が上げる前の点数となります。

 どちらかが「受けます」または「降ります」を宣言するまで、このような宣言を繰り返します。ただし:

 なお、「残り点数」の方がエンビドやレアル・エンビドによってビッドされてきた得点より低くなることがありますが、そのような場合でも「残り点数」をビッドすることはできます。

 「受けます」でビッドが終わったときは、マノ(ディーラーの右隣)から始めて反時計回りに自分のエンビドの強さの点数を宣言していきます(カードを見せる必要はありません)。ただし、自分の点数以上の点数が先に宣言されている場合にはパスを宣言します。自分のパートナーがその時点でもっとも大きい点数だった場合には、自分の点数がそれより大きくてもパスをすることができます。その場合、相手プレイヤーがもっと大きい点数を宣言したら、その後で自分の点数を宣言することもできます。

 強さの点数が同じ場合には、マノから始めて反時計回りで早い順番のプレイヤーの方が強いエンビドを持っているとみなされます。

プレイ

 マノ(ディーラーの右隣)が最初のリードを行います。トリックテイキングゲームですが、同じスートをフォローする必要はなく、どのカードを出してもかまいません。スートに関係なく強いカードが勝ちます(カルテス・ブラバスと呼ばれる4枚が特に強く、がそれに続くことに注意してください)。通常通り、勝ったプレイヤーが次のリードを行います。

 プレイしたカードは勝ったプレイヤーが取らないで、そのまま各プレイヤーの前に置いたままにします(最後に、エンビドで宣言した強さの点数が正しかったかどうか確認します)。

 1つのトリックで最も強い同じ強さのカードが2枚以上あった場合には、引き分けとなります。次のリードは前回リードをしたプレイヤーが行います。ただし、それらのカードが同じチームのプレイヤーのものであった場合には、そのチームの勝ちとなり、次のリードは最初にカードを出したほうのプレイヤーが行います。

 プレイで勝ちとなるのは次のチームです:

 勝ったチームは1点を得点します。

 ただし、次のようなビッドがあると、点数は増えます。これらのビッドはいつでも行うことができます(プレイの前でもトリックのプレイの最中でも)。チームのどちらのプレイヤーがビッドしてもかまいません。

トルッコ(Truco)
プレイの点数を2点にしようという提案です。相手は「受けます(キエロ)」とビッドしてこれを受け入れるか、「降ります(ノ・キエロ)」と宣言してプレイの負けを認め相手に1点を得点させます。「降ります」の場合はそれ以上プレイを続ける必要はありません。
レトルッコ(Retruco)
トルッコに対して「受けます」をビッドしたチームだけがこれをビッドできます。「受けます」の直後にビッドしてもかまいませんが、後でいつでもビッドしてもかまいません。
プレイの点数を3点にしようという提案です。相手は「受けます」とビッドしてこれを受け入れるか、「降ります」とビッドしてプレイの負けを認め2点を得点させます。
バレ・トルッコ(Vale Truco)
レトルッコに対して「受けます」をビッドしたチームだけがこれをビッドできます。「受けます」の直後にビッドしてもかまいませんが、後でいつでもビッドしてもかまいません。
プレイの点数を4点にしようという提案です。相手は「受けます」とビッドしてこれを受け入れるか、「降ります」とビッドしてプレイの負けを認め3点を得点させます。

 バレ・トルッコより後のビッドはありません。

 あるチームの両方のプレイヤーが手札をすべてテーブルに裏向きに置いた場合には、「降ります」とビッドしたのと同じことになります。

 トルッコ、レトルッコ、バレ・トルッコのビッドがあり、「受けます」「降ります」のビッドをまだしていないときでも、プレイを行ってもかまいません。

 トルッコ、レトルッコ、バレ・トルッコのビッドがあり、「受けます」「降ります」のビッドをまだしていないときにエンビドのビッドがあった場合には、エンビドについてのビッドを先に行ってしまい、決着がついてから、これらのビッドの続きをするようにします。

ゲーム

 ディールの途中でも得点の累計が30点に達したチームがあれば、そのチームの勝ちで1つのゲームが終わります。

 3ゲームのうち2ゲームを勝ったチームを勝ちとすることが多いですが、1ゲームだけプレイすることもあります。


シグナル

 プレイヤーはプレイ中に自由に話すことができます。ただし、ビッドに用いる用語を、その用語が適用される場面で話した場合、ビッドしたとみなされます。

 そのほかに自分の手札について次のようなシグナルを用いることもできます。

得点の数え方

 最初の15点までをマラス(malas悪いもの)、次の15点をブエナス(buenas良いもの)と呼びます。例えば、1点ならば「1マラス」とよび、15点は「15マラス」、16点は「1ブエナス」、30点は「15ブエナス」になります。

 伝統的には、得点を数えるのに豆(protos)を使います。15点までは1点につき1つずつ豆を自分のチームに持ってきます。16点からはその豆を1点につき1つずつ返していきます。全部返し終わったら30点になります。


2人ゲーム

 4人ゲームと同じルールです。

6人ゲーム

 1人おきの3人がチームになります。次の2つの種類のプレイを繰り返します。

レドンダ(Redonda)
 
4人ゲームと同じようにプレイします。
 
ピカ・ピカ(Pica-pica)
 
まず全員に3枚のカードを配ります。
最初に、マノのプレイヤー(ディーラーの右隣)が向かいの相手(一番遠い席の相手チームのプレイヤー)と2人ゲームをプレイします。得点は通常通り累計していきます。
次に、マノの右隣のプレイヤーが向かいの相手とプレイします。
最後に、残った2人のプレイヤーがプレイを行います。

 最初はレドンダから始めます。どちらかのチームの累計点が25点以上になったら、その次に配るときからは、レドンダしかプレイしません。


フロール(Flor)

 フロールはこのゲームの本来のルールですが、運の要素が強くルールが難しいのでアルゼンチンではこのルールを採用しないことが多いということであり、実際にめったに起こらないような点でルールが煩雑なので、オプショナルルールとしておきます。

 フロールとは同じスートのカードを3枚配られている状態です。1人だけがフロールの場合は3点がもらえます。2人以上がフロールの場合には、最も強いフロールを持っているチームが、フロールを持っているプレイヤーの数に3点を掛けた点数をもらえます。

 フロールの強さは3枚のカードの点数の合計に20を加えたもので表されます。カードの点数はのカードはその点数。それ以外は0点です。例えば、11のカードがあれば2点+5点+0点+20点で27点となります。

 フロールを持っているプレイヤーは必ずフロールをビッドしなければなりません。フロールを持っているプレイヤーはエンビドのビッドはできません。フロールのビッドはそのプレイヤーがプレイやトルッコのビッドを行う前ならいつでもできます。最初のフロールのビッドは単に「フロール」と宣言します。

 誰かがフロールのビッドを行ったら、ビッドしたプレイヤーの右隣から反時計回りにビッドをしていきます。ただし、ビッドをできるのはフロールを持っているプレイヤーか、パートナーがフロールを持っていることを示すビッドをしているプレイヤーだけです。最初のビッドの時には自分がフロールを持っているかどうか明らかにしなければなりません。ビッドが1巡回ったら、そのあとは2つのチームが交互にビッドしていきますが、パートナーのうちどのプレイヤーがビッドしてもかまいません。

 フロールのビッドがあると、エンビドのビッドはすべて無効になります。トルッコのビッドのあとにフロールのビッドがあった場合、フロールについてのビッドを先に行ってしまい、フロールの決着がついてからトルッコのビッドを再開します。

 フロールのあとにビッドできるのは次の4種類のうち1つです。

フロールFlor
単にフロールをビッドします。相手チームがフロールをビッドしていないときはこのビッドしかできません。
全員がフロールをビッドして他のビッドがなければ、最も強いフロールを持っているチームが得点します。あるいは、相手チームはフロールのビッドに対してコントラ・フロールをビッドすることができます(他のビッドはできません)。
コントラフロールContraflor
相手チームがフロールをビッドしていて自分もフロールを持っている場合にこのビッドをすることができます。 フロールのビッドと同じですが、相手チームは後で述べる「受けます」「降ります」「残り点数」のいずれかを宣言しなければなりません。
フロールですが降りますコン・フロール・メ・アチコ Con flor me achico
相手チームがフロールをビッドしていて自分もフロールを持っている場合にこのビッドをすることができます。 相手チームのフロールのほうが強いと認めます(実際にはそうでない場合でも)。 ただし、自分のチームのフロールの点数はフロール1つにつき1点しか相手に加算されません。
この宣言があると、まだビッドしていないプレイヤーがいればフロールがあるかどうか宣言したあと、ビッドは終了します。
残り点数コントラフロール・アル・レスト Contraflor al resto
相手チームがフロールをビッドしていて自分もフロールを持っている場合にこのビッドをすることができます。 フロールがあることをビッドするだけでなく、強いフロールを持っているチームがもらう点数を、累計得点の多いほうのチームの点数が30点に到達するのに必要な点数にフレール1つにつき3点を加えたものにします(30点 - リードしているチームの累計点 + フロールを持っているプレイヤーの数 x 3点)。

 相手チームがコントラフロールをビッドしたときには、次のいずれかをビッドしなくてはなりません。

受けますコン・フロール・キエロ
ビッドを終了して、だれが最も強いフロールを持っているかを調べます。
降りますコン・フロール・メ・アチコ)
ビッドを終了して、相手チームのフロールのほうが強いと認めます(実際にはそうでない場合でも)。 ただし、自分のチームのフロールの点数はフロール1つにつき1点しか相手に加算されません。
残り点数コントラフロール・アル・レスト Contraflor al resto
強いフロールを持っているチームがもらう点数を、累計得点の多いほうのチームの点数が30点に到達するのに必要な点数にフレール1つにつき3点を加えたものにします(30点 - リードしているチームの累計点 + フロールを持っているプレイヤーの数 x 3点)。

 相手チームが「残り点数」をビッドしたときには、次のいずれかをビッドしなくてはなりません。

受けますコン・フロール・キエロ」)
「残り点数」のビッドどおりの得点にすることを認めます。ビッドを終了して、だれが最も強いフロールを持っているかを調べます。
降りますコン・フロール・メ・アチコ)
相手チームのフロールのほうが強いと認めます(実際にはそうでない場合でも)。 「残り点数」のビッドで提案された得点ではなく通常の得点計算になります。ただし、自分のチームのフロールの点数はフロール1つにつき1点しか相手に加算されません。

 例外的なビッド:

 両方のチームがフロールを持っていて、どちらのチームも「降ります」をビッドしなかった場合は、マノ(ディーラーの右隣)から始めて反時計回りに自分のフロールの強さの点数を宣言していきます。ただし、自分の点数以上の点数が先に宣言されている場合にはパスを宣言します。自分のパートナーがその時点でもっとも大きい点数だった場合には、自分の点数がそれより大きくてもパスをすることができます。その場合、相手プレイヤーがもっと大きい点数を宣言したら、その後で自分の点数を宣言することもできます。

 強さの点数が同じ場合には、マノから始めて反時計回りで早い順番のプレイヤーの方が強いフロールを持っているとみなされます。

 点数をまとめると:

  普通の場合
フロールを持っているプレイヤーの数 x 3点
  「残り点数」の場合
30点 - リードしているチームの累計点 + (フロールを持っているプレイヤーの数 x 3点)
  「降ります」があった場合
(自分のチームのフロールを持っているプレイヤーの数 x 3点) + 
(相手チームのフロールを持っているプレイヤーの数 x 1点)

フロールの指摘(Pedir Flor)

 プレイが終わった後で、相手チームの1人がフロールを持っているのにビッドしていないことが分かったら「フロール発見」と言って、3点を得ることができます。もしその指摘が間違っていたら相手チームが1点を得点します。


2006年4月1日になかよし村でプレイしました。ルールは結構面倒ですが、酒を飲みながらプレイするのがちょうど良いような軽いゲームという印象です。といっても、かなりの戦略性も持ちうるゲームなので、慣れてくればかなりの駆け引きが楽しめると思います。