2021/11/6 赤桐
中国の明や清の時代にプレイされていたトリックテイキングゲームです。
ここでは、Andrew Lo氏のThe Playing-Card誌での記事、およびAlone in the Fartというブログ(中国語なので機械翻訳した)を基にして書いています。彼らの記述は、明代後期の馮夢龍の書いた「馬弔脚例」を基にしていて、明代のルールになります。また、馬弔脚例の原文も参照しました。
また、大谷通順氏の馬掉牌考という論文なども参考にしましたが、主に清代のルールを扱っているため、ここのルールではあまり反映していません。
4人。
馬吊牌と呼ばれる40枚のカードを使用します。
文銭、索子、万字、十字(十万)という4つのスート(門)からなります。各スートのカードは、強いものから順に次のようになります。
万字門と十字門には、水滸伝の人物が描かれています。
各スートの最も強いカードは正賞または賞と呼ばれます。尊と呼ばれることもあります。 次に強いカードは次賞と呼ばれます。 最も弱いカードは極と呼ばれます。
ゲームの前に点棒(籌馬/ちゅうば)やポーカーチップのようなカウンターを各プレイヤーに同じだけ配分します。
このゲームの点数の単位は「注」になります。 ただし、1/2(0.5)注を扱うこともあります。
誰かがカードを4つの山に分けます。各プレイヤーはこの山の一番上のカードを1枚ずつ取ります。 最も強いカードを引いたプレイヤーが自由な席に座り、カードの強さの順に、反時計回りに座っていきます。
このときのカードの強さは、お金としての金額の順です。つまり、十字、万字、索子、文銭の順で、同じスートの中では数字の大きいほうが強くなります(文銭でも)。つまり、 万万が最強で、空没文が最弱です。
カードはもう1度集められた後、同じように4つの山に分け、もう一度各プレイヤーが一番上のカードを1枚ずつ取ります。 最も強いカードを取ったプレイヤーが親になります。
親はディールごとに反時計回りに交代します。 ただし、親が「大活百」とういう役を作った時だけは、交代しません。 また「異賞」(後述)があると、それを宣言したプレイヤーが次の親になります。
親の左隣のプレイヤーがカードをシャッフルします。
親の右隣のプレイヤーがカードをカットし、自分(親の右隣のプレイヤー)でカードを反時計回りに配ります。 配る前、カードの束を裏向きにして、カットした後の一番下のカードを全員に見せます。
このカードが1, 5, 9のとき、親の対面のプレイヤーからカードを配ります。 2, 6のときは、親の左隣からカードを配り始めます。 3, 7のときは、親からカードを配り始めます。 4, 8のときは、自分(親の右隣)からカードを配り始めます。 万万、千万、百万、空没文、半文銭は1とみなします。
カードは4枚ずつまとめて反時計回りに8枚配ります。
配り残りのカードは底のカード(配り始めるプレイヤーを決めたカード)が表になるように、束ごと表向きにして、テーブルに置きます。 この底のカードを「面張」と呼びます。その下にあるカードは、誰にも見えないようにします。
プレイ前に下記の組み合わせがあると宣言することができます。これを「異賞」と呼びます。 宣言があるとプレイは行われません。 宣言したプレイヤーは他の3人それぞれから下記の「注」(「注」とは1単位の掛け金)を貰えます。 異賞のときに貰える掛け金を「賀」と呼びます。 ただし百万(百老)を配られていたプレイヤーは賀を与えなくてかまいません。
名前 | 注 |
---|---|
四尊(万万、九万、九索、空沒文) | 4注 |
四尊と百万 | 5注 |
四尊と四極(二十万、一万、一索、九銭) | 8注 |
八紅 | 6注 |
百万入り八紅 | 7注 |
渾成(同じスートの8枚) | 4注 |
百万入り十門渾成(百万を含む十字スートの渾成) | 5注 |
全突大活(百万と九十万と五万と六万と八万) | 5注 |
八紅とは、赤い色の入ったカードで、万万、千万、百万(百万)、九万、八万、九索、八索、九銭、八銭、空沒文の10枚のうち8枚以上。
どちらにも当てはまるものは、すべて重複します。 例えば「八紅」で「百万入り八紅」のときは6+7=13注となります。
また、異賞のプレイヤーはプレイで全勝した(「全吊」)とみなされ、百万を配られていたプレイヤーを含む各プレイヤーからさらに1注もらいます。 (プレイしたときの全吊=八卓全收の清算方法とは異なります)。
異賞があると、異賞を宣言したプレイヤーが次の親になります(2人以上宣言したときは、親から反時計回りに近いプレイヤーにすればよいでしょう)。
異賞がなければ、手札に次の3つのどれかがある場合に宣言し、プレイを行わないことができます。 これを「免門」と呼びます。 (宣言しないでプレイすることもできます)。
四極の時は他の各プレイヤーは免門のプレイヤーに1注を与えます(親や百万を配られたプレイヤーでも1注を与えます)。 それ以外のときは、支払いはありません。
このゲームはトリックテイキングゲームです。
ディールのときカードを最初に配られたプレイヤーが最初のリードを行います。 つまり、表向きにカードを1枚場に出します。
リードの後、各プレイヤーはカードを表または裏にしてプレイします。
表向きにプレイするときは、リードされたカードと同じスートで、今までにそのトリックでプレイされているどのカードより強いカードでなければなりません。 裏向きにプレイするときは、どのカードをプレイしてもかまいません。
最も強い表向きのカードをプレイしたプレイヤーがそのトリックに勝ったことになります。
後で確認できるように、プレイしたカードは各プレイヤーの前に、プレイしたときの表裏のまま1列に順に並べ、 勝ったカードは少し前(テーブル中央寄り)に出す(あるいは負けたカードを横向きにする)ようにすれば良いでしょう。
3トリック以上取ることは、「吊」と呼びます。 2トリックに達せず吊るされることを、「死」と呼びます。
取得トリック数 | 注 |
---|---|
3トリック以上(吊) | 1注 |
2トリック | 0 |
1トリッ以下(死) | -1注 |
ただし、吊のプレイヤーが2人いて、死のプレイヤーが1人だけのときだけは、 吊の各プレイヤーの得点は0.5注となります。
トリックに勝つことを「上卓」と呼びます。
また、「(カードの名前)を上卓する」とは、そのカードを自分で出して、プレイに勝つことです。 例えば、九万を上卓するとは、手札に九万があり、それを出してプレイに勝つことです。 そのカードをリードした場合だけでなく、他のプレイヤーのリードでそのカードを出して勝っても構いません。
ディールで2トリック勝つことを「正本」と呼びます。 3トリック以上取っても、「正本した(正本あり)」という条件にあてはまります。
次の役があります。
名前 | 内容 | 正本 | 注数 |
---|---|---|---|
賞 | 正賞(面張が正賞なら同じスートの次賞)を上卓 | あり | 1 |
小突 | 九十万と雌突を上卓 | あり | 1 |
死百 | 百万が手札にある | なし | 1 |
死百突 | 百万と雌突が手札にあってどちらか1つを上卓 | なし | 2 |
小活百 | 百万が手札にあるが上卓しない | あり | 2 |
小活百突 | 小活百で雌突を上卓 | あり | 4 |
大活百 | 百万を上卓 | あり | 3 |
大活百突 | 百万と雌突を上卓 | あり | 6 |
三開 | 百万、千万、万万を上卓 | あり | 3 |
四紅 | 百万、千万、万万、空沒文を上卓 | あり | 4 |
八卓全收 | 最初の7トリックを全部勝つ | あり | 8 |
すべての役は重複可能です。例えば、四紅が達成できていれば、賞や大活百や三開の注数も獲得できます。 (しかし死百は正本なしが条件なので獲得できません)。
親プレイヤーとそれぞれの子プレイヤーが、獲得した注の差額をやりとりします。
例えば親が1.5注、子Aが-1注、子Bが3.5注、子Cが0注だとすると、次のようになります。
プレイの後、面張(配り残りのカードの一番上)を取り除き、2枚目のカードを表にします。 このカードは仮達と呼ばれます。 このカードが正賞でそのスートの次賞を上卓し正本していたら、他のプレイヤーに1注ずつ払わなければなりません。
面張、仮達のカードは、本文のようにカードの束全体をひっくり返すのではなく、裏向きのまま最初の1枚、2枚だけを表にするのかもしれません。 この場合、面張のカードは誰から配るかを決めたカードとは別になります。
プレイで最初にリードするプレイヤーは、Andrew Lo氏は親ではないかと書いています。 本文は、Alone In The Fartに従いました。
支払額のリミットを決めるやり方もあるようですが、ルールが不明確なので採用しませんでした。馬弔脚例の原文では次のようになっています。
公議若干起,若干止,即大負之後,不得溢額以圖僥倖。
軽率なプレイによって他のプレイヤーに活百ができたり、親に賞を取らせたりしたときに、責任払いの制度(他のプレイヤーの損害分も、それに責任のある1人のプレイヤーが払う)があるようですが、ルールが不明確なので採用しませんでした。馬弔脚例の原文では次のようになっています。
出十門千萬致活百老者,及故縱樁牌活賞者,鬭法低矢致活樁家者,俱代人認開數 (如已正本者止認一開,未正本者認二開,活散家止代樁認,若活樁家則兼三家認)。 雖千萬係正賞,亦不得藉口。
基本的な問題として、このゲームがマストフォローなのかどうかということがあります (リードされたカードと同じスートを出す義務があるかどうか)。 この点は、馬弔脚例には明確ではありませんでした。
ただ、勝てないカードは裏向きに出すというルールは馬弔脚例で明確に記述されているので、 見えていないカードでフォローしているかどうか判定するのはおかしいと考え、ここではマストフォローではないとしました。 Andrew Lo氏やAlone in the Fartでも、そう考えていると思われます。
しかし、大谷通順氏は、清代のルールですが、マストフォローとしています。
ゲームとしては、マストフォローのほうが面白いと思うのですが。
2021年11月6日、なかよし村でプレイしました。
裏向きにプレイされたときは何を出しているかわからず、マストフォローでもないので、手の内が読みにくく、 どうすればよいかよくわからないゲームでした。
それでも、役を作る興味もあり、それなりには楽しめました。
プレイのためのカードは、大谷通順氏の「故宮博物院の完全なる馬吊牌(上)」の牌をコピーさせていただいて、インデックスをつけてシールを作り、白紙のトランプカードに張り付けて作りました。