2023/4/15 赤桐
オークション・ブリッジというゲームが1904年ごろに誕生しましたが、1925年ごろに得点システムなどが改良されて、コントラクト・ブリッジとなりました。 ホイストに対して近代的なビッドシステムや様々なアイデアが加えられて洗練されたゲームだといえます。 アメリカで生まれたゲームです。
1930年代ごろから特に盛んになり、世界中でプレイされるようになりました。 1940年ごろにはアメリカ人の40%近くがこのゲームをプレイしていました。 他の伝統的カードゲームと同じように、競技人口は減り続けていますが、現在でも世界中で多くの人がプレイしています。 日本でプレイする人は少ないのですが、近年ブリッジをプレイするための場所が多くなっているので、競技人口は増えているのかもしれません。
推理力・論理的思考力・決断力などが要求されるゲームであり、現在の最高のカードゲームということに異を唱える人は多くないはずです。
まず、ラバー・ブリッジと呼ばれる家庭用ゲームのルールを説明します。
4人。向かい合った2人がパートナーになります。
普通の52枚のトランプを使用します。
各スートの強さは、強いものから順に、A、K、Q、J、10、9、8、7、6、5、4、3、2です。
最初のディーラーは任意の方法で選びます。 次回からはディーラーは時計回りに交代します。
カードは、ディーラーの左隣から時計回りに1枚ずつ、各プレイヤーの手札が13枚になるように配ります。
ディーラーから時計回りの順に順にビッドを行います。
ビッドの時には、パートナー2人で取るつもりのトリック数から6を引いたものと、切札のスートの名前をビッドします。 例えば、切札をスペードにして8トリック取るつもりならば、「ツー・スペード」と発言します。 (取るべきトリック数から6を引いたものを、オッド・トリックと呼びます)。
ビッドしたくない時は「パス」と発言します。
ビッドできるのは1(ワン)から7(セブン)までで、切札は4スートの他に、切札なしを意味する「ノートランプ」をビッドすることもできます。
誰かがビッドしたあとは、それより強いビッドしか行うことができません。
ビッドの強さは、まず数字の大きい方が強いビッドになります。 同じ数字ならば、切札のスートが強い方が強いビッドになります。 スートの強さは、強いものからスペード、ハート、ダイアモンド、クラブの順ですが、ノートランプの方がスペードより強くなります。 つまり「ワン・クラブ」が最も弱いビッドで、「セブン・ノートランプ」が最も強いビッドです。
ビッドのあとに3人続けてパスがあると、ビッドは終了になります。 なお、1度パスをしたプレイヤーでも、あとでビッドに参加することは可能です。
最後にビッドしたプレイヤーのチームのうち、最後のビッドのスート(またはノートランプ)を最初にビッドしたプレイヤーがデクレアラーになります。 デクレアラーのパートナーはダミー(Dummy)となります。 相手チームのことをディフェンダー(Defender)と呼びます。
また、最後のビッドの内容のことをコントラクト(Contract)と呼びます。
最初から全員がパスをした場合は、そのディールは終了し、次のディーラーがディールを行います。これをパス・アウト(Pass Out)と呼びます。
ビッドの自分の番の時に、今までの最後のビッド(トリック数と切札を指定したビッド)が相手チームによってされている状態ならば、「ダブル」と発言することができます。 ダブルとは、プレイの結果と得点や失点をおよそ2倍にするということで、相手が失敗すると考えて相手の失点を増やす目的があります。
ダブルのビッドがあったあと、パス以外のビッドがなければ、ダブルのビッドをしたプレイヤーの相手チームのプレイヤーは、「リダブル」と発言することができます。 これは得失点をおよそ4倍にするということですが、自分の側がプレイに成功するという自信のもとに得点を増やすという目的があります。
ダブルやリダブルのあとに、普通のトリック数と切札を指定したビッドを行うこともできます。 これがあると、ダブルやリダブルは無効になります。 ダブルやリダブルのあとに3人のパスが続いた場合に限り、それが有効になり、ビッドが終了します。
デクレアラーの左隣のプレイヤーが最初のリードを行います。この直後にデクレアラーのパートナー(ダミー)は、自分の手札をすべて公開してプレイしやすいように並べます。 公開されたままダミーのプレイは行われるのですが、どのカードをプレイするかを決めるのはデクレアラーです。
プレイのルールは普通のトリックテイキングゲームのルールです。つまり、
得点は下記のような得点表を作って記入していきます。真ん中に横線がありますが、それより上に記入する得点と、それより下に記入する得点があります。 (「WE」「THEY」というのは得点記入者のチームか相手チームかという意味ですが、チーム名や2人の個人名を入れてもかまいません)。
WE | THEY |
横棒の下に記入するのは、ゲーム(Game)を達成するための得点です。 合計点が100点以上になればゲームに勝ったことになります。 この時、その下にさらに横線を入れます(相手側の得点を含めたすべての得点の下に入れます)。 その下に、次のゲームのための得点を記入します。
1つのチームが2つのゲームに勝つとラバー(Rubber)に勝ったことになり、最終得点を計算します。
横棒の上に記入するのは、それ以外のボーナス得点と相手側の失敗による得点です。
なお、あるチームが1つのゲームに勝つと、バル(Vul. / Vulnerable)と呼ばれる状態になります。 1ゲームも取っていない状態はノン・バル(Non Vul. / Non Vulnerable)です。 この状態の違いによって、ボーナス得点などが違ってきます。
コントラクトを達成した(ビッドしたトリック数かそれ以上をとった)時に、得点欄の下部に記入できる得点です。 この点数はコントラクトのスートとトリック数によって次のように決まっています (オッド・トリック数はビッドしたトリック数です。つまり実際に取るトリック数から6を引いたものです)。
コントラクトのスート | コントラクトのトリック数による得点 |
---|---|
ダイアモンド、クラブ | オッド・トリック数×20点 |
スペード、ハート | オッド・トリック数×30点 |
ノートランプ | オッド・トリック数×30点+10点 |
ダブルのビッドが有効な時は、この点数はすべて2倍になります。リダブルの時は4倍になります。
得点欄の横線の下部に記入するのは、この得点だけです。
ダブルがあった時にコントラクトを達成すると50点、リダブルなら100点のボーナスがあります。
コントラクトのスート | 通常 | ノン・バル | バル | ||
---|---|---|---|---|---|
ダブル | リダブル | ダブル | リダブル | ||
ダイアモンド、クラブ | 20点 | 100点 | 200点 | 200点 | 400点 |
スペード、ハート、ノートランプ | 30点 |
コントラクトを達成できなかった時、コントラクトのトリックに何トリック足りなかったかにより、相手側に次の得点が入ります (1つ足りないことを1ダウン、2つ足りないことを2ダウンなどと呼びます)。
ノン・バル | バル | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
通常 | ダブル | リダブル | 通常 | ダブル | リダブル | |
ダウン | 50点 | 100点 | 200点 | 100点 | 200点 | 400点 |
2ダウン | 100点 | 300点 | 600点 | 200点 | 500点 | 1000点 |
3ダウン | 150点 | 500点 | 1000点 | 300点 | 800点 | 1600点 |
4ダウン以降1トリックにつき追加 | 50点 | 300点 | 600点 | 100点 | 300点 | 600点 |
6のコントラクト(シックス・クラブ~シックス・ノー・トランプ)が成功することを、スモールスラム(Small Slam)と呼びます。 7のコントラクト(セブン・クラブ~セブン・ノー・トランプ)が成功することをグランド・スラム(Grand Slam)と呼びます。 それぞれ、次のボーナス点が得られます。このボーナス点は、ダブルやリダブルがあっても変わりません。
ノン・バル | バル | |
---|---|---|
スモール・スラム | 500点 | 750点 |
グランド・スラム | 1000点 | 1500点 |
プレイヤーの持っている手札により、次のように得点します。プレイ前に宣言する必要はなく、プレイが終わってから申告できます。しかし、次のディールが始まってしまうと無効です。
条件 | 点数 |
---|---|
切札のA、K、Q、J、10の5枚を1人で持っている | 150点 |
切札のA、K、Q、J、10のうち4枚を1人で持っている | 100点 |
ノー・トランプの時、Aを4枚1人で持っている | 150点 |
ラバーが終わった時、つまり1つのチームが2ゲームを達成した時に付くボーナスです。2ゲームに勝った側に次のボーナスが付きます。
条件 | 点数 |
---|---|
相手がノン・バル、つまり最初から2ゲーム連取した時 | 700点 |
相手がバルの時 | 500点 |
ラバーが終了すると、以上記入した点数を、横線の上下をすべて含めて、チームごとに合計します。合計点の多い方が勝者となります。 2つのチームの合計の差額を100で割り、小数点以下を四捨五入した点数が、勝ったポイント数となります。
競技会用のコントラクト・ブリッジです。
配られる手による運不運をなくすため、まったく同じ手札を何組ものペアがプレイして結果を比べ、勝利ポイントを算出してその合計で順位を決めます。 従って、悪い手札でも他のペアが被った失点より少ない失点に抑えることができれば、多くの勝利ポイントを得られます。 逆に、良い手であっても、その手で可能な最大の得点より少ないと、勝利ポイントはあまり得られません。
最初のディールだけは普通にシャッフルして配ります(あるいは既に用意されている手札を使用します)が、 手札を保存するため、プレイされたカードは集めず、出したプレイヤーの前に置きます。 プレイヤーのペアが勝った時は縦に置き、負けた時は横に置くようにして、勝敗の数がわかるようにします。 ディールが終わると、手札は専用のケースに入れてテーブルに置きます。 同じプレイヤーが同じ手札をプレイしないように、手札はそのままでプレイヤーがテーブルを移動して、次のディール(他のプレイヤーがプレイした手札でのプレイ)を行います。
デュプリケート・ブリッジでは、1ディールごとに得点を付けるので、ラバー・ボーナスはありません。 アナー・ボーナスもありません。その代わり、次の得点があります。
相手方が得点した時は、自分のペアの得点欄にマイナス得点を入れます。
詳しいルールは専門書籍などを参照してください。
ちょうど4ディールをプレイして終了するコントラクト・ブリッジです。
1ディール目はどちらのペアもノン・バルです。 2ディール目・3ディール目はディーラーでない側がバルで、ディーラー側がノン・バルです。 4ディール目はどちらのペアもバルになります。
シカゴでは、パスアウトした場合、同じディーラーが再び配ります。例えば1ディール目にパスアウトした時は、配り直しも1ディール目と考えます。
ラバー・ブリッジに近い得点方法のものと、デュプリケート・ブリッジに近い得点方法のものがあります。
ラバー・ブリッジと同じように得点を付けますが、ラバー・ボーナスはありません。 その代わり、ゲーム・ボーナスがあります。ゲームを取った時にバルなら500点、ノン・バルなら300点です。 部分得点(それだけではゲームに達しない横線の下の得点)を積み重ねてゲームを取ることも可能です。
第4ディールで部分得点を取ったチームは、100点のボーナスがあります。それ以外のディールでは部分得点のボーナスはありません。
4ディールを終わって、ボーナスを含む得点が大きい方が勝ちとなります。 (ラバー・ブリッジ方式では2・3ディール目はディーラー側の方がバルになるというルールも良く使われます。やや古いルールです。)
バル、ノン・バルの決め方は、ラバー・ブリッジ方式と同じです。各ディールは独立していて、デュプリケート・ブリッジと同じ方式で得点します。
コントラクト・ブリッジを知らない人に教える時の、導入用のゲームです。 ビッドはなく、次のようにコントラクトを決めます。
得点は、通常のコントラクト・ブリッジと同じです。
その他のコントラクト・ブリッジのバリエーション
通常のビッドに「リバース」を付けたビッドも認めます。 例えば、「ツー・ハート・リバース」です。リバースのビッドは普通のビッドより少しだけ強いビッドになります。 つまり、ツー・ハート・リバースはツー・ハートとツー・スペードの間のビッドとなります。
リバースのコントラクトが成立すると、各スートの強さの順位が逆になります。つまり強いものから2、3、4、5、6、7、8、9、10、J、Q、K、Aの順になります。
1トリック当たりの点数は、ビッドしたトリック数に10を掛けたものになります。 例えばスリー・クラブの得点は1トリック当たり30点になり、達成すれば30×3=90点となります。 オーバー・トリック・ボーナスもこの点数です。アンダー・トリック・ボーナスは1トリック50点です。
バルの時は、ボーナス点(横線の上の点数)をすべて2倍にします。 ダブルは、それを含めたすべての点数を2倍にします。リダブルでは4倍です。 スラム・ボーナスはありません。
ダイアモンド7のカードをビール・カードとします。
デクレアラーがコントラクトを達成し、最後のトリックにデクレアラーが自分の手札からビール・カードを出して勝った場合、ダミーのプレイヤーはデクレアラーにデクレアラーが選んだビールを奢らなければなりません。
また、ディフェンダーがコントラクトを阻止し、最後のトリックにディフェンダーがビール・カードを出して勝った場合は、もう1人のディフェンダーは勝ったディフェンダーに彼が選んだビールを奢らなければなりません。
以下はコントラクト・ブリッジの3人ゲーム用バリエーションです。
4人分のカードをディールします。1人分はダミーの手札になります。通常通りビッドを行い、デクレアラーはダミーを他の2人の間に置いてプレイします。ビッドの前に、ダミーの手札の何枚かを表にすることもあります。アンダー・トリック・ボーナスはデクレアラー以外の2人のそれぞれに付きます。
カットスロート・ブリッジと同様に、ダミー分を配り、ビッドして、ダミーを開けてプレイします。ビッドの前にダミーの手札のうち6枚のカードを表にします。
ビッドがゲームのビッドに満たなかった時や、全員がパスをした時は、次のように配り直します。
配り直してもゲームのビッドができなかった時は、同じようにまた配り直します。
点数の付け方は次の通りで、普通のコントラクト・ブリッジと異なります。
2人用のコントラクト・ブリッジの変種をハネムーン・ブリッジと呼びます。次のような種類があります。
プレイヤーは向かい合わずに並んで座ります。各プレイヤーのダミーのカードを向かいに配るようにして、4人分のカードを配ります。ダミーを見ないで2人でビッドを行います。
デクレアラーの左隣のプレイヤーまたはダミーが最初のリードを行い、そのあと、両方のダミーを公開します。
次のようなバリエーションもあります。
13枚ずつカードを配り、残りは山札とします。
ディーラーでないプレイヤーが最初のリードを行い、13トリックの切札なしのトリックテイキングゲームを行います。リードされたスートがあれば必ず出さなければなりません。トリックに勝ったプレイヤーから1枚ずつ山札を取ります。このゲームは得点に関係しません。
山札がなくなったら、通常通りのビッドを行います。そのあと、デクレアラーでないプレイヤーが最初のリードを行ってプレイします。ダミーはありません。