1995/9/7 赤桐
クリベッジは非常に古いイギリスのゲームです。17世紀に生まれてから、ほとんどルールは変っていません。詩人のサー・ジョン・サックリングが作ったと伝えられていますが、真偽は明らかでありません。今日でもイギリスおよびアメリカで盛んにプレイされています。
あまり類のないルールを持ったゲームです。簡単で運の要素の強いゲームなのですが、技術もかなり反映されます。
2人。3人や4人でもできますが、それについては後で記述します。
通常の52枚のカードを使います。
121点を先に取った方が勝者となります。プレイの途中でも、誰かがこの点数に達したら、そこでゲーム終了です。
オプショナル・ルールとして「スコンク(Skunk)」があります。このルールが採用されたときには、ゲーム終了時に敗者の得点が91点未満であった場合、2ゲームの負けとなります。
カードの点数が問題になる場合には、次の点数を用います。
A | 1点 |
2〜10 | 数字通りの点数 |
J、Q、K | 10点 |
この点数は得点とは別です。
カードの並び順が問題になる場合、つまりシークエンスに関して、カードは次の順序になります。
A、2、3、4、5、6、7、8、9、10、J、Q、K
つまり、エースはいちばん下に来ます。キングの上には来ません。
ドローして高位のカードを引いたプレイヤーがディーラーになります。この場合のカードの順位はK、Q、J、10、9、8、7、6、5、4、3、2、Aの順です。同位のカードを引いた場合は、引き直しです。
以後は、ディーラーは順番に交代します。
ディーラーは、カードをシャッフルして、相手にカットしてもらった後、1枚ずつ、各プレイヤーに6枚のカードを配ります。
カードが配られると、各プレイヤーは手札から2枚のカードを裏向きに捨て札します。捨て札されたカードは集めて置かれます。これを「クリブ(Crib)」と呼びます。クリブはディーラーのものになりますが、この時点では誰も中を見ることはできません。
捨て札が終わると、ノンディーラー(ディーラーでない方)は再び配り残しのカードをカットします。ディーラーはそのいちばん上のカードを表向きにして、配り残りのカードの山の上に置きます。
表向きになったカードは「スターター(Starter)」と呼ばれます。
もし、スターターがジャックならば、ディーラーは直ちに2点を得点します。これを「ヒズ・ヒール(His Heels)」と呼びます。
スターターはプレイには直接関係はありません。後で手役の点数を計算するときに重要になってきます。
プレイは、ノンディーラーから始めて、順番に1枚ずつカードを出していきます。
出すカードはテーブルのプレイヤーの近くに置き、相手のカードと混ざらないようにしますが、出した順番ははっきり分かるようにしなければなりません。
プレイする人は、カードを出すときに、カードの累計点を声に出します。カードの点数は、先に述べたようにAは1点、J、Q、Kは10点です。
例えば、最初に4を出すと「4」と言います。次のプレイヤーがKを出すと、「14」ということになります。次に7が出ると、「21」と言います。
誰かが累計がちょうど31になるカードを出したら、プレイの1ラウンドが終わります。
どのカードを出しても累計が31を越える場合や、自分だけが手札がない場合には、「ゴー(Go)」と言って、カードは出しません。出せるカードがあるのにゴーを宣言することはできません。
ゴーのあと、もう1人のプレイヤーは、もしカードが出せれば、31ちょうどになるか、31を越えないで出せるカードがなくなるまで、1人で何度でもプレイしなければなりません。
これが終わると1ラウンド終了になります。
ちょうど31になるカードを出したプレイヤーは、ゴーがあってもなくても、2点を得点します。これを「31(サーティーワン)」の得点と呼びます。
31ちょうどのカードが出なかった場合には、そのラウンドで最後にカードを出したプレイヤーが1点を得点します。これを「ラストカード」の得点と呼びます。
1つのラウンドが終わって、少なくてもどちらかのプレイヤーに手札が残っている場合には、次のラウンドを始めます。
2回目以降のラウンドでは、前回のラウンドで最後にカードを出したプレイヤーの相手側、つまり前回31やラストカードの得点を得なかったほうのプレイヤーからプレイを始めます。累計はもちろん0からになります。
両プレイヤーの手札がなくなると、プレイは終了します。
なお、両プレイヤーの手札が順になくなって自然に終わったような場合でも、最後にカードを出したプレイヤーはラストカード(または31)の得点を得ます。
プレイ中には、上記のほかに、次のような得点を得ることができます。
プレイ中の得点は、31やラストカードの得点も含め、すべて得点のあったときにすぐにクリベッジボードのペグを動かします。(それで121点に達すればゲーム終了です。)
なお、2種類以上の得点を同時に得ることもあります。
ラウンド開始時からの累計点がちょうど15点になったら、つまりカードを出して「15」と言うことができたら、そのカードを出したプレイヤーが2点を得点します。
同じラウンドで、同じランクのカードが続けて2枚出た場合、2枚目を出したプレイヤーが2点を得ます。
例えば、6が出たあとに、もう1人のプレイヤーが6を出した場合、6を出したプレイヤーが2点獲得します。
同じラウンドで、同じランクのカードが続けて3枚出た場合、3枚目を出したプレイヤーが6点を得ます。
同じラウンドで、同じランクのカードが続けて4枚出た場合、4枚目を出したプレイヤーが12点を得ます。
なお、ペア・ロイアルやダブル・ペア・ロイアルが得点される前には、その前に必ずペアやペア・ロイアルの得点が相手に入っているはずですが、この得点は無効にはなりません。
カードを出したときに、出したカードを含めて、連続する3枚以上がシークエンスになっている場合には、1枚につき1点を得点します。
シークエンスとは、3-4-5とか、9-10-J-Qとかいうように、ランク の連続するカードの集まりです。スートは同じでなくてもかまいません。
例えば、A、4、5と出ているところに6を出すと、4-5-6のシークエンスになり、3点を得ます。その次のプレイヤーが7を出すと4-5-6-7のシ ークエンスになり4点を得ます。
シークエンスは必ずしも順番に出されていなくてもかまいません。例えば、今までに3、5、2、6と出されていたところに、4を出すと、2-3-4-5-6のシークエンスになり、5点を得ます。
既に述べたようにA(エース)はいちばん下のランクとして扱われるので、A-2-3といったシークエンスは可能ですが、Q-K-Aというシークエンスはありません。
プレイが終わると、各プレイヤーはプレイで出したカードを再び手札に戻します。それから、ノンディーラーの手札、ディーラーの手札、クリブの順に手役を計算します。計算している途中で、誰かの点数が121点を越えたら、その時点でゲームは終了します。
スターター(プレイが始まる前に表向きにしたカード)は、すべてのプレイヤーの手札やクリブの一部として扱われます。つまり、手札やクリブは5枚で構成されることになります。
手役には次のものがあります:
カードの点数を足して15になるカードがあると、2点を得点します。カードの点数は、既に述べたようにAは1点、絵札は10点です。
例えば、3と2とJがあると、合計が15になるので、「15」の2点を得点します。
得点は、カードの点数の合計が15になるすべての組み合わせについて計算することができます。
例えば、7と7と8と8がある場合、7とS8、7と8、7とS8、7と8の4通りの15になる組み合わせがありますので、2x4の8点を計上できます。
同じランクのカードが2枚ある場合には、ペアとして2点を得ます。
なお、同じランクのカードが3枚以上ある場合は、15の場合のようにすべての組み合わせを計上する代わりに、ロイヤル・ペアやダブル・ロイヤル・ペアとして計算します。(ロイヤル・ペアなどを計上しないで、すべての組み合わせのペアを計上しても、同じことになります。)
同じランクのカードが3枚ある場合には、ロイアル・ペアとして6点を得ます。
なお、同じランクのカードが4枚ある場合は、ロイアル・ペアは計上せず、ダブル・ロイアル・ペアとして計算します。
同じランクのカードが3枚ある場合には、ダブル・ロイアル・ペアとして12点を得ます。
3枚以上のシークエンスになっている場合には、1枚につき1点を得点します。
例えば、2と3と4があると3点を得点します。
得点は、シークエンスになるすべての組み合わせについて計算することができます。
例えば、3と3と4と4と5がある場合には、3と4と5、3と4と5、3と4と5、3と4と5の4つの組み合わせがあるので、3x4の12点を計上できます。
ただし、例えば7、8、9、10のカードがある場合、7-8-9のシークエンスで3点、8-9-10で3点、合計6点というように計算することはできません。4枚のシークエンスと考えて、4点を計上します。
スターターを除いた4枚のカードのスートが同一ならば、フラッシュとして4点を得ます。スターターもこれと同じスートならば、4点ではなく、5点を得ることができます。
ただし、クリブの点数を数えるときには、スターター以外の4枚のフラッシュは認められず、スターターを含めた5枚のフラッシュだけが認められます。
スターター以外の4枚の中に、スターターと同じスートのジャックが含まれていれば、1点を得ます。これを、ヒズ・ノブと言います。
手役の計算が終わり、どのプレイヤーも121点に達していなければ、すべてのカードは再びシャッフルされて、新しいディールが始まります。
ヒズ・ヒール | 2点 |
15(フィフティーン) | 2点 |
ペア | 2点 |
ペア・ロイアル | 6点 |
ダブル・ペア・ロイアル | 12点 |
シークエンス | 1枚につき1点 |
31(サーティーワン) | 2点 |
ラストカード | 1点 |
(31の得点を得たときには、ラストカードの得点は得られない)
ヒズ・ノブ | 1点 |
15(フィフティーン) | 2点 |
ペア | 2点 |
ペア・ロイアル | 6点 |
ダブル・ペア・ロイアル | 12点 |
シークエンス | 1枚につき1点 |
フラッシュ | 1枚につき1点 |
(フラッシュはスターター以外の4枚か、スターターを含む5枚。クリブの場合は、スターターを含む5枚だけ。)
普通、クリベッジのスコアをつけるためには、クリベッジボードというものを使います。
あるタイプのクリベッジボードには、各プレイヤー用に120の穴があいた曲がりくねった列があります。その穴の列にペグ(細い棒)を差して得点を表わします。
120個の穴の向こうにはゲームホール(Game Hole)と呼ばれる穴がありま す。ペグがこの穴に到達すると、勝者になるわけです。
120個の穴の手前には、2個ずつの穴があります。これはゲームスタートの前のペグの置き場です。ペグは2個使用するので2つ穴が開いています。
ゲームが始まり、あるプレイヤーの最初の得点が入ると、ペグの1つをその点数の所に動かします。2度目の得点が入ると、別のペグをその得点分だけ進んだ位置に置き、累計の点数を表わします。次の得点が入ると、最初のペグを抜いて、新しい得点の所に進めます。
このように、得点するごとに、後ろのペグを抜いて新しい点数の所に置きます。こうすることにより、正しい点数分だけペグを進めたかどうか、チェックしやすくしています。
なお、ペグの移動は必ず得点したプレイヤー自身が行うようにします。
ボード上には他に、穴が2列にいくつか開いていますが、これは各プレイヤーが何ゲーム勝ったかを記録しておくものです。
また、90個目と91個目の穴の間のところに、SkunkやLurkやSという文字や線が入っていることがあります。これは前述した「スコンク」を判定するためのものです。
クリベッジボードには別のタイプのものもあります。ボードの左右にそれぞれ30個の穴が2列開いているものです。
片方のプレイヤーが右の2列の穴で得点を表わし、もう1人のプレイヤーが左の2列の穴で得点を表わすことになります。
得点が入ると、まず外側の列でペグを上方向に進めます。いちばん上まで進んだペグは、こんどは内側の列に進み下方向に移動します。いちばん下まで来たら、また外側を上に移動し、さらに内側を下に移動します。こうしてペグを2周進めたあと、3周目まできたら勝ちになります。
このタイプのクリベッジボードの場合、ペグは自分に近い方から出発させます。従ってクリベッジボードがプレイヤー2人の間に縦に置かれた場合、2人のペグの出発位置は反対側になります。つまり、1人が右上隅から出発すれば、もう1人は左下隅から出発します。
次に述べるのはDavid Parlett氏による厳格な手役の数え方を、筆者が日本語にアレンジしたものです。必ずしもこれに従う必要はないと思いますが、参考までに載せておきます:
手役は必ず、15、ペア(ペア・ロイアル、ダブル・ペア・ロイアル)、シークエンス、フラッシュ、ヒズ・ノブの順に数えます。
例えば、手札が5と5と6とJであり、スターターが7である場合、「フィフィティーンで2、フィフティーンで4、ペアで6、シークエンスで9、シークエンスで12、ヒズ・ノブで13」というように、累計で数えて行きます。
1つの手札またはクリブの全部の点数を数え終わってから、ペグを動かすようにします。
なお、上記の例における、Parlett氏の英語の原文は、"Fifteen 2, fifteen 4, pair 6, seven-eight-nine, ten-eleven-twelve, and one's thirteen"です。
スコンクは動物のスカンクと同じ英語なので、「スカンク」と言ってもよいでしょう。ただ、日本のスポーツ用語で、同様な大敗のことをスコンクということがあるようなので、これに従いました。スコンクのことを「ラーチ(Lurch)」とも呼びます。
スターターのことを「ターン・アップ・カード(Turn-Up Card or Turned-Up Card)」と呼ぶこともあります。
ラストカードの得点のことを「ゴーの得点」と呼ぶこともあります。
ペア・ロイアルのことを次のように呼ぶこともあります。
ダブル・ペア・ロイアルのことを次のように呼ぶこともあります。
シークエンスは「ラン(Run)」とも呼ばれます。
ヒズ・ノブのことを「ヒズ・ニブ(His Nibs)」と呼ぶこともあります。また、現在では単に「ジャック(The Jack)」と呼ぶことも多いようです。
ヒズ・ヒールとヒズ・ノブを用語の上で区別しないこともあります。(もちろん点数は2点と1点で違いますが。)。このやりかただと、スターターのジャックも手札のジャックも、ヒズ・ヒール、ヒズ・ノブ、ヒズ・ニブ、ジャックなどと呼ばれることになります。
プレイのときの「ラウンド」というのは、筆者が説明のために用いたことばであり、正式なクリベッジの用語ではありません。
プレイや手役の計算の時、相手が得点を計上するのを忘れた場合、「マギン」と宣言し、自分の得点として計上することができるというルールがあります。これをマギンと呼びます。
マギンは相手がペグを動かし終わってから宣言します。
現在ではあまり用いられていないオプショナルルールなので、採用するためには、ゲーム前に取り決めておく必要があります。
ファイブ・カード・クリベッジは、各プレイヤーに5枚のカードを配るゲームであり、クリベッジの元来のルールです。現在では、既に述べた6枚のカードを配るゲーム(これをシックス・カード・クリベッジともいいます)が主流となっていますが、ファイブ・カード・クリベッジのほうが面白いと主張する人もいます。
シックス・カード・クリベッジとの違いは次の通りです:
最初にディーラーにならなかった方のプレイヤーは、クリブの得点を最初に得られないという不利の代償として、ゲームが始まる前に3点を得点します。これを「スリー・フォ・ラスト(Three for Last)」と呼ぶことがあります。
各プレイヤーに5枚のカードが配られます。各プレイヤーは2枚のカードをクリブに捨て札します。
プレイは累計が31になるか、31以内でどちらもカードを出せなくなるまで続けられますが、それで終了します。つまり、2ラウンド以降のプレイは、ありません。
フラッシュは、スターター以外の手札3枚が同じスートならば3点、スターターを含めた手札4枚が同じスートならば4点となります。クリブは、シックス・カード・クリベッジと同じように、スターターを含めた5枚が同じスートの場合だけ5点です。
ゲームは、どちらかのプレイヤーが61点に達するまで続けられます。スコンク(ラーチ)はオプショナルルールですが、採用された場合は、負けたほうのプレイヤーが31点未満ならば、スコンクが成立します。
各プレイヤーはそれぞれ自分のために戦い、別々に得点を得ます。
カードは各プレイヤーに5枚ずつ配ります。そのあと1枚のカードをクリブのカードとして裏向きに配ります。ディーラーは時計回りに交代します。
クリブへの捨て札は、各プレイヤーが1枚ずつ行います。これにより、手札もクリブも4枚となります。
プレイはディーラーの左隣から時計回りに行います。
手役の計算は、ディーラーの左隣から時計回りに行い、最後にクリブを計算します。
プレイの1つのラウンドは、累計が31に達するか、誰も31以内のカードを出せなくなるまで続きます。
その他の点は、普通のクリベッジ(シックス・カード・クリベッジ)と同じです。
向かい合った2人がパートナーになります。
カードは各プレイヤーに5枚ずつ配ります。
クリブへの捨て札は、各プレイヤーが1枚ずつ行います。これにより、手札もクリブも4枚となります。
その他の点は、3人ゲームと同じです。
最初のディーラーは、低位のカードをドローしたプレイヤーになるというルールを採用することもあります。
オプショナルルールである「スコンク」を採用した場合、さらにオプショナルルールとして「ダブル・スコンク(Double Skunk)」を採用することがあります。
ダブル・スコンクというのは、ゲーム終了時に敗者の得点が61点未満であった場合に、4ゲームの負けとなるというルールです。