1997/8/27 赤桐
名前は「悪意と敵意」とでも訳すのでしょうか。確かに、相手に意地悪しながら、自分は上がりを目指すゲームです。
しかし、実際にはとても楽しい雰囲気を持ったゲームです。何かの本には、夕食後に1勝負ずつプレイするのにちょうどよいゲームだと書かれていました。その通りだと思います。
このゲームは、2人用ソリテア(2人用1人ゲーム?)と呼ばれることがありますが、これは相手との駆け引きが少ないからでなく、プレイの原理がソリテアの多くのゲームに似ているからです。
市販されている SKIP-BO というゲームは、このゲームが基になっています。
本文のルールは主に Easley Blackwood氏の"Spite and Malice"という本に従いました。Backwood氏はコントラクトブリッジの有名なエキスパートでしたが、このゲームの愛好家でもありました。
2人。
52枚の普通のカード2組と、4枚のジョーカー。全部同じサイズのもの。
2組のカードは、裏の色や模様が異なる方が、ディールのときに便利です。
4枚のジョーカーの裏の色や模様は、一方の組のカードの裏と全部同じ方が望ましいのですが、そうでなくてもかまいません。
カードのランクは(低)A、2、3、4、5、6、7、8、9、10、J、Q、K(高)です。このゲームでは、スートは無視されます。
52枚の1組のカードと、52枚に4枚のジョーカーを加えた56枚のカードに分けてシャッフルします。
56枚のカードは、各プレイヤーに5枚ずつ配ります。これが手札になります。残りは裏向きにテーブルに置きます。これが山札(stock/stockpile)になります。
52枚のカードは、各プレイヤーに26枚ずつ配ります。配られたカードは、裏向きのまま1つの山にして各プレイヤーの前に置きます。ただし一番上のカードだけは表向きにしておきます。これが各プレイヤーの「個人の山(pack/riddance pile/pay-off pile)」となります。個人の山の裏向きになっているカードは、その持ち主も見ることはできません。
なお、このゲームではカードをよくシャッフルすることが特に重要です。
プレイでは、プレイヤーの手札からテーブル上のある場所にカードを移したり、テーブル上のある場所から別の場所にカードを移したりします。
ゲームの目的は、個人の山のカードを減らして、相手より早く空にすることです。
ゲーム中には下記のようなテーブル上でのレイアウトでプレイを行います。
プレイヤーは個人の山をできるだけ早くなくそうとします。
個人の山は台札の山に移動することができます。個人の山の一番上のカードが移動した場合には、その下のカードを表向きにします。
プレイヤーの手札は山札から補充します。
プレイにより、テーブル中央に表向きに置かれたカードの山を作ることができます。これが台札の山です。
カードを重ねるときには、下のカードが見えなくてもよいので、しっかり重ねます。
両プレイヤーは同じ台札の山を共有します。台札の山は何個でも作ることができます。
プレイにおいて、各プレイヤーは自分の前に不要なカードを表向きに置くことができます。カードは重ねて置くことができますが、インデックスが見えるように少しずらして置きます。これを捨て札の山と呼びます。
捨て札の山は、各プレイヤーが4個まで作ることができます。
最初にプレイするのは、個人の山の一番上のカードのランクが高い方のプレイヤーです(Aが最低、Kが最高)。もし同じならば、スートの強さが強い方が最初にプレイします。スートのランクは(強)スペード、ハート、ダイアモンド、クラブ(弱)です。なお、このゲームでスートが問題になるのは、この時だけです。
プレイの最初に、手札が5枚より少なければ、山札から必要な枚数を取って、手札を5枚にします。
次に、以下のことを、好きな順序で何度でも行うことができます。
台札の山に置いてよいのは、次のようなカードです。(スートは関係ありません。)
つまり、台札の山はAから始まる数上がりの列になるように置かれます。台札の一番上がKならば、その上には何も置くことはできません。
通常は、台札の山に置くことができるカードがあっても、必ずしも置かなくてもよいのですが、例外として、次の場合には必ず置かなければなりません。
個人の山の一番上にも、捨て札の山の一番上にも、2がある場合には、どちらを台札の山に置いてもかまいません。
手札に2があって、それを出すと個人の山か捨て札の山の2を出すことができなくなる場合は、手札の2を最初に出すことはできません。
プレイの最後に、手札から1枚のカードを捨て札の山に置くことができます。(これ以降、これを「捨て札をする」と呼ぶことにします。)これで、そのプレイヤーの番が終わりになります。捨て札したくなかったり、できない場合には、プレイの終了を言葉で宣言します。
捨て札をするときには、次の規則があります。(この場合もスートは関係ありません。)
なお、捨て札をするより前に手札がなくなった場合には、山札から5枚のカードを補充してプレイを続けることができます。捨て札で手札がなくなった場合には、それでプレイ終了です。
プレイにおいては、台札にカードを全く移せないことや、捨て札をできないことや、そのどちらもできないこともあります。また、前回手札から何も出していなければ、山札から引くことすらできません。
また、前記のAや2の強制的な移動を除けば、意図的に全くプレイしないことも可能です。
両方のプレイヤーが引き続いて全くプレイしなかった場合、つまり台札へのカードの移動も捨て札もしなかった場合には、各プレイヤーにもう1度プレイの機会が与えれれます。このとき、手札にAや台札の山に置ける2があった場合には、そのうち少なくとも1枚をプレイしなければなりません。
それでも両プレイヤーが何もプレイしなかった場合には、個人の山を除くすべてのカードはシャッフルしなおされます。各プレイヤーに5枚の手札が配られて、最初に全くプレイしなかった方のプレイヤーから、プレイが再開されます。
台札の山も捨て札の山も空になった状態でプレイが再開されるわけです。
山札が足りなくなりそうになったら、プレイ中でないほうのプレイヤーは、完成した(Kまで続いた)台札を集め、よくシャッフルして、今までの山札の下に置きます。
もし、このとき完成した台札が1つもなければ、未完成の台札をすべて集めてシャッフルして、今までの台札の下に置きます。
ジョーカーは、ワイルドカードになります。つまり、どのカードの代わりにもなります。
台札にはいつでも出すことができて、下に重ねたカードによって、どのランクのカードとして使われたが決まります。例えばJの上の出した場合には、Qの代わりとして使われたわけです。Aの代わりに出して、台札の新しい山を始めることもできます。
ジョーカーは捨て札の山にもいつでも出すことができます。出したときには、どのカードの代わりとして使ったかは宣言しなくてかまいません。捨て札から台札に移動する場合には、捨て札の山での位置に関係なく、どのカードの代わりとして使ってもかまいません。
ただし、捨て札の山にジョーカーが置かれ、その上にジョーカー以外のカードが置かれるときには、ジョーカーを何の代わりに使っているのかが問題になってきます。例えば、8の上にジョーカーが置かれている場合には、そのジョーカーを8と考えれば、8か7をその上に置くことができ、ジョーカーを7と考えれば7か6を置くことができます。つまり8か7か6を置くことができるわけです。
この例で、6が実際に置かれると、ジョーカーは7だったことになります。しかし、この6が台札に移動した場合、ジョーカーの値は再び8か7か定まらなくなります。つまり、この上に8でも7でも6でも置くことができます。
もちろん、このジョーカーを台札に出す場合には、どのカードの代わりとしても使うことができます。
なお、どのような場合でもジョーカーを台札に置くことを強制されることはありません。
あるプレイヤーの個人の山がなくなったら、そのプレイヤーの勝利でプレイは終了します。
そのプレイヤーは、相手の個人の山のカードの枚数に5をプラスした点数を得点します。
どれだけのディールを行えばゲーム終了となるかについては、定まった規則はありません。
Easley Blackwood氏は、どちらかのプレイヤーの得点が100点または50点に達するまで行うことを提案しています。David Parlett氏は、3回戦を提案しています。
しかし、1ディールがわりあい長時間のゲームなので、1ディール=1ゲームと考えるのが普通だと思います。
ディールのとき、56枚のカードの組と52枚のカードの組を分けないことがあります。つまり、108枚のカードをシャッフルして配るわけです。この場合には、各プレイヤーの個人の山として20枚ずつ配ることが多いようです。手札としても5枚ずつ配り、残りは山札になります。
捨て札の山には、どのカードでも自由に置けるというルールを採用することもあります。つまり、一番上のカードと同じランクかそれより1つ下のランクしか置けないという規則がないわけです。
4人ゲームや6人ゲームを行うこともできます。対角線上の2人がパートナーになります。4人ゲームでは2チーム、6人ゲームでは3チームでプレイします。
注2のように、56枚と52枚のカードの組を分けないでディールを行います。カードを3組(162枚)使ってもかまいません。
自分の番のときには、自分のパートナーの個人の山や捨て札の山から台札にカードを移動してもかまいません。しかし、捨て札は自分の捨て札の山にしかできません。
あるパートナーの両方の個人の山が空になったときに、プレイは終了します。
もし注3のルールを採用すれば、SKIP-BO のルールとほとんど同じになります。
John McLeod氏のfttp://www.pagat.com/のルールでは、本文とは次のよう違いがあります。
そのほか細かいルールの違いはたくさんあります。例えば以下のようです。
1)最初に手札を配らないこともあります。最初のプレイのとき、各プレイヤーは山札から5枚のカードを取ることになります。
2)最初にプレイするプレイヤーを決める場合に、個人の山の一番上のカードのランクが同じならば、スートは比べないで、各プレイヤーは自分の個人の山をシャッフルしなおして、一番上を表向きにして比べるというやりかたもあります。
3)本文では、捨て札をしたときに手札がなくなった場合、 すぐには手札を補充しないでそのプレイヤーの番が終了すると書きましたが、手札を補充して、再びプレイを最初から行えるというルールもあります。
4)捨て札の山の一番上のカードが2である場合には、手札から先に2を出すことができ、これによって捨て札の2が出せなくなってもよい、というルールもあります(個人の山の2は、このようにはできません)。
5)山札が少なくなったとき、山札が12枚以下になったら完成した台札をシャッフルして山札の下に置く、などと厳密に決めることもあります。
6)プレイが終わったとき、単に相手の個人の山のカードの数が得点になる(+5しない)ということもあります。