1995/8/11 赤桐
トリックテイキングゲームは、ある種のカードゲームの総称です。ヨーロッパやアメリカのカードゲームの中では最も主流になっているものです。
コントラクト・ブリッジをはじめ、ホイスト、ブラックレディー、スカート、日本のナポレオンなど多数のゲームがこの中にはいります。
トリックテイキングゲームの通常のルールは次のようなものです。
スートとは、通常はマークによって区別されるカードのグループのことです。つまり、スペード、ハート、ダイアモンド、ハートの4つのスートがあることになります。
ただし、次の項で述べるように、ゲームによってはマークとスートが一致しないこともあります。
4つのスートのうちの1つを、強いスートとして特別扱いすることがあります。これを「切り札」といいます。
例えば、ハートを切り札にすると、ハートのカードは他のカードより強くなります。
ただし、このように簡単な例だけでなく、もっと複雑になることもあります。例えば、ファイブハンドレッドというゲームでは、ハートを切り札にするとジャックも切り札になります。この場合、切り札になったジャックは、もはやダイアモンドのスートには属さず、切り札のスート(ハート)に属すことになります。
また、切り札が4つのスートとは別の、5番目のスートになることもあります。例えば、ファイブハンドレッドのノートランプと呼ばれるゲームでは、ジョーカーだけが切り札になり、1枚だけしかない5番目のスートとなります。また、タロットカードのゲームでは、最初から切り札専用の5番目のスートがカードに含まれています。
切り札は「トランプ」とも呼ばれます。
なお、どのスートが切り札になるかを決める方法はゲームごとにさまざまです。
ディーラーは各プレイヤーに同じ数のカードを配ります。
注:「ディール」とはプレイ前にカードを配ることです。また、ディールされたカードによって行われるプレイを、1つのディールと呼ぶこともあります。「ディーラーとはカードを配るプレイヤーです。ディーラーは普通、時計回りに交代します。各プレイヤーに配られたカードは「手札」と呼ばれます。
現代的なトリックテイキングゲームでは、プレイの前に「ビッド」を行うことがあります。
ビッドは1人ずつ順番に行われますが、後のプレイヤーは前にビッドしたプレイヤーより強いビッドをしなければなりません。そうしたくない場合には、「パス」を宣言します。
最も強いビッドをしたプレイヤーは、切り札の種類を決めることができる事が多いようです。そのかわり、プレイにおいて一定以上勝つことが義務づけられ、それができないと罰点になります。
ゲームによっては、それ以外の目的や方法によるビッドもあります。
現代において、もっとも普通のトリックテイキングゲームのプレイは次の通りです。
1)最初に、誰か1人のプレイヤーが手札から自由に1枚のカードを選び、テーブルに表向きに出します。これをカードを「リード」するといいます。
2)他のプレイヤーは時計回りの順に1人ずつ、カードを1枚ずつ表向きに出していきます。このとき、リードされたスートと同じスートのカードがあればそれを出さなければなりません。2枚以上ある場合は、その中から自由に選ぶことができます。リードされたスートのカードがない場合には、どのカードを出してもかまいません。
3)全員が1枚ずつ出し終わったら、誰が勝っているかを判定します。
4)今までの一連のプレイを「トリック」と呼びます。つまり、全員がカードを1枚ずつ出して、勝者を決めるまでのプレイです。
5)トリックに勝ったプレイヤーは、トリックに出たカードを集め、自分のそばに裏向きに置いておきます。このカードはもうプレイには使いませんが、プレイが終わった後に自分のものとして計算されます。なお、このようにして1つのトリックで得たカードの集まりのことも「トリック」と呼ぶことがあります。
6)トリックに勝ったプレイヤーは、次のリードを行います。つまり、自分の手札から、自由に1枚を選んで出します。他のプレイヤーも時計回りにカードをだして、次のトリックのプレイを行います。
7)このようにして、手札がなくなるまでプレイを続けます。
8)普通は多くのトリックを取ることが目的となります。各カードに点数がある場合には、取ったカードの点数を多くすることが目的になります。逆に、罰点を含むカードをなるべく取らないようにするゲームもあります。
以下は、上記以外のさまざまなルールです。
プレイやディール、ディーラー交代、ビッドの順などすべてにおいて、普通は時計回りで行いますが、イタリアのゲームやほとんどのタロットカードのゲームなどでは、反時計回りで行います。
ほとんどのゲームは上記のように勝者を決めますが、中にはスートは全く関係なく、カードのランク(数字など)だけで勝者を決めるゲームもあります。(「ル・トルック」など。)
それ以外にも、ナポレオンのセイム・ツーなど、特殊なものもあります。
上記の、リードされた後のカードの出し方は、コントラクトブリッジやブラックレディーなど、現在のポピュラーなカードゲームの出し方なのですが、他にも様々なものがあります。
リードされたスートと同じスートのカードを出すことを「フォローする」といいます。普通はフォローの義務があるのですが(これをマスト・フォローといいます)、ないものもあります。
フォローできないときに、必ず切り札を使わなければならないというルールを採用することもあります。これをマスト・ラフと呼びます。(ラフとは切り札以外がリードされたときに、切り札を出すことです。)
また、今まで出たカードより強いカードを持っていれば、それを出さなければならないというルールを採用することもあります。これはマスト・ウィンと呼ばれます。
実際には、次のようにいろいろのルールがあります。。
A)まったく自由に何を出してもよい。(「ベジーク」の前半のプレイや、「ル・トルック」などのゲーム)
B)リードされたスートをフォローしなければならないが、できなければ何を出してもよい(既に説明済みのルール。「コントラクト・ブリッジ」などのゲーム。)
C)リードされたスートはフォローしなければならない。できない場合で、切り札を持っている場合は、切り札を出さなければならない。それもできない場合には、何を出してもよい。(マスト・フォロー、マスト・ラフ。「プリファランス」やタロットカードのゲームなど。)
D)リードされたスートはフォローしなければならない。フォローできない場合で、切り札を持っている場合は、切り札を出さなければならない。フォローの義務の範囲内で可能ならば、勝てるカードを出さなければならない。(マスト・フォロー、マスト・ラフ、マスト・ウィン。「ベジーク」の後半のプレイや、「エカルテ」など。)
E)切り札以外のスートがリードされた場合、フォローしなければならない。できない場合で、切り札を持っている場合は、切り札を出さなければならない。それもできない場合には、何を出してもかまわない。切り札がリードされた場合、今までに出た切り札より強い切り札を持っている場合には、それを出さなければならない。それができない場合でも、切り札を持っていれば切り札を出す。切り札がない場合には、何を出してもよい。(「オークション・ピノクル」など)
F)切札以外のリードのときには、リードされたスートのカードを出すか、切り札を出さなくてはならない。(リードされたカードを持っていても、切り札を出してかわない)。リードされたスートのカードも、切り札も持っていない場合に限り、それ以外のカードを捨て札することができる。切り札がリードされたときには、切り札があれば出さなければならない。ただし、持っている切り札が上位3枚の切り札の中のカードだけであり、しかも、リードされた切り札が持っている切り札のどれよりも弱いカードである場合に限り、切り札以外のカードを捨て札することができる。(「スポイル・ファイブ」のルール)
G)リードされたスートに対し、フォローしてもよいし、切り札を出してもよい。フォローできない場合には、どのカードを出してもよい。(スポイル・ファイブのルールとの違いは、フォローできない場合に、切り札を出さなくてもよいということです。「オークション・ピッチ」などのルール。)