1994/2/2,2020/5/15 赤桐
ファイブ・ハンドレッドは、20世紀の前後にアメリカで生まれたゲームです。 現在ではオーストラリアの国民ゲームとなっています。トリックテイキングゲームの一種です。
日本でも、「ノートランプ」という名称で親しまれてきました。
ユーカーを発展させたゲームと言えますが、シンプルなルールであるにもかかわらず面白いゲームです。
アメリカとオーストラリアでは少しルールが違うのですが、ここではオーストラリアで行われているルールを中心に説明します。
2人〜6人。元来は3人ゲームが主でしたが、現在では4人ゲームが主に行われています。ここでは、まず4人ゲームの説明をします。
各スートのA、K、Q、J、10、9、8、7、6、5とハートとダイアモンドの4とジョーカー1枚の43枚のカードを使用します。 ジョーカーはバード(bird)とも呼ばれます。
切札のスートでは、強いものから順に、 ジョーカー、J(ライトバウアー=正ジャック)、切札と同色のスートのJ(レフトバウアー=裏ジャック)、A、K、Q、10、9、8、7の順です。 ジョーカーは常に切札です。レフトバウアーはマークで表示されているスートではなく切札のスートに属します。
切札以外のスートでは、A、K、Q、J、10、9、8、7の順です。
切札(ハート)のスートのカードを強い順に並べると:
(ハートが切札のときは、Jは切札つまりハートとして扱われます)
ダイアモンドのカードを強い順に並べると:
(Jは切札になったのでダイアモンドの枚数が1枚減っています。)
スペードのカードを強い順に並べると:
クラブのカードを強い順に並べると:
最初のディーラーは 任意のやり方で決めます。ディーラーは ディールごとに左隣のプレイヤーに移ります。
ディーラーは、ディーラーの左隣から時計回りに、まずまとめて3枚ずつ各プレイヤーに配り、次にテーブル中央に裏向きに1枚を配ります。それから4枚ずつ各プレイヤーに配り、1枚をテーブル中央に配り、3枚ずつ各プレイヤーに配り、1枚をテーブル中央に配ります。 各プレイヤーの手札は10枚になります。
テーブル中央に置かれた3枚のカードは「キティー(kitty)」と呼ばれます。
ディーラーの左隣から順に時計回りに、1人ずつ ビッドを行います。ビッドしたくない場合には、「パス」と宣言します。
ビッドは切札にするスートと、自分が何 トリック取れるかを宣言していきます。例えば、スペードを切札にして7トリック以上取れると思ったら、「セブン・スペード」というようにビッドします。
ビッドするトリック数は、最低6トリックです。最高は10トリックとなります。
切札なしでプレイしたい場合には、「ノートランプ」とビッドします。例えば「シックス・ノートランプ」というようにです。
誰かがパス以外のビッドを行ったら、それ以降のプレイヤーがビッドをするときには、それより強いビッドをしなければなりません。
ビッドの強さは、トリック数の多いビッドのほうが少ないビッドよりも強く、同じトリック数ならば、(強)ノートランプ、ハート、ダイアモンド、クラブ、スペード(弱)の順になります。
以上の他に、「ミゼール」とういうビッドと、「オープンミゼール」というビッドがあります。 ミゼールはノートランプでプレイして1トリックも取らないことを目指します。 オープンミゼールも同じことを目指しますが、デクレアラーの手札は公開されます。
ミゼールのビッドの強さは、7トリックのビッドより強く、8トリックのビッドよりは弱くなります。 オープンミゼールはテン(10)ダイアモンドとテン(10)ハートの間の強さのビッドです。
一度パスをしたプレイヤーはそのあとビッドに参加できません。 1人を除く全員がパスをしたらビッドが終了します。
最後にビッドしたプレイヤーは、プレイにおいて、1人でビッドしたトリック数以上を取ろうとします。他の2人はこれを妨害しようとします。 最後にビッドしたプレイヤーを「デクレアラー」と呼びます
全員がパスをした場合、同じディーラーで配り直しを行います。
デクレアラーは、プレイの前に、キティーの3枚を誰にも見せずに手札に加え、手札から3枚のカードを裏向きに捨てます。
オープンミゼールの場合は、最初のリードの前に、デクレアラーは自分の手札をテーブルに表向きに広げます。プレイは広げたまま行います。
最初のリードはデクレアラーが行います。
通常のトリックテイキングゲームのルールに従ってプレイします。つまり:
ノートランプやミゼールやオープンミゼールのときにも、ジョーカーは1枚だけの切札になります。 他のプレイヤーがリードしたときは、リードされたスートを持っていない時だけ、切札をプレイできます。 ただし、ジョーカーのリードの時には、リードするプレイヤーは、他のプレイヤーがどのスートを出さなければならないかを指定します。 指定するスートは、リードするプレイヤーが今までに、他のプレイヤーのリードのとき、そのスートが手札にないために他のスートを捨て札していたスートであってはいけません。
ミゼールやオープンミゼールのときは、デクレアラーのパートナーは手札を裏向きにテーブルに置き、プレイに参加しません。
デクレアラーとそのパートナーの取ったトリック数の合計がビッドしたトリック数かそれ以上なら、ビッドは成功となり、次の表に基づいて得点します。 ただし、ミゼールやオープンミゼールのビッドの場合には1トリックも取らなかった時に限りビッドが成功します。
切札\トリック数 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
---|---|---|---|---|---|
スペード | 40 | 140 | 240 | 340 | 440 |
クラブ | 60 | 160 | 260 | 360 | 460 |
ダイアモンド | 80 | 180 | 280 | 380 | 480 |
ハート | 100 | 200 | 300 | 400 | 500 |
ノートランプ | 120 | 220 | 320 | 420 | 520 |
ミゼール | 250 |
オープンミゼール | 520 |
ビッドしたトリック数よりたくさんのトリックを取っても、追加の得点はありません。 ただし、10トリック全部を取った場合で、ビッドの点数が250点より低かった場合に限り、ビッドの点数ではなく、250点を得点します。
デクレアラーのチームがビッドに失敗した場合には、上記のビッドの点数が、デクレアラーチームのマイナスの得点となります。
デクレアラーの相手チームは、ビッドの成功失敗にかかわらず、自分たちのチームが取った1トリックについて10点ずつ得点します。 ただし、ミゼールやオープンミゼールのときは、この得点はありません。
どちらかのチームの得点が500点以上になるか、マイナス500点以下になった場合、ゲームが終了します。
得点が最も多いチームが勝者となります。
2人、3人、5人、6人用のゲームを紹介します。いずれのゲームにおいても手札は10枚ずつとなり、残りがキティーとなります。
個人戦のときは、各プレイヤーは別々に得点をつけます。 デクレアラーは1人でビッドしたトリックを取らなければなりません。 デクレアラー以外のプレイヤーは、自分の取った1トリックにつき10点を得点します。
各スートのA、K、Q、J、10、9とジョーカーの25枚のカードを使用します。 キティーは5枚になります。
個人戦です。
各スートのA、K、Q、J、10、9、8、7とジョーカーの33枚のカードを使用します。
個人戦です。
通常の52枚のカードとジョーカーの53枚のカードを使います。
ビッドが決まりキティーと手札の交換が行われたあと、デクレアラーは自分の持っていない(捨て札のなかにもない)切札以外のカードを指定します。 このカードを持っているプレイヤーがデクレアラーのパートナーになります。 そのプレイヤーは、そのカードをプレイするまで、パートナーであることを秘密にします。
デクレアラーとパートナーの取ったトリックは合計されます。その結果により、パートナーもデクレアラーと同じ得点(失点)を得ます。
デクレアラーは、パートナーを指定せずに、自分1人でプレイすることもできます。 ミゼールやオープンミゼールでは、パートナー指定しません。
デクレアラーチーム以外のプレイヤーは、自分の取った1トリックにつき10点を得ます。
ファイブ・ハンドレッド用の特別な63枚のカードを使います。
通常の52枚のほかに、各スートには「11」と「12」のカードがあります。 さらに、ハートとダイアモンドには「13」のカードがあります。 これらのカードの強さは、10のカードと絵札との間です。
向かい合った2人ずつがパートナーになります。
そのほかは、4人ゲームと同様です。
なお、1人おきに座っている3人がチームを組んで、残りの3人と対戦するやりかたもあります。
Pagat.comのルールでは、ミゼールのビッドは、誰かが7の台のビッドを行った後にしかできません。
オープンミゼールのビッドは、すべてのビッドの中で最強だというルールもあります。
1度パスをしたプレイヤーもビッドにまた参加できるというルールもあります。
全員がパスをした時には、ノートランプのゲームをするというルールもあります。 このとき、1トリックにつき10点を得点します。 ディーラーの左隣のプレイヤーが最初のリードを行います。
2回続けて全員がパスをしたときは、ディーラーが左隣に移るというルールもあります(wikipedia)。
ジョーカーをリードするときに指定するスートに制限がないこともあります。
Pagat.comのルールでは、は次のようになります。
David Parlet氏の著書では、オープンミゼールでは、最初のリードの前に、手札をテーブルに表向きに広げます。
オープンミゼールの得点は520点のこともあります。
David Parlet氏の著書では、ミゼールやオープンミゼールのときは、デクレアラー(チーム)が1トリック取るごとに、 他のプレイヤー(チーム)が10点得点します。
Pagat.comのルールでは、デクレアラー(チーム)にならないで累計点が500点を超えても、ゲーム終了とはなりません。
2人用ゲームは、David Parlet氏の著書によりました。 Pagat.comや英語版Wikipediaにはかなり違うやりかたが紹介されています。
David Parlet氏の著書では、5人ゲームのとき、指定されたカードを持っているプレイヤーは直ちに名乗り出ます。
Pagat.comによれば、5人ゲームのときミゼールは達成しやすすぎるので、次のようにします。
最も古いルールでは、次のような点がこのルールと違いました。
アメリカの伝統的なルールは、次のような点で、このルールと違います。
英語版Wikipediaには、ここでは紹介しきれなかった非常に多くのルールのバリエーションが記載されています。
2020年5月17日、内容が古かったので、全面的に改定しました。
なお、前には、ノートランプのゲームで、ジョーカーがリードされた時には他のプレイヤーは何を出しても良いと書いていましたが、 これは誤りでした。 リードしたプレイヤーが何をフォロースべきか指示するのが正しいルールでした。 (かなり古いルールでも、最新のルールでも、こうなっています)。