2018/10/7 赤桐
タロットカードのうち54枚のカードを使う3人用のゲームです。 オーストリアの主にケルンテン州(独Kärnten/英Carinthia)でプレイされています。 タップタロックを複雑にしたようなゲームですが、 できるだけカードの点数をとらないようにするプレイもあるのが特徴です。
ルールは、Michael Dummett氏とJohn McLeod氏の"A History of Games Played with the Tarot Pack"という本の 531ページからの記述に拠ります。
3人でプレイします。4人ゲームも最後に紹介します。
タロットカードについては、別項のタロットのカードについてをごらんください。
タップタロックではタロットカードのうち54枚だけを使用します。オーストリアでは54枚のオーストリアパックのカードを使用しています。
スペード、クラブ、ダイヤモンド、ハートの4つのスートがあり、各スートには8枚のカードがあります。 それ以外にタロックと呼ばれる切札のスートが22枚あります。
黒のスート(スペードとクラブ)のカードとその強さは次の通りです(1〜6のカードは使用しません):
キング(最強)、クイーン、カバロ、ジャック、10、9、8、7(最弱)
赤のスート(ハート、ダイアモント)のカードとその強さは次の通りです(5〜10のカードは使用しません):
キング(最強)、クイーン、カバロ、ジャック、1、2、3、4(最弱)
愚者を含む残りの22枚のカードは切札です。 このゲームではこの切札をタロックと呼びます。 (ゲーム自体もタロックと呼ばれますし、カード全部もタロックと呼ばれると思われますが、狭い意味で使われるときには、この22枚だけをタロックと呼ぶわけです。)
愚者のカードをスキュース(Sküs)と呼びます。 このカードが最強であり、タロック21がそれに続き、以下数字の順にタロック1まで続きます。 タロック21をモント(Mond)、タロック1をパガット(Pagat)と呼びます。
なお、オーストリアパックの絵札には何も文字が書かれていないことがありますが、冠をかぶっているのがキング、女の人がクイーン、馬に乗っている男がカバロ、馬に乗っていない男がジャックとなります。道化師の絵が描かれているのがスキュースです。
最初のディーラーは任意に決めます。次回からは反時計回りに交替します。
ディーラーの左隣のプレイヤーがカットしたあと、各プレイヤーに8枚ずつまとめてカードを配ります。 そのあと、テーブルに3枚のカードをまとめて裏向きに置きます。 さらに、もう一度各プレイヤーに8枚ずつまとめて配り、テーブル中央に別の山にして3枚を裏向きに置きます。
各プレイヤーの手札は16枚になります。
ディールが終わると、プレイを始める前にビッドを行います。
ビッドではプレイの種類を宣言します。 可能な宣言は、弱いものから順に、アンゲゼーエン(Angesehen)、ヒヌンター(Hinunter)、ドライ(Drei)、フィアー(Vier)、フィアツィッヒ(Vierzig)、ソロ(Solo)の6種類です。
ビッドに成功したプレイヤー(デクレアラー)は、他の2人を敵に回して、宣言した種類のプレイを行うことになります。 このゲームはトリックテイキングゲームです。
カードにはそれぞれ点数があり、その点数をたくさん取ることを目的とするゲームです。 全点数の合計は70点になりますが、デクレアラーはそのプレイによる点数の半分を超える点数(36点以上)を得ることを目的にプレイを行います。 ただし、フィアツィッヒの宣言の場合、40点以上を得ることが目的となります。 デクレアラー以外の2人は臨時のパートナーとなって、デクレアラーと戦うことになります(以後、この2人をディフェンダーと呼びます)。
ビッドは次のように行われます:
ソロ以外のゲームのときにはデクレアラーは手札のカードとタロンのカードの交換を行います。
デクレアラーはまずタロンを全員が見えるように表向きにします。 タロンのカードは最初に配られた3枚と、次に配られた3枚が分けて置かれていますが、そのどちらかの3枚をデクレアラーは取って手札に加えます。
次に、自分の手札の中から3枚のカードを裏向きに捨て札します(タロンから取ったカードを捨て札してもかまいません)。 捨て札したカードはプレイの後、トリックで取ったカードと同じようにデクレアラーの点数に加えます。 デクレアラーが取らなかったほうの3枚のカードは、ディフェンダーの点数に加えます。
デクレアラーの捨て札には次の制限があります。
ソロのゲームの場合には、タロンのカードは誰も取らず、誰も見ないでプレイします。タロンのカードはプレイ終了後、ディフェンダーのものとして点数を計算します。
タロンのカードの交換の後、プレイ(最初のリード)が始まる前に、次の宣言を行うことができます。 宣言によりゲームの得点が変わってきます(ボーナス得点を得ることができます)。
デクレアラーはパガットウルティモ(Pagat Ultimo)の宣言を行うことができます。 これは、デクレアラーが最後のトリックでタロックの1(パガット)を出して、トリックに勝つことを予告するものです。
この宣言があると、デクレアラーは最後のトリックまでタロックの1を出すことはできません(ただし、プレイのルール上どうしても出さなくてはならないときには出します)。
デクレアラーはウーフ(Uhu)の宣言を行うことができます。 これは、デクレアラーが最後から1つ前のトリックでタロックの2を出して、トリックに勝つことを予告するものです。
この宣言があると、デクレアラーは最後から1つ前のトリックまでタロックの2を出すことはできません (ただし、プレイのルール上どうしても出さなくてはならないときには出します)。
デクレアラーはキーケ(Kike)の宣言を行うことができます。 これは、デクレアラーが最後から2つ前のトリックでタロックの3を出して、トリックに勝つことを予告するものです。
この宣言があると、デクレアラーは最後から2つ前のトリックまでタロックの3を出すことはできません (ただし、プレイのルール上どうしても出さなくてはならないときには出します)。
デクレアラーはバラット(Valat)を宣言することができます。 バラットとは全トリックを取ることです。
フィアツィッヒをビッドしたデクレアラーだけがフュンフツィッヒ(Fünfzig)を宣言することができます。 フィアツィッヒを宣言したプレイヤーは、40点でなく、50点をプレイで取らなければなりません。
ディフェンダーの1人は、デクレアラーが十分な点数を取るのに失敗すると思ったら、コントラを宣言することができます。 この宣言があると、ゲーム点(プレイ後に得られる得点や失点。カードの点数とは全く別のものです)が2倍になります。
これに対してデクレアラーはレトール(Retour)を宣言して、ゲーム点を4倍にすることができます。
それとは別に、パガットウルティモやウーフやキーケに対してコントラを宣言することができます。 それに対して、レトールの宣言もできます。
まず、デクレアラーがパガットウルティモ、ウーフ、キーケ、バラット、フュンフツィッヒの宣言を行うことができます。 複数の宣言をしてもかまいません。
つぎに、ディフェンダーが、デクレアラーの右隣から反時計回りの順に、 ゲームあるいはパガットウルティモ、ウーフ、キーケ、バラットに対するコントラを宣言することができます。 コントラがあった場合には、デクレアラーはレトールを宣言することができます。
アンゲゼーエンのときにデクレアラーがボーナス宣言をしなかった場合には、 他の各プレイヤーはデクレアラーの右隣から反時計回りの順に、 ザーレ(Zahle/支払い)を宣言するかコントラを宣言するかを決めます。
デクレアラー以外の2人がザーレを宣言したら、プレイは行われないで、デクレアラーが3ゲーム点を獲得します。 (ゲーム点とはプレイの結果の点数で、カードの点数とは別です。)
コントラが宣言されたら、通常通りのプレイになります。 デクレアラーはレトールを宣言することができます。
トリックテイキングゲームのプレイを行います。プレイは反時計回りに行います。
まず、ディーラーの右隣のプレイヤーが自由に手札の中の1枚のカードを選んでテーブルに出します(これをリード)すると呼びます)。
つぎにその右隣のプレイヤーが手札からカードを1枚出します。
リードされたカードがタロックであった場合は、手札にタロックがある場合にはタロックを出さなければなりません。ない場合にはどのカードを出してもかまいません。
リードされたカードがそれ以外のスート(マーク)のカードであった場合には、そのスートのカードが手札にあれば、そのスートのカードを出さなければなりません。 ない場合には、タロックを出さなければなりません。タロックも持っていない場合には、どのカードを出してもかまいません。
3人目のプレイヤーもリードされたカード(最初に出されたカード)に従って同じようにプレイします。
こうして3枚のカードが出されると1トリック終わったことになります。
出されたカードの中にタロックがある場合には、一番強いタロックを出したプレイヤーがこのトリックに勝ちます。 タロックがない場合には、リードされたスートで1番強いカードを出したプレイヤーがこのトリックに勝ちます。
勝ったプレイヤーはこのトリックに出された3枚のカード(これもトリックと呼ぶ)を取ったことになり、 自分のところに裏向け向けに置きます(手札には加えない)。
トリックに勝ったプレイヤーが次のリードを行い(手札から自由に1枚を出し)、同様にプレイが続きます。
16トリックのプレイを行って、手札を使いきったらプレイは終了です。
プレイが終わったらデクレアラーはカードの点数を計算して36点以上取ったかどうか(フィアツィッヒのときは40点以上かどうか)を調べます。
各カードの点数は次の通りです(下記以外のカードには点数はありません):
カード | 点数 |
---|---|
スキュース(愚者) | 5 |
タロック21(モント) | 5 |
タロック1(パガット) | 5 |
各キング | 5 |
各クイーン | 4 |
各カバロ | 3 |
各ジャック | 2 |
その他のカード | 1 |
さらに、取ったカードを3枚1セットにして、1セットにつき2点ずつ減点していきます。 1枚か2枚余った時には、1点だけ減点します。
修正後の全点数の合計は70点になります。
デクレアラーがゲームに成功した場合には、ビッドの種類により、次の得点を得られます。 このような得点ををゲーム点と呼びます。ゲーム点とカードの点数は別であることに注意してください。
ビッドの種類 | ゲーム点 |
---|---|
アンゲゼーエン | 3 ゲーム点 |
ヒヌンター | 4 ゲーム点 |
ドライ | 5 ゲーム点 |
フィアー | 6 ゲーム点 |
フィアツィッヒ | 7 ゲーム点 |
ソロ | 12 ゲーム点 |
デクレアラーだけが、上記の点数をスコアシートに記入します。(ディフェンダー側がマイナスの点数を記入する必要はありません。)
コントラ、レトールが宣言されていた場合には、上記のゲーム点が2倍、4倍になります。
デクレアラーがプレイに失敗した場合には、デクレアラーが上記をマイナスにした点数をスコアシートに記入します。
上記のゲームの得点以外に次のようなボーナス得点があります。
あるプレイヤーが最後のトリックにパガット(タロックの1)を出して、そのパガットでトリックに勝ったときにパガットウルティモのボーナスが発生します。
最後のトリックにパガットを出して、そのパガットがほかのプレイヤーに取られた場合にはパガットウルティモに失敗したとみなされます。 ただし、ディフェンダーの1人がパガットをだして、それをもう1人のディフェンダーが取ったときには失敗とは見なされません(成功でもありません)。
また、デクレアラーがパガットウルティモを宣言していて、パガットウルティモを成立させることができなかった場合も、失敗したとみなされます。
パガットウルティモのボーナス得点は4ゲーム点です。 デクレアラーがパガットウルティモを宣言して成功または失敗した場合には8ゲーム点となります。
デクレアラーがパガットウルティモを成功させたときや、ディフェンダーの1人がパガットウルティモに失敗したときには、 デクレアラーがこの点数をスコアシートの自分の所に記入します。 デクレアラーが失敗した時や、ディフェンダーの1人が成功させたときには、この点数はマイナス点となって、デクレアラーのスコアシートに記入します。
パガットウルティモ宣言に対するコントラ、レトールが宣言されていた場合には、今まで述べたゲーム点がすべて2倍、4倍になります。
ゲームが成功したかどうかと、パガットウルティモに対するボーナスとは無関係です。
ウーフの場合も、パガットウルティモと同様にボーナス点をつけます。 ボーナス得点は6点、宣言のあったときは12点です。
キーケも、パガットウルティモと同様にボーナス点をつけます。 ボーナス得点は8点、宣言のあったときは16点です。
バラット、つまりデクレアラーが全トリックを取った場合には、前記のゲームの得点の代りに、24ゲーム点を得ることができます。 バラットをプレイの前に宣言していたときにバラットに成功すると、24ゲーム点ではなく48ゲーム点を得ることができます。
しかし、バラットを宣言したのに全トリック取ることに失敗した場合には、カードの点数にかかわりなくプレイに失敗したとみなされ、 マイナス24ゲーム点になります(通常のゲーム点はつきません)。
バラットのときには、どのようなビッドの種類であってもこの得点となります(たとえソロであっても、得点が増えることはありません)。
コントラ、レトールが宣言されていた場合には、このゲーム点が、2倍、4倍になります。
フュンフツィッヒの宣言があると、ゲーム点は通常のフィアツィッヒの7点の代わりに11点となります。 50点以上取ることに失敗したら、11点のマイナス点です。
ゲームに対するコントラ、レトールで2倍、4倍となります。
トルル(Trull)とはスキュース(愚者)、タロックの21(モント)、タロックの1(パガット)の3枚のことです。 この3枚をすべてデクレアラーが取るか、ディフェンダーの2人で取れば、1ゲーム点もらえます。
キング4枚をすべてデクレアラーが取るか、ディフェンダーの2人で取れば、1ゲーム点もらえます。
相手チームのタロックの21をスキュースで取ると、モーントファン(Mondfang)となり、1ゲーム点もらえます。
アンゲゼーエンのビッドでデクレアラーになったプレイヤーは、 プレイの種類をトリシャーク(Trischak)に変えることができます。
トリシャークでは、各プレイヤーは他のプレイヤーと組まないでプレイします。 できるだけカードの点数を取らないことがプレイの目的です。
トリシャークのデクレアラーは、さらにプレイの種類がシュティッヒツワング(Stichzwang)かナッハラッセン(Nachlassen) かを選びます。 シュティッヒツワングなら、プレイのとき、手札とプレイのルール上で可能ならば、 必ず今までに出ているカードより強いカードをプレイしなければなりません。 ナッハラッセンなら、普通のルールでプレイします。
タロンとのカード交換はありません。 タロンは1つの山にしておきます。
次に、デクレアラーから始めて、反時計回りの順に、各プレイヤーはコントラを宣言するかどうかを決めていきます。 既にコントラが宣言されていてもさらにコントラを宣言することができるので、 得点は2倍、4倍、8倍になる可能性があります。
また、同時に、デクレアラーはボーナスの宣言をすることができ、 他のプレイヤーはそれに対してコントラを宣言することもできます。 デクレアラーはボーナスのコントラに対するレトールを宣言することもできます。
次のようにプレイを行います。
ゲームの得点は3点です。コントラによって、6点、12点、24点となることがあります。
プレイで最も多くの点数を取ったプレイヤーがこの点数をマイナス点として得点します。 他のプレイヤーの得点はありません。 ただし、次の例外があります。
そのほかにボーナス得点があります。ただし、モーントファン(相手チームのタロックの21をスキュースで取る)の点数はつきません。
トリシャークがあると、そのあとデクレアラーがプレイを3回成功させるまでのディールでは、 ゲームの得点(ボーナス以外の得点)が2倍になります。 もちろん、コントラ、レトールがあれば、さらに2倍、4倍になります。
プレイを3回成功させるとは、デクレアラーが36点以上を取ることです。 バラットの宣言があっても36点でかまいません。 ただし、フィアツィッヒのゲームやフュンフツィッヒの宣言の場合には、それぞれ40点、50点が必要です。
トリシャーク後の2倍期間中にトリシャークがプレイされた場合にも、トリシャークの点数は2倍となります。 このとき、成功回数がリセットされて、 そのあとデクレアラーがプレイを3回成功させるまで2倍期間が続きます。
2倍期間が9ディール連続すると、 10ディール目からはアンゲゼーエンまたはソロしかビッドできなくなり、 アンゲゼーエンのデクレアラーは必ずトリシャークをプレイしなければならなくなります。 ゲームの得点は2倍のままです。
この制限は(ソロでなく)トリシャークのプレイがあると解除されますが、 そのあと通常の2倍期間となります。
ゲームはプレイヤーの合意により何ディールでも行うことができます。
ゲームが終了したら、各プレイヤーは他の2人のプレイヤーと、それぞれとの点数の差だけの額を清算します。
例えば、Aのゲーム点が10点、Bのゲーム点が20点、Cのゲーム点が50点だとすると。AはBに(20-10=)10点払い、AはさらにCに(50-10=)40点払い、BはCに(50-20=)30点払います。
4人ゲームでは、ディーラーはプレイに参加しません。 ディールの前のカットはディーラーの向かい側のプレイヤーが行います。
ただし、トリシャークのときは、次のようにディーラーはプレイに参加します。
2018年10月9日になかよし村でプレイしました。
本では簡潔に記述していたので、それほど難しいゲームだと思わなかったのですが、 こうしてルールを書いて説明してみると、かなり複雑なゲームであることがわかりました。
しかし、他のタロットのゲームと同様に、とても面白いゲームです。 トリシャークもなかなか難しいのですが、楽しむことができました。