2009/8/22 赤桐
2009/12/19修正
島根県雲南市掛合町でプレイされているトランプゲームです。トリックテイキングゲームです。対外的には「掛合トランプ」と呼んでいますが、元来現地では「絵取り」と呼ばれているようです。
約260年前に掛谷の医師がオランダ医学を学ぶため長崎に留学した時にトランプと遊び方を持ち帰り、明治期ごろにその子孫の方がこのトランプ競技を普及させたと伝えられています。
基本的なルールは明治中期の日本の本に出ている「絵取り」ゲームと同じですが、得点法が非常に改良されているほか、切札の決め方、プレイの作法、用語など、いろいろな違いがあります。
プレイヤーは4人または6人です。対角線上の2人ずつがパートナーになります。(パートナーになっている2人のことをペアと呼ぶことにします)。
カードは1つのペア(2人)が配ります。配るペアのことを配り番と呼びます。6人でプレイする時には、配り番のペアはプレイを休みます。
パートナー、席順、最初の配り番などは任意に決めてかまいませんが、正式に決める時には次のようにします:
6人プレイでは、1〜6の数字が書かれた6本のくじ棒をまぜて、各プレイヤーが引きます。1を引いたプレイヤーが好きな席に座り、ほかのプレイヤーは反時計回りに引いた数字の順に座ります。1と4、2と5、3と6のプレイヤーがペアになります。最初の配り番は3と6を引いたペアです。4人プレイでは、1〜4の4本のくじ棒を引き、1と3、2と4がペアになり、2と4のペアが最初の配り番になります。(くじ棒はカードなどで代用できます。)
配り番は、次回からは前回負けたペアがなります。6人でプレイするときは、配り番になったペアがプレイを休み、前回配り番でプレイを休んでいたペアがプレイに参加することになります。
配り番は2人でカードをおよそ半分ずつシャッフルします。2人が順番にカードを配っていきますが、2人のうちどちらが先に配っても構いません。ます1人が4か所に丸く(環状に)配ります。どこから配り始めてもかまいませんが、反時計回りに1枚ずつ配り、手持ちのカードを全部配ってしまします。配り終わったら、次に配るプレイヤーの場所をもう1人の配り番に示し、そこからもう1人の配り番が反時計回りに1枚ずつ全部のカードを配ります。最後に配られたカードを切りじまいと言います。
切りじまいのカードを含む山は、6人ゲームのときは、前回休んでいたペアの1人が取ります。最初のディールのときは、配り番の左隣のプレイヤーかそのパートナーのプレイヤーが取ります。4人ゲームのときには、切りじまいの山は配り番のペアの1人が取ります。切りじまいの山は、取るべきペアのうち、その山に近いほうのプレイヤーが取るようにします。
それ以外の山は、切りじまいの山とそれを取ったプレイヤーを基準として、席順と同じ位置関係の山を各プレイヤーが取っていきます。
普通の52枚のトランプを使います。ジョーカーは使用しません。各スートにおけるカードの強さは、強いものから順に、A、K、Q、J、10、9、8、7、6、5、4、3、2です。
カードのうち、各スートのA、K、Q、Jの16枚が絵札となります(現地の正しい呼び名は「絵柄」です)。ペアで絵札を多く取ることがプレイの目的となります。
申し出がなければ、最初の切り札はスペードになります。配り終えて誰かがカードを手に取る前であれば、最初の配り番の2人のうち誰でも1人は、申し出て、切札のスートを変えることができます。例えば「ハートにします」というように申し出ることができます。
次回のディールからは、申し出がなければ前回の切り札のスートがそのまま切札になります。6人ゲームであれば、前回配り番だったペアのうち誰でも1人が、同様に申し出て切札のスートを変えることができます。4人ゲームならば、そのディールの配り番であるペアの1人が切札を変えることができます。
切札を変えるのは手札を見る前ですので、作戦上の理由はありません。単なるゲンかつぎです。
切札は現地では「切り」と呼ばれます。
スペードが切札のときは、クラブのAをれんしょと呼びます。スペード以外が切札のときはスペードのAがれんしょになります。
れんしょはプレイのとき最も強いカードになります。切札が出ていても、れんしょのほうが強いカードです。
れんしょは、そのマークのスートに属します。つまり、クラブAのれんしょならクラブに属し、スペードAのれんしょならスペードに属します。プレイのときは、普通のカードと同じ規則でプレイしなければなりません。
最初のリードは配り番でないペアの1人が行います。6人プレイの場合は、前回勝ったペアの1人が行います(最初のディールでは配り番の右隣のプレイヤーかそのパートナーが行います)。
ペアのどちらが最初のリードをしてもかまいません。どちらがリードするか相談してもかまいませんが、手札の内容については何も話すことはできません。リードするカードはどのカードでもかまいません。
プレイは反時計回りです。通常のトリックテイキングゲームと同様に次のようににプレイします:
取ったトリックに絵札があれば、ペアごとに整理して表にして並べておきます。それ以外のカードは裏向きにしてテーブル中央に山積みにします。
ゲームが始まる前に、碁石などを5個ずつ各ペアに配っておきます(ポーカーチップなどでもよい)。これが各ペアの持ち点になります。
取った絵札の枚数が多いほうのペアが勝ちになります。同じ枚数つまり8枚ずつ取った場合には、れんしょを配られなかったペアの勝ちとなります。
、勝ったペアは負けたペアから、次の表の点数分の碁石をもらいます。プレイを休んでいるペアは碁石の受け渡しは行いません。
点数は取った絵札の枚数によって変わりますが、それだけでなく、負けたペアに配られていた手札合計26枚の中にれんしょや他のAがどれだけ含まれていたかによっても変わります。良い手札を配られたペアが負けたときは、多くの点数を相手に取られます。
取った枚数 | 8枚〜11枚 | 12枚〜15枚 | 16枚 |
相手ペアにAが4枚配られていた場合 | 4点 | 4点 | - |
上記以外で、相手ペアにれんしょと切札Aが配られていた場合 | 2点 | 2点 | - |
それ以外の場合 | 1点 | 2点 | 4点 |
どれかのペアの碁石(持ち点)が0になったらゲーム終了です。
そのときに最も多くの持ち点を持っているペアが勝ちになります。同点なら引き分けです。
最後の碁石のやりとりのとき、碁石が足りなくて支払えなかった分はマイナスの持ち点となります。もらうほうのプレイヤーは、その分を支払ってもらったと考えて最後の持ち点を数えます。
40分経過するか、あるペアの碁石が0になったときにゲーム終了です。(40分経過したときに行っているディールは最後までプレイします)。
規定のゲーム数を行い、持ち点の合計の多いペアが勝ちとなります。同点の時はカードドローで勝敗を決します。
明治中期の「絵取り」ゲームのルールは次のようなところで掛谷トランプと共通しています。
しかし、絵取りでは、次のような点が掛谷トランプと違います。
ゲームサークル「なかよし村」でプレイされているルールは次のようになります。
つまり、次のような得点になります。
取った枚数 | 8枚〜11枚 | 12枚〜15枚 | 16枚 |
相手ペアにAが4枚配られていた場合 | 3点 | 4点 | - |
上記以外で、相手ペアにれんしょと切札Aが配られていた場合 | 2点 | 3点 | - |
それ以外の場合 | 1点 | 2点 | 4点 |
掛合トランプの歴史についての考察を「掛合トランプの歴史と長崎トランプ仮説」として別稿にしました。
草場純さんによる記事
http://kusabazyun.banjoyugi.net/Home/reproductioned/trump/kakeya-trump-nikki
雲南研究室(掛谷トランプとは)
http://www.ufm.jp/lab/kakeya/kakeyatrump/trump/index.html