2017/12/2 赤桐
スカートはドイツの代表的なゲームですが、アメリカ合衆国やカナダでもプレイされています。
アメリカでは1898年に北米スカートリーグが発足しました。 ドイツで同様の組織が最初にできる前年です。
その後1909年までに12回の全国規模の大会が開かれ、 1907年のシカゴ大会では2700人の参加者を記録しました。 ドイツ系アメリカ人が主だったと思われますが、 それだけにに留まらない広がりがあったようです。
その後、コントラクト・ブリッジとの競争に敗れるような形で下火になっていきますが、 1949年まで大きな大会に女性の出場を認めなかったことも一因かもしれません。
ルールについて言えば、北米スカートリーグが発足した当時はドイツのルールとほぼ同じでした。 しかし、あとで説明するグックザーやダブル・トゥルネのルールはアメリカで生まれたようです。 その後しばらくはルールの変遷もありましたが、20世紀初頭には落ち着き、最近まであまり変わらず続いています。
ドイツでは20世紀に入ってからもルールの変遷が続いたあと、 20世紀の中頃までには現在の形に近いものになりました。 アメリカのプレイヤーは、ドイツ系の人が多いので、 ドイツでのルールの移り変わりを知っていたに違いありませんが、 自分たちのプレイするルールをこれに従わせる必要を感じなかったようです。 (ドイツ系の新しい移民が増えなかったという理由もあったでしょうが。) ただし、現在ではドイツのルールでプレイする人のほうが増えています。
このゲームのようにトゥルネのルールのあるスカートはトゥルネ・スカート(Tournée Skat)と呼ばれます。 19世紀後半から20世紀初めごろのかなりの長期間、ドイツでもスカートはトゥルネのあるルールで行われていました。
本文のルールは1975年に出版されたJoseph Petrus Wergen氏の"Wergen on Skat and Sheepshead"に基づきます。 比較的新しいルールです。
スカートでは次のようにゲームを行います。
3人〜5人。4人のときにはディーラーはプレイには参加しません。5人のときはディーラーとディーラーの2つ右隣のプレイヤーもプレイに参加しません。
プレイに参加する3人のプレイヤーのうち、ディーラーの左隣のプレイヤーをフォアハンド、その左隣をミドルハンド、残りの1人をリアハンドと呼びます。 3人で行うときには、ディーラーがリアハンドになります。
通常の52枚のカードから、各スートの2〜6を除いた、32枚のカードを使います。
通常、切札のスートのカードとその強さの順位は、(強)J、J、J、J、A、10、K、Q、9、8、7(弱)です。 (各スートのジャックは、どのスートを切札にした場合でも、切札として扱われます。) 切札以外の各スートのカードと強さの順位は、(強)A、10、K、Q、9、8、7(弱)です。
各カードには次のような点数があります。
カード | 点数 |
---|---|
A | 11点 |
10 | 10点 |
K | 4点 |
Q | 3点 |
J | 2点 |
これ以外のカードは0点です。全部のカードの点数の合計は120点になります。
多くの場合、カードの点数を取ることがゲームの目的になります。 しかし、プレイの結果の得点(ゲーム点)はそれとは別に計算しますので、混同しないようにしてください。
最初のディーラーは任意の方法で決めます。 次回からは、ディーラーは時計回りに交代します。
ディーラーはシャッフルして右隣のプレイヤーにカットしてもらったあと、次のように配ります。
配るときは、ディーラーの左隣から時計回りに配ります。各プレイヤーの手札は10枚になります。
テーブルに置かれた2枚のカードはスカートと呼ばれます。
ディールが終わると、 誰がデクレアラーになるかを決めるために、ビッドを行います。
このゲームでは、各カードに点数があり、トリックで勝つと点数を取ることになります。 多くの場合、デクレアラーになったプレイヤーは、1人で過半数の点数(61点以上)を取ることが目的となり、 それ以外の2人は協力してそれを阻止しようとします。 デクレアラーになったプレイヤーは、ゲームの種類を指定できます。
しかし、ビッドは、取ることできそうなカードの点数や、切札の種類を宣言するわけではありません。 プレイした結果による最終的なゲーム点を予想して、それに基づいてビッドします。 最終的なゲーム点とは、後で説明するように、ゲームの種類や、手札の内容、取ったカードの点数などによって計算されるものです。
このような点数を最も高くビッドしたプレイヤーがデクレアラーになるわけです。 同じ点数のビッドならばフォアハンド>ミドルハンド>リアハンドの順に優先順位があり、優先順位の高いほうがデクレアラーになります。
実際のビッドは勝ち抜き戦方式で行われます。 まず、フォアハンドとミドルハンドがビッドを行い、勝ったプレイヤー、つまりパスをしなかったほうのプレイヤーがリアハンドとビッドを行います。 最後までパスをしなかったプレイヤーがデクレアラーになります
最初に発言するのはミドルハンドです。 ミドルハンドは10かそれ以上の点数をビッドするか、パスをします。 (パスをした場合は、すぐにフォアハンドとリアハンドのビッドに移ることになります。) ミドルハンドが点数のビッドをしたら、フォアハンドは「はい(イエス)」またはパスのビッドをします。 「はい」というのは、ミドルハンドの言った点数と同じ点数を宣言するという意味です。
同じ点数ならフォアハンドに優先権があるので、フォアハンドが「はい」とビッドしたら、 ミドルハンドは、今まで言った点数より高い点数をビッドするか、パスをするかしなければなりません。
ミドルハンドが点数のビッドをしたら、先ほどと同じように、フォアハンドは「はい」またはパスのビッドをします。
どちらかがパスを宣言するまで、このような事を繰り返します。
リアハンドとのビッドも同じように行います。
リアハンドがまず点数のビッドを行います(あるいはパスをします)。 フォアハンドとミドルハンドの勝者が、それに対して「はい」をビッドするか、パスをします。
リアハンドが最初にビッドする点数は、もちろんフォアハンドとミドルハンドのビッドの時に出ていた点数より高い点数でなければなりません。 ミドルハンドがいきなりパスをしていて、点数がビッドされていないときには、10からビッドしてかまいません。
最後までパスをしなかったプレイヤーが、デクレアラーになります。
もしミドルハンドとリアハンドが点数のビッドを行わないで直ちにパスをしたら、フォアハンドは10のビッドをしてデクレアラーになるか、パスを宣言します。 パスの場合には、ラムシュのゲームを行います。
デクレアラーになったプレイヤーが宣言できるゲームの種類は、次のようになります。
デクレアラーはスカートのカードのうちどれでも1枚を手に取って見ます。 そのカードでよければ、公開します。 そのカードのスートが切札になります。
もしそのカードを切札にしたくなければ、最初のカードを見せないで手札に加え、もう1枚のカードを表にします。 そのカードのスートが必ず切札になります。 ただし、この場合はプレイに失敗した時の罰点が2倍になります。 これをダブル・トゥルネ(double tournee/second tournee)と呼びます。 古くはパスト・ニヒト(Passt Nicht/Passt Mir Nicht)と呼ばれました。
いずれにしてもスカートのカードはこのあと手札に加えられて、自由に2枚を裏向きに捨て札します。 捨て札したカードの点数もデクレアラーの取った点数に加えられます。
なお、ジャックのカードがスカートにあり、それを公開する場合には、グランド・トゥルネを宣言して、ジャックだけを切札にすることができます (後のグランドの項参照)。 そうでない時は、そのジャックのスートを切札にします。
クラブ、スペード、ハート、ダイアモンドの4つのスートのうちの1つを切札として選択することができます。
スカートのカードと手札との交換はできません。 しかし、スカートのカードの点数は、プレイ終了後、デクレアラーが取った点数として数えます。
ソロを行う場合、さらに次の宣言を行うことができます。 これらの宣言で成功した場合は得られるゲーム点が高くなります。
プレイで91点以上取ると宣言することです。(ドイツルールではシュナイダーは90点ですがアメリカルールでは91点になります)。
プレイで全トリックを取ると宣言することです。シュワルツ宣言を行ったときには、シュナイダー宣言も行ったものとみなされます。
シュナイダーやシュワルツの宣言に失敗したら、プレイ失敗となり、高いマイナス点となります。 例えば、シュナイダー宣言をして、91点取ることに失敗したら、たとえ61点以上取っていてもプレイは失敗です。
グランドのゲームでは、4枚のジャックだけが独立した切札のスートになっています。(5つのスートが存在することになります。) 切札の強さの順位は、通常通り、(強)J、J、J、J(弱)です。
グランドには次の3種類があります。
交換しなかったスカートのカードや交換後捨て札されたカードは、プレイ終了後、デクレアラーの点数に加えられます。
グランド・トゥルネ以外では、ハンドゲームと同様に、シュナイダー宣言、シュワルツ宣言をすることが可能です。
ヌルのコントラクトでは、デクレアラーは1トリックも取らないことを目的としてプレイします。
切札はありません。スカートのカードは使用しません。
各スートのカードと強さの順位は、通常と異なり、(強)A、K、Q、J、10、9、8、7(弱)です。
ヌルには次の2種類があります。
参加する3人全員がパスした場合にもプレイを行います。 このとき、グランドのプレイと同じように、切札のスートのカードとその強さの順位は、(強)J、J、J、J(弱)となり、切札以外の各スートのカードと強さの順位は、(強)A、10、K、Q、9、8、7(弱)となります。
プレイの目的は、できるだけカードの点数を取らないことです。 スカートのカードは、最後のトリックを取ったプレイヤーが取ります。
プレイの前に、デクレアラーはゲームの種類を宣言したあと、必要ならスカートのカードを開いたり交換したりします。 ウベアでは、手札をすべて表向きにして、プレイヤーの前のテーブルに置きます。
それから最初のリードが行われます。 最初のリードを行うプレイヤーは、必ずフォアハンドです。
通常のトリックテイキングゲームのルールに従ってプレイします。つまり:
なお、ヌル以外では、ジャックはそのカードに記されているスートではなく、切札のスートに属すことに注意して下さい。
ヌルの場合には、デクレアラーが1トリックでも取った場合、失敗となり、直ちにプレイは終了します。
プレイが終わると、デクレアラーは自分の取ったカードの点数を合計します。 他の2人のプレイヤーも、普通は確認のため2人のカードを合わせて点数を合計します。
通常はデクレアラーが61点かそれ以上を取ったらプレイ成功となります。
ヌルとラムシュのゲームを除き、「基本点」と「達成点」を掛けたものが得点となります。
ゲーム点 = 基本点 x 達成点
基本点とは、ゲームの種類による点数です。達成点とは、獲得した得点や、手札とスカートの内容、シュナイダーなどの宣言による点数です。
ヌルでは、基本点がそのまま得点となります。
基本点は、ゲームの種類により、次のようになります。
ゲームの種類 | 点数 |
---|---|
トゥルネ:ダイアモンドが切札 | 5点 |
トゥルネ:ハートが切札 | 6点 |
トゥルネ:スペードが切札 | 7点 |
トゥルネ:クラブが切札 | 8点 |
ソロ:ダイアモンドが切札 | 9点 |
ソロ:ハートが切札 | 10点 |
ソロ:スペードが切札 | 11点 |
ソロ:クラブが切札 | 12点 |
グランド・ソロ | 20点 |
グランド・グックザー | 16点 |
グランド・ウベア | 24点 |
グランド・トゥルネ | 12点 |
ヌル | 20点 |
ヌル・ウベア | 40点 |
達成点は、次の点数のうち、あてはまる点数をすべて合計したものになります。
種類 | 点数 |
---|---|
ウィズまたはウィズアウト(マタドール) | 各1点 |
ゲーム | 1点 |
シュナイダー | 1点 |
シュナイダー宣言 | 1点 |
シュワルツ | 1点 |
シュワルツ宣言 | 1点 |
ウベア | 1点 |
逆シュナイダー | 1点 |
逆シュワルツ | 1点 |
ウィズ(with)というのは、手札とスカートのカード(または捨て札したカード)を合わせて、一番強い切札(J)から連続して、何枚の切札があったかという枚数です。Jがなければ、ウィズは0です。
例えば、Jがあるけれど、次に強いJはない場合、ウィズは1です。J、J、J、J、切札のAがあって、切札の10がなければ、ウィズは5になります。
ウィズアウト(withoutまたはアゲンスト=against)というのは、手札とスカートのカード(または捨て札したカード)を合わせて、一番強い切札(J)から連続して、何枚の切札が欠けていたかという枚数です。Jがあれば、ウィズアウトは0です。 例えば、Jがなく、Jもなくて、Jがある場合には、ウィズアウトは2になります。トゥルネやソロで1枚も切札がない場合には、ウィズアウトは11になります。
ウィズとウィズアウトをまとめて「マタドール(matador)」と呼びます。 マタドールの点数は、ウィズまたはウィズアウトのうち、0でない方の数がそのまま点数になります。ですから、少なくとも1点はあります。
なお、ウィズやウィズアウトでは、取ったカードではなく、配られたときの手札とスカートを合わせたカードにあった切札を調べるということにご注意ください。 手札にどのような切札があったかということは、記憶しておく必要があります。 また、スカートゲームかハンドゲームかに関わりなく、最初の手札だけでなくスカートも含んだカードが問題になるので、スカートに入っていた切札によっては、 ビッドの時に考えていたものより実際の達成点が多くなったり少なくなったりすることがあります。
プレイが成功した場合も失敗した場合も、上記のやり方でゲーム点を計算します。
61点を取ることに失敗した場合や、シュナイダー宣言やシュワルツ宣言やウベアに失敗した場合には、そのゲーム点がマイナスのゲーム点となります。
ただし、次の場合にはそれを2倍したものがマイナスのゲーム点となります。
常にデクレアラーだけがこのようなプラスまたはマイナスのゲーム点をつけます。
もし計算した得点がビッドした点数より少なければ、その場合も失敗となります。これをオーバービッドの状態と呼びます。 この場合、達成点を必要なだけ増やして、ゲーム点(基本点x達成点)がビッドした点数かそれより多くなるようにします。 その点数(あるいは、ゲームの種類によっては、それを2倍したもの)がマイナスのゲーム点となります。
最も点数を取らなかったプレイヤーが10点のゲーム点を獲得します。 そのプレイヤーが1点も取らなかったときは20点のゲーム点になります。 同点の場合は次のようになります:
ゲーム終了については、特に定まった規則はありません。
ただし、全員が同じ回数だけディーラーになるように、3人でゲームを行なうときには3の倍数、4人なら4の倍数、5人なら5の倍数になるディール数で行うようにしましょう。
ゲームが終了したら、各プレイヤーは他の全プレイヤーと、それぞれとのゲーム点の差だけの額を精算します。
例えば、プレイヤーをA、B、C、Dとし、それぞれのゲーム点をa, b, c,dとすると、 Aが得られる点数(マイナスになる場合は支払う点数)は:
Aの精算点数 = (a-b)+(a-c)+(a-d) となります。
少し古いルールには次のようなものもあります。
手札とスカートを交換することができ、切札を自由に宣言できるという、ゲームの種類です。
基本点は次のようになります。
ゲームの種類 | 点数 |
---|---|
コール:ダイアモンドが切札 | 1点 |
コール:ハートが切札 | 2点 |
コール:スペードが切札 | 3点 |
コール:クラブが切札 | 4点 |
このルールがある場合でも(19世紀末頃では)ビッドは10点から始まりました。
「トゥルネ」とか「ソロ・ハート」などとビッドします。
トゥルネ < ソロ・ダイアモンド < ソロ・ハート.... < グランド・ソロ < グランド・ウベア というようなビッドの強さになります。
ただし、実際にゲームの種類を宣言するときには、どのゲームの種類でも宣言できるようです。
最終得点が、ビッドしたゲームの種類を最低条件で成功させた時のゲーム点、 つまり、ビッドしたゲームの種類の基本点x2より高くなるようなら、 プレイ成功となります。
このようなビッドを採用するか、点数によるビッドを採用するかで、 19世紀末にはドイツで激しい論争があったようで、 ドイツのスカート協会の発足が遅れる原因になりました。
2017年12月2日になかよし村でプレイしました。
スカートを取るときには切札を自由に決められないのが苦しいゲームです(そこに面白さがあるのでしょうが)。 少ない切札で頑張らなくてはいけません。
現在のドイツのスカートのほうが良いという人が大半でしたが、 このルールの良さもあると思います。