2022/5/7 赤桐
サウジアラビアで盛んにプレイされているゲームで、クウェートでもプレイされています。
ヤスの系統のトリックテイキングゲームですが、フランスのブロットに近いゲームです。
ルールはPagat.comによりました。
4人。向かい合った2人がパートナーになります。
各スートのA、K、Q、J、10、9、8、7の32枚。
切札の場合 | ランク | J | 9 | A | 10 | K | Q | 8 | 7 |
点数 | 20 | 14 | 11 | 10 | 4 | 3 | 0 | 0 | |
切札以外 | ランク | A | 10 | K | Q | J | 9 | 8 | 7 |
点数 | 11 | 10 | 4 | 3 | 2 | 0 | 0 | 0 |
全カードの合計点は152点です。 最後のトリックを取ったチームに10点が与えられるので、それを加えると162点になります。
切札がないときもあり、そのときは10点を加えた合計点が130点になります。
これはカードの点数(カード点)ですが、ゲーム点というのも使用します。 切札があるときは、およそ10カード点が1ゲーム点に相当します。 切札がないときは、およそ5カード点が1ゲーム点に相当します。
最初のディーラーは任意の方法で決めます。
ディーラーは、シャッフルして、左隣のプレイヤーにカットしてもらいます。 ただし、左隣のプレイヤーはカットを断ることもできます。この場合はカットなしで配ります。
そのあと、右隣のプレイヤーから、反時計回りにカードを配ります。 まず各プレイヤーに3枚ずつまとめて配り、次に2枚ずつまとめて配ります。
次のカードは表向きにテーブル中央に置き、切札候補カードとします。
ディーラーの右隣のプレイヤーから反時計回りの順にビッドを行います。
最初の1巡では、次のビッドが可能です。
1~3のビッドがあったときは、ビッドは直ちに終了します。 ただし、ホッカムのビッドのあった時(サンやアシュカルではだめ)は、他のプレイヤーは誰でもサンをビッドしてデクレアラーになる(替わる)ことができます。 パスをしていたプレイヤーでもかまいません。 このとき2人以上がサンをビッドしたら、ホッカムをビッドしたプレイヤーから反時計回りで順番が近いプレイヤーがデクレアラーになります。
1巡目で全員がパスをしたら、再び全員が1回ずつビッドを行います。 このときビッドできるのは、ホッカム、サン、パスだけです。 ホッカムのビッドの後は、1巡目のように自由にサンをビッドできるのでなく、ビッドしていないプレイヤーが順番にサンをビッドするかパスをします。
デクレアラーが決まったら、デクレアラーは切札をどのスートにするかを宣言します。
ビッドが終わると、デクレアラーになったプレイヤーは、切札候補カードを取って手札に入れます。
ディーラーは配り残しているカードから各プレイヤーに3枚のカードをまとめて配ります。 ただし、デクレアラーには2枚しか配りません。
ホッカムのビッドに対して、 相手チームの誰でも1人は、ダブル(double)を宣言して、プレイの得点を2倍にすることができます。 ダブルに対してデクレアラーは、トリプル(triple)を宣言してプレイの得点を3倍にできます。 トリプルに対して相手チームの誰でも1人は、クアドルプル(quadruple/four)を宣言してプレイの得点を4倍にできます。 クアドルプルに対してデクレアラーは、ガーワ(Gahwa=アラビアンコーヒー)を宣言して、このプレイだけでゲームの勝負をつけるようにすることができます。
ダブルまたはクアドルプルの宣言のときには、オープン(open)またはロック(locked/closed)も宣言しなければなりません。 オープンのときは、自由にリードができます。 クローズのときは、どのプレイヤーでも、切札をリードすることはできません(手札に切札しかないときを除く)。
トリプルまたはクアドルプルの宣言があると、オープンの状態になります。
サンやアシュカルのときには、一方のチームが100点より多い累計点を持っていて、もう一方のチームが100点未満のときに限り、ダブルを宣言することができます。 切札がないので、オープンやロックの宣言は必要ありません。 トリプル以上の宣言はできません。
ディーラの右隣のプレイヤーが最初のリードをして、 トリックテイキングのプレイを行います。
通常はどのカードをリードしてもかまいませんが、ロックの宣言が有効の場合は、手札が切札だけのとき以外は切札をリードすることはできません (最初のリードだけでなく、そのあとのリードでも同様です)。
ホッカムで切札以外をリードをするとき、 そのカードがそのときそのスートで最も強いカードであった場合は、エッカ(Ekka)と宣言することができます。 Aをリードするときは、自動的にエッカの宣言があったことになります。 エッカの効果は後で述べます。
サン(およびアシュカル。以降の説明でのサンはアシュカルも含む)のときには切札がなく、フォローの規則は次のようになります。
ホッカムで切札がリードされたときは次のようになります。
ホッカムで切札以外がリードされたときは次のようになります。
トリックに切札が含まれるときは、最も強い切札を出したプレイヤーがトリックに勝ちます。 切札が含まれないときは、リードされたスートの最も強いカードを出したプレイヤーがトリックに勝ちます。 トリックに勝ったプレイヤーが、次のリードを行います。
最後のトリックに勝ったチームには10カード点が与えられます。
手札として配られた8枚のカードのなかに次の組み合わせがあって宣言した場合には、ゲーム点が得られます。 これをプロジェクト(project)と呼びます。
名称 | 組み合わせ | ホッカムでの点数 | サンでの点数 |
---|---|---|---|
400 | A4枚 | - | 40ゲーム点 |
100 | A4枚 | 10ゲーム点 | - |
100 | K4枚、Q4枚、J4枚、104枚、のどれか | 10ゲーム点 | 20ゲーム点 |
100 | 同じスートの5枚の続き札 | 10ゲーム点 | 20ゲーム点 |
50 | 同じスートの4枚の続き札 | 5ゲーム点 | 10ゲーム点 |
シリ(siri) | 同じスートの3枚の続き札 | 2ゲーム点 | 4ゲーム点 |
続き札は、A、K、Q、J、10、9、8、7の順に続きます。
同じカードは2つ以上のプロジェクトに使用することはできません。
プロジェクトには次のような強さの違いがあります。
プロジェクトは、宣言を行って、最も強いプロジェクトを宣言したプレイヤーのチームだけが得点できます。 このチームは、最も強いプロジェクトだけでなく他のプロジェクトも全部得点できます(パートナーも)。 相手チームは、プロジェクトの得点は全く得られません。
プロジェクトの宣言は、各プレイヤーが最初のトリックのプレイをする直前に行います。 各プレイヤーは自分の持っている最も強いプロジェクトの名称を宣言します(「100」「シリ」など)。
最も強い名称が同じなら、2トリック目のプレイの前に、各プレイヤーは、「100」なら同位札か続き札かを宣言します。 それが同じなら、4枚同位札ならそのランクを、続き札なら最も強いカードのランクを宣言して、最も強いプロジェクトを持っているプレイヤーを決めます。
最も強いプロジェクトを持っているプレイヤーは、2巡目の自分のプレイの直前に、宣言するプロジェクトのカードをすべて見せて得点します(見せるのは1トリック目でプレイしたカード以外)。 そのプレイヤーのパートナーも、宣言するプロジェクトを持っていたら、このときカードを見せて得点します(パートナーは1トリック目に宣言していなくてもかまいません)。
2トリック目が終わったら、見せていたプロジェクトのカードは手札に戻します。
なお、プロジェクトの組み合わせを持っていても、宣言しなくてもかまいません。
切札のキングとクイーンを手札に持っていて、宣言すれば、2ゲーム点がもらえます。 宣言は2枚目のKかQをプレイするときに行わなければなりません。
バロートはプロジェクトとは別のものですが、例外的に次のルールがあります。
普通はデクレアラーの相手チームの点数を数えます。 ダブルやクアドルプルが有効な時は、デクレアラーチームの点数を数えます。 このとき、最後のトリックを取っていたら10点を加えます。
もう一方のチームの点数も数えてもかまいませんが、カード点を検算する目的となります。
ホッカムのときは、まずカードの点数を10の位に丸めます。 このとき1桁目が5以下だと切り捨て、6以上だと切り上げます。 例えば35点なら30点とし、36点なら40点とします。 このあと10で割って、ゲーム点とします。
数えなかったほうのチームは16点からこの点数を引いたゲーム点となります。 (カード点の1桁目が6点のときは、相手チームのカード点の1桁目も6点となります。 このとき、前記の計算方法で両方のチームを計算して加えるとゲーム点の合計は17点となりますが、 ゲーム点の合計が必ず16点となるように、片方のチームしかカード点を計算しないわけです。 数えなかったチームは1桁目6だと切り下げると考えても良いでしょう。)
サンのときも、同様に10の位に丸めますが、1桁目が5のときだけは丸めないでそのままにします。 例えば64点なら60点に、65点なら65点のまま、66点なら70点にするわけです。 そのあと、5で割ってゲーム点とします。 数えなかったほうのチームは26点からこの点数を引いたゲーム点となります。 (この場合は両チームのカード点を数えても必ず合計26点になります)
各チームはプロジェクトやバロートのゲーム点を加算します。
以上の合計ゲーム点の多いほうが勝利チームになります。
ゲーム点が同じときは丸めたカード点を比べて、多く切り捨てた/少なく切り上げたほうが勝ちとなります。 つまり、ホッカムのときは数えたチームのカード点の1桁目が2~5ならそのチームの勝ち、6~9,0なら相手チームの勝ち、1なら同点です。 (6のとき相手チームの勝ちとなるのは、相手チームも1桁目6ですが、前期のように実質的にそれを切り捨てているからです。) サンのときは、数えたチームのカード点の1桁目が1~4ならそのチームの勝ち、6~9なら相手チームの勝ち、1,5なら同点です。
同点なら、デクレアラーチームの勝ちになります。
ダブルなどがなくて、デクレアラーチームが勝った場合、どちらのチームも取ったゲーム点が得点となります。
ダブルなどがなくて、デクレアラーチームの相手チームが勝った場合、そのチームが両チームの取ったゲーム点の合計を得て、デクレアラーチームは得点がありません。 つまり、ホッカムのときは16点、サンのときには26点に両チームのプロジェクトとバロートを加算したものになります。
ダブルなどがあった場合は、どちらのチームが勝った場合でも、勝ったチームが両チームの取ったゲーム点の何倍かを得て、デクレアラーチームは得点がありません。 ただし、カード点から得られたゲーム点はダブル、トリプル、クアドルプルで2倍、3倍、4倍になりますが、プロジェクトのゲーム点は2倍にしかならず、バロートのゲーム点は2点のまま変わりません。
つまり、次の表のようになります。
ホッカム | サン | ||||
---|---|---|---|---|---|
カード点から | プロジェクト | バロート | カード点から | プロジェクト | |
ダブル | 32ゲーム点 | 2倍 | 2ゲーム点 | 52ゲーム点 | 2倍 |
トリプル | 48ゲーム点 | 2倍 | 2ゲーム点 | - | - |
クアドルプル | 64ゲーム点 | 2倍 | 2ゲーム点 | - | - |
ガーワのときは、勝ったほうが直ちにゲームの勝者になるので、得点計算はしません。
この状態をアル・カボートと呼びます。
勝ったチームは、ホッカムのときは25点、サンのときには44点に自チームのプロジェクトとバロートの得点を加算したものが得点になります。 相手チームはプロジェクトやバロートがあっても得点できません。
ダブルなどがあった場合は、全トリックを取らなかった場合と同様に計算します(プロジェクトのゲーム点は2倍、バルートは2ゲーム点)。 ただし、カード点からのゲーム点は、ホッカムのときダブル、トリプル、クアドルプルで50点、75点、100点になり、サンのダブルは88点となります。
何ディールか行って、得点計算の結果、ゲーム点の累計が152点かそれ以上になったチームがあれば、そのチームの勝ちとなります。 どちらのチームも同時に152点以上になった場合には、点数の高いチームの勝ちです。 それも同じなら、もう1ディールのプレイを行います。
次のようなルールを採用することもあります。
カットをするプレイヤーは、カットの代わりに、カードをシャッフルして、カードの山の一番上のカードを表向きにして切札候補カードとし、その下の3枚のカードを自分に最初に配られるカードにするか、カードの山の一番底のカード3枚を自分か自分のパートナーに最初に配られるカードにすることができる。 残りのカードはディーラーが通常通り配る(ただし、既に3枚配られているプレイヤーには最初の3枚は配らない)。 (英語版Wikipediaに書かれたルール)
最初に5枚配られたときに9、8、7だけの手札の場合には、ビッドのときに宣言してこのディールを無効にできる(KaweshあるいはSaneenと呼ばれる)。 ディーラーは交代して、次のディールに移る。
gamerules.comのルールでは、1巡目のホッカムのビッドのあと、右隣のプレイヤーから全員が順にサンをプレイするかどうか決めていく。 誰もサンをビッドしなければ、ホッカムのビッドをしたプレイヤーがサンにビッドを変更することもできる。 また2巡目でも、Pagat.comのルールと同じようにホッカムのビッドのあとにはパスしていないプレイヤーだけがサンをビッドできるが、そのあと誰もサンをビッドしていなければ、ホッカムのビッドをしたプレイヤーがサンにビッドを変更できる。
同ランクの続き札のプロジェクトのとき、切札の続き札のほうが強いプロジェクトとすることがある。 このとき、どちらも切札でなければ、ビッドの順番の早いほうのプレイヤーのプロジェクトのほうが強いとみなす。
シリや50のプロジェクトとバロートが重なった時、バロートの宣言が必要であるというルールや、バロートの宣言をしてはいけないというルールもある。
Pagat.com以外では、英語版Wikipedia、gamerules.com、www.catsatcards.comなどでもルール説明がありますが、 プレイのルールや得点方法などを見ても、簡単すぎて、必ずしも正しいルールではなさそうです。
Pagat.comの筆者はアラビア語のトーナメントルール(https://web.archive.org/web/20200319231836/https:/baloot.safeis.sa/gameplay)を見たり実際のプレイヤーに聞いたりして書いているようなので、今のところ最も信頼できます。)
2022年5月7日、なかよし村でプレイしました。
最初に配られた5枚だけでビッドするので、運の要素も強いのですが、それがスリルの要素になっています。
ルールがやや煩雑ですが、優れたゲームであるように思います。