トップに戻る

シャンベリー・タロット (Chambéry Tarot)

2025/5/3赤桐

20世紀初頭にフランスのシャンベリーのカフェでプレイされていたゲームです。 1902年に花をデザインしたタロットカードが発売されましたが、それに付属するルールに基づいたPagat.comの記述を紹介します。


プレイヤー

3人~5人。まず5人ゲームを紹介します。 なお、6人でもディーラーの右隣のプレイヤーがプレイに参加しないという方法で行うこともできます。

カード

78枚のフランスのゲーム用タロットカードを使います。スートはスペード、ハート、ダイアモンド、クラブです。 78枚のタロットであれば占い用など他のものも使用可能です。

各スートのカードとその強さは:

(強)キング(R)、クイーン(D)、カバロ(C)、ジャック(V)、10(弱)です。

(A)の位置が特異なのでご注意ください。

その他に21枚の切札のスートと、フー(Fou/狂人)のカードがあります。切札のスートの各カードには大きくアラビア数字で21の数が書かれています。21の数が書かれたものが最も強く、数が小さくなるほど弱くなります。 切札1はバガ(Baga)と呼ばれます。

フーのカードは特別な働きをするカードです。 (普通のフランスのゲーム用タロットでは音楽家などが描かれています。花のデザインのカードでは角の生えた帽子をかぶった人物が描かれていて、FOUと書かれています。占い用やイタリア系統のタロットでは愚者のカードに当たります。)

カードの点数

各カードには次の点数があります。

カード 点数
切札21 4点
切札1(バガ) 4点
フー 4点
キング 各4点
クイーン 各3点
カバロ 各2点
ジャック 各1点
その外のカード 0点

このゲームはトリックテイキングゲームですが、1トリック取るごとに1点を得ます。 また、プレイの前にディーラーは3枚を捨て札するのですが、それに対してもディーラーが1点を得ます(捨て札に含まれるカードの点数も得るのですが)。

その結果、5人ゲームでは全点数は68点になります(カード:52点、トリック:15点、捨て札:1点)。

ディール

最初のディーラーは何らかの合意された方法で決めます。 次のディールからは反時計回りに交代していきます。

6人でプレイしているときは、ディーラーの右隣のプレイヤーはカードを受け取らず、プレイに参加しません。

ディーラーは、左隣のプレイヤーにカットしてもらったあと、右隣のプレイヤーから反時計回りに、各プレイヤーに5枚ずつまとめて3回配ります。残りの3枚はディーラーの手札に加えます。 ディーラー以外の手札は15枚、ディーラーは18枚となります。

捨て札

ディーラーは手札から3枚のカードを裏向きに捨て札します。 捨て札のカードはプレイのあとディーラーの点数となり、さらにトリックに勝った時と同様の1点がもらえます。

捨てるカードには次の制限があります。

ビッド

ビッドはディーラーの右隣から反時計回りの順に行います。 各プレイヤーは1回だけビッドの機会が与えられ、3種類の「ソロ」のうちどれかを宣言するか、パスをします。

「ソロ」をビッドすると、1人で残り4人と戦うことになります。 ソロの種類は次の通りです。数字の大きいほうが強いビッドです。

  1. ツー・カード・ソロ(Je marche seul à deux cartes):他のプレイヤーから全部で2枚のカードをもらうことができます。
  2. ワン・カード・ソロ(Je marche seul à une carte):他のプレイヤーから1枚のカードをもらうことができます。
  3. ハンド・ソロ(Je marche à point):他のプレイヤーからカードをもらわないでプレイします。

最初は自由にどれでも選択できますが、他のプレイヤーがソロを宣言していたら、それ以降のプレイヤーは今までより強いソロしか宣言できません(もちろんパスはできます)。

最後にソロをビッドしたプレイヤーがソロイストとなり、他の4人と戦います。

交換 - ソロのビッドがあった場合

ソロのビッドがあった場合、ツー・カード・ソロまたはワン・カード・ソロをビッドしたソロイストは、自分の持っていないカードをビッドの枚数分指定して、他のプレイヤーからそれをもらうことができます。 フーのカードを指定することはできませんが、それ以外のカードなら何でももらえます。

例えば、ツー・カード・ソロでは、「切札21とスペード・キング」というように要求することができます。 (1枚ずつ2回要求してもかまいません。)

指定されたカードを持っているプレイヤーはそのカードをソロイストに渡します。 ソロイストはその代わりに手札から自由に1枚をそのプレイヤーに渡します。

パートナー指名 - 誰もソロのビッドをしなかった場合

誰もソロのビッドをしなかったときには、ディーラーは自分の持っていない特定のキングを指定し、それを持っているプレイヤーをパートナーにします。 例えば「ハート・キング」などと宣言します。 それを持っているプレイヤーは、すぐにそれを持っていることを宣言します。

ディーラーがすべてのキングを持っていたら、特定のクイーンを指定します。

プレイ

プレイはトリックテイキングゲームのルールに従います。 最初のリードは、ディーラーの右隣のプレイヤーが行います。 プレイは反時計回りに行います。

  1. 切札がリードされたときには、切札を持っていれば、切札のカードを出さなければいけません。持っていなければ、何を出してもかまいません。
  2. 切札以外のカードがリードされたときには、リードされたスートを持っていればそのスートのカードを出さなければなりません。リードされたスートを持っていなくて、切札を持っていれば切札を出さなければいけません。それ以外の時には何をだしてもかまいません。

ただし、フーのカードには特別な規則があります。

得点

プレイが終了すると、各チームは取ったカードの点数、トリックの点数、捨て札の点数を合計します。

35点以上取ったチームの勝ちになります。34点ずつの場合は引き分けで得点は発生しません。

勝ったチームの点数から34を引いたものが基礎ゲーム点となります。 基礎ゲーム点は次の場合に倍増します。

  1. 負けたチームが17点未満のとき(つまり34点の半分未満のとき)、2倍になります。
  2. ワン・カード・ソロのとき、2倍になります。
  3. ハンド・ソロのとき、4倍になります。

ハンド・ソロで負けたチームが17点未満のときは、8倍になることになります。

倍増後の点数を、最終ゲーム点と呼んでおきます。

ソロのプレイで、ソロイストが勝った場合は最終ゲーム点分を他の各プレイヤーからもらいます。 ソロイストは最終ゲーム点の4倍の収入があることになります。 ソロイストが負けた場合は、最終ゲーム点分を他の各プレイヤーに支払います。

パートナーのゲームで、ディーラーのチームが勝った場合は、相手チームの各プレイヤーは最終ゲーム点分を支払い、ディーラーとパートナーでこれを半分に分けて受け取ります。 割り切れない分はディーラーが受け取ります。

ディーラーのチームが負けた場合は、ディーラーとパートナーは2人で最終ゲーム点の3倍を支払います。 均等に支払いますが、割り切れない分はディーラーが支払います。 他のプレイヤーはそれぞれ最終ゲーム点分を受け取ることになります。

ゲーム

各プレイヤーが1回ずつディーラーを行ったら、ゲーム終了となります。つまり、5ディールです(6人でプレイしていたら6ディールです)。

4人ゲーム

次の2つのやり方があります。

  1. 5人ゲームと同様にソロイストやパートナーを決める。
  2. ソロなして、向かいに座ったプレイヤーが固定したパートナーになる。

配るのは5枚、5枚、5枚、5枚、4枚の19枚で、残り2枚がディーラーに行きます。

総点数は、カード:52点、トリック:19点、捨て札:1点で、72点。 36点で引き分け、18点未満だと最終ゲーム点が2倍になります。

3人ゲーム

配るのは5枚が5回の25枚で、残り3枚がディーラーに行きます。

総点数は、カード:52点、トリック:25点、捨て札:1点で、78点。

ビッドはなく個人戦を行います。

各プレイヤーは自分の点数と平均点26点との差額が、受取りまたは支払いのゲーム点になります。

13点未満だと2倍支払います。 このとき、

ショートパック(le tarot simplifié/shortened pack)

3人または4人用ゲームで、各スートののカードを抜きます。 62枚のパックになります。

4人ゲームのときは、配るのは5枚が3回の15枚で、残り2枚がディーラーに行きます。 総点数は68点で、34点で引き分け、17点未満で最終ゲーム点が2倍になります。

3人ゲームのときは、配るのは5枚が4回の20枚で、残り2枚がディーラーに行きます。 総点数は、カード:52点、トリック:20点で、72点(捨て札の1点はつきません)。 基準点は24点、12点未満で2倍。


次のルールは1902年の花デザインのカードのルールブックにはありませんでしたが、Pagat.comの著者が他のゲームとの類推で追加したものです。


2025年5月3日、なかよし村でプレイしました。

タロットのゲームとしては易しいルールなので、ルール説明にそれほど時間がかからず、楽しくたくさん遊べました。

ソロは1人対4人になりますが、結構できる可能性があります。 ツー・カード・ソロなら強いカードを2枚もらえるので、かなり強力です。 フレンチタロットと違い、ソロイストでなくても最初からボイド(1つのスートがない状態)を持っているプレイヤーがいることが多く、スリリングな展開になります。

初心者も熟練者も楽しめる、非常に良いゲームだと思います。