2001/3/22 赤桐
プリファランスはロシアやオーストリアでも盛んなゲームですが、クロアチアでもプレイされています。
それぞれのゲームはかなり違ったルールです。ここで書くようなルールはスロベニアやトリエステでもプレイされているようです。ルールはhttp://www.pagat.com/によりました。
3人。
通常の52枚のカードから、各スートの2〜6を除いた、32枚のカードを使います。
カードの強さはA、K、Q、J、10、9、8、7の順です。
正式には32枚のジャーマン(ドイツ)パックのカードを使います。スートはクラブ、スペード、ハート、ダイアモンドではなく、どんぐり、木の葉、ハート、鈴となり、クイーンはオーバー(クロアチア語:Kraljica / Iber)、ジャックはウンター(クロアチア語:Decko)となります。なおキングはクロアチア語でKralj、エースはAsです。
このゲームはトリックテイキングゲームです。
ゲームの通常の目的は、ビッドに成功して「デクレアラー」となり、10トリックのうち6トリック以上を取ることです。もちろんデクレアラーになれなかったプレイヤーはそれを妨害しようとします。
最初のディーラーは任意の方法で決めます。次回からは、ディーラーは時計回りに交代します。
まず各プレイヤーに5枚ずつまとめて配り、次に2枚のカードをテーブルの上に裏向きに置きます。次にまた、各プレイヤーに5枚ずつまとめて配ります。ディーラーの左隣から時計回りに配ります。
各プレイヤーの手札は10枚になります。テーブルに置かれた2枚のカードはタロンと呼ばれます。
ディールが終わると、誰がデクレアラーになるかを決めるために、ビッドを行います。
ビッドの種類は次のとおりです。下に行くほど強いビッドになります。
ビッドの番号/名前 |
コントラクトの内容 |
2 | スペードを切札にして6トリック以上取る。 |
3 | ダイアモンドを切札にして6トリック以上取る。 |
4 | ハートを切札にして6トリック以上取る。 |
5 | クラブを切札にして6トリック以上取る。 |
6 | ベッテル(Bettel)。切札なしで1トリックも取らない。 |
7 | サーナッツ(Sanac)。切札なしで6トリック以上取る。最初のリードを自分からすることはできない。 |
イグラ (Igura=ゲーム) |
タロンと手札の交換なしで、上記のビッドのいずれかと同じことをする。 |
ディーラーの左隣から時計回りの順にビッドを行っていきます。ビッドしたくなければパスをします。一度パスをするとそれ以降のビッドには参加できません。
ビッドできるのは上記の表の「ビッドの番号/名前」の欄のいずれかです。後でビッドするプレイヤーはもちろん前のビッド以上の強さのビッドをしなければなりませんが、必要以上に強いビッドをすることもできません。詳しく説明すると次のようになります:
なお、デクレアラーは必ずしもビッドした種類のコントラクトをプレイをする必要はなく、それよりも強いコントラクトにすることもできます。
たとえば3をビッドしたデクレアラーは、ダイアモンドではなくハートまたはクラブを切札にすることもできます。
全プレイヤーがパスをすると、プレイは行われません。次のディーラーがカードを配りなおして、次のディールが始まります。これをレファと呼びます。
レファがあると、各プレイヤーは次に自分がデクレアラーになったときの得失点が2倍になります。
デクレアラーはタロンのカードを表向きにしてみんなに見せた後、手札に加え、その中から裏向きに2枚のカードを捨てます。
ただし、イグラのビッドがあった場合には、この交換は行えません。
交換のあと、デクレアラーは、どの種類のコントラクトにするかを決めます。もちろん、ビッドしたコントラクトか、それ以上の強さのコントラクトでなければなりません。
1人だけがイグラをビッドしてデクレアラーになった場合、2〜7のどの種類のコントラクトにすることもできます(どれかに決めます)。2人以上イグラをビッドして、コントラクトの種類を宣言していた場合には、そのコントラクトか、それ以上の強さのコントラクトでなければなりません。
イグラをビッドしなかったプレイヤーがイグラのコントラクトにすることもできますが、このときはビッドした種類(2〜7)かそれ以上の強さのコントラクトでなければなりません。
デクレアラー以外の2人(ディフェンダー)は、デクレアラーの左隣のプレイヤーから順に、プレイを行うかどうか決めます。プレイを行うと決めたプレイヤーは、プレイで2トリック以上取らないとペナルティーがつきます。
両方のディフェンダーがプレイを行うことにした場合、ディフェンダー2人があわせて4トリック以上取れば、2トリック未満のプレイヤーがいてもペナルティーはどちらにもつきません。逆に4トリック未満だった場合には、2トリック未満のディフェンダー(だけ)がペナルティーになります。
片方のディフェンダーだけがプレイを行うことにした場合、プレイをしないディフェンダーのカードは伏せて使いません。2人でプレイを行うことになります。
ただし、プレイを行うことにしたディフェンダーが、プレイを行わないといったプレイヤーを強制的にプレイさせることもできます。この場合強制されたプレイヤーは何トリック取ってもペナルティーはつきませんが、強制したほうのプレイヤーはディフェンダー2人で4トリック以上とらないとペナルティーになります。
両方のプレイヤーがプレイしないと宣言した場合は、デクレアラーが10トリック取ったことになり、プレイをしないで終ります。
ベッテルの場合には、ディフェンダー2人は必ずプレイしなければならないものとします。ペナルティーはありません。(注参照)
プレイを行うことにしたディフェンダーは、デクレアラーの左隣のプレイヤーから順に、コントラ(Kontra)を宣言行うことができます。(1人がコントラを宣言すれば、他のディフェンダーはそれ以上コントラを宣言することはできません。)
コントラはプレイの結果のすべての得失点を2倍にします。
コントラに対して、デクレアラーはレコントラ(Rekontra)を宣言することができます。それに対して、最初にコントラを宣言したプレイヤーはスーコントラ(Sukontra)を宣言できます。レコントラは得失点を4倍にし、スーコントラは8倍にします。
このように、最初にコントラを宣言したプレイヤーとデクレアラーは、どちらかがやめるまで、無限にコントラを続けて得失点をさらに2倍することができます。
なお、2のビッド(スペード切札のコントラクト)の場合には、プレイすると宣言したプレイヤーのどちらかが必ずコントラを宣言しなければなりません。誰もコントラを宣言しなかった場合は、プレイを行わないでデクレアラーのコントラクト達成となります。
ディーラーの左隣のプレイヤーが最初のリードを行います。そのプレイヤーがプレイに参加していない場合には、その左隣のプレイヤーがリードします。
サーナッツの場合、もしディーラーの左隣のプレイヤーがデクレアラーならば、その左隣のプレイヤーがリードします。
トリックテイキングゲームのルールに従って次のようにプレイします:
なお、ディフェンダーが5トリック取るとプレイは終了します。
各プレイヤーは自分のスコアシートを持ちます。
スコアシートには2本の縦線をひいて左、中央、右の欄に分けます。左の欄の上には左隣のプレイヤーの名前を書き、中央の上には自分の名前を書き、右の上には右隣のプレイヤーの名前を書きます。
中央の欄は自分がデクレアラーになったときの得失点です。左右の欄は名前の書いたプレイヤーがデクレアラーになったときの得失点です。なお、中央の欄の点数は左右の欄の点数の10倍の価値があります。
点数は累計点を上から書き込むことになります。たとえば最初20点で次に10点ならば、まず20点と書き、次に30点と書きます。
中央の欄の名前の下に、あらかじめ決めたマイナス点を全プレイヤーが書き込みます。例えば、30点、50点などです。これをプラス点にすることがゲームの目的になります。
ビッドの番号を2倍したものがそのプレイの基本点となります。例えばサーナッツは7なので、基本点は倍の14点となります。
イグラの場合には、プレイしたコントラクトのビッド番号を2倍したものに2を足したものが基本点になります。例えば、スペードのイグラの場合には2 x 2 + 2 = 6 点になります。
デクレアラーが6トリック以上取って(ベッテルの場合は1トリックも取らないで)プレイに成功したとき、基本点を中央の欄に加えます(実際には中央の欄の一番下の数字に基本点を加え、その結果をその数字の下に書き入れます)。
失敗したときには中央の欄が基本点分だけマイナスになります。
ディフェンダーは基本点に自分の取ったトリック数をかけた点数を、デクレアラーの名前の欄に加えます。強制的にプレイさせられたプレイヤーはこの得点はありません。強制的にプレイさせたほうのプレイヤーはディフェンダー2人分の得点を得ます。なお、ディフェンダーが5トリック取った時点でプレイは終わるので、ディフェンダー2人のトリック数が6トリック以上になることはありません。
ペナルティーがつく場合には、基本点分のマイナス点を中央の自分の欄に加えます。(ペナルティーがついても、取ったトリックについての得点を得ることはできます)。
ベッテルの場合、デクレアラーに1トリックでも取らせたら、自発的にプレイしたディフェンダーは、デクレアラーの名前の欄に60点を加えることができます(取ったトリックによる得点はありません)。イグラのベッテルの場合は、70点になります。
コントラの場合には、プレイヤー全員のすべての得失点が2倍になります。リコントラなどがあるとさらに2倍ずつされます(注参照)。
全プレイヤーがパスをしたときには、レファのしるしとして全プレイヤーはスコアシートの中央の欄の最後の数字の下に横棒を書き入れます。
デクレアラーのスコアシートにレファのしるしがそのままあった場合には、デクレアラーのすべての得失点が2倍になります。コントラなどがあっても、それをさらに2倍にします。得点を書き入れた後、レファのしるしに縦線を入れて、使用済みのしるしとします。
最初に全員が書き入れる点数が-30点であった場合にはレファは1回だけ有効です。全プレイヤーがパスをしても2回目以降はレファのしるしは書き入れません。最初に全員が書き入れる点数が-50点であった場合にはレファは3回有効です。
デクレアラーのコントラクトが成功して、得点集計の結果、スコアシートの中央の欄の累計を3人分合計して、それが0かそれ以上になった場合、ゲームは終わります。
3人の中央欄の合計が0より大きい場合、最後のデクレアラーの得点は中央欄の合計が0になるように調整されて少なくなります。例えば、最後のデクレアラーの得点(基本点)が10点で、中央欄の合計が+3点になった場合、得点は3点減って7点になります。このとき基本点自体が7点になったと考えるので、ディフェンダーの1トリックあたりの点数なども7点となります。
各プレイヤーの最終得点は次のようになります:
自分のスコアシートの中央の点数x10
+ 自分のスコアシートの左右の点数の合計
- 他のプレイヤーの自分の名前の欄の点数の合計
3人の最終得点を合計すると0になるはずです。
第1ディール: 静香が7(サーナッツ)をコントラクトして成功(7トリック取る)。基本点は14点になるので、静香は中央欄に14点を加えて累計は-14点になる。拓也は出場して1トリックしか取れなかったので、中央欄が基本点分マイナスになるが、1トリック取った分の14点を静香の欄に得る。
第2ディール: 全員パスなのだので、各プレイヤーはレファの印を中央欄に記入する。
第3ディール: 高子が6(ベッテル)をコントラクトして成功。基本点は12点だが、レファのため中央欄に倍の24点得点。高子はレファの印に縦線を入れる。
第4ディール: 拓也が3(ダイアモンド切札)をコントラクトをして失敗。基本点は6だが、レファなので中央欄で12点失点。卓也はレファの印に縦線を入れる。静香は2トリック取ったので12点、高子は3トリック取ったので18点、それぞれ太郎の欄に得点。
第5ディール: 拓也がイグラで5(クラブ切札)をコントラクトをしてレコントラで成功。基本点は12だが、レコントラがあったので4倍となり中央欄に48点得点。静香と高子はそれぞれ2トリック取ったので、基本点12点の2トリック分がレコントラで4倍になり、96点ずつ拓也の欄に得点。
第6ディール: 高子がイグラの6(ベッテル)をコントラクトして成功。高子は中央欄に基本点14点を得る。
第7ディール: 拓也が4(ハート切札)をコントラクトして成功。基本点8点を中央欄に得る。高子は3トリック取ったので卓也の欄に24点得る。静香は降りたので得点なし。
第8ディール: 全員パスだが、最初の点数が-30点ずつのときにはレファは1回だけなので、何も起こらない。
第9ディール: 高子が7(サーナッツ)をコントラクトして成功。本来の基本点は14点だが、これを足すと3人の中央欄累計の合計は+6になるので、6点減らして8点が今回の基本点になる。高子はこの8点を中央欄に足す。拓也と静香は2トリックずつ取ったので、8x2=16点ずつ高子の欄に得点。これでゲーム終了。
結果:
ベッテルの時に、ディフェンダーが必ずしなければならず、ペナルティーがつかないというルールは赤桐が付け加えたものですが、元のルールにペナルティーの記述がないことや、1人が降りて2人でプレイするとデクレアラーがかなり不利になることから考えて、妥当なもどだと思います。
コントラの時に、コントラを言わなかったプレイヤーは得点は2倍されないのかも知れません。はっきりわかりませんでした。
本来の得点の書き方では、中央の欄のマイナスの数字の書き方が違います。
最初の方の点数はマイナス点であることがわかっているので記号は書かず、数字だけを入れます。プレイの結果プラス点に転じたら、プラスに転じる前に