1998/10/3 赤桐
ドロックンは古いタイプのタロットゲームと、オーストリアなどの新しいタイプのタロットゲームとの中間にあたるようなゲームですが、「愚者」のカードの働きは古いタイプのものを残しています。
このゲームはオーストリアのチロル地方のシュツバイ谷でしかプレイされていません。インスブルグの南西に当たります。主にフルプメスやテルフェスという町です。
この地方で66枚のカードが使われていたことは、Michael Dummett氏の"The Game of Tarot"にも書かれていますが、遊び方は不明でした。1996年にJohn McLeod氏とRemiguis Geiser氏が現地調査を行ってルールが明らかになりました。教えてくれた人たちはベテランプレイヤーですが、最近は10年以上プレイしていなかったそうです。ルールはhttp://www.pagat.com/によります。
3人または4人。4人のときにはディーラーはプレイに参加しません。
66枚のタロットカードを使います。スートはスペード、クラブ、ダイアモンド、ハートです。フランスやオーストリアの78枚のタロットカードから不要なカードを抜けばよいでしょう。
スペードとクラブのスートのカードと、強さの順位は次のとおりです。
(強)キング、クイーン、カバロ、ジャック、10、9、8、7、6、5、4(弱)
ハートとダイアモンドのカードと、強さの順位は次のとおりです。
(強)キング、クイーン、カバロ、ジャック、A、2、3、4、5、6、7(弱)
それ以外に21枚の切札があります。21(XXI)が最強で、数字の順に弱くなり、1(I)が最弱になります。21のことをモンド(der Mond)またはグロッセ(der Große)と呼び、1のことをパガット((der Pagat)またはクライネ(der Kleine)と呼びます。
さらにもう1枚グシュティース(Gstieß)と呼ばれる特殊なカードがあります。音楽家や道化が描かれていて、何もマークのついていないカードです(占い用タロットでは「愚者」にあたるカードです)。
このゲームは、トリックテイキングゲームですが、カードの点数を集めることを目的とするゲームです。
カードの点数は次のとおりです。
グシュティース |
5点 |
モンド(切札21) |
5点 |
パガット(切札1) |
5点 |
各キング |
5点 |
各クイーン |
4点 |
各カバロ |
3点 |
各ジャック |
2点 |
そのほかの各カード |
1点 |
ただし、取ったカード3枚につき2点を、上記の点数の合計から引いていきます。
たとえば、取ったカードが、グシュティース、キング1枚、ジャック1枚、そのほかのカード3枚だったとすると、合計点数は5+5+2+1+1+1=15点ですが、3枚の組が2組あるので、2x2=4点を引き、11点となります。3枚の組にならない端数があれば、1点を引きます。
1ディールの全得点は74点になります。
最初のディーラーはランダムに決めます。次回からのディーラーは、前回のデクレアラーがなります。
ディーラーの右隣のプレイヤーがカットしたあと、ディーラーは、7枚ずつまとめて、各プレイヤーに21枚ずつのカードを配ります。
残った3枚のカードはテーブル中央に裏向きに置かれて、タロンとなります。
ディールが終りプレイを始める前にビッドを行います。ビッドはディーラーの左隣から時計回りに行われ、各プレイヤーは1度だけビッドの機会があります。
ビッドの種類は次の4種です(番号が大きいほど強いビッドになります)。
いずれのビッドでも、デクレアラーは1人でプレイで全点数の半分以上の点数、つまり37点以上取らなければなりません。
デクレアラーは、タロンと手札の交換を行い、「カードを買う」ことができます。
タロンと手札の交換を行うが、カードは買えません。
タロンと手札の交換を行えず、カードも買えません。
タロンと手札の交換を行えず、カードも買えません。さらに、全トリックを勝たなければなりません。
ビッドのときには、今までに行われたビッドより強いビッドをしなければなりません。ビッドをしたくなければパスをします。
最後にパス以外のビッドを行ったプレイヤーがデクレアラーとなります。他の2人は臨時のパートナーになって、デクレアラーと戦います。この2人をオポーネントと呼ぶことにします。
全員がパスをした場合には、同じディーラーで配り直しとなります。
ビッドがアンサガーかソロのときには、デクレアラーはタロンのカードを手札に加え、3枚のカードを捨てます。タロンのカードも捨てたカードも他のプレイヤーには見せません。捨てたカードはプレイの終了後デクレアラーのものになります。
グシュティースやモンド(切札21)やパガット(切札1)を捨札することはできません。また、キングを1枚捨てるときには、切札も1枚(以上)捨てなければなりません(キングを2枚以上捨てることはできません)。
交換のあと、アンサガーのビッドのときには、デクレアラーは手札から1枚をテーブル中央に裏向きに置きます。そして、特定のカードを指定します。たとえば、モンドとか、キングとか言うわけです。そのカードを持っているプレイヤーはそのカードをデクレアラーに渡し、その代りにデクレアラーがテーブルに出したカードをもらわなければなりません。デクレアラーのこの行動を「カードを買う」と言います。
もしうっかりして、指定したカードがデクレアラーの手札や捨札のなかにあった場合には、カードを買うことはできません。そのあと他のカードを指定することはできません。
なお、スーパーやスーパーモルトのビッドのときには、タロンのカードはプレイが終わるまで誰も見ることはできません。このタロンのカードは、プレイ終了後デクレアラーのものになります。
最後のトリックをパガットで取るとボーナス点がありますが、デクレアラーは、それをプレイ前に予告しておくことでボーナス点を増やすことができます。
パガットの予告は、パガットのカードを捨札(または交換しなかったタロン)の側に表向きに置くことで行います。
スーパーモルトのビッドの場合、最後のトリックはグシュティースのカードをリードすることで取ることができ、そうすることでボーナス点を得ることができます(もちろんそれまでの全トリックを取っていた場合です)。
このことをプレイ前に予告すればボーナスを増やすことができます。これは、グシュティースのカードを捨札(または交換しなかったタロン)の側に表向きに置くことで行います。
もちろん、パガットの予告とグシュティースの予告の両方を行うことはできません。
予告は、交換やカードを買うことのあとで行います。
予告しない場合にはデクレアラーはそう宣言しなければなりません。
予告のあと、デクレアラーの左隣のプレイヤーは、ダブル(schiessen/einen Schwachen geben)を宣言することができます。このプレイヤーがダブルをかけなかったときには、もう1人のオポーネントがダブルをかけることができます。ダブルがあるとプレイの得失点は2倍になります。
ダブルが宣言されると、デクレアラーはリダブル(retour)を宣言して、プレイの得失点をさらに2倍にすることができます。
このあと、オポーネントもリダブルを宣言して得失点をさらに2倍にし、それに対してデクレアラーがリダブルをかけるということを無制限に行うことができます。(もちろん、どちらかがリダブルをかけないことにすると、それで終わります。)
プレイはトリックテイキングゲームのルールに従いますが、次の規則があります。
1)最初のリードはデクレアラーが行います。
2)プレイは時計回りに行います。
3)切札がリードされたときには、切札を持っていれば、切札のカードを出さなければいけません。持っていなければ、何を出してもかまいません。
4)切札以外のカードがリードされたときには、リードされたスートを持っていればそのスートのカードを出さなければなりません。リードされたスートを持っていなくて、切札を持っていれば切札を出さなければいけません。それ以外の時には何をだしてもかまいません。
5)例外として、グシュティースはいつでも出すことができます。
切札がプレイされている場合にはもっとも強い切札を出したプレイヤーがトリックに勝ちます。切札が出ていないときは、リードされたスートの最も強いカードを出したプレイヤーが勝ちます。
トリックに勝ったら、勝ったプレイヤーが出されたカードを回収します。オポーネントの2人の取ったカードはまとめて扱います。
グシュティースはトリックに勝つことはありません。ただし例外として、スーパーモルトのとき、グシュティースの予告をしていた場合に限り、デクレアラーが最終トリックにリードした場合は勝ちます。
ただし、グシュティーズは負けてもトリックに勝った側のものでなく、グシュティースを出した側のものになります。例外として、デクレアラーが全トリックを取った場合(マッチMatchと呼ばれます)には、グシュティースはデクレアラーのものになります。
グシュティースがリードされた場合には、その次のプレイヤーが出したカードのスートが、リードされたスートとなります。
パガットの予告があった場合には、デクレアラーは上記の規則に従って出せるカードがあるかぎり、最終トリックまでパガットを出すことはできません。
デクレアラーが37点かそれ以上の点数を取った場合は、取ったカードの点数に基づいて、次の得点をデクレアラーが得ます。
アンサガー |
20点+37点を超える1点ごとに1点 |
ソロ |
40点+37点を超える1点ごとに1点 |
スーパー |
80点+37点を超える1点ごとに1点 |
オポーネントのほうがたくさんの点数を取った場合には、オポーネントのほうが上記の点数を得ます。
さらに、次のパガットの得失点があります。
1)最後のトリックにパガットが出て勝った場合には、出したプレイヤーは10点のボーナス点を得る。予告されていた場合には20点を得る。これをパガットウルティモ(Pagat Ultimo)と呼びます。
2)予告していた場合、最後のトリックにパガットを出すことができなかったときや、出しても負けてしまった場合には、相手側(オポーネント)が20点を得る。
3)予告のない場合、最後のトリックにパガットを出して、他のプレイヤー(同じ側のプレイヤーも含む)がそのトリックに勝った場合には、パガットを出した側の相手側は10点を得る。
4)予告のない場合、パガットを最後よりも前のトリックで出して、相手側がそのトリックに勝った場合には、パガットを取った側が5点を得る。
スーパーモルトの場合、成功すれば167点を得、失敗すればその点数を相手側が得ます。パガットが予告されていなければ、パガットによる得失点はありません。パガットの予告があった場合には、全トリックを取ることができなければ、たとえ最終トリックをパガットで勝つことができていても、パガット失敗とみなされて、相手チームがパガット予告の20点も得ます。
スーパーモルトでグスティースが予告された場合、グスティースの成功・失敗の点数は20点です。つまりグスティース予告のスーパーモルトに成功すれば187点を得、失敗すれば相手側が187点を得るわけです。
ダブルやリダブルがあった場合には、プレイによる得点に、パガットやグスティースの得点を加えたものが2倍、4倍 etc されます。予告のないパガットに関する得失点は2倍、4倍etcにはなりません。
実際の得点の記入では、デクレアラーの欄だけが記入されます。デクレアラーの得点はプラス点で、オポーネントの得点はマイナス点で記入するわけです。
これにより、4人ゲームのときには、ディーラーもオポーネントと同じ側にたって得失点に関係することになります。
プレイヤーは誰でもいつでも、「次のディールから3ディールでゲームを終わりましょう」と提案してそれでゲームを終わらせることができます。
ゲームが終わり、精算する場合には、各プレイヤーは他の各プレイヤーと、得点の差額を支払い/受け取ります。