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オンブル(Hombre / Ombre)

2014/3/1 赤桐

オンブルはスペインで4人用トリックテイキングゲームとして16世紀に生まれました。 17世紀になって、このゲームの3人用のバリエーションがフランス・イギリス・イタリアなどに広まりました。 17~18世紀にはヨーロッパ中で盛んにプレイされましたが、現在ではスペインなどの数カ国でしかプレイされていません。

オンブルはスペイン語で人間という意味です。 ビッドによってデクレアラー(オンブル)や切札を決めるという点で革命的なゲームであり、それ以降のほとんどのトリックテイキングゲームに影響を及ぼしています。

ここで述べるルールは1878年に発行された『The Game of Ombre Second Edition』(著者:Henry Hucks Gibbs)によります。 17〜18世紀の標準的なルールに近いように思われます。

用語はイギリスで行われていたもの、つまりスペイン語のフランス語読みを主としています。できるだけ標準的な用語を使うため、上記の本と少し変えているものもあります。


プレイヤー

3人または4人。4人の時、ディーラーはビッドやプレイに参加しませんが、支払い・受け取りには参加します。

カード

スートの10、9、8のカードを除いた40枚のカードを使います。

スペインでは40枚のスペイン・パック・のカードを使います。 ソード(Espadas)、バトン(Bastos)、カップ(Copas)、コイン(Oros)の4つのスートがあり、 各スートはレイ(Rei)、カバロ(Cavallo)、ソータ(Sota)、7、6、5、4、3、2、1から成ります。

以降の説明では通常のカードを使いますが、スペイン・パックを使う時は、ソード=スペード、バトン=クラブ、カップ=ハート、コイン=ダイアモンド、レイ=キング、カバロ=クイーン、ソータ=ジャックと考えてください。

カウンター

各プレイヤーはカウンターを同じ点数分だけ持ちます。 点数によって形の違うカウンターが用いられたようですが、現在ではポーカーチップを用いればよいでしょう。

また、テーブルにカウンターを入れるための入れ物を置きます。これをプールと呼びます。

カードの強さ

切札以外のスートでは、カードの強さの順位は次のようになります(強いもの順)。

切札では次のようになります。

  1. スペードAは常に最も強い切札になります。スパディーユ(Spadille)と呼びます。
  2. 2番目に強い切札は、切札のスートの中で、普通ならば最も弱いカードになります。 つまりスペードやクラブでは2のカード、ハートやダイヤモンドでは7のカードです。 これをマニーユ(Manille)と呼びます。
  3. クラブAが常に3番目に強い切札になります。バスト(Basto)と呼びます。
  4. ハートかダイアモンドが切札の場合は、そのスートのA(エース)が4番目に強い切札になります。これをプント(Punto)と呼びます。

最も強い切札3枚(スパディーユ、マニーユ、バスト)をまとめてマタドール(Matador)と呼びます。

切札のカードの強さをまとめると次のようになります。

ディール

プレイヤーの中に1人だけ女性または男性がいれば、その人が最初のディーラーになります。そうでない場合は、 誰かが各プレイヤーに1枚ずつ何度でもカードを配っていき、最初にキングが配られたプレイヤーが最初のディーラーになります。 ディーラーは反時計回りに交代します。

ディーラーはディールの前に5点をプールに入れます。

ディーラーは、ディーラーの右隣から反時計回りに、まとめて3枚ずつ3回配ります。 残りの13枚のカードはテーブル中央に裏向きに置きます。これが山札(Stock)となります。

ビッド

ディールが終われば、ディーラーの右隣から反時計回りに1人ずつビッドを行います。 ビッドでは、下記のコントラクトの1つを宣言します。

ビッドしたくなければパスを宣言します。1度パスをするともうビッドには参加できませんが、パスをしない限り何度でもビッドできます。

2人のプレイヤーがパスをすれば、ビッド終了となり、最後にビッドしたプレイヤーはオンブル(Homble)と呼ばれます。 オンブルは1人で他のどのプレイヤーよりも多くのトリックに勝たなければ、罰点となります。

全員がパスした場合には、次のディーラーが配り直しを行います。

ビッドすることのできるコントラクトは次の通りです。弱いコントラクトから順になっています。

  1. エントラダ(Entrada):オンブルは切札を決めることができ、手札と山札の交換もできます。ビッドの時には単に「プレイします」と宣言します。
  2. ブエルタ(Vuelta / Voltereta):ビッドが終わってから、山札の一番上のカードが表向きにされ、そのスートが切札になります。 オンブルは手札と山札の交換ができ、表向きのカードも交換の対象になります。
  3. ソロ(Solo):オンブルが切札を決めますが、手札と山札の交換はできません(他のプレイヤーは交換できます)。

ビッドの時には席による優先順位があります。ディーラーの右隣が最も優先順位が高く、反時計回りの順に下がっていきます。 優先順位の低いプレイヤーは優先順位の高いプレイヤーより強いコントラクトしかビッドできませんが、優先順位の高いプレイヤーは、低いプレイヤーと同じコントラクトをビッドできます。

切札の宣言とカードの交換

オンブルはまず切札をどのスートにするかを宣言します。 ただし、ブエルタの時は山札の一番上のカードを表向きにして、そのスートが切札になります。

そのあと、ソロ以外のビッドの時には、オンブルは手札から何枚でも裏向きに捨てて、同じ枚数のカードを山札の上の方から取ります。 ブエルタの場合には、切札指定のため表向きになったカードから取っていきます。1枚も交換しなくてもかまいません。

次に、オンブルの右隣のプレイヤーが同様に交換を行い、最後にオンブルの左隣が交換します。 ただし、山札があるだけしか交換できません。 なお、オンブルの右隣のプレイヤーは、自分の交換の順序をオンブルの左隣のプレイヤーに譲り、そのプレイヤーよりあとに交換することもできます。

ソロの場合でも、オンブル以外は同じようにカードの交換ができます。ただし、最初に交換するプレイヤーは8枚までしか交換できません。

プレイ

プレイは反時計回りに行われ、通常のトリックテイキングゲームのルールに従います。最初のリードはディーラーの右隣のプレイヤーが行います。

プレイヤーはリードされたスートのカードが手札にあれば、そのスートのカードを出さなければなりませんが、なければどのカードを出してもかまいません。

ただし、マタドール(スパディーユ、マニーユ、バスト)以外の切札がリードされた時に、手札の切札がマタドールしかない場合には、切札を出さずに他のスートを出すことができます。 マタドールがリードされた時には、手札の切札がリードされたマタドールより強いマタドールだけの場合に限り、他のスートを出すことができます (リードでなく途中でマタドールのカードが出てきた場合はこれに当てはまりません)。

オンブルが最初の5トリックを続けて勝った時には、プレイを終了することができます。 そうしないでプレイを続けたら、全トリックに勝つためにプレイすることになり、それが成功しないとオンブルに罰点が付きます。

得点

オンブルが勝った時の得失点

オンブルが他のどのプレイヤーよりも多くのトリックを取ると、オンブルの勝ちとなります。5トリック取った時や、オンブルが4トリック取り、他のプレイヤーが3トリックと2トリックだった時です。サカーダ(Sacada)と言います。

オンブルはプールのカウンターを全部もらい、また、次の点数の合計も各プレイヤーからもらいます(4人ゲームの時のディーラーも含みます)。

最初の5トリックを勝ったあとプレイを続けて、全トリック取ることに失敗した時には、次のような得失点となります。

コディーユ(Codille)の時の得失点

オンブル以外のプレイヤーの1人が、それ以外の誰よりも多くのトリック数を取っていた場合を、コディーユと呼びます。

オンブルはプールのポイント数と同額を最も多くのトリックを取ったプレイヤーに払い、プレイヤー1人につき5ポイントをこのプレイヤーに払います(3人ゲームでは15ポイント、4人ゲームでは20ポイントを払います)。

また、ブエルタ・ソロ・エスツーチェの点数を、他の各プレイヤー(4人プレイのディーラーも含む)に支払います。

プエスタ(Puesta)の時の得失点

上記以外の場合を、プエスタと呼びます。つまり、3人のトリック数が4-4-1、4-1-4、1-4-4または3-3-3になっている場合です。降伏の場合も含みます。

オンブルはプールのポイント数と同額をプールに置き、プールを2倍にします。さらに、プレイヤー1人につき5ポイントをプールに置きます(3人ゲームでは15ポイント、4人ゲームでは20ポイントを置きます)。

また、ブエルタ・ソロ・エスツーチェの点数を、他の各プレイヤーに支払います。

つまりオンブルの失点の額はコディーユと同じですが、最も多くのトリック数を取っていたプレイヤーに支払う分をプールに払うことになります。

降伏

ソロ以外のビッドの時、4トリック目が始まる前なら、オンブルは降伏を行うことができ、この時プレイは終了します。

ただし、エントラダのビッドの場合には、他のプレイヤーの1人が希望すれば、そのプレイヤーがオンブルになってプレイを続けることができます。この場合の得失点は次のようになります。


2014年3月1日、 なかよし村でプレイしました。

面白く遊べました。現在でも十分通用するようなハイレベルのゲームです。 カードの強さの順序は憶えにくいですが。