2023/9/2 赤桐
このゲームとカードは清朝中期に四川省楽山市五通橋地区で生まれたものだと言われています。 ここでは当時大規模な岩塩の採掘が行われていました。 塩を運ぶ人のために竹札が伝票として使われていましたが、その竹札を使って遊んだのが始まりだということです。
カードは様々な呼び方がありますが、ここでは字牌と呼んでおきます。 地方やカードのデザインの違いによっても呼び方が分かれますが、橋字牌、樂山貳柒拾牌、紙牌、扯胡子、跑胡紙、跑和字、二七十、煨胡子、棍棍、大貮、八一字牌、桂林字牌などとも呼ばれます。
四川省から長江に沿って広がり、湖南省でも盛んにプレイされています。 中国の古いカードゲームは滅びかかっているものも多いですが、このゲームの人気は衰えていないようです。 動画サイト、通販サイト、スマホゲームなどで、よく見ることができます。 ここで紹介するものは、湖南省中西部でプレイされているゲームです。
基本的には麻雀に似たゲームですが、特徴的ないくつかのルールがあります。 これらは極めて古いラミーゲームの特徴を残しているのかもしれません。
麻雀と違う主な点は次の通りです。
欧米で最も古いラミーゲームだと言われているクーンキャンにも、上記1と2の特徴があります。
3人~4人。4人のときは、親の反対側のプレイヤーはプレイに参加しません。
跑胡子と呼ばれる、湖南省の字牌を使用します。
小字(小写)と大字(大写)という2つのスートがあります。
小字のスートは次の10種類のカードがれぞれ4枚ずつあります。(以下の並び順です。強さの順序はありません。)
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大字のスートは次の10種類のカードがれぞれ4枚ずつあります。(以下の並び順です。)
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小字はもちろんですが、大字も1から10の数字を表しています。 証書類の数字や金額の表示に使われる数字です。
“二”、“七”、“十”、“贰”、“柒”、“拾”のカードは、赤い文字で、それ以外は黒い文字です。
全部で80枚のカードです。
各プレイヤーは決まった数のカードを最初に持ち、残りのカードは山札となります。
このゲームは手札などからカードの組み合わせを作っていくゲームです。 有効なカードの組み合わせのことを、ここではすべてセットと呼んでおきます。
プレイヤーは山札から1枚をドローして、手札と組み合わせて決められたセットができればそれを作り、1枚を捨て札します。 ドローする代わりに、直前にプレイしたプレイヤーの捨て札を取って、セットをつくることもできます。 ドローしたカードは通常は全員に見せます。
他のプレイヤーがそドローするか捨て札したときに、 手札にそれと同じスートで同じ数値のカード(以降は「同一カード」と呼ぶことにします)が2枚または3枚あるなどの場合、 「ポン(碰)」などの発声を行い、それを取ってセットを作ることもできます。
次のようなセットがあります。
同一カードを2枚持っていて、ポンで3枚のセットを作った場合、3枚を全部表向きにしてテーブルに置きます。 図のように重ねて3枚とも字が見えるようにします。
同一カードを2枚持っていて、その同一カードをドローしたとき、3枚を全部裏向きにして、テーブルに置きます。
同一カードを2枚持っていて、ポンで3枚のセットを作ることができたのに見逃し、そのあとその同一カードをドローしたときは、3枚のうち2枚を裏向きにしてテーブルに置きます。
プレイの前から手札の中にある同一カード3枚。 この3枚のカードはテーブルには出しませんが、セットとして扱われます。 また、このような同一カード3枚は必ず3枚のセットとして使わなければならず、他のカードと組み合わせることはできません。 (親がディール時に最後に取ったカードで同一カード3枚になった場合も含みます)。
次のどちらかの場合に、必ず「パオ(跑)」を宣言しなければなりません。そのあと4枚のカードを表向きにしてテーブルに置きます。
次のどれかにより、同一カード4枚をテーブルに置きますが、そのうち3枚は裏向きにします。これも義務です。
同じスートの3枚の続き札。または、“二”、“七”、“十”、または、“贰”、“柒”、“拾”の組み合わせ。
この組み合わせが手札の中にあるときは、そのままセットとして扱うことができます。 ドローしたカードや直前のプレイヤーの捨て札と組み合わせてセットになった時は、すべて表向きにしてテーブルに出します。
数値が同じでスートが別である3枚のカードのセットです。 つまり、同じ数字の小字2枚と大字1枚、または小字1枚と大字2枚になります。
続きセットと同じように、この組み合わせが手札の中にあるときは、そのままセットとして扱うことができます。 ドローしたカードや直前のプレイヤーの捨て札と組み合わせてセットになった時は、すべて表向きにしてテーブルに出します。
手札の中の2枚の同一カードは、次の条件で有効なセットとなります。
最初の親は任意の方法で決めます。 次からは、前回上がった(勝った)プレイヤーが親になります。 誰も上がらなかったときは親は交替しません。 ただし、同じ親が3回続いた後、前回の親が上がるか誰も上がらなかった場合には、その右隣のプレイヤーが親になります。
親はカードをシャッフルし、左隣のプレイヤーがカットします。 カードの山はテーブル中央に置きます。
親から反時計回りの順に、カードの山の一番上から、1枚ずつカードを取っていきます。 親は21枚、他のプレイヤーは20枚になるまで、カードを取ります。 親が取る最後のカードは、他のプレイヤーにも見せるようにします(亮张)が、そのまま手札の中に入れます。
残りのカードは山札として、テーブル中央に置いておきます。
山札の一番下のカードは、表にして一番下に見えるように置きますが、これも引くことのできる山札です。 (3人プレイのときは親が、4人プレイのときはプレイしない人が、表にします)。 ただし、一番下のカードが赤いカード(二七十貮柒拾のどれか)のときは、それを山札の一番上に裏向きに置き、もう一度一番下のカードを表向きにします。 (これを赤いカード以外が表になるまで繰り返します)。
手札の中に4枚の同一カードがあれば、プレイの前に「暗4枚セット(提牌)」としてテーブルに出さなければなりません。
手札の中に4枚の同一カードが2組あった場合、最初のプレイのときには捨て札をしません。
誰かの手札の中に4枚の同一カードが3組以上あるか3枚の同一カードが5組以上あるときは、そのプレイヤーの上りとなり、プレイが終了します。
庄家: そうか、チュアンジア 砌牌: さいはい、チーパイ。牌を並べること。 亮张: 亮張。りょうちょう、リアンヂャン。明るいカード。
プレイでは、3枚または4枚のカードのセットを手札の中およびテーブルの上に作っていきます。 (手の中の2枚のカードがセットとして有効なこともあります)。
親からプレイを始め、反時計回りの順に、次のようにプレイします。
あるいは、自分の直前のプレイヤー(上家)が直前に捨てたカードと自分の手札をセットて同一カード以外のセットができるときは、やはりチーの状態となり、 山札からカードはドローせず、その捨て札を取ってセットを作り、テーブルに出すことができます。 そのあと手札からどのカードでも1枚を捨て札して、プレイヤーの番が終わります。 直前のプレイヤーのカードをチーできるのはドローしたカードではなく捨て札だけです。
すでに説明したように、手札に2枚の同一カードがあり、それと同一のカードをドローしたときは、すぐに暗3枚セットとしてテーブルに出します(全部裏向きにします)。 これは義務です。
そのあと1枚を捨て札してプレイの番を終えます。
すでに説明したことですが、次の場合にはドローしてすぐに暗4枚セットをテーブルに出します(3枚は裏向きにし1枚を表向けにします)。これは義務です。
そのあと1枚を捨て札してプレイの番を終えます。 ただし、このセットを含めて同一カード4枚のセットが2組以上になっているときは、捨て札は行いません。
ポンまたはパオを行うことができるのは、次のどちらかのカードに対してです。
ポンを行うことができるのは、手札の中にそのカードと同一のカードが2枚あるときだけです。 「明3枚セット」としてテーブルに公開します。 ポンは行うことができても、行わなくてもかまいません。
パオを行うのは、次のどれかの場合です。 パオを行えるときは必ず行わなければなりません。
明3枚セットがあって同一カードを他のプレイヤーが出しても、パオを行うことはできません。
捨て札に対して、ポンやパオを行うプレイヤーと、チーを行うプレイヤーがいるときは、ポンやパオが優先します。 同じプレイヤーがポンもチーもできるときは、どちらを行ってもかまいません。
ポンまたはパオを行うと、プレイの番がそれを行ったプレイヤーに移ったことになり、捨て札をして番を終えます。 次はその右隣のプレイヤーの番になります。
ただし、パオをして、そのセットを含めて同一カード4枚のセットが2組以上になっているときは、捨て札は行いません。
チーのとき、チーするカードと同一のカードが手札にあれば、それもセットにしてテーブルに出さなければなりません。 例えば「一」を「壱」「壱」でチーして、まだ手札に「一」があれば、「一」「二」「三」などとして手札から出さなければなりません。
それができなければチーすることはできません。
これは、左隣のプレイヤーの捨て牌に対してチーした時も、自分のドローしたカードに対してチーした時も同じです。
次の場合には、そのカードと同一のカード(臭牌)は、手札のカードとセットを作ることはできません。 つまり、他のプレイヤーのカードをポンもチーもできず、ドローしても捨て札しなければなりません。
例外として、そのカードをドローして、手札に2枚の同一カードがあるときは、臭3枚セットとしてテーブルに出すことになります(義務です)。
なお、手中3枚セットや暗3枚セットがある場合、そのカードが出たときにパオしないのは、ルール違反になります。
碰: ほう、ポン。ぶつかる、ぶつける 吃: 喫、きつ、チー。食べる。
自分のカード(手札とテーブルに出ているカード)に1枚のカードを加えたとき、次のどちらかになれば上りの形になります。
そのカードがあれば上りの形になるというカード(胡牌)がプレイで出たとき、「ホー」と発声して上がることができます。
上がることのできるカード(胡牌)は、必ず、自分または他のプレイヤーが、山札からドローしたカードでなければなりません。 プレイヤーが手札から捨て札したカードで上がることはできません。 つまり、次のどれかになります。
そのカードで上りの形になれば良いので、チーやパオができないような場合でも3枚や4枚のセットにして上がることはできます。 2枚セットを作るために1枚だけ持っていて、そのカードの同一カードが出たときに上がるということもできます。
なお、麻雀のフリテンのような規則はないので、自分の捨てたカードや臭牌であっても上がることはできます。
ただし、上りよりも次のルールのほうが優先されるので、上りのカードが出たときでも上がれないときがあります。
例えば、二-貮-貮、二-三-四、一-三とあって、二があれば上がれるとき、二が他のプレイヤーから出れば上がれますが、ドローしたときは二-二-二の暗3枚セットにしなければならないので、上がれず、上がれる形も崩れてしまいます。
なお、上がれる形になっていても、パオができるときは、そうしなければならなりません。
また、上がった時のセットの種類により、後で説明するように「胡息」という点数がつきますが、これが15点未満になる場合には上がることができません。
山札の最後のカード(表向きになっているカード)をドローしても誰も上がらなかったときは、プレイは終了します。 誰も得点しません。
上がった時の点数は、上がった時のカードのセットによって決まります。
後で説明する2種類の評価基準により、「胡息(こそく/フーシー)」の数と「番数(ばんすう/ファンシュー)」が決まります。 それにより次の式で、得点が決まります。
底数 = (胡息 - 12) ÷ 3 (切り捨て)
得点 = 底数 x 番数
ただし、ドローしたカードで上がった時は底数を1つ増やします。
天胡(てんこ/ティエンホー)のときは、底数は次のようになります。
底数 = (胡息 x 2 - 12) ÷ 3
天胡とは次のどれかの条件にあてはまったときです。
上がった時のセットの種類により、次の胡息数があります。 全セットの胡息数を合計したものが得点のための胡息になります。
セットの種類 | 小字 | 大字 |
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明3枚セット | 1 | 3 |
暗3枚セット、臭3枚セット、手中3枚セット | 3 | 6 |
明4枚セット | 6 | 9 |
暗4枚セット | 9 | 12 |
一二三、壱貮参の続きセット(手札内でもチーしていても) | 3 | 6 |
二七十、貮柒拾の続きセット(手札内でもチーしていても) | 3 | 6 |
上記以外の続きセットと混合セット | 0 | 0 |
上りのときに最後に4枚の同一カードの形を作って上がった時は、手中3枚セットや暗3枚セットから同一牌をドローしてきたときだけ暗4枚セットとなり、それ以外は明4枚セットとなります。 また、上りのときに最後に3枚の同一カードの形を作って上がった時は、ドローして3枚の同一カードになった時だけ暗3枚セットになり、それ以外は明3枚セットとなります。
得点のための番数は、次のあてはまる項目の番数の合計になります。
どれにもあてはまらないときは、1になります。
名称 | 説明 | 番数 |
---|---|---|
紅胡 | 赤字カードが4枚、7枚、11枚、12枚のどれか | 2 |
真点胡 | 赤字カードが1枚 | 4 |
仮点胡 | 赤字カードが10枚 | 3 |
紅烏 | 赤字カードが13枚以上 | 13枚で4、赤い字のカードが1枚増えるごとに1点加算 |
烏胡 | 赤字カードなし | 5 |
対対胡 | セットがすべて同一カードのセット | 5 |
大 | 大字のカードが18枚以上 | 18枚で6点、大字カードが1枚増えるごとに1点加算 |
小 | 小字のカードが16枚以上 | 16枚で8点、小字カードが1枚増えるごとに1点加算 |
海底胡 | 山札の最後のカードで上がった時 | 2 |
赤字カード:“二”、“七”、“十”、“贰”、“柒”、“拾”のカード
どのカードによって上りになったのかに関係なく、前記の得点分を上がっていないプレイヤー2人がそれぞれ上がったプレイヤーに支払います。
従って、上がったプレイヤーは前記の得点の2倍の収入を得ます。
特に決まったゲームの終わりはありません。
番数の決め方は、地方やプレイヤーによって様々なようです。
以下は中国語ウィキペディアにあったものです。1つだけあてはめます。
名称 | 説明 | 番数 |
---|---|---|
紅胡 | 赤字カードが10枚、11枚、12枚のどれか | 2 |
一点紅 | 赤字カードが1枚 | 3 |
紅烏 | 赤字カードが13枚以上 | 4 |
烏胡 | 赤字カードなし | 5 |
対対胡 | セットがすべて同一カードのセット | 4 |
紅対 | 紅胡+対対胡 | 6 |
烏対 | 烏胡+対対胡 | 10 |
紅烏対 | 紅烏+対対胡 | 8 |
2023/9/2 なかよし村でプレイしました。大変面白くプレイできました。
カードの種類が少ないため、ドローしたカードを手札に入れられないとはいえ、色々な組み合わせの可能性があります。 2-7-10の組み合わせを含め、思わぬセットができることがあり、つい見逃すこともありました。 そのためもあったと思いますが、流局がかなり多かったです。 また、胡息数15点をクリアするのはは、かなり大変でした。
カードは世界のゲーム販売やタオバオで買えました。 また、大字の数字が分かりにくいので自作もしました。これとこれをA-ONEラベルシート77210に印刷して、アマゾンで「XTAROT 片面白紙カード56枚 ゲーム開発用」を買って貼り付けました。