1995/12/27 赤桐
ルクフは中国のカードゲームです。漢字ではおそらく六符または六虎と書きます。'ルクフ'は客家(はっか)または広東の言葉ですが、北京語では'リューフ(Liu Fu)'となるはずです。主に客家の人がプレイしているゲームです。使用するカードは、ルクフパイ(六符牌)または客家牌と呼ばれると思います。(客家というのは広東や福建や四川や台湾などにいる中国人のうち、昔、黄河流域の地方から移ってきた人々です。)
Michael Dummet氏によると、中国のカードゲームは3つの系統に別れます。1つはチャイニーズドミノ(天九牌)、もう1つはマネーカード、最後はチェスカード(象棋牌)です。このゲームのカードはマネーカードに含まれます。
このゲームのカードは、4つのスートがあり、1から9までの数札で構成されています。その他に1枚の特殊札があるので、37枚のカードを使います。スートは、'銭','索','貫','十'の4つです。'銭'は文字通りお金を現します。穴の開いた一文銭です。'索'は、銭の穴を通すひもであり、銭をまとめる時に使います。つまり、ひもでまとめられた銭を現します。'貫'は1000文の銭です。'十'は10貫を現します。(これで想像がつくように、スートには強弱があります)。このようなカードの構成は、古いカードからあまり変わっていません。
マネーカードでは、この4つのスートのうちの'十'のスートがなくなったカードも非常にポピュラーです。スートの数が減る代わりに、同一のカードが2枚または4枚に増えます。古くは馬吊(マーチャオ)というカードがありましたが、現在では'銭'が'筒'に、'貫'が'万'に変わって、麻雀として普及しています。
なお、マネーカードはヨーロッパのトランプの遠い祖先ではないかという推測もあります。'銭'と古いトランプの'コイン'、'索'と'バトン'は確かに似ています。また、古いゲームでは、'銭'のスートだけは、1が一番強く、数が増えるほど弱くなっていたものがあったそうです。これは、トランプの古いゲーム(オンブルなど)のコインやカップの扱いと共通します。
このゲームのルールは、Anthony Smith氏とGuenther Senst氏の記述に基づきました。これはインターネット上のJohn McLeod氏のサイトにあります。(http://www.pagat.com/)
3人または4人。ただし、4人の場合も実際にプレイするのは3人です。
'銭'、'索'、'貫'、'十'の4つのスートがあります。スートには強弱があります。(弱い)'銭'、'索'、'貫'、'十'(強い)の順です。
それぞれのスートには1から9までのカードがあります。数が多いほど強いカードになります。
ただし、'銭'のスートの1は'一銭'ではなく'毛X'となっています。Xの字は読めませんでした。
'十'のスートは'拾'の文字を使います。ただし、'十'のスートの1は'一拾'ではなく、'百子'となっています。
さらに1枚の特殊札があります。'X銭'と書かれたカードで、Xの漢字は読めませんでしたが、リチェン(Li Tyen)またはヨチェン(Yo Tyen)と呼ぶようです。銭となっていますが、'銭'のスートには含まれません。
なお、もう1枚、'X花'(このXも読めません)というカードもありますが、このゲームには使いません。
最初のディーラーは任意の方法で決めます。次回からは、反時計回りに交代します。ただし、ディーラーがプレイで勝った場合は、次のディールも同じディーラーが行います。
配る前に、ディーラーは負けているプレイヤーにカットをさせることができます。
3人ゲームの場合は、自分から始めて反時計回りにカードを配っていき、各プレイヤーの手札が12枚になるようにします。1枚ずつ配っても、何枚かずつまとめて配ってもかまいません。ディーラーが親になります。残った1枚のカードは裏向きのまま置いておきます。ゲームには使いません。
4人ゲームの場合には、自分の向かいにいるプレイヤーから始めて、自分以外の3人の手札が12枚になるように配ります。自分自身には1枚のカードをいつでもいいから配ります。普通は最初か最後に配ります。ディーラーの向かいにいるプレイヤーが親になります。
このゲームは一種のトリックテイキングゲームです。12のトリックのうち6つ以上のトリックを取ったプレイヤーが勝ち、取ったトリック数に応じて得点します。
6トリック(以上)を取ったプレイヤーは、プレイを直ちに終わらせることができます。そうしないで、他のプレイヤーの1人も6トリックを取ったら、後で6トリックを取ったプレイヤーだけが勝ちになります。
ディールが終わったら、親から順に反時計回りに、'プレイ'または'パス'の宣言を行います。誰かがプレイの宣言を行ったら、残りのプレイヤーは宣言する必要はありません。
全員がパスをしたら、このディールはプレイされずに終了し、ディーラー(と親)は右隣に移ります。
プレイの宣言をしたプレイヤーは、もしプレイで勝てなかったら、失点が大きくなります。
9のカード4枚と、十と銭の1と、特別札を、'古いカード'と呼びます。9のカードがプレイに使われると、その下のカードが順に'古いカード'になっていきます。つまり、あるスートにおいて、プレイに使われていない最強のカードが'古いカード'になっていきます。
また、あるプレイヤーの手札のなかで、そのスートの最強のカードからシークエンスになっている(数字が連続している)カードもすべて'古いカード'になります。(エスタブリッシュしているカードはすべて'古いカード'というわけです。)
ただし、プレイに使用されない1枚のカードや、他のプレイヤーがプレイのときに裏向きに捨て札した(後述)カードが、そのスートの一番強いカードである場合、そのすぐ下のランクのカードは、そのプレイヤーにとってはエスタブリッシュしているかどうかは分からないので、そのプレイヤーがそのカードを出しても、'古いカード'とは見なされません。(自分で'古いカード'を捨て札したプレイヤーが、そのすぐ下のランクのカードを出せば、それは'古いカード'になります。)
ただし、他のプレイヤーのフォローがないために(後述)エスタブリッシュしていたことが分かった場合は、そのすぐ下のランクのカードは'古いカード'になると思われます。
'古いカード'である、十の1と銭の1と特別札は弱いカードですが、単独でリードされた場合に限り、最強のカードになります。
最初のリードは親が行います。
リードするプレイヤーは1枚または3枚以上のカードを出すことができます。
リードできるカードは次の4種類です。
1枚のカードをリードする場合、'古いカード'をリードすることはできません。また、'古いカード'以外のカードのなかで、最も強いスートのカードをリードしなければなりません。
ただし、次の場合には'古いカード'をリードすることができます。このときには、スートの制限もありません。
親が宣言の時にパスをしていた場合には、最初のリードで、4枚以上のカードを出すことはできません。
4枚の1のカードと特別札を全部持っているプレイヤーは、リードを行うときに、この5枚を示して、プレイを終わらせることができます。この5枚は6トリック(別のルールでは8トリック)として数えます。
恐らくこの5枚をまとめて最強のカードとしてリードして、プレイを続けることもできると思われます。
リードが行われると、他のプレイヤーは、反時計回りの順に1人ずつ、リードされた枚数と同じ枚数のカードを出していきます。
今までに出たカードに勝てるカードが手にあれば、必ず出さなければなりません。そうでなければ、出すカードを全部裏向きにして捨て札します。捨て札は、どのスートのどのカードでもかまいません。
1枚のカードがリードされた場合には、リードされたスートで、もっと強いランクのカードの方が勝ちます。例外として、銭や十の1や特別札がリードされたときは、これに勝てるカードはありません。
3枚または4枚の同じランクのセットがリードされた場合には、同じ枚数のもっと強いランクのセットのカードを出すと勝つことができます。スートは関係ありません。例外として、3枚または4枚の1がリードされた場合には、同じ枚数の9のセットでしか勝つことができません。
シークエンスの場合には、同じスートで同じ枚数のもっとランクの高いシークエンスを出せば勝つことができます。あるいは、もっと強いスートのシークエンスを出して勝つこともできます。この場合は、同じ枚数ならば、どんなランクのシークエンスを出してもかまいません。
最も強いカードを出したプレイヤーがトリックを取り、次のリードを行います。
3枚以上のリードがあった場合には、その枚数と同じだけのトリックを行ったと考えます。例えば4枚のカードのリードがあった場合は、勝ったプレイヤーは4トリック取ったことになります。
トリックで取ったカードのうち、自分の出したカードは、自分の前に重ねないで表向きのまま並べておきます。それ以外のカードは、その脇に1つの山に重ねて置きます。表向きに出されたカードは表向きのまま、裏向きに出されたカードは裏向きのまま重ねます。この山の下になったカードを見ることは、よくないこととされています。
勝ったプレイヤーは、5トリックを超える1トリックごとに1チップを、プレイしている他の2人のプレイヤーのそれぞれからもらいます。6トリックなら1チップずつ、7トリックならば2チップずつというようにもらうわけです。
なお、10トリックか11トリック取った時には、2倍の支払いを受け、12トリック取ったときには、3倍の支払いを受けるというルールを採用することもあります。つまり、10トリックならば10チップずつ、11トリックなら12チップずつ、12トリックならば21チップずつもらえるわけです。
また、勝ったプレイヤーは、取ったカードの中で赤い印刷のあるカード(9のカード4枚、十の8、銭と十の1、および特別札)の1枚ごとに、負けた2人から1チップずつもらえるというルールを採用することもあります。
4人でプレイしている場合、プレイしなかった人(ディーラー)は、1枚だけ自分に配られたカードを見て、それと同じランクのカードが、勝ったプレイヤーの勝ったカードの中にあれば、負けた2人それぞれから1チップもらいます。この時には、特別札は1のランクとして扱います。この場合の勝ったカードというのは、元々プレイヤーの手札にあったカードで、それをプレイして勝ったカードのことです。
すべての支払いにおいて、負けたプレイヤーの1人がプレイの宣言を行っていた場合には、このプレイヤーはもう1人の負けたプレイヤーの分も、勝ったプレイヤー(あるいは、プレイしなかった人)に支払います。つまり、このプレイヤーは2倍のチップを払い、もう1人の負けたプレイヤーは支払いなしとなります。
誰も6トリック以上取らなかった場合には、引き分けになり支払いは全く発生しません。ディーラー(と親)は右隣のプレイヤーに移ります。あるいは、親がプレイの宣言をしていた時には、ディーラー(と親)は移動しないというルールで行うこともあるようです。
親が4枚以上のセットやシークエンスを持っている場合、パスをすることはよくないこととされています。親がこのような手でパスをして、他のプレイヤーが'プレイ'を宣言し、実際のプレイの結果親が勝った場合は、親はプレイを宣言したプレイヤーから1人分の支払いしか受け取ることができません。もう1人の負けたプレイヤーからは受け取ることができないので、親は通常の半分の支払いしか受けられないことになります。
1月6日になかよし村でルクフのプレイを行いましたが、そのときに気付いたルール上の問題点を2つまとめておきます。
1)ルールには、古いカードをリードできるときは、スートの制限もないと書きましたが、「'古いカード'をリードできる場合には、'古いカード'のリードにおいても、それ以外のカードのリードにおいても、スートの制限はありません。」と加筆しておきます。
つまり、プレイを宣言したプレイヤーは、1枚のカードのリードにおいて、全く制限なく、どのカードでもリードできます。
2)'古いカード'について
なかよし村では、'古いカード'は、「リードするプレイヤーのとって、必ず勝てると分かっているカード」と解釈して行いました。つまり、プレイで表向きに出されたカードと、自分が捨て札したカードと、自分の手札から考えて、エスタブリッシュしていることが分かっているカードということです。わたしの書いたルールもこのように読めると思います。
しかし、後で英語の原文を読んでみると、「リードの時点において、すべてのプレイヤーがそのスートの最強のカードだと分かっているカードは'古いカード'である。ただし、リードを行うプレイヤーの配られたときの手札において、その'古いカード'と連続していたカードもすべて'古いカード'となる。」という解釈のほうが正しいように思います。
しかし、これが必ずしも正しいルールかどうかは分かりません。
前者と後者の違いは、例えば、プレイヤーAが9を捨て札していて、プレイヤーBが同じスートの8を表向きにプレイしていた場合、プレイヤーAが同じスートの7を持っていた場合、プレイヤーAにとって7は'古いカード'になるかどうかという時に現れます。
前者のルールでは、プレイヤーAは7がエスタブリッシュしていることがわかりますので、7は'古いカード'になります。しかし、後者では'古いカード'は9であり、プレイヤーAは9を持っていましたが、それに連続する8は持っていなかったので、7は'古いカード'にはなりません。
前者のルールのほうが分かりやすく思えますが、検証の容易さという点では、いささか後者のほうがよいかもしれません。
いずれのルールでも、実際のプレイには、たいした影響はないと思います。念のために書いておきました。