2022/9/3 赤桐
オーストリアでプレイされているタロットカードのゲームです。 タップタロックの4人ゲームの子孫にあたるようです。
ルールは主にPhilebus氏の著書“Tarocchi”によります。 Michael Dummett氏とJohn McLeod氏の著書“A History of Card Games Played with the Tarot Pack”も参考にしました。
2人~4人。まず4人ゲームを紹介します。
タロットカード78枚からスペードとクラブ(剣とこん棒)の1~6とハートとダイアモンド(貨幣と杯)の5~10を除いた54枚のカードを使います。
各スートのカードとその強さは:
スペードとクラブは、 (強)キング、クイーン、カバロ、ジャック、10、9、8、7(弱)です。
ハートとダイアモンドは、 (強)キング、クイーン、カバロ、ジャック、1、2、3、4(弱)です。
その他に22枚の切札のスートがあります。切札の最強のカードは数字が何も入っていない「スキュース(愚者)」のカードです。 次に強いのが21(またはローマ数字でXXI)の数字の書かれているカードで「モンド」と呼ばれます。 以下、数字が小さくなると弱くなっていき、1(I)(「パガット」と呼ばれる)が切札では最弱のカードとなります
スキュースと切札21と切札1の3枚とトルル(troule)と呼びます。
カードの点数は次の通りです。
カード | 点数 |
---|---|
スキュース(愚者) | 5点 |
切札21 | 5点 |
切札1 | 5点 |
キング | 各5点 |
クイーン | 各4点 |
カバロ | 各3点 |
ジャック | 各2点 |
その外のカードすべて | 各1点 |
取ったカードの点数を計算するときは、カードの点数をすべて加えた後、カード3枚につき2点を減算します。 割り切れない1枚または2枚は1点を減算します。
全部の合計点数は70点です。
最初のディーラーは任意の方法で決めます。 次回からは反時計回りの順に交代します。
ディーラーは、最初の6枚のカードをタロンとしてテーブル中央に裏向きに置きます。 そのあと、ディーラーの右隣のプレイヤーから反時計回りに、各プレイヤーに6枚ずつ2回配ります。
ディールの後ディーラーの右隣から反時計回りの順にビッドを行います。
ビッドするときは、このあと述べる5種類のビッドのうちどれかをビッドします。 パスをしてもかまいませんが、パスをするとそのあとビッドをすることはできません。 パスをしなければ、何度でもビッドできます。
最初にビッドするディーラーの右隣のプレイヤーは、パスをすることは許されず、必ず何かのビッドをしなければなりません。
誰かがビッドしたあとは、今までのビッドより強いビッドしかできません。 ただし、既にパス以外のビッドをしていてその後パスをしていないプレイヤーは、「ホールド(hold)」と宣言して、最後のビッドと同じビッドをすることができます。
ホールドのビッドはビッドの直後に行わなくてはなりません(ビッド順を戻ることになります)。 ホールドできるプレイヤーが1人いたときは、ホールドできるプレイヤーがホールドするかどうかを確認し、パスならばそのままビッドを続けます。 ホールドできるプレイヤーがホールドを宣言したとき、その前にビッドしていたプレイヤーはパスをするかもっと強いビッドをしなくてはなりません。 このようにしてどちらかがパスをするまでビッドを続け、パスがあったら次のプレイヤーのビッドの番になります。
従って、ビッド中には、ホールドが可能なプレイヤーは最大1人しか存在せず、ビッドは1周だけになり、勝ち抜き戦のようになります。
最後にビッドを行ったプレイヤーがデクレアラーになります。 ビッドしたゲームの種類をプレイします。
プレイヤーがビッドできるのは次の5種類のゲームの種類のどれかです。 後で説明しているものほど強いビッドになります。 そのビッドでデクレアラーになった時のルールを以下で説明します。
デクレアラーは、プレイの前にタロンの上から4枚を手札に加え、4枚のカードを捨て札します。 捨て札はキング、切札21、切札1、スキュースを含んではいけません。 また、切札が多すぎて捨てざるを得ないときを除き、切札も捨ててはいけません。 (切札を捨てるときは表向きにします)。
デクレアラーの右隣のプレイヤーもタロンの上から1枚を手札に加えて、同じルールで捨て札します。 最後に、デクレアラーの左隣のプレイヤーも同様にします。 (デクレアラーの向かいのプレイヤーは交換できません。)
そのあと、デクレアラーは、切札を1枚指定して、そのカードを持っているプレイヤーをパートナーにします。 指定するカードは切札19かそれより弱いカードのうち、自分の持っていない最も強いカードでなければなりません。
指定されたカードを持っているプレイヤーは、そのカードをプレイするまで、自分がパートナーであることを明かしてはいけません。
デクレアラーとパートナーはチームになり、同じゲーム点の得失点となります。 それ以外のプレイヤーもチームとなり、同じゲーム点の得失点です。
以下のビッドでは、すべてパートナーなしでプレイします。 デクレアラー以外の3人は同じチームとなり、同じゲーム点の得失点となります。
デクレアラーはタロンの上の3枚を手に取って自分だけで見ます。 このカードでよければ、それを手札に入れて、ルーファーのときと同様のルールで3枚を捨て札します。
そうしないときは、最初の3枚を表向きにテーブルに置き、タロンの残りの3枚を見ます。 これがよければ、同様に手札と交換を行います。 この場合、プレイに失敗したときの失点が2倍になります。
そうでなければ、後の3枚も表向きにテーブルに置き、最初の3枚と手札を交換します。 この場合、プレイに失敗したときの失点は3倍になります。
他のプレイヤーは交換しません。
3枚と同様ですが、2枚しか交換できません。
3枚の場合と同じように、タロンの上から2枚ずつ見て、交換するか公開します。 プレイに失敗したときの失点は、上の2枚で1倍、中の2枚で2倍、下の2枚で3倍になります。
下の2枚がよくなければ、上の2枚、中の2枚のどちらかから再び選択して交換することになります。 この場合、失点は、上の2枚なら4倍、中の2枚なら5倍です。
3枚や2枚と同様ですが、1枚しか交換できません。
2枚の場合と同じように、タロンの上から1枚ずつ見て、交換するか公開します。 プレイに失敗したときの失点は、上から、1倍~6倍になります。
最後の1枚がよくなければ、 今までのカードから再び選択して交換することになります。 この場合、失点は、7倍~11倍です(一番上なら7倍、5枚目のカードなら11倍)
手札とタロンの交換はしないで、プレイします。
ビッドが終わると、上記のようにタロンとの交換とパートナー決めを(必要なら)行います。
そのあと、順序は関係なく、誰でも、次のようなボーナス得点の宣言を行うことができます。 宣言には、手役の宣言およびプレイの予告があります。
手札の宣言は次の種類があります。自分1人の手札にそのカードがあるときに宣言できます。 手札を見せる必要はありません。
名称 | 説明 | ゲーム点 |
---|---|---|
切札8枚 | 8枚以上の切札があるとき。 | 4ゲーム点 |
切札10枚 | 10枚以上の切札があるとき。 | 8ゲーム点 |
切札12枚 | 12枚以上の切札があるとき。 | 12ゲーム点 |
トルル3枚(Tour les trois) | スキュース(愚者)、切札21、切札1の3枚 | 8ゲーム点 |
キング4枚 | キング4枚 | 8ゲーム点 |
アナーズ(Honneurs) | トルルとキングの枚数合計が4枚以上 | 4ゲーム点 |
グロス・アナーズ(Grosse Honneurs) | トルル3枚とキング1枚以上、またはキング4枚とトルル1枚以上 | 12ゲーム点 |
切札の枚数は1種類しか宣言できません(例えば、10枚切札があるときに「切札8枚」と「切札10枚」を宣言することはできません)。 切札の枚数とそれ以外の役の複合は可能です。 トルル3枚、キング4枚、アナーズ、グロス・アナーズのなかで複合できるのは、トルル3枚とキング4枚の複合(16点になる)だけです。
プレイの予告は次の2種類があります。
パガット・ウルティモ(Pagat Ultimo)の予告は、宣言したプレイヤーが最後のトリックで切札1でトリックに勝つという宣言です。 同じチームのプレイヤーが勝っても失敗になります。 成功したら20ゲーム点の得点。失敗したら20ゲーム点の失点になります。
ボレー(Vollat)の予告は、自分のチームが全トリック取るという予告です。 成功したら40ゲーム点の得点。失敗したら40ゲーム点の失点になります。
プレイはトリックテイキングゲームの原則に従って行われます。プレイの順序は反時計回りです。 最初のリードは、ディーラーの右隣のプレイヤーが行います。
フォローの義務は次のようになります。
切札以外がリードされた場合:
切札がリードされた場合:
トリックに勝つのは、通常通り、切札がプレイされていれば最も強い切札を出したプレイヤー、切札がプレイされていなければリードされたスートで最も強いカードを出したプレイヤーです。 トリックに勝ったプレイヤーが次のリードを行います。
ビッドの種類により次の倍数があります。
ビッドの種類 | 倍数 |
---|---|
ルーファー | 1倍 |
3枚 | 3倍 |
2枚 | 4倍 |
1枚 | 5倍 |
ソロ | 6倍 |
ルーファーのときはデクレアラーの取った点数とパートナーの取った点数は合計されて、デクレアラー側の点数となります。 そうでないときは、デクレアラーの取った点数だけがデクレアラーチームの点数です。
デクレアラー側(デクレアラーとパートナー)が交換したときの捨て札は、デクレアラー側のものとして点数に入れます。 交換しなかったタロンのカードや、デクレアラー側でないプレイヤーが交換した捨て札は、デクレアラーの相手チームのものになります。
デクレアラー側の点数が36点以上の場合、得点するゲーム点は次の式になります。
ルーファーのときには、デクレアラー側でないプレイヤーの1人がデクレアラーにこのゲーム点を支払い、もう1人がデクレアラーのパートナーに支払います。 それ以外のときは、デクレアラーでない各プレイヤーがデクレアラーのこのゲーム点を支払います(デクレアラーはこのゲーム点の3倍を受け取ることになります)。
デクレアラー側の点数が35点以下の場合、デクレアラー側の失点となり、失点するゲーム点は次の式になります。
ルーファーのときには、デクレアラーがデクレアラー側でないプレイヤーの1人にこのゲーム点を支払い、デクレアラーのパートナーがもう1人に支払います。 それ以外のときは、デクレアラーが他の各プレイヤーにこのゲーム点を支払います(デクレアラーはこのゲーム点の3倍を支払うことになります)。
プレイ後にはボーナス得点・失点の精算も行います。 ボーナス得失点の精算は、プレイの成功・失敗には関係しません。 ボーナス得失点は、ビッドの種類による倍数もタロンとの交換時の倍数も掛けません。 手役のような個人に拠るものであっても、かならずチームとして得点・失点を行います。
手役は、前記の通りの額を得点します。
誰かが最後のトリックに切札1で勝ったら、パガット・ウルティモとなり、そのチームが10点を得点します(個人の得点ではありません)。 上記と同様に2人対2人または1人対3人でゲーム点のやりとりをします。 もし、パガット・ウルティモが予告されていて成功したら20点となります。 失敗したら20点の失点となります(反対方向に支払いを行います)。
どちらかのチームが全トリックを取ったら、ボレーとなり、20点の得点となります。 もし予告されていたら40点の得点ですが、失敗したら40点の失点です。 (ボレーの成功失敗と、プレイの成功失敗は無関係です)。
ゲームがいつ終わるかについては、定まった規則はないようです。
ディーラーは他の2人の中間にダミー(Strohmann)のカードを12枚裏向きに配ります(右隣→ダミー→左隣→自分というように)。 4人分のカードを配るわけです。
ダミーとは、プレイの前にすべて表にするカードのことで、1人のプレイヤーの手札のように扱います。 プレイの順番がダミーの位置に来た時、誰かがそのカードをプレイします。 表向きにするときは、見やすいように、スートごとに強さの順に置きます。 (各スートと切札を、縦の一列に、見出しが見えるようにずらして重ねるのが良いでしょう)。
ビッドは普通に3人で行います。 ルーファーのビッドのときは、デクレアラーが上の4枚のカードを取って交換した後、他の2人のプレイヤーが1枚ずつ交換します。
そのあと、ボーナス宣言をおこなったあと、ダミーは表向きにされます。 ルーファーのゲームで、パートナー指定のカードがダミーにあれば、デクレアラーがダミーをプレイします。 そうでないときは、パートナー指定されたプレイヤーはそのことを公表し、残りのプレイヤーがダミーをプレイします。 ルーファー以外のビッドのときは、他の2人のプレイヤーのうち、ダミーをプレイすることを宣言したプレイヤーが、ダミーのプレイを行います。
誰がダミーをプレイすることになっても、ダミーの位置は変わりません。
得点の方法はどこにも書いていなかったのですが、ダミーも実際のプレイヤーと同じように得点や失点するということで良いのではと思います。
普通の4人ゲームと同じようにディールとビッドを行います。
ディーラー以外のプレイヤーがデクレアラーになったときは、ボーナス宣言まで行ったあと、ディーラーの手札はダミーとなり、3人ゲームと同じようにプレイします。 ディーラーはプレイには参加しませんが、得点は支払い/受取りします。
ディーラーがデクレアラーになったときは、ボーナス宣言のあと、デクレアラーのカードはダミーのように表向きにされます。 このカードをプレイするのはデクレアラーで、得点も通常通りになります。
ディーラーは2人の中間に2つのダミーのカードを配ります(ダミー1→相手→ダミー2→自分)。
ダミーは直ちに表にします。 ビッドはなく必ずディーラーの相手がデクレアラーになりルーファーをプレイします。
パートナー指名は、切札19以下で、どちらかのダミーにあるカードのうち最も強いカードを指定します。
各プレイヤーは自分のチームのダミーをプレイします。 最初のリードはディーラーが行います。
なかよし村で9月3日にプレイしました。
4人ゲームは、タロットの普通のゲームという印象でしたが楽しめました。 タロットのゲームはどれも面白いです。 ただ、手札の交換の方法は今までに経験がないものでした。
3人ゲームも行いましたが、タロットでダミーがあるというのは新鮮でした。 面白いかどうかは、もう少しやってみないを分からない気がしましたが。