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スカート(Skat)

1997/4/21 赤桐

 スカートはドイツの代表的なゲームです。

 ライプニッツの近くのアルテンブルグという町で1810年代に発明されたようですが、初期のものは現在のスカートとはかなり違うルールです。

 ルールの改良を続けながら普及していき、19世紀の終わりにはドイツで最もポピュラーなゲームとなりました。その後もルールの改良は続きましたが、現在まで引き続き高い人気があります。

 スカートはカードゲームの中でも、最も理知的で深みのあるゲームといわれています。それは間違いではありませんが、同時に、スピーディーでエキサイティングなギャンブルゲームでもあります。

 ルールは最初はわかりにくいかも知れませんが、基本の原理さえ理解すれば、それほど複雑というわけではありません。


プレイヤー

 3人または4人。4人で行うときには、ディーラーはプレイには参加しません。

 プレイに参加する3人のプレイヤーのうち、ディーラーの左隣のプレイヤーをフォアハンド、その左隣をミドルハンド、残りの1人をリアハンドと呼びます。3人で行うときには、ディーラーがリアハンドになります。

カード

 通常の52枚のカードから、各スートを除いた、32枚のカードを使います。

 ドイツの東部や南部の地方では、通常のクラブ、スペード、ハート、ダイアモンドのスートを持つカードの代わりに、ドイツ固有のスートである、どんぐり、木の葉、ハート、鈴のカードが使われます。このカードでは、クイーンはオーバー(Ober)、ジャックはウンター(Unter)となります。

ディール

 最初のディーラーは任意の方法で決めます。次回からは、ディーラーは時計回りに交代します。

 まず各プレイヤーに3枚ずつまとめて配り、次に2枚のカードをテーブルの上に裏向きに置きます。次にまた、各プレイヤーに4枚ずつまとめて配り、最後に各プレイヤーに3枚ずつ配ります。各プレイヤーに配るときは、ディーラーの左隣から時計回りに配ります。

 各プレイヤーの手札は10枚になります。

 テーブルに置かれた2枚のカードはスカートと呼ばれます。

ビッド

 ディールが終わると、誰がソロイストになるかを決めるために、ビッドを行います。

 このゲームでは、各カードに点数があり、トリックで勝つことにより点数を取ることになりますが、多くの場合、ソロイストになったプレイヤーは、1人で過半数の点数(61点以上)を取ることが目的となり、それ以外の2人は協力してそれを阻止しようとします。

 ソロイストになったプレイヤーは、ゲームの種類を指定できます。切札のスートなどを決めることができるわけです。

 しかし、ビッドは、取ることできそうなカードの点数や、切札の種類を宣言するわけではありません。プレイした結果による最終的な得点を予想して、その点数に基づいてビッドします。最終的な得点とは、後で説明するように、ゲームの種類や、手札の内容、取ったカードの点数などによって計算される点数です。

 このような点数を最も高くビッドしたプレイヤーがソロイストになるわけです。同じ点数のビッドならばフォアハンド>ミドルハンド>リアハンドの順に優先順位があり、優先順位の高いほうがソロイストになります。

 しかし、プレイの結果、ソロイストの得点がビッドした点数より少なかった場合には、マイナス点となります。

 実際のビッドは勝ち抜き戦方式で行われます。まず、フォアハンドとミドルハンドがビッドを行い、勝ったプレイヤー(パスをしなかったほうのプレイヤー)がリアハンドとビッドを行います。最後までパスをしなかったプレイヤーがソロイストになります。

フォアハンドとミドルハンドのビッド

 まずフォアハンドとミドルハンドのビッドがありますが、どちらかがパスを宣言したときには、直ちに、パスをしなかったプレイヤーとリアハンドとのビッドに移ります。

 最初に発言するのはミドルハンドです。ミドルハンドは18かそれ以上の点数をビッドするか、パスをします。(パスをした場合は、すぐにフォアハンドとミドルハンドのビッドに移ることになります。)

 ミドルハンドが点数のビッドをした場合、フォアハンドは「はい(Yes)」またはパスのビッドをします。「はい」というのは、ミドルハンドの言った点数と同じ点数でソロイストになるつもりがあるという意味です。

 フォアハンドが「はい」とビッドした場合には、ミドルハンドは、今まで言った点数より高い点数をビッドするか、パスをするかします。

 ミドルハンドが点数のビッドをした場合、先ほどと同じように、フォアハンドは「はい」またはパスのビッドをします。

 どちらかがパスを宣言するまで、このような事を繰り返します。

リアハンドとのビッド

 リアハンドとのビッドも上記と同じように行います。

 リアハンドがまず点数のビッドを行い(あるいはパスをし)、フォアハンドとミドルハンドの勝者が、それに対して「はい」をビッドするか、パスをするかします。

 リアハンドが最初にビッドする点数は、もちろん、フォアハンドとミドルハンドのビッドの時に出ていた点数より高い点数でなければなりません。ミドルハンドがいきなりパスをしていて、点数がビッドされていない場合には、18からビッドしてかまいません。

 最後までパスをしなかったプレイヤーが、ソロイストになります。

 ただし、ミドルハンドとリアハンドが、点数のビッドを行わないで直ちにパスをした場合、フォアハンドは18のビッドをしてソロイストになるか、パスを宣言します。パスの場合には、プレイは行われないで、次のディールが始まります。(次のディーラーは左隣のプレイヤーに交代します。)

ビッドの例

 ビッドの例を少し挙げておきます。Fはフォアハンド、Mはミドルハンド、Rはリアハンドを表わします。

 例1 M:18、F:はい、M:20、F:はい、M:パス(フォアハンドが勝ち残り)、R:22、F:はい、R:23、F:はい、R:24、F:パス(リアハンドがソロイスト、ビッドの点数は24)

 例2 M:パス(フォアハンドが勝ち残り)、R:18、F:はい、R:パス(フォアハンドがソロイスト、ビッドの点数は18)

 例3 M:18、F:パス(ミドルハンドが勝ち残り)、R:20、M:パス(リアハンドがソロイスト)

ゲームの種類

 ソロイストになったプレイヤーが宣言できるゲームの種類は、次のようになります。

[1.スートゲーム]

 クラブ、スペード、ハート、ダイアモンドの4つのスートのうちの1つを切札にして、プレイを行います。

 ただし、各スートのジャックは、どのスートを切札にした場合でも、切札として扱われます。

 切札のスートのカードとその強さの順位は、(強)CSHD10(弱)です。

 切札以外の各スートのカードと強さの順位は、(強)10(弱)です。

 スートゲームをプレイする場合、さらにスカートゲームにするかハンドゲームにするかを選択します。

 スカートゲームの場合には、スカート(テーブル上のカード)の2枚のカードを手札に入れて、2枚を捨てることができます。ハンドゲームの場合は、スカートはそのままにしておきます。

 スカートゲームで捨て札にしたカードや、ハンドゲームで取らなかったスカートは、プレイ終了後、ソロイストのものになります。

 ハンドゲームを行う場合に限って、さらに次の宣言を行うことができます。これらの宣言で成功した場合は得点が高くなります。

シュナイダー宣言

 プレイで90点以上取ると宣言することです。

シュワルツ宣言

 プレイで全トリックを取ると宣言することです。シュワルツ宣言を行った場合、シュナイダー宣言も行ったものとみなされます。

ウベルト(オープン)

 手札をすべて公開してプレイし、全トリックを取ることを宣言することです。(ウベルトは「オープン」とも呼ばれます。)ウベルトを宣言した場合、シュナイダー宣言とシュワルツ宣言もあったものとみなされます

 なお、これらの宣言で少しでも失敗した場合には、プレイ失敗となり、高いマイナス点となります。たとえば、シュナイダー宣言をして、90点取ることに失敗した場合には、たとえ61点以上取っていてもプレイは失敗です。また、全点数(120点)を取ったとしても、全トリックを取れなかった場合は、シュワルツ宣言に失敗します。

[2.グランド]

 グランドのゲームでは、4枚のジャックだけが独立した切札のスートになっています。(従って、5つのスートが存在することになります。)

 切札のスートのカードとその強さの順位は、(強)CSHD(弱)です。

 切札以外の各スートのカードと強さの順位は、(強)10(弱)です。

 グランドでも、スートゲームと同じように、スカートゲームにするかハンドゲームにするかを決めます。ハンドゲームの場合には、同様に、シュナイダー宣言、シュワルツ宣言、ウベルトをすることが可能です。

[3.ヌル(ミゼール)]

 ヌルのコントラクトでは、ソロイストは1トリックも取らないことを目的としてプレイします。(ヌルは「ミゼール」と呼ばれることもあります。)

 切札はありません。

 各スートのカードと強さの順位は、(強)10(弱)です。

 ヌルにおいても、スカートゲームとハンドゲームがあります。

 また、手札を公開してプレイすること、つまりウベルト(オープン)もプレイ可能です。この場合のウベルトは、もちろん全トリックを取ることを目指すわけではなく、やはり全くトリックを取らないことが目的です。ヌルにおいては、スカートゲームでもハンドゲームでも、ウベルトを宣言することができます。

 従って、ヌルには、次の4つの種類があります。

  1. ヌル(スカートゲーム)
  2. ヌル(ハンドゲーム)
  3. ヌル・ウベルト(スカートゲーム)
  4. ヌル・ウベルト(ハンドゲーム)

プレイ

 ソロイストは、プレイの前に、スカートゲームにしようとしている場合には、スカートの2枚のカードを他のプレイヤーに見せずに手札に加え、2枚のカードを裏向きに捨て札します。捨て札したカードはテーブル上に他のカードと区別して置いておきます。どのカードを捨て札してもかまいません。スカートにあったカードを捨て札することも可能です。

 ハンドゲームの場合には、スカートの2枚はそのまま他のカードと区別してテーブルに置いておきます。

 そのあと、ソロイストはゲームの種類を宣言します。

 ウベルトの場合は、そのあと手札をすべて上向きにして、プレイヤーの前のテーブルに置きます。

 それから最初のリードが行われます。最初のリードを行うプレイヤーは、必ずフォアハンドです。

 通常のトリックテイキングゲームのルールに従ってプレイします。つまり:

  1. リードされたスートのカードがあれば、そのスートを出します。
  2. なければ、どのカードを出してもかまいません。
  3. 切札が出ていない場合は、リードされたスートの最も強いカードを出したプレイヤーが勝ちます(トリックを取ります)。
  4. 切札が出ている場合は、最も強い切札を出したプレイヤーが勝ちます。
  5. 勝ったプレイヤーが次のリードを行ないます。

 なお、スートゲームやグランドの場合、ジャックはそのカードに記されているスートではなく、切札のスートに属すことに注意して下さい。

 ヌルの場合には、ソロイストが1トリックでも取った場合、失敗となり、直ちにプレイは終了します。

カードの点数の計算

 プレイが終わると、ソロイストは自分の取ったカートの点数を合計します。他の2人のプレイヤーも、ふつうは確認のため2人のカードを合わせて点数を合計します。

 各カードには次のような点数があります。

11点
1010点
4点
3点
2点

 これ以外のカードは0点です。

 全部のカードの点数の合計は120点になります。

 スカートゲームの場合に手札にスカートを加えたあと捨てた2枚のカードや、ハンドゲームの場合の手をつけなかったスカートの2枚は、ソロイストのものになるので、その点数はソロイストの点数に加わります。

 通常の場合、ソロイストが61点かそれ以上を取ったら、プレイ成功となります。

得点

 ヌルのゲームを除き、「基本点」と「達成点」を掛けたものが得点となります。

    得点 = 基本点 x 達成点

 基本点とは、ゲームの種類による点数です。達成点とは、獲得した得点や、手札とスカートの内容、シュナイダーなどの宣言による点数です。

基本点

 基本点は、ゲームの種類により、次のようになります。

スートゲーム:ダイアモンドが切札9点
スートゲーム:ハートが切札10点
スートゲーム:スペードが切札11点
スートゲーム:クラブが切札12点
グランド(ウベルト以外)24点
グランド(ウベルトの場合)36点

達成点

 達成点は、次の点数のうち、あてはまる点数をすべて合計したものになります。

ウィズまたはウィズアウト各1点
ゲーム1点
ハンド1点
シュナイダー1点
シュナイダー宣言1点
シュワルツ1点
シュワルツ宣言1点
ウベルト(グランド以外)1点
逆シュナイダー1点
逆シュワルツ1点

 ウィズというのは、手札とスカートのカード(または捨て札したカード)を合わせて、一番強い切札(C)から連続して、何枚の切札があったかという枚数です。Cがなければ、ウィズは0です。

 例えば、Cがあるけれど、次に強いSはない場合、ウィズは1です。CSHD、切札のがあって、切札のがなければ、ウィズは5になります。

 ウィズアウトというのは、手札とスカートのカード(または捨て札したカード)を合わせて、一番強い切札(C)から連続して、何枚の切札が欠けていたかという枚数です。Cがあれば、ウィズアウトは0です。 例えば、Cがなく、Sもなくて、Hがある場合には、ウィズアウトは2になります。スートゲームで1枚も切札がない場合には、ウィズアウトは11になります。

 「ウィズまたはウィズアウト」の点数は、ウィズまたはウィズアウトのうち、0でない方の数がそのまま点数になりますから、少なくとも1点はあります。

 なお、ウィズやウィズアウトでは、取ったカードではなく、配られたときの手札とスカートを合わせたカードにあった切札を調べるということにご注意ください。手札にどのような切札があったかということは、記憶しておく必要があります。

 また、スカートゲームかハンドゲームかに関わりなく、最初の手札だけでなくスカートも含んだカードが問題になるので、スカートに入っていた切札によっては、ビッドの時に考えていたものより、実際の達成点が多くなったり少なくなったりすることがあります。

 「ゲーム」の点数は、61点達成した場合にも、しなかった場合にもつきます。つまり、いつでも1点になります。

 「ハンド」の点数は、ハンドゲームを行った時につきます(失敗した場合もつきます)。

 「シュナイダー」の点数は、90点かそれ以上取った場合につきます。

 「シュナイダー宣言」の点数は、シュナイダーの宣言を行った場合につきます(失敗した場合もつきます)。シュナイダー宣言があった場合、「シュナイダー」の点数も成功失敗に関わらず別につきます。なぜなら、得点計算は常に成功した場合の点数を基準に計算するからです。

 「シュワルツ」の点数は、全トリックを取った場合につきます。なお、この場合シュナイダーも達成しているはずなので、「シュナイダー」の点数も別につきます。

 「シュワルツ宣言」の点数は、シュワルツの宣言を行った場合につきます(失敗した場合もつきます)。この場合、シュナイダー宣言も行っているとみなされるので、「シュナイダー宣言」の点数も別につきます。また「シュナイダー」と「シュワルツ」の点数も別につきます(失敗した場合にも)。

 「ウベルト」の点数は、ウベルトの宣言をしてプレイした場合につきます(失敗した場合にもつきます)。この場合、シュナイダー宣言とシュワルツ宣言も行っているとみなされるので、「シュナイダー宣言」と「シュワルツ宣言」の点数も別につきます。また「シュナイダー」の点数と「シュワルツ」の点数も別につきます(失敗した場合にも)。

 グランドの場合、ウベルトの点数は達成点には入りません。その代わり、基本点が大きくなっています。

 「逆シュナイダー」は、めったに起こりませんが、ソロイスト以外の2人が90点かそれ以上を取った場合につく点数です。つまり、ソロイストが30点未満の点数しか取れなかった時に起こります。

 「逆シュワルツ」は、ソロイストが1トリックも取れなかったときにつきます。もちろん、「逆シュナイダー」の点数も別につくわけです。

 達成点の計算の例を少し挙げておきます。

 例えばウィズ2のハンドゲームでシュワルツを達成したときには、シュナイダーも同時に達成しているので、ウィズ(2)+ゲーム(+1=3)+ハンド(+1=4)+シュナイダー(+1=5)+シュワルツ(+1=6)で達成点は6になります。これをゲーム中に口頭で数えるときには、「ウィズ2、ゲーム3、ハンド4、シュナイダー5、シュワルツ6」と言います。

 ウィズ2のハンドゲームでシュワルツ宣言に失敗したときには、{ウィズ(2)+ゲーム(+1=3)+ハンド(+1=4)+シュナイダー(+1=5)+シュナイダー宣言(+1=6)+シュワルツ(+1=7)+シュワルツ宣言(+1=8)}に失敗したということで、達成点は8になります。

得点と失点

 プレイが成功した場合も失敗した場合も、上記のやり方で得点を計算します。61点を取ることに失敗した場合や、シュナイダー宣言やシュワルツ宣言(およびウベルト)に失敗した場合には、その点数がマイナス点になります。

 ただし、スカートゲームの場合は、マイナス点がその2倍となります。

 つねに、ソロイストだけが、このようなプラスまたはマイナスの点数をつけます。

 もし、計算した得点がビッドした点数より少なければ、その場合も失敗となります。これをオーバービッドの状態と呼びます。

 この場合、達成点を必要なだけ増やして、点数(基本点x達成点)が宣言した点数かそれより多くなるようにします。その点数がマイナス点です。(スカートゲームの場合には、それを2倍したものがマイナス点になります。)

 あるいは、ソロイストが、宣言した点数を得るためにシュナイダーやシュワルツなどを試みて失敗したと考えて、シュナイダーやシュワルツなどの達成点を加えていっても同じことになります。

得点と失点の例

 少し例を挙げておきます。

 例1 スートゲーム(ハート)のハンドゲーム。ビッドした点数は40。ウィズ3でカードの点数が95点あった場合。

 基本点は10点。達成点はウィズ(3)+ゲーム(+1=4)+ハンド(+1=5)+シュナイダー(+1=6)で6点。10x6=60点。ビッドした点数以上なので文句なく60点の得点となります。

 例2 スートゲーム(クラブ)のスカートゲーム。ビッドした点数は18。ウィズ2で61点に少し足りなかった場合。

 基本点は12点。達成点はウィズ(2)+ゲーム(+1=3)で3点。12x3=36点。これを2倍して72点のマイナス点です。

 もしこれがハンドゲームならば、基本点は12点で、達成点はウィズ(2)+ゲーム(+1=3)+ハンド(+1=4)の4点。12x4=48点のマイナス点です。

 なお、相手側2人の合計点数が90点以上だった場合は、逆シュナイダーになり、達成点が+1になります。また、相手側が全トリック取った場合は、逆シュワルツになり、達成点がさらに+1されます。

 例3 グランドのスカートゲーム。ビッドした点数は60。ウィズアウト1で61点以上だったが90点未満(シュナイダーにはならない)。

 基本点は24。達成点はウィズアウト(1)+ゲーム(+1=2)で2点。24x2=48点。これはビッドの点数より少ないので、失敗となります。達成点を1つ増やして3点にすると、24x3=74点で、ビッドの点数より多くなるので、これが得られた点数です。スカートゲームなのでこれを2倍して、148点のマイナス点となります。

 なお、例3で、カードで得た点数が61点に少し足りない場合でも、同じ計算をして、同じマイナス点となります。

ヌルの場合の得点計算

 ヌルの場合には、次の基本点がそのまま得点になります。達成点は関係ありません。

ヌル(スカートゲーム)23点
ヌル(ハンドゲーム)35点
ヌル・ウベルト(スカートゲーム)46点
ヌル・ウベルト(ハンドゲーム)59点

 失敗の場合、スカートゲームでは、マイナス点が2倍になります。

 得点がビッドした点数より少なければ(オーバービッドの場合には)、この基本点を何倍かして、ビッドした点数かそれ以上になるようにします。それがマイナス点になります。(スカートゲームでは2倍になります。)

コンシード

 ソロイストは、プレイで成功することができないと考えたならば、プレイしないで降参することができます。これをコンシードと呼びます。

 コンシードは、スカートゲームならば手札とスカートの交換をおこなった後、ゲームの種類の宣言と同時に行います。

 この場合の得点計算は、宣言されたゲームの種類に基づいて通常にプレイして失敗した場合と同じです。ただし、逆シュナイダーや逆シュワルツの達成点はつきません。

 なお、プレイ中でもコンシードすることもできますが、その場合は他の全プレイヤーの同意が必要です。

ゲーム

 ゲーム終了については、特に定まった規則はありません。

 ただし、全員が同じ回数だけディーラーになるように、3人でゲームを行なうときには3の倍数、4人でゲームを行なうときには4の倍数になるディール数で行うようにしましょう。

精算

 ゲームが終了したら、各プレイヤーは他の全プレイヤーと、それぞれとの得点の差だけの額を精算します。

 例えば、プレイヤーをA、B、C、Dとし、それぞれの得点を a, b, c ,dとすると、Aが得られる(または、支払う)点数は:

 の精算点数 = (a b)+(a c)+(a d) となります

 なお、4人ゲームの場合、各人の精算点数は自分の得点を4倍したものから、4人の得点の合計を引いたものでもあります。すなわち:

 の精算点数 = (a b)+(a c)+(a d) =  3a b c d = 4a (a+b+c+d)


注1

 ドイツの伝統的なカードで行うとき、どんぐりはクラブに、木の葉はスペードに、ハートはハートに、鈴はダイアモンドに対応すると考えて下さい。

注2

 ビッドのときは、最初にミドルハンドから発言しますが、発言を促すために、フォアハンドが、「私がフォアハンドです」とか、「聞いていますよ」とか、「ビッドして下さい」とか言うことがあります。

注3

 ビッドのとき、プレイの結果の得点としてありえないような点数をビッドすることは、正式には禁止されます。例えば19です。

 ビッド可能な100までの点数は次の通りです:18, 20, 22, 23, 24, 27, 30, 33, 35, 36, 40, 44, 45, 46, 48, 50, 54, 55, 59, 60, 63, 66, 70, 72, 77, 80, 81, 84, 88, 90, 96, 99, 100

注4

 ゲームの種類とプレイの結果による達成点をまとめると次の表のようになります。(これにウィズ/ウィズアウトの数を加えたものが実際の達成点になります。)

シュワルツシュナイダー31点〜89点逆シュナイダー逆シュワルツ
スカートゲーム
ハンドゲーム
宣言なし
シュナイダー宣言
シュワルツ宣言
ウベルト

注5

 ブクブクさんの情報では、シェアウェアのスカートソフトで、コンシードをした場合、ビッド点がマイナス点になる(スカートゲームではその2倍)ものがあるということで、「日本スカートゲーム協会(JSGA)公式ルール」でもそうなっているようですが、私としてはまだ確認できていません。

 コンシードについては、全く触れられていない資料も多く、ドイツの公式ルールでどのような扱いになっているのか、はっきりとは分かりません。

 なお、最初のリードが行われるまでならコンシードが可能だというルールもあるようです。


用語

 スカートはドイツのゲームなので、用語はすべてドイツ語に統一しようかとも思いましたが、日本ではドイツ語がそれほどなじみがなく、今までの用語ともひどく違ってくるので、断念しました。

 また、既に発表されているMILKさんのルールや「日本スカートゲーム協会(JSGA)公式ルール」に従ったほうがよかったのかもしれませんが、自分の判断と趣味を優先させることにしました。お許し下さい。

 若干の用語についいてコメントしておきます。

 「達成点」については、従来の用語(マルチプル・ファクターなど)は、ドイツ語からはかけ離れており、わかりやすい用語でもないため、改めました。ドイツ語では、Spielwertであり、「ゲーム点」というのが一番近いと思いますが、ゲームの種類によって決定される基本点とまぎらわしいので、「達成点」としたものです。

 ウィズとウィズアウトを総称して、「マタドール」という呼び方もされていますが、本文では特に必要もないので、そう呼びませんでした。マタドール(Matador)というのは、英米で伝統的に呼んでいる名前ですが、少なくとも現在のドイツでは使われていません。現在ドイツの用語は「シュピッツェン(Spitzen)」となります。

 「シュワルツ(Schwarz)」は、シュバルツと読む方が原音に近いと思いますが、ゲーム用語として普及しているようなので、従来通りにしました。

 「グランド(Grand)」は、フランス語からきた言葉でしょうが、ドイツで実際にどのように発音しているのかは、よく分かりませんでした。従来の読み方に従っておきました。

 なお、「ソロイスト」を「デクレアラー」、「ゲームの種類」を「コントラクト」と呼ぶこともできますが、コントラクトブリッジに近すぎる用語なので避けました。

 参考のため、ゲームで使われた用語の英語とドイツ語の原語を表にしておきました。アスタリスク(*)がついているのが、日本語の表記の基になった言葉です。

クラブ*ClubKreuz
スペード*SpadePik
ハート*HeartHerz
ダイアモンド*DiamondKaro
どんぐりacornEichel
木の葉leavesGrün
ハート(ドイツカード)heartRot
bellSchellen
エース*AceAs/Daus
キング*KingKönich
クイーン*QueenDame
ジャック*JackBube
オーバー - *Ober
ウンター - *Unter
ディーラー*DealerGeber
フォアハンド*ForehandVorderhand
ミドルハンド*MiddlehandMittelhand
リアハンド*RearhandHinterhand
ソロイスト*Soloist/DeclarerEinzelspieler
ソロイスト以外のプレイヤーOpponent/DefenderMitspieler
パス*"Pass"/"I pass""Passe"/"Ich passe"
はい(ビッドのとき)*"Yes"/"I have"/"Have it""Habe ich"
スートゲーム*Suit GameFarbspiel
スカートゲーム*Skat GameSpiel mit Skataufnahme
ハンドゲーム*Hand GameHandspiele
シュナイダー宣言Declared SchneiderSchneider angesagt
シュワルツ宣言Declared SchwarzSchwarz angesagt
グランドGrandGrand(フランス語)/Grandspiel/Großspiel
ヌルMisere*Null/Nullspiel
基本点Base ValueGrundwert/Farbwert
達成点Multiple Factor/Multiplier/Game Factor/Playing FactorSpielwert
ウィズ*WithMit
ウィズアウト*Without/AgainstOhne
ウィズとウィズアウトの総称Matador/TopSpitze
ゲーム*GameSpiel/Spiel einfach
シュナイダー - *Schneider
シュワルツ - *Schwarz
ウベルトOpen*ouvert(フランス語)/offen
コンシードConcede?