2002/10/5 赤桐
スペインで17世紀に生まれたトリックテイキングゲームです。オンブル(Hombre)と呼ばれて17-18世紀にはヨーロッパ中で盛んにプレイされましたが、現在ではスペインなどの数カ国でしかプレイされていません。スペインではオンブルという名前は廃れました。
ここで紹介するのは、現在スペインでプレイされているルールの1つです。http://www.pagat.com/によりました。
3人または4人。4人の時にはディーラーはプレイしません。
40枚のスパニッシュパックのカードを使います。ソード、バトン、カップ、コインの4つのスートがあり、各スートはキング、カバロ、ジャック、7、6、5、4、3、2、1(エース=Uno)から成ります。
普通のトランプを使うときには、各スートの10、9、8のカードを除きます。クイーンがカバロの代わりになります。
切札以外のスートでは、カードの強さの順位は次のようになります(強いものから順):
切札は次のようになります。
切札のカードの強さをまとめると次のようになります。
このゲームの得点の単位をポイントと呼ぶことにします。スペイン語ではタントス(tantos)と呼ばれます。得点を計算するために以下の用具を使います。
各プレイヤーは自分の色のトークンを持ちます。普通は青、緑、黄色、赤です。普通つぎのように形の違う30枚を持ちます。
このようなトークンがない場合、各プレイヤーが自分の色のトークンを持つ必要はそれほどありませんので、普通のポーカーチップを使用することができます。
各プレイヤーのトークンを入れておく入れ物です。各プレイヤーの右前に置きます。
プールされたトークンを入れておく入れ物です。
アンティ(パハリトスpajaritos=最初の掛け金)を入れておく入れ物です。
各プレイヤーの負債を記入する紙です。プレイヤーの名前は左のほうに縦に並べて書いておきます。名前の右側にそのプレイヤーの負債額を書いていきます。
ゲームの最初に各プレイヤーはアンティをアンティ入れに置きます。1人あたり5ポイントのトークン1つです。アンティ入れのトークンがなくなった時にも、各プレイヤーは同額のアンティを入れなければなりません。
最初の ディーラーは 任意のやり方 で決めます。ディーラーは ディール ごとに右隣のプレイヤーに移ります。
皿が空で、紙に誰の負債もないときには、ディーラーはアンティ入れから皿に5ポイントのトークンを1つ移します。ディーラーは更に1ポイントのトークンを自分のボールから皿に入れます。(こうして皿には6ポイント入ります)。皿はディーラーの右側に置きます。
皿が空ではないか、紙に誰かの負債があるときには、ディーラーは単に1ポイントのトークンを自分のボールから皿に入れるだけです。
ディーラーは、ディーラーの右隣から反時計回りに、まとめて3枚ずつ3回配ります。各プレイヤーは9枚ずつの手札を持つことになります。
4人でプレイするときには、ディーラー自身にはカードを配りません。ディーラーは普通はプレイに参加しません。
残りの13枚のカードはテーブル中央に裏向きに置きます。これが山札("las cartas qu duermen"/,"el monton")となります。
ディールが終わると、ディーラーの右隣から反時計回りにビッドを行います。
ビッドでは、デクレアラーと、次の3種類のコントラクトの1つを決めていきます。ビッドのときに弱いコントラクトから順に述べると、次のようになります。
デクレアラーは切札を決めることができ、手札と山札の交換もできます。
ビッドが終わってから、山札の一番上のカードが表向きにされ、そのスートが切札になります。デクレアラーは手札と山札の交換ができ、表向きのカードも交換の対象になります。
デクレアラーが切札を決めますが、手札と山札の交換はできません。(他のプレイヤーは交換できます。)
ビッドの時には席による優先順位があります。ディーラーの右隣が最も優先順位が高く、反時計回りの順に下がっていきます。優先順位の低いプレイヤーは優先順位の高いプレイヤーより強いコントラクトしかビッドできませんが、優先順位の高いプレイヤーは、低いプレイヤーと同じコントラクトをビッドできます。
ビッドはディーラーの右隣から反時計回りに順番に1人ずつ行います。4人ゲームの場合にはディーラーはビッドにも参加しません。
ビッドはパス(Paso)、プレイ(Juego)、プレイ・モア(Juego mas)の3種類があります。パスはデクレアラーにはならないという宣言です。1度パスをするともうビッドには参加できませんが、パスをしない限り何度でもビッドできます。
最初にパス以外のビッドをするプレイヤーは、プレイを宣言します。プレイというのは、エントラダかそれ以上の強さのコントラクトでデクレアラーになるという宣言です。
パスをしていないプレイヤーはそれに対してプレイ・モアの宣言をすることができ、さらにそれに対してプレイ・モアの宣言というように行っていけます。プレイ・モアを宣言したくなければパスをします。
優先順位の低いプレイヤーがプレイ・モアの宣言をする場合には、その前の宣言で必要とされるコントラクトよりも強いコントラクトをプレイするという宣言になります。例えばディーラーの右隣のプレイヤーがプレイを宣言して、その右隣のプレイヤーがプレイ・モアを宣言するとブエルタ以上のコントラクトの宣言になります。
優先順位の高いプレイヤーがプレイ・モアの宣言をする場合には、その直前の宣言と同じコントラクトをプレイするという宣言になります。上記の例で、3人目のプレイヤーがパスをした後、ディーラーの右隣のプレイヤーがプレイ・モアを宣言すると、やはりブエルタ以上のコントラクトの宣言となります。
1人以外のすべてのプレイヤーがパスをしたとき、最後にビッドしたプレイヤーがデクレアラーになります。デクレアラーはコントラクトの種類と切札を宣言します(ブエルタの場合には切札を宣言する代わりに、山札の一番上を表向きにします)。
3人ゲームの場合、全員がパスをしたときには、エスパーダ(ソードの1=スペードA)を持っているプレイヤーがデクレアラーになり、どのコントラクトでもプレイします。これを「エスパーダ・フォルサダ(Espada forzada)」と呼びます。エスパーダを誰も持っていない(山札の中にある)場合、このディールは流れとなり、次のディーラーが新しくディールをします。
4人ゲームの場合も、エスパーダを持っているプレイヤーがいるときには、そのプレイヤーがデクレアラーになります。誰も持っていないときにはディーラーが山札から10枚を取り1枚を捨てて切札を宣言し、デクレアラーになります。これをペネトロ(penetro)と呼びます。
エントラダまたはブエルタのコントラクトの時には、コントラクトと切札が決まった後、デクレアラーは手札から何枚でも裏向きに捨てて、同じ枚数のカードを山札の上のほうから取ります。ブエルタの場合には、切札指定のため表向きになったカードから取っていきます。捨てた枚数は宣言しなくてはなりません。1枚も交換しなくてもかまいません。
次に、デクレアラー以外の2人のプレイヤー(オポーネントと呼ぶことにします)は、どちらが第一オポーネントになるかを決めます。第一オポーネントというのは、デクレアラーのカードの交換のあと最初にカードを交換するプレイヤーのことですが、普通はよりたくさんのトリックを取る可能性のあるオポーネントがなるようにします。
まず、デクレアラーの右隣のオポーネントが宣言を行い、交互に次の1つを宣言していきます。
第一オポーネントは、山札に残っている枚数までのカードを裏向きに捨て札して、山札と交換することができます。
その後もし山札が残っていたら、もう1人のオポーネント(第二オポーネント)も同様に手札と山札を交換することができます。
捨て札されたカードはその後誰も見ることができません。
4人ゲームの場合で、全員がパスをしてエスパーダを誰も持っていなかったときには、ディーラーが「私が入ります(Yo penetro)」と宣言してデクレアラーにならなければなりません。ディーラーは山札の上から10枚か、下から10枚を取って手札にします(カードを見ることはできません)。
ディーラーは手札を見て降伏することもできます(後述)が、そうしないときには、切札を宣言して、1枚を捨て札します。
つぎに他のプレイヤーは、誰がプレイを降りるかを決めます。そのためにディーラーの右隣から反時計回りに次のうち1つを宣言していきます。
この宣言は誰かが「降ります」を宣言するまで続きます。「降ります」の宣言があれば、全員が宣言していなくても、そのプレイヤーが降りることになって、宣言は終了します。
このあと通常どおり第一オポーネントを決めます。オポーネントは残った3枚の山札との交換をすることができます。
プレイは反時計回りに行われ、通常のトリックテイキングゲームのルールに従います。
最初の リード はディーラーの右隣の参加しているプレイヤーが行います。
プレイヤーはリードされたスートのカードが手札にあれば、そのスートのカードを出さなければなりませんが、なければどのカードを出してもかまいません。
ただし、切札がリードされたとき、エストゥーチェの切札(エスパーダ、マラ、バスト)しかない場合には、切札を出す必要はありません。この場合の例外として、持っているエストゥーチェよりつよいエストゥーチェをリードされた場合には、出さなければなりません。(リードされた場合だけです。途中で出てきても関係ありません)。
プレイヤーは今までにプレイされたカードを見ることができます。
デクレアラーの目的は、各オポーネントよりも多くのトリックを取ることです。結果として次の3種類が有ります。
デクレアラーがオポーネントのどちらよりも多くのトリックを取ったときで、デクレアラーの勝ちです。デクレアラーが5トリック取ったときか、デクレアラーが4トリックでオポーネントがそれぞれ3トリック、4トリックのときです。
デクレアラーがオポーネントのうち最もたくさんトリックを取ったプレイヤーと同数のトリックを取ったときです。デクレアラーとオポーネント2人のトリック数が4-4-1や3-3-3のときです。
また、デクレアラーが1トリックしか取らず、オポーネントがそれぞれ4トリックずつ取ったときも、プエスタとなります。
上記以外で、デクレアラーがオポーネントの誰かよりも取ったトリック数が少なかった場合です。
両方のオポーネントが降伏を受け入れた場合には、結果はプエスタになります。
降伏を受け入れないオポーネントがいた場合には、そのオポーネントはデクレアラーの役割を行うことになります。元のデクレアラーはオポーネントになります。
ソロの場合には、降伏はありません。
9トリック全部を取ることをボラと呼びます。デクレアラーは、最初の5トリックを全部勝った場合には、 それで終わりにするか、続けるかを決めなければなりません。続けた場合、ボラが成功するとボーナス点がありますが、失敗すると罰点があります。
得点は次の2種類の方法の両方で行われます。
「プレイ額」という概念が計算の基準になります。
皿と紙の状態がどうなっているかによって、次の3種類のケースがあります。
紙には誰の負債もなく、皿にはアンティとディーラーが入れたトークンしかない(失敗したデクレアラーが入れたトークンは入っていない)場合です。
プレイ額は、皿にあるトークンの額(ポイント数)にプレイヤー1人あたり1ポイントを加えたものです(つまり4人プレイなら4ポイント、3人プレイなら3ポイントを加えます)。
プレイの結果により、得点は次のようになります。
負けたデクレアラーが入れたトークンが皿に入っている場合です。紙には負債があってもなくてもかまいません。
プレイ額は、最初のプエスタと同じように、皿の額にプレイヤー1人あたり1ポイントを加えたものです。
プレイの結果により、得点は次のようになります。
紙には誰かの負債があり、皿には負けたディーラーが入れたトークンは入っていない場合です。この場合には、前回のプレイが成功しているので、皿にはディーラーの入れた1ポイントしか入っていないはずです。
プレイ額は、紙の最も大きい負債の額に、皿に入っているトークンの額(1ポイント)を加えたものです。
プレイの結果により、得点は次のようになります。
次の述べるような場合には、成功の場合にはデクレアラーが他の各プレイヤー(プレイに参加していない人も含む)から決められた額をもらいます。失敗の場合には、デクレアラーが他の各プレイヤー(プレイに参加していない人も含む)に支払います。
ブエルタやソロのコントラクトやペネトロの時には、成功したときにはボーナスをデクレアラーが受け取り、プエスタや失敗の場合にはデクレアラーが支払います。ブエルタは1ポイント、ソロは2ポイント、ペネトロは1ポイントです。
デクレアラーがエストゥーチェ(エスパーダ、マラ、バスタ)を全部持っていて成功した場合には、デクレアラーは1ポイントずつもらいます。プエスタや失敗の場合には支払いはありません。
デクレアラーが最初の5トリックを勝って、それでプレイを終えた場合には、1ポイントずつもらいます。これをプリメラス(Primeras)と呼びます。
ボラ、つまりデクレアラーが9トリック全部を取ると、8ポイントずつもらえます。最初の5トリックを取ったときにプレイを止めないで続けて、9トリック全部を取るのに失敗した場合には、8ポイントずつ支払わなければなりません。ただし、この場合でもプエスタ法や他のボーナスによる得点はプレイに成功したものとして扱われます。
なお、デクレアラーが降伏を申し出た場合には、このプレイヤーはプエスタとしてボーナスの支払いをしなければなりません。デクレアラーが代わった場合には、新しいデクレアラーはボーナスの収支はありません。
ディールは任意の回数続けられます。
ゲームが終わったときに皿やアンティ入れに残っているトークンはプレイヤーに均等に分けます。紙に残っている負債は、次に同じメンバーでゲームをするときまで残しておきます。次に同じメンバーでゲームを行う見通しの立たない場合には、負債のあるプレイヤーは負債額をトークンで拠出し、それをプレイヤーが均等に分けます。
スペインでは以上のルールのほかに以下のようなエチケットがあるようです。Joan C de Cispertさんによります。