1994/5/10 赤桐裕二
ハンガリーの代表的なカードゲームです。トリックテイキングゲームですが、ハンガリアンタロックと同じように最後のトリックを一番弱い切札で勝つとウルティといって得点になります。
このゲームのもう1つの特長は、ビッドを行うごとに手札の交換をすることです。これにより、手がどんどん良くなっていく可能性があります。
ここで紹介するルールはDavid Parlett氏の"A Dictionary of Card Games"という本によりますが、彼はJohn McLeod氏の"The Journal of the International Playing-Card Society" (May,1976)に基づいて書いているそうです。
なお、本稿は翻訳ではなく、赤桐が書きおろしたものです。
3人。
各スートの2〜6を除いた32枚のカード。強さはA(最強)、10、K、Q、J、9、8、7の順。ただし、ノートランプゲームの時には、A、K、Q、J、10、9、8、7の順になります。
Aと10のカードはトリックで取ると1枚10点です。また、最後のトリックを取ると10点になります。
さらに、マリッジでも点数がもらえます。マリッジとは同じスートのKとQの両方を手札に持っていることを宣言する事です。切札のマリッジは40点、それ以外のマリッジは20点です。
これらの点数はコントラクトを達成するかどうかに関わってきます。ただし、ノートランプのゲームでは無関係です。
最初のディーラーは任意の方法で決めます。ディーラーは1ディールごとに左隣に移ります。
ディーラーは最初に各プレイヤーに5枚のカードを1まとめにして配ります。配る順序はディーラーの左から時計回りです。その後、2枚のカードを裏向けにテーブルの上に置きます。これがタロンとなります。最後に、再び各プレイヤーに5枚のカードを配ります。
各ディールにおいて、最も高いビッドを行ったプレイヤーがソロイスト(デクレアラー)になり、他の2人と戦います。
ソロイスト以外の2人(ディフェンダー)は協力します。
以下のコントラクトをビッドする事ができます。
ソロイストは前述した数において、他の2人の点数の合計よりも多い点数を得ることを目的とします。
切札にするスートを宣言してビッドを行います。
得点は1ゲームポイントですが、ハートが切札の場合は2ゲームポイントとなります。
100点以上の点数を得る事を目的とします。当然マリッジが必要ですが、マリッジは1つしか宣言できません。
ビッドは切札にするスートを言ったあと、「20のハンドレッド」または「40のハンドレッド」といって宣言します。20のハンドレッドは切札以外のスートのマリッジを宣言してプレイすることを意味し、40のハンドレッドは切札のマリッジを宣言することを意味します。
得点は4ゲームポイントですが、ハートが切札の場合は8ゲームポイントとなります。
ノートランプでプレイして、全トリックに負ける事を目的とします。「シングルベッテル」、「ダブルベッテル」、「ベッテルウベルト」の3種類があります。
シングルベッテルは5ゲームポイント、ダブルベッテルは10ゲームポイントです。この2つはゲームポイント以外の違いはありません。
ベッテルウベルトでは、最初のトリックがプレイされたあと、ソロイストは全部の手札を見えるようにテーブルに並べます。ゲームポイントは20です。
ノートランプでプレイして、全トリックに勝つことを目的とします。
ベッテルの場合と同じように、「シングルデュルヒ」(6ゲームポイント)、「ダブルデュルヒ」(12ゲームポイント)、「デュルヒウベルト」(24ゲームポイント)の3種類があります。
切札ゲームでプレイして、全トリックに勝つことを目的とします。
シングルデュルヒと同様に、「シングルデュルヒ」(6ゲームポイント)、「ダブルデュルヒ」(12ゲームポイント)、「デュルヒウベルト」(24ゲームポイント)の3種類があります。(ハートが切札でもゲームポイントは変わりません。)
このコントラクトは、ハンドレッドと一緒に宣言するか、あるいは、「ウルティ」(後述)と一緒に宣言する必要があります(あるいは両方)。
ハンドレッドと一緒に宣言するというのは、ハンドレッドのコントラクトと同じように1つのマリッジを後に宣言する必要があるということです。ハンドレッドのコントラクトと同じゲームポイントが加わります。
ウルティは独立したコントラクトではなく、切札のあるコントラクト(シンプル、ハンドレッドおよびトランプデュルヒ)と共に行う宣言です。
最後のトリックに切札の7を出して、勝つことを宣言します。
ゲームポイントは4ですが、ハートが切札の場合には8になります。この点数は本来のコントラクトのゲームポイントとは別に計算します。
ビッドはディーラーの左隣のプレイヤーから行います。このプレイヤーはパスをすることはできません。彼はまず切札とすべきスートの指定を行った後、タロンの2枚のカードを手札に加え、そのあとビッドを行います。ビッドするコントラクトはノートランプのものでもかまいませんが、切札のあるコントラクトの時には必ず先に宣言したスートを切札にします。その後、手札から2枚のカードを裏向けに捨て札します。これが新しいタロンとなります。
それが終わると、時計回りにビッドが進みます。以降のプレイヤーはパスをしてもかまいませんし、最初に切札の指定をする必要もありませんが、ビッドする場合には最初のプレイヤーと同じように、タロンを手札に加えたあと、コントラクトをビッドし、その後捨て札をします。タロンを取った後にパスをすることはできません。
パスをしたプレイヤーも後にビッドすることはできます。
2人続けてパスするとビッドは終了します。最後にビッドしたプレイヤーがソロイストになります。
ビッドするためには以前のビッドよりもゲームポイントの高いコントラクトをビッドしなければなりません(ウルティの点数も計算に入れる)。
ただし例外として、同じポイントなのですが、シンプル+ウルティのビッドのあと、シングルベッテルをビッドすることは可能です。また、ハートのシンプル+ウルティのあと、他の10ゲームポイントのコントラクトをビッドすることも可能です。
ウルティの付かないシンプルのビッドでコントラクトが成立したときには、ソロイストは最初のトリックをリードする前にコンシードすることができます。
コンシードとはプレイしないでコントラクトの失敗を認める事です。コンシードすることで、後述する「ダブル」や敵方のボーナス点を防ぐことができます。
ディフェンダー側のプレイヤー(ソロイスト以外の2人)のどちらでも、最初のトリックのプレイを行うと同時に、ダブルを宣言することができます。ダブルはコントラクトのウルティ以外の部分にかける事もできますし、ウルティだけにかける事もできます。両方にかける事もできます。
ダブルがかけられると、それに対するゲームポイントが倍になります。
ダブルに対して、ソロイストは、第2トリックのプレイを行う時に、リダブルを宣言する事ができます。リダブルでゲームポイントは4倍になります。ウルティとそれ以外のコントラクトの両方にダブルがかけられていた場合には、どちらか選択してリダブルする事も、両方リダブルする事もできます。
同様に、ディフェンダー側はリダブルに対して、第3トリックをプレイする時に、サーダブルをかけることができます。サーダブルはゲームポイントを8倍にします。
プレイは時計回りに行います。トリックテイキングゲームです。
ソロイストが最初のリードを行い、以降は各トリックの勝者がリードを行います。
リードされると他のプレイヤーは、リードされたスートがあれば必ずそのスートのカードを出さなければなりません。リードされたスートがない場合に切札があれば、必ず切札を出さなければなりません。どちらの場合でも、可能ならば、場に出ている最強のカードより強いカードを出さなければなりません。(切札以外のリードで、2番目のプレイヤーが切札を出している場合で、3番目のプレイヤーがリードされたスートを持っている場合には、リードされたカードより強いカードを出す必要はありません)。リードされたカードも切札もなければ、何を出してもかまいません。
ノートランプのコントラクトの場合にも、切札を出す義務以外は同じです。つまり、リードされたスートがあれば必ずそのスートのカードを出さなければなりませんし、可能ならば、場に出ている最強のカードより強いカードを出さなければなりません。
ウルティのコントラクトの時には、ソロイストは最後のトリックまで切札の7をプレイしてはなりません。ただし、上記のフォローの義務に従って出さねばならない時を除きます。
マリッジがある場合には、各プレイヤーは第1トリックのプレイの時にマリッジの札を見せて宣言します(マリッジのカードはすぐに手札に戻します)。ディフェンダー側は2人の点数を合計するので、マリッジの点数も合計されます。
ハンドレッドのコントラクトをしたソロイストはコントラクトしたマリッジしか宣言できません。
得点は紙に記入し、累計していきます。(チップを使うやりかたもありますが、これはあとで述べます)
コントラクトが成功した場合はソロイストの欄にコントラクトのゲームポイントを記入し、失敗の場合にはソロイストの欄にマイナスのゲームポイントを記入します。この点数はダブルなどによって2倍等になります。
ウルティの点数はコントラクトの成功失敗とは無関係に、ウルティに成功したかどうかで、同様にプラスまたはマイナスのゲームポイントを記入します。この点数もダブルなどで2倍等になります。
なお、ウルティのコントラクトがあった時に、ソロイストが最後のトリックに切札の7を出して取られてしまった場合には、ウルティ失敗のマイナスのゲームポイントに加えて、さらに4ゲームポイントのマイナスとなります(ハートが切札の場合には8ゲームポイントです)。このゲームポイントはダブルなどがあった場合にも2倍等にはなりません。
上記の得点以外に、次のボーナス(および罰点)があります。
最後のトリックに切札の7が出た時に発生するボーナスまたは罰点です。
点数は2ゲームポイントですが、ハートが切札の時には4ゲームポイントです。
ウルティのコントラクトがない場合に、ソロイストが切札の7を出して勝った場合には、ソロイストのがゲームポイントを得ます。(ウルティのコントラクトがあった場合にはもちろんコントラクトのウルティのゲームポイントを得ます。)
ウルティのコントラクトがない場合に、ソロイストが切札の7を出して負けた場合には、ソロイストにマイナスのゲームポイントがつきます。
ディフェンダー側が切札の7を出して、そのカードで勝った場合には、ディフェンダーの2人それぞれがこのゲームポイントを得ます。
ディフェンダー側が切札の7を出して、そのカードでが負けた場合には、ディフェンダーの2人はそれぞれマイナスのゲームポイントがつきます。ディフェンダー側の1人が切札の7を出して、もう1人のディフェンダーがそれを取ってしまった場合も、この失敗となります。
ソロイストがハンドレッドをビッドしないで100点以上取った場合には、1ゲームポイントを得ます。ただし、ハートが切札の場合には2ゲームポイントです。
ディフェンダー側が合計して100点以上取った場合には、ディフェンダーの2人がそれぞれ1ゲームポイントを得ます。ハートが切札の場合には2ゲームポイントです。
ソロイストがビッドしないで全トリックを取った場合には、3ゲームポイントのボーナスを得ます。
ゲームはプレイヤー間の合意によって決められた回数、得点または時間になるまで行われます。
ゲームが終了したら、各プレイヤーは他の2人のプレイヤーと、それぞれとの得点の差だけの額を精算します。
例えば、プレイヤーをA、B、Cとし、それぞれの得点を a, b, c とすると、Aが得られる(または、支払う)点数は:
Aの精算点数 = (a - b) + (a - c) となります
なお、各人の精算点数は自分の得点を3倍したものから、3人の得点の合計を引いたものでもあります。すなわち:
Aの精算点数 = (a - b) + (a - c) = 2a - b - c = 3a - (a + b + c)
これは、自分の得点から3人の平均点を引き、それを3倍したものでもあります。つまり:
Aの精算点数 = 3a - (a + b + c) = (a - (a + b + c)/3) x 3
紙に点数を記入する代りに、ゲームチップ(ポーカーチップ)などにより、各ディールごとに精算することもできます。
例えば、ソロイストが1ゲームポイントを得る場合には、ディフェンダーの2人は1チップずつソロイストに払います。
ソロイストの1ゲームポイントのマイナス点の場合には、ソロイストはディフェンダーの2人に1チップずつ支払います。
ディフェンダーの2人が1ゲームポイントずつ得点した場合にも、ソロイストはディフェンダーの2人に1チップずつ支払います。
ディフェンダーの2人が1ゲームポイントずつマイナス点の場合には、ディフェンダーの2人は1チップずつソロイストに払います。
ゲームポイント | コントラクト |
1 | シンプル |
2 | シンプル(ハート) |
4 | ハンドレッド |
5 | シンプル+ウルティ |
5 | シングルベッテル |
6 | シングルデュルヒ(NT) |
8 | ハンドレッド(ハート) |
8 | ハンドレッド+ウルティ |
10 | シンプル+ウルティ(ハート) |
10 | ダブルベッテル |
10 | シングルデュルヒ+ハンドレッド |
10 | シングルデュルヒ+ウルティ |
12 | ダブルデュルヒ(NT) |
14 | シングルデュルヒ+ハンドレッド(ハート) |
14 | シングルデュルヒ+ウルティ(ハート) |
14 | シングルデュルヒ+ハンドレッド+ウルティ |
16 | ダブルデュルヒ+ハンドレッド |
16 | ダブルデュルヒ+ウルティ |
16 | ハンドレッド+ウルティ(ハート) |
20 | ベッテルウベルト |
20 | ダブルデュルヒ+ハンドレッド+ウルティ |
20 | ダブルデュルヒ+ハンドレッド(ハート) |
20 | ダブルデュルヒ+ウルティ(ハート) |
22 | シングルデュルヒ+ハンドレッド+ウルティ(ハート) |
24 | デュルヒウベルト(NT) |
28 | デュルヒウベルト+ハンドレッド |
28 | デュルヒウベルト+ウルティ |
28 | ダブルデュルヒ+ハンドレッド+ウルティ(ハート) |
32 | デュルヒウベルト+ハンドレッド+ウルティ |
32 | デュルヒウベルト+ハンドレッド(ハート) |
32 | デュルヒウベルト+ハンドレッド(ハート) |
40 | デュルヒウベルト+ハンドレッド+ウルティ(ハート) |