2025/6/7改訂 赤桐
ハンガリーでポピュラーなカードゲームです。トリックテイキングゲームですが、ハンガリアンタロックと同じように最後のトリックを一番弱い切札で勝つとウルティといって得点になります。
このゲームのもう1つの特長は、ビッドを行うごとに手札の交換をすることです。これにより、手がどんどん良くなっていく可能性があります。
3人または4人。4人のときはディーラーはプレイに加わらない。
各スートの2〜6を除いた32枚のカード。強さはA(最強)、10、K、Q、J、9、8、7の順。ただし、切札がないときには、A、K、Q、J、10、9、8、7の順になります。
正式にはハンガリーのパックを使います。どんぐり(Makk)、葉(Zöld)、ハート(Piros)、鈴(Tök)のスートがあり、絵札はキング(Király)、オーバー(Felsö)、ウンター(Alsó)になります。
Aと10のカードはトリックで取ると1枚10点です。 また、最後のトリックを取ると10点になります。 これらの合計は90点になります。
同じスートのKとQの両方を手札に持っていることを宣言すればマリッジ(bélák)として点数がもらえます。 切札のマリッジは40点、それ以外のマリッジは20点です。 (マリッジは、第1トリックのプレイの時にマリッジのカードを見せて宣言します。)
これらの点数はコントラクトを達成するかどうかに関わってきます。ただし、ノートランプのゲームでは無関係です。
最初のディーラーはドローして最も低いカードを引いたプレイヤーがなります(A、K、Q、J、10、9、8、7の順)。 ディーラーは1ディールごとに右隣に移ります。
ディールは反時計回りに行います。 ディーラーは最初に右隣のプレイヤーに7枚のカードを配り、そのあと次のプレイヤーから5枚ずつまとめてカードを配り、全部のカードを配りきってしまいます。 ディーラーの右隣のプレイヤーが12枚の手札を持ち、他のプレイヤーは10枚の手札を持つことになります。
各ディールにおいて、最も高いビッドを行ったプレイヤーがソロイスト(デクレアラー)になり、他の2人と戦います。
ソロイスト以外の2人(ディフェンダー)は協力します。
プレイで実現しようとしている約束をコントラクトと呼んでおきます。 ビッドは次のコントラクトを宣言することによって行います。
ビッドのときに次の4種類のコントラクトのうちどれかを宣言しなければなりません。 基本的に2つ以上を組み合わせてビッドすることはできませんが、切札ありのデュルヒマルシュだけは40-100または20-100と共にビッドすることができます。
[シンプル(Játék/Parti/Pasz)]
ソロイストは前述した点数において、他の2人の点数の合計よりも多い点数を得ることを目的とします。捨て札(後述)にあるカードの点数は、他の2人のものとなります。
なお、1トリックも取れなかった場合にはマリッジの点数が認められません。 (点数の含まれないトリックでも取っていれば、マリッジの点数が認められます。) ディフェンダー側も2人で1トリックも取らなかったときはマリッジの点数が認められません。
得点は1ゲーム点ですが、ハートが切札の場合は2ゲーム点となります。
[40-100]
100点以上の点数を得る事を目的とします。 切札のマリッジが必要です。マリッジはこの1つしか宣言できません。
得点は4ゲーム点ですが、ハートが切札の場合は8ゲーム点となります。
[20-100]
100点以上の点数を得る事を目的とします。切札以外のマリッジが必要です。 切札以外のマリッジを1つしか宣言できません。
得点は8ゲーム点ですが、ハートが切札の場合は16ゲーム点となります。
[ベトリ(betli)]
ノートランプでプレイして、全トリックに負ける事を目的とします。次の種類があります。
[デュルヒマルシュ(durchmars)]
ノートランプまたは切札ありでプレイして、全トリックに勝つことを目的とします。
ノートランプのデュルヒマルシュには次の種類があります。
切札ありのデュルヒマルシュには次の種類があります。
切札のあるデュルヒマルシュだけは40-100または20-100と共にビッドすることができます。
ビッドのときは、種類をはっきり言う必要はないので、「6ゲーム点のデュルヒマルシュ」、「12ゲーム点のデュルヒマルシュ」、「24ゲーム点のデュルヒマルシュ」などと宣言することができます。
[ウルティ]
切札のあるコントラクト(シンプル、40-100、20-100、切札ありのデュルヒマルシュ)と共にビッドできます。
最後のトリックに切札の7を出して、勝つことを宣言します。
ゲーム点は4ですが、ハートが切札の場合には8になります。
切札7を最後のトリックより前に出してしまったり、切札7を最後のトリックに出して負けてしまった場合には、このコントラクトは失敗になりますが、その場合には上記のゲーム点に加えて、4ゲーム点(ハートが切札のときは8ゲーム点)の罰点がつきます。ただし、この罰点は「コントラ」(後述)によって多くなることはありません。
切札7を持っていなくても、ウルティを宣言することは可能です。もちろん必ず失敗となります。
[エース4枚]
切札のあるコントラクトのシンプル、40-100、20-100)と共にビッドできます。 デュルヒマルシュといっしょにビッドすることはできません。
プレイで4枚のエースを取ることを宣言します。
ゲーム点は4ですが、ハートが切札の場合には8になります。
ビッドはディーラーの右隣のプレイヤーから行います。 このプレイヤーはパスをすることはできません。 まず2枚のカードを裏向きに捨て札したあと、そのあとビッドを行います。
それが終わると、反時計回りにビッドが進みます。 以降のプレイヤーはパスをしてもかまいませんが、ビッドする場合には以前のプレイヤーの捨て札2枚を手札に加えたあと、コントラクトをビッドし、その後手札から2枚を裏向きに捨て札します。 タロンを取った後にパスをすることはできません。
パスをしたプレイヤーも後にビッドすることはできます。
3人続けてパスするとビッドは終了します(つまり、ビッドの後2人パスがあった場合に、ビッドをやり直すこともできます)。 最後にビッドしたプレイヤーがソロイストになります。
ビッドするためにはコントラクトを1つまたは2つ以上組み合わせて、次の表で今までのビッドより順位が高いものをビッドしなければなりません。 同順位のコントラクトをビッドすることはできません。
順位は、コントラクトの合計点数が高いもののほうが高くなります。 同じ合計点数なら、コントラクトの組み合わせの数が少ないもののほうが順位が高くなります。
また、通常は同じ合計点数で組み合わせの数も同じなら、エース4枚を含む組み合わせ < ウルティを含む組み合わせ < ウルティやエース4枚を含まない組み合わせ、の順で順位が高くなります。 ただし、合計点数16で組み合わせ数2の場合は、すべて同じ順位になっています。
ゲーム点に関連しない情報はビッドの時には宣言しません。(ハート以外を切札にするときの切札のスートの名前や、同じゲーム点のデュルヒマルシュの種類です。)
順位 | ゲーム点 | コントラクト | 切札のスート |
---|---|---|---|
1 | 1 | シンプル | ハート以外 |
2 | 2 | シンプル(ハート) | ハート |
3 | 4 | 40-100 | ハート以外 |
4 | 5 (1 + 4) | シンプル + エース4枚 | ハート以外 |
5 | 5 (1 + 4) | シンプル + ウルティ | ハート以外 |
6 | 5 | ベトリ | ハート以外 |
7 | 6 | デュルヒマルシュ | ハート以外 |
6 | ノートランプ・デュルヒマルシュ | ノートランプ | |
8 | 8 (4 + 4) | 40-100 + エース4枚 | ハート以外 |
9 | 8 (4 + 4) | 40-100 + ウルティ | ハート以外 |
10 | 8 | 40-100(ハート) | ハート |
8 | 20-100 | ハート以外 | |
11 | 9 (1 + 4 + 4) | シンプル + ウルティ + エース4枚 | ハート以外 |
12 | 10 (2 + 8) | シンプル + エース4枚(ハート) | ハート |
13 | 10 (2 + 8) | シンプル + ウルティ (ハート) | ハート |
14 | 10 (4 + 6) | 40-100 + デュルヒマルシュ | ハート以外 |
10 (4 + 6) | デュルヒマルシュ + ウルティ | ハート以外 | |
15 | 10 | レ・ベトリ | ノートランプ |
16 | 12 (4 + 4 + 4) | 40-100 + ウルティ + エース4枚 | ハート以外 |
17 | 12 (8 + 4) | 20-100 + エース4枚 | ハート以外 |
18 | 12 (8 + 4) | 20-100 + ウルティ | ハート以外 |
19 | 12 | ハート・デュルヒマルシュ | ハート |
12 | ノートランプ・デュルヒマルシュ | ノートランプ | |
12 | オープン・デュルヒマルシュ | ハート以外 | |
20 | 14 (4 + 6 + 4) | 40-100 + デュルヒマルシュ + ウルティ | ハート以外 |
21 | 14 (8 + 6) | 20-100 + デュルヒマルシュ | ハート以外 |
22 | 16 (8 + 4 + 4) | 20-100 + ウルティ + エース4枚 | ハート以外 |
23 | 16 (8 + 8) | 40-100 + エース4枚 (ハート) | ハート |
16 (8 + 8) | 40-100 + ウルティ (ハート) | ハート | |
16 (4 + 12) | 40-100 + オープン・デュルヒマルシュ | ハート以外 | |
16 (12 + 4) | オープン・デュルヒマルシュ + ウルティ | ハート以外 | |
24 | 16 | 20-100 (ハート) | ハート |
25 | 18 (2 + 8 + 8) | シンプル + ウルティ + エース4枚(ハート) | ハート |
26 | 18 (8 + 6 + 4) | 20-100 + デュルヒマルシュ + ウルティ | ハート以外 |
27 | 20 (4 + 12 + 4) | 40-100 + オープン・デュルヒマルシュ + ウルティ | ハート以外 |
28 | 20 (8 + 12) | 40-100 + ハート・デュルヒマルシュ (ハート) | ハート |
20 (12 + 8) | ハート・デュルヒマルシュ + ウルティ (ハート) | ハート | |
20 (8 + 12) | 20-100 + オープン・デュルヒマルシュ | ハート以外 | |
29 | 20 | オープン・ベトリ | ノートランプ |
30 | 24 (8 + 12 + 4) | 20-100 + オープン・デュルヒマルシュ + ウルティ | ハート以外 |
24 (8 + 8 + 8) | 40-100 + ウルティ + エース4枚(ハート) | ハート | |
31 | 24 (16 + 8) | 20-100 + エース4枚(ハート) | ハート |
32 | 24 (16 + 8) | 20-100 + ウルティ(ハート) | ハート |
33 | 24 | ハート・オープン・デュルヒマルシュ | ハート |
24 | ノートランプ・オープン・デュルヒマルシュ | ノートランプ | |
34 | 28 (8 + 12 + 8) | 40-100 + ハート・デュルヒマルシュ + ウルティ (ハート) | ハート |
35 | 28 (16 + 12) | 20-100 + ハート・デュルヒマルシュ (ハート) | ハート |
36 | 32 (16 + 8 + 8) | 20-100 + ウルティ + エース4枚(ハート) | ハート |
37 | 32 (4 + 24) | 40-100 + ハート・オープン・デュルヒマルシュ | ハート |
32 (24 + 8) | ハート・オープン・デュルヒマルシュ + ウルティ | ハート | |
38 | 36 (16 + 12 + 8) | 20-100 + ハート・デュルヒマルシュ + ウルティ (ハート) | ハート |
39 | 40 (8 + 24 + 8) | 40-100 + ハート・オープン・デュルヒマルシュ + ウルティ (ハート) | ハート |
40 | 40 (16 + 24) | 20-100 + ハート・オープン・デュルヒマルシュ (ハート) | ハート |
41 | 48 (16 + 24 + 8) | 20-100 + ハート・オープン・デュルヒマルシュ + ウルティ (ハート) | ハート |
ソロイストは、最初のプレイを行う前に、降伏することができます。
降伏があると、ソロイストの行ったすべてのコントラクトが失敗したことになり、その分のゲーム点を支払わなければなりません。 ただし、次に述べるコントラによって失敗の点数が倍増することはありません。
ソロイストがプレイの最初のカードを出した後、第2トリックのプレイが始まる前に、ディフェンダー側のプレイヤー(ソロイスト以外の2人)はどちらでも、コントラ(kontra)を宣言することができます。 コントラはコントラクトの全部にかけることもできますが、一部のコントラクトにかけることもできます。 例えば、2-100+デュルヒマルシュ+ウルティのコントラクトなら、デュルヒマルシュだけや、デュルヒマルシュ+ウルティにかけることなどもできます。
コントラがかけられると、それに対するゲーム点が倍になります。
切札のあるコントラクトにおいては、ディフェンダーの片方がコントラを宣言すると両方のディフェンダーの関連するすべての点数が2倍になりますが、切札のないコントラクト(ベトリおよびノートランプのデュルヒマルシュ)については、宣言を行ったプレイヤーに関連する点数しか2倍になりません。
コントラに対して、ソロイストは、第2トリックのプレイを行う時に、レコントラ(rekontra)を宣言する事ができます。 ゲーム点は4倍になります。 複数のコントラクトにコントラがかけられていた場合には、一部を選択してレコントラする事も、全部レコントラする事もできます。
ディフェンダー側はレコントラに対して、スブコントラ(szubkontra)をかけることができます。 スブコントラはゲーム点を8倍にします。 そのあと、、モルドコントラ(mordkontra=16倍)ヒルスコントラ(hirskontra=32倍)、フェダクサリ(fedáksári=64倍)、ケレケスビシクリ(Kerekes bicikli=128倍)と続けることもできます。
これらはすべて第2トリックをリードする前に宣言しければなりません。
プレイは反時計回りに行います。 トリックテイキングゲームです。
切札のスートが宣言されていない場合には、まずソロイストがそれを宣言します。その後、ソロイストが最初のリードを行い、以降は各トリックの勝者がリードを行います。
ノートランプのコントラクトの場合にも、切札を出す義務以外は同じです。 つまり、リードされたスートがあれば必ずそのスートのカードを出さなければなりませんし、可能ならば、場に出ている最強のカードより強いカードを出さなければなりません。 (カードの強さの順位が違うことにも注意してください。)
ウルティのコントラクトの時には、ソロイストは最後のトリックまで切札の7をプレイしてはなりません。ただし、上記のフォローの義務に従って出さねばならない時を除きます。
マリッジがある場合には、各プレイヤーは第1トリックのプレイの時にマリッジの札を見せて宣言します(マリッジのカードはすぐに手札に戻します)。 ディフェンダー側は2人の点数を合計するので、マリッジの点数も合計されます。
40-100や20-100のビッドをしたソロイストはビッドしたマリッジしか宣言できません。
ビッドした各コントラクトごとに、成功と失敗を判定します。成功したらプラス点、失敗したらマイナス点となり、それを合計(相殺)します。 例えば、20-100+オープン・デュルヒマルシュをビッドしていて、20-100もオープン・ディルヒマルスも成功したときは、8+12=プラス20ゲーム点となりますが、20-100は成功したがオープン・デュルヒマルシュを失敗した場合は8-12=マイナス4ゲーム点になります。
ただし、ウルティを失敗したときは、ハート以外の切札なら4点、ハートが切札なら8点の追加のマイナス点があります。 この追加失点はコントラなどで増えることはありません。
プラスの場合はソロイストは他の各プレイヤーからそのゲーム点分のチップをもらいます。 マイナスの場合はソロイストは他の各プレイヤーにそのゲーム点分のチップを払います。
紙に書く場合は、プラスの場合は、ソロイストには計算したゲーム点の2倍を記入し、他のプレイヤーには計算した点数をマイナス点として記入します。 マイナスの場合は、その逆となります。
上記の得点以外に、次の得失点があります。
[ビッドなしのウルティ]
ウルティのコントラクトがない場合に、最後のトリックにソロイストが切札の7を出して勝った場合には、ソロイストの2ゲーム点(ハートが切札のときは4ゲーム点)のプラス点となります。 負けた場合には、マイナス点となります。
最後のトリックにディフェンダーの1人が切札の7を出して勝った時は、ソロイストのマイナス点となります。 負けた場合には、ソロイストのプラス点となります。 ディフェンダーの1人が切札の7を出して、もう1人のディフェンダーがそれを取ってしまった場合も、ソロイストのプラス点になります。
[ビッドなしのエース4枚]
ソロイストがコントラクトなしでエース4枚を取った時は、ソロイストの2点のゲーム点(ハートが切札のときは4ゲーム点)になります。 ディフェンダー側がエース4枚を取った時は、ソロイストのマイナス点になります。
[ビッドなしの100]
シンプルのコントラクトのソロイストが100点以上取った場合には、シンプルのゲーム点が2倍になります。 シンプルのコントラクトで、ディフェンダー側が合計して100点以上取った場合にも、やはりシンプルのゲーム点が2倍になります。
このゲーム点はコントラなどによって2倍等になります。
ゲームはプレイヤー間の合意によって決められた回数、得点または時間になるまで行われます。
既に述べたように、今回は主にハンガリーのウルティ協会のルールに基づいています(英語への機械翻訳によります)。 この協会がどれほど影響力があるは分かりませんが、ルールはよくまとまっているように感じました。
このルールと英語版Wikipediaとのルールの違いは次のようになります。
このルールとPagat.comのルールの違いは主に次のようになります。
Pagat.comのルールは1998年ごろに書かれたものなので、すこし古いように思います。
なお、私の前回のルールは主にPagat.comに基づいていましたが、各コントラクトを完全に別々に得点するというようにしていないのが違っていました。例えば、シンプルで成功してデュルヒマルシュで失敗したときは、シンプルも失敗だとみなしていましたが、間違いでした(ウルティだけは独立していると書いていましたが)。
「マリッジ」という用語は、他のゲーム(たとえばベジーク)で同種のボーナス得点として使われている言葉を、ゲーム用語として使用しています。 ハンガリー語のbélákという用語には、結婚というような意味はありません。
2025年6月7日、なかよし村でプレイしました。
ハンガリーのカードがあったのでそれでプレイしました。 大判ですが良いカードで、すこし分かりにくかったですが、とても楽しめました。 ただ、ゲームを純粋に楽しむためには、普通のトランプのほうが良かったかもしれません。
ビッドにはブラフの要素をいれることもでき、とても面白いです。 やはり、世界のカードゲームの中でベストゲームの1つだと思います。