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スカルト(Scarto)

2009/4/4 赤桐

 イタリアのタロットカードのゲームです。ピエモンテ州でプレイされています。ピネロロ市ではスカルトと呼ばれますが、トリノ市では単にタロッ キ(タロット)と呼ばれます。

 ほかのタロットのゲームと同じように、トリックテイキングゲームです。

 ルールはMichael Dummett氏の"Twelve Tarot Games"という本を基にしました。


プレイヤー

 3人。

カード

 カードの種類については、別項のタロットのカードについてをごらんください。通常の78枚の カードをすべて使用します。

 各スートのカードを強い順に列挙すると、スペードとクラブ(あるいはソードとバトン)では:

  キング,クイーンカバロジャック10987654321です。

  CK CQ CC CJ C10 C9 C8 C7 C6 C5 C4 C3 C2 C1

 ハートとダイヤモンド(あるいはカップとコイン)では:

  キングクイーンカバロジャック12345678910です。

  DK DQ DC DJ D1 D2 D3 D4 D5 D6 D7 D8 D9 D10

 切札では、20が最も強く「天使(Angelo)」と呼ばれます。以下は、2119181716151413121110987654321と数字が小さくなるにつれ弱くな ります。切札は「バガット(Bagatto)」と呼ばれます。

 

T20 T21 T16 T15 T14 T13 T12 T11 T10 T09 T08 T07 T06 T05 T04 T03 T02 T01

 なお、切札20に天使の絵の描かれていないタロットでは、このカードを最強とするのは意味がないので、普通に切札21を最も強い切札にして、これを天使と呼べばよいでしょう。

 愚者のカードのことをイタリアではマット(Matto 狂人)と呼びます。

ディール

 最初のディー ラー任意の方法で決めます。次回からは反時計回りの順に交代します。

 ディーラーはカードをシャッフルしで、左隣のプレイヤーにカットしてもらいます。そのあと、自分の右隣のプレイヤーから配り始めて、反時計回りに、各プレイヤー に5枚ずつ5回配り、 手札が25枚になるようにします。さらに、残った3枚のカードもディーラー自身に配ります。

ディーラーの捨て札

 ディーラーは自分の手札から3枚を選んでテーブルの自分の左横に裏向きに捨て札します。捨て札されたカードはディーラーがプレイで取ったカードと同じに扱われます。

 捨て札には次の制限があります:

  1. キング、切札の20、愚者(マット)のカードは捨ててはいけません。
  2. 切札の(バガット)を捨て札してはいけません。ただし、手札にある切札がこのカード1枚だけの場合は、捨て札してもかまいません。

プレイ

 プレイはトリックテイキングゲームの原則に従って行われます。プレイの目的はカードに含まれる点数をできるだけたくさん取ることです。

 まず、ディーラーの右隣のプレイヤーが自由に手札の中の1枚のカードを選んでテーブルに表向きに出します。これをリードすると呼びます。

 つぎに、その右隣のプレイヤーが手札からカードを1枚表向きに出します。出すことのできるカードは次の制限があります。

 切札がリードされた場合:

  1. 切札を持っていれば、持っている切札のうちどれでも1枚を出します。
  2. 切札を持っていなければ、どのカードでも自由に出します。

 切札以外のカードがリードされた場合:

  1. リードされたスートを持っていれば、その中のどれでも1枚を出します。
  2. リードされたスートを持っていなければ、切札のうちどれでも1枚を出します。
  3. リードされたスートも切札も持っていなければ、どのカードでも自由に出します。

 そのあとのプレイヤーもリードされたカード(最初に出されたカード)に従って同じようにプレイします。こうして全員が1枚ずつカードを出すと、1つのトリックが終わったことになります。

 出されたカードの中に切札がある場合には、最も強い切札を出したプレイヤーがこのトリックに勝ちます。切札がない場合には、リードされたカードと同じスートのカードの中で最も強いカードを出したプレイヤーがこのトリックに勝ちます。

 勝ったプレイヤーはこのトリックに出された全部のカードを取ったことになり、自分のところに裏向け向けに置きます(手札には加えない)。

 トリックに勝ったプレイヤーが次のリードを行い(手札から自由に1枚を出し)、同様にプレイが続きます。

 このようにプレイを続けて、手札を使いきったらプレイは終了です。

愚者(マット)

 愚者は、上記のカードの出し方の規則をすべて無視して、いつでもプレイすることができます。

 愚者がリードされたときには、2人目のプレイヤーは、どのカードでも出すことができます。3人目のプレイヤーは、2人目のプレイヤーの出したカードをリードされたカードだと考えてプレイしなくてはなりません。

 愚者をプレイしたプレイヤーは、そのトリックには勝つことができません。しかし、愚者はトリックに勝ったプレイヤーのものにはならず、愚者を出したプレイヤーのものになります(手札に戻るわけではなく、取ったカードと同様に扱われます)。

得点

 各プレイヤーはトリックで取ったカードの点数を数えます。ディーラーの捨て札の点数もディーラーの点数として数え、愚者の点数は愚者をプレイした人のものになります。カードの点数は次の通りです。

切札20(天使) 4点
切札1(バガット) 4点
愚者(マット) 4点
キング 各4点
クイーン 各3点
カバロ 各2点
ジャック 各1点
上記以外のカード 0点

 さらに、取った1トリックごとに1点を加算します。(1トリックで3枚取れますから、取ったカードを3枚1セットにすると、トリック数がわかります。ただし、愚者を含んだトリックは2枚しか取れません。)

 すべての点数の合計は必ず78点になります。

 各プレイヤーは自分の取った点数から26点(3人の平均点)を引きます。これがプラスまたはマイナスの得点となります。例えば40点ならば得点は40-26=14点、18点なら得点は18-26=マイナス8点となります。

 ゲーム

 これは1人の負けプレイヤーを決めるゲームです。3ディール行い、最も合計点数の低い(マイナスの多い)プレイヤーが敗者となります。このプレイヤーはほかの2人に決められた少額の支払いを行います。


注1

 現地では、ピエモンテ・パックのタロットカードを使用します。これはイタリアン・パックの一種で、スートはソード(スパーダ、刀)、バトン(バストーネ、棒)、カップ(コッパ、盃)、コイン(デナーロ、硬貨)です。

 切札20に天使の絵があります。

 もともと切札21が天使の絵になっているカードをこの地方の人は使っていたそうですが、18世紀初めにフランスから切札20が天使の絵であるカードが入ってきてからも、天使が最強であることを続けたということです。

注2

 本文の方法が本来の数え方ですが、実際には現地では次のようにして数えています。本文の方法と同じ結果になるのですが、慣れればこのほうが速く計算できるようです。

 カードの点数:

切札20(天使) 5点
切札1(バガット) 5点
愚者(マット) 4点
キング 各5点
クイーン 各4点
カバロ 各3点
ジャック 各2点
上記以外のカード 0点

 取ったカードを3枚1セットにして、それぞれのセットにつき次のように点数を修正します(どのようにセットを作っても結果の点数は変わり ません)。

点数のあるカード3枚 マイナス2点
点数のあるカード2枚とないカード1枚 マイナス1点
点数のあるカード1枚とないカード2枚 修正なし
点数のないカード3枚 プラス1点

 愚者を含むトリックを取ったプレイヤーは、2枚が余ってしまいますが、この場合は、もう1枚点数のないカードがあるようにように考えて計算します。つまり、次のようになります。

点数のあるカード2枚 マイナス1点
点数のあるカード1枚とないカード1枚 修正なし
点数のないカード2枚 プラス1点

 愚者を持っているプレイヤーは、愚者以外のカードで3枚のセットを作って修正します。愚者のカード1枚は修正しないでそのまま4点として計算します。

注2

 次のような点数の数え方もあります。この数え方も、本文や注1の数え方と同じ結果(点数)となります。

 カードの点数:

切札20(天使) 5点
切札1(バガット) 5点
愚者(マット) 5点
キング 各5点
クイーン 各4点
カバロ 各3点
ジャック 各2点
上記以外のカード 1点

 さらに、取ったカードを3枚1セットにして、1セットにつき2点を引いていきます。2枚または1枚残ったら1点を引きます。

注3

 ピエモンテ州は、イタリア語ではPiemonteだが、英語ではPiedmont(ピエドモント)。


 2009年4月4日になかよし村で2度目のプレイを行いました。

 ホイストやトレセッテなどと同様、このような単純なゲームはかえって初心者には難しいところがあります。トリックテイキングのプレイのテクニックをよく知らないと、うまくいっても良くなくても、運のせいなのか技術のせいなのかが分からず、あまり楽しむことができないからです。

 前回と違いタロットのプレイにかなり慣れてきているので、今回は結構楽しめました。