2022/11/5 赤桐
ピノクルは米国の国民ゲームとして広く親しまれていたトリックテイキングゲームでしたが、現在では主に年配の人がプレイしているようです。
ピノクルには多くの種類があるのですが、ここでは、ビッドを行う3人または4人5人の個人戦ルールを紹介します。 多人数(3人以上)のピノクルとしては最初に最も普及したゲームで、20世紀の初めから中ごろにかけて盛んにプレイされていました。 その後4人のパートナーシップゲームが主流になりましたが、現在でもプレされ続けています。
ここでは、全盛期にプレイされていたルールを紹介します。 ルールは主にWalter B. Gibson氏の“Hoyle’s Modern Encyclopedia of Card Games” や同氏の“Pinochle is the Name of the Game”に拠ります。
3人~5人。4人のときはディーラーはプレイに参加しません。5人のときは、ディーラーとディーラーの左隣のプレイヤーがプレイに参加しません。
各スートの2〜8を除いた24枚のトランプを2組混ぜて使います。ジョーカーは使いません。つまり48枚のカードになります。 アメリカではピノクルで使用するカードだけが入った専用のパックも販売されています。
各スートのカードと強さの順位は強いものから順に、A、10、K、Q、J、9 となり、次の点数を持ちます。
カード | 点数 |
---|---|
各A、各10、各K | 10点 |
それ以外のカード | 0点 |
最後のトリックを取ると10点がもらえるので、それを加えると全部で250点になります。
各プレイヤーは、獲得を予想する点数を基にしてビッドを行い最も高い点数をビッドしたプレイヤーがデクレアラーになります。 デクレアラーはビッドした点数以上を取った場合はビッドによって決められたゲーム点を他のプレイヤーから貰い、そうでなけれは支払います。
プレイはトリックテイキングゲームです。 点数はメルド(手役)によるものと、取ったカードの点数、最後のトリックを取った10点の合計です。
メルドの種類と点数は次のようになります。
切札のA、K、Q、J、10があった場合、150点になります。
(ダイアモンドが切札の場合)
切札のKとQがあった場合、40点です。 ただし、これらのカードをフラッシュとして使っている場合には、この点数は数えません。
(ダイアモンドが切札の場合)
切札以外の同じスートのKとQがあった場合、20点です。
(スペードが切札でない場合)
各スートのAを持っているとき、100点です。
各スートのKを持っているとき、80点です。
各スートのQを持っているとき、60点です。
各スートのJを持っているとき、40点です。
JとQを持っているとき、40点になります。
切札の9があれば、10点になります。
(ダイアモンドが切札の場合)
1つのメルドで使ったカードを別の種類のメルドでも使うことは可能です。 例えば、切札のKとQが各1枚とそれ以外の各スートのKがある場合、ロイヤル・マリッジとフォー・キングのメルドができます。
しかし同じ種類のメルドで、同じカードを2回使うことはできません。 例えば、切札のKが2枚とQが1枚あっても、ロイヤル・マリッジが2組できるわけではありません。 切札のQを同じ種類のメルド(ロイヤル・マリッジ)で2回使うことはできないからです。 (切札のKが2枚とQが2枚あればロイヤル・マリッジが2組できることになります。)
また、既に述べたように、フラッシュのメルドで使ったカードをロイヤル・マリッジで使うことはできません。
なお、各スートのKとQを全部持っているとき、ラウンドハウス(Round House/Round Robbin)として240点とすることもありますが、これはロイアル・マリッジ、マリッジ(3組)、フォー・キング、フォー・クイーンの点数を加えたものにすぎません。
最初のディーラーは任意の方法で決めます。 次回からは、時計回りに交代します。
ディーラーは、ディーラーの左隣から始めて時計回りに、3枚ずつまとめて各プレイヤーに配ります。 次にテーブル中央に裏向きに3枚のカードを置きます。これがキティー(Kitty/Cat)になります。 そのあと、3枚ずつまとめて、全部のカードをプレイヤーに配ります。 各プレイヤーの手札は15枚になります。
ディーラーの左隣から時計回りにビッドを行います。
ビッドは、自分が獲得するつもりの点数を宣言します。 ビッドの最低点は250(点)です。 ビッドは10点きざみ(10の倍数)で行います。
今までにビッドしたプレイヤーがいたら、それより高い点数をビッドしなければなりません。 (10点高くてもよいですし、もっと高い点数でもかまいません)。 ビッドしたくなければパスをします。
パスをしたプレイヤーは、再びビッドをすることはできません。1人を除いて全員がパスをするまで、何順でもビッドは続けられます。 最後にビッドをしたプレイヤーがデクレアラーとなります。
全員がパスをしたら、プレイは行われず、ディーラーは交替して、次のディールを行います。
ビッドが終わると、デクレアラーはまずキティーの3枚のカードを表向きにして公開したあと手札に加え、加えた手札から3枚のカードを裏向きに捨て札します。 どのカードを捨て札してもかまいません。 捨て札したカードはプレイ終了までテーブル上にそのまま置かれますが、プレイ後はデクレアラーの点数に加えます。
そのあと、デクレアラーは切札のスートを決めます。
次に、デクレアラーは自分の手札にあるメルドの点数を得ます。 このとき、メルドを構成しているカードをすべて表向きにしてテーブルに置き、みんなに見せなければなりません。 しかし、プレイが始まる前に手札に戻します。 捨て札したカードをメルドに使うことはできません。
デクレアラーが最初のリードを行って、トリックテイキングゲームのプレイを行います。プレイの順序は時計回りです。
各スートのカードの強さのランクはA、10、K、Q、J、9ですが、 同じカード(同スート同ランクのカード)の場合には、先に出したカードのほうが強くなります。
通常通り、切札が出ていない場合は、リードされたスートの最も強いカードを出したプレイヤーが勝ち、プレイされたカードを取ります。 切札が出ている場合は、最も強い切札を出したプレイヤーが勝ちます。
取ったカードは裏向けにして、各プレイヤーごとにまとめて置きます。
勝ったプレイヤーが次のリードを行ないます。どのカードをリードしてもかまいません。
フォローのルールは次の通りです(ルールにあてはまるカードが複数あればどれを出してもかまいません):
デクレアラーは、プレイで取ったカードの点数を数えます。 さらに、最後のトリックを取っていたら、10点を加えます。 この点数にメルドの点数を加えたものが、デクレアラーの獲得点数になります。
獲得点数がビッドの点数と同じかそれより多ければデクレアラーのプレイは成功となり、そうでなければ失敗となります。
ビッドの点数により次のゲーム点が決められています(獲得点数がそれより多くてもゲーム点は多くなりません)。
ビッドの点数 | ゲーム点 |
---|---|
250-290 | 1 |
300-340 | 2 |
350-390 | 3 |
400-440 | 4 |
450-490 | 5 |
500-540 | 6 |
550-590 | 7 |
600以上 | 8 |
成功した場合は、デクレアラーはこのゲーム点を他の各プレイヤーからもらいます。 3人ゲームなら他の2人からもらえるので、この表の2倍の得点となり、他の各プレイヤーは表のゲーム点がマイナス点となります。 4人ゲーム以上の場合は、プレイしていない人もデクレアラーに支払わなければなりません。
失敗した場合には、デクレアラーはこのゲーム点の2倍を他の各プレイヤーに支払います(プレイしていない人にも)。
切札がスペードであったときは、上記のゲーム点がすべて2倍になります。
デクレアラーがキティーのカードを見た後、切札を宣言する前に、プレイでの成功の可能性が少ないと思ったら、降参をすることができます。
降参の場合にはプレイ失敗となりますが、支払い額はゲーム点を2倍しないで、ゲーム点そのままになります。 切札の宣言前なので、スペードによる2倍もありません。
各ディールが独立したゲームとなっているので、いつ終わってもかまいません。
ただし、特に4人以上のゲームのときには、各プレイヤーがディーラーになる回数が同じになったあとに終了するのが望ましいです。
本来のピノクルは各A:11点、各10:10点、各K:4点、各Q:3点、各J:2点、各9:0点でした。
中間的な点数方法として、各A、10:10点、各K、Q:5点、それ以外:0点というのもあります。
同じ種類の2組あれば点数が特別高くなることがあります(以下の点数は2組の合計点数)。
ビッドの最低点を300点にすることも多いです。
ビッドと点数とゲーム点の対応は次のようなものもあります。
ビッドの点数 | A | B | C | D | E | F | G |
---|---|---|---|---|---|---|---|
250-290 | 1 | 2 | 1 | - | - | 1 | - |
300-340 | 2 | 3 | 2 | 1 | 1 | 3 | 3 |
350-390 | 3 | 4 | 4 | 2 | 3 | 5 | 5 |
400-440 | 4 | 5 | 6 | 4 | 7 | 10 | 10 |
450-490 | 5 | 6 | 8 | 6 | 10 | 15 | 20 |
500-540 | 6 | 7 | 10 | 8 | 13 | 20 | 30 |
550-590 | 7 | 8 | 12 | 10 | 16 | 25 | 80 |
600以上 | 8 | 9 | 14 | 12 | 19 | 30 | 160 |
“-”があるのは、ビッドの最低点が300点の場合に適用されるもの。
A-F: “Hoyle’s Modern Encyclopedia of Card Games” by Walter. B. Gibson、 G: “Scarne on Cards” by John Scarne
Pagat.comでオークション・ピノクルとして紹介されているルールです。 現在ニューヨーク市ブルックリンでプレイされているようです。
本文のルールとの違いは次のようになります。
Pagat.comで3人ピノクルとして紹介されているルールです。 現在米国サウスダコタ州バイソンでプレイされているようです。
本文のルールとの違いは次のようになります。
2022年11月5日、なかよし村でプレイしました。
手役の点数が全点数の半分以上になることが多いという変わったトリックテイキングゲームですが、何となく楽しさのあるゲームで、私は好きです。 フラッシュはかなり簡単にできます。 ただし、キティーに期待するのはかなりリスキーです。 プレイは2枚ずつ同じカードがあるマストラフのゲームなので、結構難しいです。