1996/10/4、2023/2/19改訂 赤桐
フランスは16世紀にイタリアからタロットのゲームが伝わり、少なくとも17世紀前半までは非常に盛んにプレイされていました。 しかしその後人気が衰え、東部のアルザス、フランシュ=コンテ、ブルゴーニュ、プロヴァンス などだけでプレイされ、他の地域では全く忘れ去られていました。
しかし、第二次世界大戦以降、再び盛んにプレイされるようになりました。 アルジェリア戦争中(1954年-1961年)に兵士に贈られた慰問品に遊び方のついたタロットカードが入っていたたために盛んになったとも言われています。
簡単ですが近代的なビッドと得点システムを持っています。 手札は18枚と多いのですが、 ブリッジなどと違ったマスト・ラフ(マスト・オーバーラフ)のプレイをじっくりと楽しめます。
いろいろなルールがあるのですが、ここでは現在最もよく行われていると思われるルールを載せておきます。 ほぼ、フランスタロット連盟のルールやPagat.comにあるルールと同じです。
3人〜5人。普通は4人でプレイするので、まず4人用ゲームを紹介します。
フランスの78枚の競技用タロットカードを使います。 スートはスペード、ハート、ダイアモンド、クラブです。
各スートのカードとその強さは:
(強)キング(R)、クイーン(D)、カバロ(C)、ジャック(V)、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1(弱)です。
フランス語ではキングはルワ(Roi)、クイーンはダム(Dam)、カバロはカバリエ(Cavalier)、ジャックはバレ(Valet)となります。
その他に21枚の切札のスートと、エクスキューズ(Excuse)のカードがあります。 切札のスートの各カードにはには大きくアラビア数字で1〜21の数が書かれています。 21の数が書かれたものが最も強く、数が小さくなるほど弱くなります。切札の1のことをプチ(Petit)と呼ぶことがあります。
エクスキューズのカードは、音楽家の絵が描かれていて、インデックスには黒い星印が書かれています。このカードは特別な働きをするカードです。
占い用のタロットを使う場合には、大アルカナのカードが切札のスートになります。 数字はローマ数字で書かれているはずです。ただし、愚者のカードはエクスキューズになります。 小アルカナには4つのスート(貨幣、聖杯、棍棒、剣)があるので、 スペード、ハート、ダイアモンド、クラブの4つのスートの代わりに使います。
カードの点数は次の通りです。
切札21 | 4.5点 |
切札1(プチ) | 4.5点 |
エクスキューズ | 4.5点 |
キング | 各4.5点 |
クイーン | 各3.5点 |
カバロ | 各2.5点 |
ジャック | 各1.5点 |
その外のカードすべて | 各0.5点 |
全部のカードの合計点数は91点です。
切札21と切札1(プチ)とエクスキューズの3枚のカードは、ウドレ(oudler)と呼ばれます。
プレイにおいては、最も強いビッドを行ったプレイヤー(デクレアラー)が、他の3人を敵にまわして戦います。 プレイに成功するためには、デクレアラーは決められた点数以上のカードを取らなければなりませんが、 その点数は取ったウドレの数により変わります。
取ったウドレの数 | 必要点数 |
0枚 | 56点 |
1枚 | 51点 |
2枚 | 41点 |
3枚 | 36点 |
例えば、ウドレを3枚取っていれば、その3枚のウドレの点数を含めて、36点かそれ以上の点数を取っていればプレイに成功したことになります。もしウドレが1枚もなければ、56点以上を取っていなければ成功になりません。
最初のディーラーは任意の方法で決めます。次回からは反時計回りの順に交代します。
ディーラーは、ディーラーの右隣のプレイヤーから、各プレイヤーに3枚ずつ6回配り、 手札が18枚になるようにします。配っている間に、適当にテーブル中央に1枚ずつ配っていき、テーブル中央にも6枚のカードが配られるようにします。 ただし、テーブル中央に配るカードは最初のカードや最後のカードであってはなりません。
このテーブル中央のカードをタロンと呼ぶことにします(現地では今はシエン chien つまり犬と呼ばれています)。
例えば次のように配れば良いでしょう
切札の1を配られて、他の切札やエクスキューズを全く配られなかったプレイヤーは、これを宣言して、 このディールを 流さなければなりません。 つまり、全員がプレイをやめて、この回のディーラーの右隣のプレイヤーが新しいディーラーになって、配り直しをします。 これをプチ・セック(petit sec=乾いたプチ)と呼びます。
ビッドはディーラーの右隣から反時計回りの順に行います。 各プレイヤーは1回だけビッドの機会が与えられます。 ビッドしたくなければパスを宣言します。
ビッドは、後で説明する4種類のゲームのうち、デクレアラーになってどの種類かをプレイするという宣言です。 最初は自由にどれでも選択できますが、他のプレイヤーがパス以外のビッドを宣言していたら、それ以降のプレイヤーは今までのビッドより強いビッドしか宣言できません(もちろんパスはできます)。
最も強いビッドを行ったプレイヤーがデクレアラーになります。 デクレアラー以外の3人をディフェンダーと呼ぶことにします。
全員がパスをしたら、全部のカードを配り直して、再びビッドから行います。 このとき、ディーラーは右隣のプレイヤーに移ります。
ビッドの種類は弱いものから順に以下の通りです。
ビッドのあと、タロンの6枚のカードを公開したあと手札に入れて、6枚捨て札することができます。 捨て札したカードは、プレイが終わったあとに、デクレアラーのものになります。
後で詳しく説明しますが、プリーズのビッドでプレイに成功した場合には、25点に必要点数よりオーバーしている点数を加えたものがもらえます。
プレイはプリーズと全く同じです。得点だけが違います。
プリーズの2倍の得失点になります。
タロンの6枚のカード誰も見ることができず、交換も行いません。 タロンは、プレイが終わったあとに、デクレアラーのものになります。
プリーズの4倍の得失点になります。
タロンの6枚のカード誰も見ることができず、交換も行いません。 タロンは、プレイが終わったあとにも、デクレアラーのものにはなりません。(ディフェンダーのものになります)。
プリーズの6倍の得失点になります。
ビッドが終わると、プリーズやガルドを行う場合には、カードの交換を行います。
デクレアラーは、まずタロンの6枚のカードを表向きにして、全員が見えるようにします。 そのあとタロンを手札に入れ、タロンを含めた手札の中から6枚のカードを他のプレイヤーには見せずに捨て札します。
ウドレやキングを捨て札してはいけません。 ウドレ以外の切札は、手札に切札やキングがありすぎて捨てざるを得ない場合だけ捨て札できます。 この場合、捨て札した切札はみんなに見せます。
カードの交換が終わると、スラム宣言を行うことができます。
プレイで全トリックを勝つという宣言です。 普通はもちろんデクレアラーが行いますが、ディフェンダーが3人で全トリックを取るという意味で宣言してもかまいません。
成功すると400点のボーナス点がありますが、失敗すると200点の罰点になります。 なお、宣言しなくてスラムを達成しても200点もらえます。
各プレイヤーは自分の最初のプレイの直前に手役の宣言を行うことができます。 手札に10枚以上の切札があるときに宣言できます。 このときに限り、エクスキューズは切札とみなすことができます。 次の種類があります。
10枚切札(simple poignée) | 20点 |
13枚切札(double poignée) | 30点 |
15枚切札(triple poignée) | 40点 |
手役の点数は、宣言した側ではなく、プレイに成功した側につきます。 例えば、デクレアラーが手役を宣言して、プレイに失敗した場合には、ディフェンダーがこの点数をもらえます。 手役の宣言は義務ではなく、可能な宣言より小さい枚数の宣言を行ってもかまいません。
手役を宣言した場合には、宣言した数の切札を順序よく並べてみんなに見せますが、プレイが始まる前に手札に戻します。 宣言する枚数より切札の数が多いときは、宣言する枚数だけの切札を見せます。どの切札を見せるかは、プレイヤーの自由です。
エクスキューズは、宣言する手役の枚数に本当の切札が1枚足りないときだけ切札とみなすことができます。 したがって、エクスキューズを見せたときは、見せた切札以外の切札を持っていないことが保証されます(保証しなければなりません)。
プレイはトリックテイキングゲームの原則に従って行われます。プレイの順序は反時計回りです。
最初のリードは、ディーラーの右隣のプレイヤーが行います。 例外として、スラムの宣言のあったときには、スラムを宣言したプレイヤーがリードを行います。
フォローの義務は次のようになります。
切札以外がリードされた場合:
切札がリードされた場合:
トリックに勝つのは、通常通り、切札がプレイされていれば最も強い切札を出したプレイヤー、切札がプレイされていなければリードされたスートで最も強いカードを出したプレイヤーです。
トリックに勝ったプレイヤーが次のリードを行います。
エクスキューズは、上記のフォローの規則をすべて無視して、いつでもプレイすることができます。
エクスキューズがリードされた場合には、次のプレイヤーはどのカードでも出すことができます。このカードのスートが、リードされたスートとして扱われます。
エクスキューズをプレイしたプレイヤーは、そのトリックには勝つことができません。 しかし、相手側が勝った場合でも、エクスキューズは自分側の取ったカードとして扱い、自分の側に置きます。 その代わり、自分の側がそれまでに取っていた0.5点のカードを相手側に渡さなければなりません。 自分の側にまだ渡すカードがなければ、0.5点のカードが手に入ったときに相手側に渡しまが、それまではエクスキューズを表向きにしておきます。 (最後まで渡すカードがなければ、自分側の合計点数を0.5点少なくし、相手側は合計点に0.5点を加えます。 エクスキューズがあればスラムされても4点を確保できることになります。)
ただし、最後のトリックでエクスキューズを使った場合には、エクスキューズは勝った側のものになります。 (その例外として、それまで全トリックを片方の側が勝っていて、勝っている側が最後のトリックでエクスキューズを出したときは、エクスキューズがトリックに勝ちます。)
最後のトリックで切札1(プチ)がプレイされた場合は、トリックに勝った側が10点を得点します。 (ディフェンダーの1人が切札1を出して他のディフェンダーが勝った場合も、ディフェンダー側の得点となります。)
最後のトリックでエクスキューズを出してスラムを達成した場合、最後より1つ前のトリックで切札1を出して勝っていたら、 プチ・オ・ブに成功したことになります。
プチ・オ・ブの10点の得失点はゲームの種類により1倍、2倍、4倍、6倍されます。
1つのディールが終わったときの得点計算は、次のように行われます。点数などはもう一度書いておきます。
1)デクレアラーの取ったウドレの数と点数を数えます。点数が下記の必要点数に達しているかどうかチェックします。
取ったウドレの数 | 必要点数 |
0枚 | 56点 |
1枚 | 51点 |
2枚 | 41点 |
3枚 | 36点 |
2)必要点数以上取った場合には、取った点数から必要点数を引き、それに25点を加えます。そうでない場合には、必要点数から取った点数を引き、25点を加えます。これはもちろん失点となります。
なお、スラムの宣言に失敗していた場合でも、この計算は変わりません。 スラムの成功/失敗と必要点数獲得の成功/失敗は無関係です。
3)プチ・オ・ブの成功/失敗があれば、これに10点を加えるか引くかします。(加えるか引くかの判断は、もちろん、成功した側に有利/失敗した側に不利となるように行います。)
4)それを、ゲームの種類により、次のように何倍かします。
プリーズ | 1倍 |
ガルド | 2倍 |
ガルド・サン | 4倍 |
ガルド・コントル | 6倍 |
5)手役があれば、これに手役の点数を加えます。(この点数はプレイの成功失敗や、誰が宣言したかに関わりなく加えます。)
10枚切札(simple | poignee) | 20点 |
13枚切札(double | poignee) | 30点 |
15枚切札(triple | poignee) | 40点 |
6)スラムがあれば、次のスラムボーナスを加えます。
宣言のないスラム | 200点 |
宣言したスラム | 400点 |
スラム宣言に失敗した場合は、マイナス200点となります。
つまり、ここまでの得点は次の式であらわされます。
(25点 + 取った点数と必要点数との差 +/- プチ・オ・ブの点数) x ゲームの種類の倍数 + 手役の点数 +/- スラムの点数
7)デクレアラーがプレイに成功した場合には、この点数の3倍がデクレアラーの得点になり、各ディフェンダーは、この点数がマイナス点となります。
デクレアラーがプレイに失敗した場合には、この点数の3倍がデクレアラーのマイナス点になり、各ディフェンダーは、この点数が得点となります。
全プレイヤーの点数の合計は常に0になるはずです。
ゲームがいつ終わるかについては、定まった規則はありません。プレイヤーの話し合いで決めてください。
精算を行う場合は、各プレイヤーの点数がそのまま支払ったり受け取ったりする額となります。
各プレイヤーに4枚ずつ24枚のカードを配り、タロンに6枚配ります。
手役は次のようになります。
13枚切札(simple poignée) | 20点 |
15枚切札(double poignée) | 30点 |
18枚切札(triple poignée) | 40点 |
1点未満の端数がでることがありますが、デクレアラーが必要点数以上取った場合には切り上げ、取れなかった場合には切り下げます。
もちろん、0.5点でも必要点数より下ならプレイ失敗です。
プレイに成功した場合のデクレアラーの得点は、他の2人から貰うため、計算した点数の2倍になります。失敗した場合はこの逆です。
各プレイヤーに15枚のカードを配り、タロンに3枚配ります。
手役は次のようになります。
8枚切札(simple poignée) | 20点 |
10枚切札(double poignée) | 30点 |
13枚切札(triple poignée) | 40点 |
1点未満の端数の扱いは、3人ゲームと同じです。
デクレアラーは、タロンのカードを開ける前に、キングの1枚のカードを指定して、それを持っているプレイヤーをパートナーに指定します。 デクレアラーがキングを全部持っている場合には、クイーンを指定することができます。 パートナーにされたプレイヤーは、指定されたカードをプレイするまでは、パートナーであることを言ってはいけません。
得点は、プレイに成功した場合は、デクレアラーは計算した点数の2倍をもらい、パートナーは計算した点数をもらいます。 ディフェンダーは計算した点数分がマイナスになります。 失敗した場合はこの逆です。
指定したカードがタロンか手札にある場合には、1人でプレイすることになります。 この場合、プレイに成功した場合のデクレアラーの得点は、他の4人から貰うため、計算した点数の4倍になります。 失敗した場合はこの逆です。
これとは別に、ディーラーがゲームに参加しないで、残りの4人で4人ゲームを行うというやりかたもあります。
「ウドレ」は少し古い言い方で、今は普通「ブ(bout)」と呼ばれています。しかし、1文字の外来語は異様なのと、プチ・オ・ブのブとの混同をさけるため、「ウドレ」としました。ウドレと同じ「ブ」もプチ・オ・ブの「ブ」も同じ bout で、元来は「端(はし)」という意味ですが、使われかたが違います。
「タロン」は英語でもフランス語でも今でも普通に使われる用語で、フレンチタロットでも以前はそう呼ばれていましたが、 現在は普通「シエン(chien=犬)」と呼ばれているようです。 ここでは、他のタロットゲームの説明と共通になるように、タロンという言葉を使いました。
現在のフレンチタロットでは、タロー・ヌーボー(tarot nouveau)と言われているデザインパターンのカードが主に使われます。 これは19世紀後半にドイツのメーカーが作ったのに始ります。
切札の各カードは上半分と下半分に違う絵が描かれていまが、同一のテーマに基づいた違うシーンの絵になります。 (Wikipediaでは田舎と都会のシーンだとしていますが、必ずしもそうとは言えないようです)。
各カードのテーマは次のようになるようです。
1.個人的愚かさ、2.幼年期、3.青年期、4.壮年期、5.老年期、6.朝、7.昼、8.夕方、9.夜、10.土/空気、11.水/火、 12.踊り、13.買い物、14.野外の楽しみ、15.美術、16.春、17.夏、18.秋、19.冬、20.ゲーム、21.集団的愚かさ
フランスタロット連盟のルールでは、最初のディーラーはカードをドローして一番低いカードを引いたプレイヤーがなります。
この時のカードのランクは、切札の方が他のスートのカードより高くなります。切札の中では21が最高で切札1が最低です。他のスートのカードではKが最高で1が最低です。同じランクのカードは、スペードが最高で、以下ハート、ダイアモンド、クラブの順になります。エクスキューズのカードを引いたプレイヤーは引き直します。
連盟のルールでは、カードのシャッフルはディーラーの向かい側のプレイヤーが行い、左隣のプレイヤーがカットします。
英語版Wikipediaによれば、2回目以降のディールでは、前回のカードを集めるだけでほとんどシャッフルしないで、カットだけをして配ることが多いようです。 カードの偏りを大きくして、ビッド不成立での配り直しを少なくする目的があります。
切札の枚数とは別の系統の手役として、ミゼール(Misère)を採用することがあります。ミゼールには次の2種類があります。
点数は10点でゲームの種類により何倍かはしません。 誰がデクレアラーかに関係なく宣言したプレイヤーが得点します。 つまり、宣言したプレイヤーが30点を得、その他のプレイヤーはマイナス10点となります。
フランスタロット連盟のルールには採用されていませんが、よく使われるルールです。
3トリック以下しか相手側に取られない、つまり15トリック以上を取るというものです。 スラムと同様に宣言できます。
宣言があれば成功で300点、失敗でマイナス150点です。 宣言がなければ150点です。 スラムと同様の点数が付きます。
スラムとスモールスラムの両方を宣言することはできません。
スラムを宣言していたらスモールスラムの点数はつきません(宣言することもできません)。 宣言なしでスラムを達成していても、スラムの点数だけがつき、この点数はつきません。 スモールスラムを宣言してスラムを達成しても300点です。
1トリックしか相手側に取られてはいけないというルールもあります。
ディール、ビッド、プレイなどすべてを、時計回りに行うこともあります。
切札の1を配られて、他の切札やエクスキューズを全く配られなかった場合でも、ディールを流さなく、プチ・エンプラナブルを宣言してもよいというルール。
この場合、切札の1で負けてもも、エクスキューズと同様に、0.5点のカードを渡して切札の1を保有することができます。
配られたカードに切札が1枚もなかったとき、ディールを流すことができるというルール。 切札と絵札の合計が決められた枚数以下なら、流すことができるというルールもあります。
最初のビッドを行う代わりにパロル(ポーカーのチェックに相当)を宣言できるというルールです。 これを宣言すると、2巡目にビッドを行うことができます。
パロルの宣言のあとには、プリーズしか宣言できないというルールと、何でも宣言できるというルールがあります。
プリーズとガルトの間にピュスのビッドを可能にするルールです。 プレイの条件はプリーズやガルトと同じです。
倍数は、プリーズ:1倍、ピュス:2倍、ガルト:4倍、ガルト・サン:8倍、ガルト・コントル:16倍(または12倍)となります。
ビッドしたあとに(そのビッドがまだ有効な時に)他のプレイヤーがそれより強いビッドをしたら、 前にビッドしたプレイヤーが直ちにそれより強いビッドを行うことができるというルールもあります。 後にビッドしたプレイヤーがそれに対してもっと強いビッドをすることもできます。
6倍でなく8倍や5倍にすることもあります。
プレイが始まる前に手役を発表するというルールもあります。
プリーズ:40点、ガルト:80点、ガルト・サン:160点、ガルト・コントル:320点として、ターゲットの点数より超過/不足の点数は10の位に丸め、何倍かにはしないというルールもあります。 このとき、スラムは1000点(失敗や宣言なしは500点)、スモールスラムは500点(失敗や宣言なしは250点)などになります。
得点の点数や数えかた(どの種の点数をゲームの種類により何倍かするかなど)はかなり色々なやりかたがあるようです。
得点の記録のやりかたとしては、上記で説明したゼロサム法の他に、スカートなどと同じように、 得点した側の各プレイヤーの欄に得点の額をそのまま記入し、得点しなかったプレイヤーには何も記入しないという方法もあります。 精算する場合には、各プレイヤーが他の各プレイヤーとの差額を精算します。 この場合、ゲームの終了を誰かの得点がある点数に達するまでとすることもあります。
19世紀のころから、今でも行われているルールです。 カウンター(ポーカーチップなど)やお金をテーブル上に拠出しておき、プレイに成功したがそこから貰うやりかたです。 (テーブルに置かれる場所を一般的なゲーム用語でポットと呼びます)。
最も単純なやり方は、ポットが空のときはプレイ前に全員が(例えば)5点のチップをポットに拠出します。 空でないときはディーラーが5点をポットに入れます。 成功したプレイヤーは、ポットのチップをすべて貰います。 失敗したら、ポットと同額をポットに支払います(ポットは2倍になります)。
これでは、ポットが急激に大きくなりすぎることがあるので、次のようにポットを分割する方法が使われました。 この方法をムシュ(mouches=ハエ)と呼びます。 この方法では、ポットは2つ以上に分割されて存在することがあります。 古いやり方よりはゆっくりですが、ポットの額は大きくなる可能性があります。
なお、このようにポットでの収支はプレイの成功と失敗に関するものだけです。目標点数よりも多く/少なく取った分の点数や、手役、スラム、プチ・オ・ブの点数は、本文と同じように計算して、プレイヤー間でやり取りされます。
フランス語&英語Wikipediaでは、最後のトリックでエクスキューズを出した時は、トリックの勝敗に関係なく、 エクスキューズを出した側の相手側がエクスキューズを取るとなっていると書かれています。
スラムを宣言して、エクスキューズを持っていたら、最後のトリックまでエクスキューズを使うことはできないというルールもあります。
エクスキューズをプレイしたが、全トリックを相手側が取った(スラム)のときは、エクスキューズも相手に渡さなければならないというルールもあります。 しかし、最近のルールにはこの記述はなく、フランスタロット連盟のルールでは、スラムされたときエクスキューズの点数は4点となるという記述があったので、本文のようにしました。 (スラムした側は0.5点の端数が出るはずですが、これを切り上げると考えると、本文と同じになります)。
実はスラム以外の場合で0.5点のカードのカードが1枚も取れなかった場合のルールはどこにもなかったのですが、本文のようにすればつじつまが合うので、そう書いています。
ディフェンダー間での意思疎通のため、コンベンションが用いられることがあります。 ここで紹介するのはEmmanuel Jeannin-Naltet氏の1990年の本“Le Tarot moderne: la signalisation”を“A History of Games Played with Tarot Pack”で要約したものです。
切り札1を持っていることを示すには次の方法がある(上記と重複あり)。
4の手段は、ディフェンダーの中で最後にプレイするときに特に有効。 最後でないときは、味方に無駄に強い切札を使わせる場合もある。 デクレアラーに強い切札を使わせる目的で強い切札を出す場合もあるので注意。
キングを最初にリードしてた強い手を示したのに、他のディフェンダーが別のスートをリードしたときは、そのプレイヤーが切り札1を持ってて、 そのスートが切り札1を守るのに最もよいスートかもしれない。
フランスタロット連盟は1973年に結成され、現在のルールの普及に大きく寄与しました。ただし、初期のころのルールは次のようなところが現在のルールと違っていました。
1.グランドスラム(grand chelem)
スラムの宣言はありません。
グランドスラムは通常のビッドですが、ガルデ・コントルより強いビッドになります。
普通のカードの点数による得点はなしで、全トリックを取ったら600ゲーム点。 失敗しても600ゲーム点になります。
このビッドをしないで全トリックを取ると300ゲーム点です。
2.手役
手役の宣言をしたプレイヤーは、誰がデクレアラーかやプレイの成否に関係なく、他の3人からゲーム点をもらいます。
次の手役もあります。各10ゲーム点です。
最初に書いたように17世紀後半ごろからは、 フランス東部のアルザス、フランシュ=コンテ、ブルゴーニュ、プロヴァンスなどでしかプレイされていませんでしたが、 そこで独自の進化を遂げました。
これらの地方の現代のゲームの祖先となるゲームは、19世紀後半から書籍としてルールが残されていますので、そのころのルールを紹介します。
19世紀後半のルールは、次のような点ではすでに現代と変わりません。
得点方法は前述のムシュが使われました。当時はベット(bêtes=動物)と呼ばれていました。
1950年以前から1939年頃までプレイされていた4人ゲームのルールです。
前述の基本ルールとムシュが採用されますが、以下の特徴があります。
フランシュ=コンテで1850年以前から1900年頃までプレイされていた3人ゲームのルールです。
前述の基本ルールとムシュが採用されますが、以下の特徴があります。
筆者はEryod Soft社製のFrench Tarotのスマホゲームを時々プレイしています。 これにはアドバイスをしてくれる機能があるので、どのようにアドバイスされることが多いかを少し書いておきます。 (このソフトがどの程度の強さなのかは分かりませんが、初心者と比べれば、かなり強いように思われます。)
2023年1月6日、なかよし村で何回目かのプレイをしました。
私のプレイしたところでは、あまり接戦にはならず全員が初心者なので大雑把なプレイになりましたが、とても楽しめました。
今回は、別府さいさんの作ったカードと、フランスの子供向けカードを使用しました。 子供向けカードは切札21が柔道の絵というような意味不明のカードでした。