2024/6/1改訂 赤桐
ハンガリアンタロックはその名の通り、ハンガリーでプレイされているタロットカードゲームです(タロックとはハンガリー語でタロットのことです)。現地では、単にタロックと呼ばれることも多いですが、正しくはPaskievics tarokk(パシュキエビチ・タロック)またはHúszashívásos tarokk(フーサシュヒーバーショシュ・タロック)と呼びます。
タロットカードは78枚のカードで構成されていますが、このゲームでは全部のカードは使わず、そのうちのわずか42枚のカードでプレイされます。
このゲームはほとんどすべてのタロットゲームと同じようにトリックテイキングゲームです。普通はパートナーを組んでプレイするのですが、パートナーは固定していなくて、日本式ナポレオンと同じような方法で毎回決めていきます。
ビッドがあるだけでなく、花札のような役(やく)があり、その役を予め宣言することもできるなど、かなり複雑なゲームです。 しかしながら、タロットカードゲームの中で最も面白いゲームの1つです。
ルールは最初の版ではMichael Dummett 氏の"Twelve Tarot Games"に基づいていましたが、Johon Mcload氏のCard Gamesサイトや Michael Dummit氏とJohn McLeod 氏の著作“A History of Games Played with the Tarot Pack”により改訂しました。
タロットは1430年代ごろににイタリアで発明されました。 既存のカード(現在でも使われているようなトランプ)を改良するかたちで作られました。基本的には、切札専用のカードをトランプに付け加えたわけです。
タロットゲームは16世紀初頭にはスイスやフランスに広まりました。ドイツ語圏に広まったのは17世紀の初めになってからです。
18世紀の終わり頃に、オーストリアで新しいタロットゲームが発明されました。 カードの枚数を54枚に減らすとともに、愚者のカードの扱いを単純化したものです。 この新しいゲームはオーストリア=ハンガリー帝国内に広がりました。
42枚のゲームの発明はやはりオーストリアで19世紀の始め頃に行われたと考えられています。 現在のオーストリアでは54枚のゲームが主流ですが、以前には54枚のゲームと42枚のゲームの両方がプレイされていました。 このハンガリーのゲームはオーストリアで行われていたゲームが発展したものだと考えられます。
最初にビッドを行います。ビッドに成功したプレイヤーがデクレアラーとなってパートナーを指定し、この2人と残りの2人が対戦します。
このゲームはトリックテイキングゲームですが、プレイではトリックを取ることによって各カードについている点数を獲得することになります。しかし、取ったカードの点数がそのまま得点になるわけではなく、ビッドの種類と取った点数により得点が決まります。
取ったカードの組み合わせやカードの取り方により、特別なボーナスを得ることもできます。また、ボーナスをもらうことをあらかじめ宣言することもできます。宣言通りにいけばボーナスは更に大きくなりますが、失敗すると失点になります。
その他に、得失点を倍にするような宣言もできます。また、配られた手札による得点(手役)もあります。
カードを配ってから、そのカードを使ったプレイが終了するまでをディールと呼びます。 (カードを配るだけの行為もディールと呼ばれますが、文脈により区別してください)。 1つのディールは次のように進行します。
4人または5人でプレイします。5人の場合は、ディーラーはプレイに参加しません。
タロットカードについては、別項のタロットのカードについてをごらんください。
ハンガリアン・タロックではタロットカードのうち42枚だけを使用します。 このパックはハンガリーでは販売されていますが、日本では入手困難ですので、通常の78枚のカードから不要なカードを除いてプレイしましょう。 (占い用のカードを使うときは剣=スペード、こん棒=クラブ、コイン=ダイアモンド、カップ=ハートと考えてください)。
不要なカードは4つのスートのカードのうち、数札の大部分です。 スペードとクラブでは、1から9までの数札を使用しません。 またハートとダイヤモンドでは2から10までの数札を使用しません。
使用するカードとその強さは次のようになります。
スペード(pikkピック)、ハート(kőrケール)、ダイアモンド(káróカーロー)、クラブ(treffトレッフ)の4つのスートがは、 それぞれ5枚のカードで構成されています。
黒のスート(スペード、クラブ)では、カードとそのランクは強いものから順に:
キング(királyキラーイ)、クイーン(dámaダーマ)、カバロ(lovasロバシュ)、ジャック(bubiブビ or botosボトシュ)、10(tízesティーゼシュ)
赤のスート(ハート、ダイアモンド)では、カードとそのランクは強いものから順に:
キング、クイーン、カバロ、ジャック、1**(ászアース)
愚者を含む残りの22枚のカードは切札です。 (ハンガリアン・タロックではこの切札をタロックと呼びます。)
愚者のカードをスキーズ(skíz)と呼びます。 このカードが最強であり、タロック21がそれに続き、以下数字の順にタロック1まで続きます。 タロック1をパガート(pagát)と呼びます。
スキーズと切札21とパガートの3枚をアナー(honőrökホネーレク)と呼びます。 スキーズと切札21の2枚つまり強い2枚のアナーは、ハイ・アナー(nagyhonőrökナジホネーレク)と呼ばれます。
カードの点数は以下の通りです。
カード | 点数 |
---|---|
スキーズ(愚者) | 5点 |
切札21 | 5点 |
パガート(切札1) | 5点 |
各キング | 5点 |
各クイーン | 4点 |
各カバロ | 3点 |
各ジャック | 2点 |
それ以外のカード | 1点 |
他のタロットゲームでは点数の補正というのがあったりしますが、ハンガリアンタロックではこのようなことはしません。単純に上記の点数を合計します。
総点数は94点になります。デクレアラー側はその半分より多い点数つまり48点以上取ること目指します。
5人ゲームの場合、カードの中から切札と各スートのカード1枚ずつの5枚のカードを2組抜き出します。 1組をシャッフルして各席に表向きに配ります。 もう1組はシャッフルして裏向きにして各プレイヤーが1枚ずつ取ります。
各プレイヤーは取ったカードと同じスートが配られた席につきます。 最初のディーラーは、切札を取ったプレイヤーの左隣のプレイヤーが最初のディーラーになります。 (切札を取ったプレイヤーが最初のビッドや最初のプレイを行うことになります。)
4人ゲームの場合は、1つのスートは使わないようにして、4枚のカードで、上記と同じように席順とディーラーを決めます。
ディーラーは左側のプレイヤーにカットしてもらったあと、 まず6枚のカードをテーブルの中央にタロンとして配ります。 そのあと、各プレイヤーに5枚ずつまとめて配り、次に、各プレイヤーに4枚ずつまとめて配ります。 配りかたは、まずディーラーの右隣に配り、反時計回りに配っていきます。
5人ゲームのときは、自分以外の4人だけに配ります。ディーラーはゲームに参加せず、得失点にも関係しません。
カードが配られたあとビッドを行います。ビッドはつぎのルールに従います:
1) ディーラーの右隣のプレイヤーからビッドを始め、反時計回りに順番に行います。
2) ビッドにはスリー(háromハーロム)、ツー(kettőケッテー)、ワン(egyエジ)、ソロ(szólóソーロー)の4つの種類があります。 これはビッドした数字の枚数(ソロなら0枚)だけ手札とタロンのカードを交換して、パートナーと共同で総点数の半分を超える点数を取るという宣言です。 ビッドしたくないときやできないときは、パス(passzパッス)と宣言します。 ソロのビッドでも通常はパートナーと共同でプレイします。
3) アナーカードを1枚も持っていないプレイヤーはビッドに参加できません(必ずパスしなければなりません)。
4) 1度パスをしたプレイヤーは2度とビッドには参加できません。パスをしない限り何度でもビッドを行えます。
5) 今までにパス以外のビッドがあった場合は、今までのビッドより強いビッドをしなければなりません。 スリーが一番弱いビッドで、ツー、ワン、ソロの順に強くなります。
6) ただし、すでにビッドを行ったことのあるプレイヤーは、他のプレイヤーのビッドに対してホールド(tartomタルトム)を宣言できます。ホールドとは同じビッドを宣言することですが、そのまま決まれば、ホールドをビッドしたプレイヤーがデクレアラーになります。しかし、すでにホールドのビッドがあった後に続けてホールドをビッドすることはできません。
7) ビッドによっては次の項で説明する「招待」のビッドになりますが、招待の目的以外でそのようにビッドをすることはできません(後で詳しく説明します)。
8) 1人を除いた他の3人がパスをするか、それ以上のビッドが不可能になったら、ビッドが終了します。最後にパス以外のビッドをしたプレイヤーがデクレアラー(felvevőフェルベベー)になります。 デクレアラーは後で指名するパートナーと2人で(あるいは1人で)48点以上のカードの点数を取ることを目指します。
9) 最初の3人がパスをした後には、4番目のプレイヤーはアナーを持っていなくてもビッドができ、デクレアラーになります。 しかし、このディクレアラーはタロンとのカードの交換のときにタロンからアナーを引いて来なければ直ちに失敗となり、実際のプレイをせずにディールが終わります。 この場合デクレアラーは1人でプレイしたとみなされ、普通にプレイして失敗したのと同じ失点になります。
10)4人全員がパスをした場合にはこのディールはプレイされません。 同じディーラーがもう1度ディールを行います。ここからディーラーが一周するまでの間、つまり5人ゲームなら5ディール、4人ゲームなら4ディールの間、すべての得失点は2倍になります。 その間にもう1度全員がパスをした時には、前回の2倍になる期間と重なる期間はすべての得失点は4倍になります。 3つ重なるとさらに2倍の8倍、4つ重なると16倍というようになります。
ビッドのあとで、デクレアラーは切札の1枚を指定します。 指定された切札を持っているプレイヤーがデクレアラーのパートナーとなり、デクレアラーと協力してプレイすることになります。
ビッドのときの約束事として「招待」がありますが、これは自分をパートナーにするようにという誘いです。 招待のビッドがあり、招待のビッドをしたプレイヤー以外がデクレアラーになったときは、必ず招待したプレイヤーをパートナーにしなけれななりません。
招待には切札19の招待と切札18の招待と切札20の招待の3種類があります。
コントラクトブリッジなどとは異なり、これは完全にルール化されているので、これを無視してビッドを行うとルール違反になります。
手札にハイ・アナー(スキーズか切札21のうち1枚以上)と切札19とを持っている場合にできる招待です。 これにより、デクレアラーのパートナーになりたいという意志表示になります。
これは可能な最低のビッドより1つ上のビッドをすることによって実行します(ジャンプビッド)。 招待ができない場合や招待したくない場合は、このようなビッドはできません。
オープニングビッドの場合ならばツーを宣言することになります。 それ以外の場合は通常は現在のビッドより2つ上のビッドを宣言します。 例えばスリーに対してワンというようにです。 ただし、ホールドのビッドができるときには、ホールドより1つ上のビッド、つまり現在のビッドより1つ上のビッドを行います。
招待の後、招待を行った人以外のプレイヤーがデクレアラーになった時には招待を受けなくてはいけません。 つまり、切札19を持っている人をパートナーに選ばなければならなりません。
招待を行ったプレイヤーは次のビッドの機会にパス以外のビッドをすることもできます。 この場合にも、最終的に招待を行ったプレイヤー以外がデクレアラーになった場合は、 招待を受けて切札19のプレイヤーをパートナーにしなければなりません。
手札にハイ・アナー(スキーズか切札21のうち1枚以上)と切札18とを持っている場合にできる招待です。 招待することにより、デクレアラーのパートナーになりたいという意志表示をすることができます。
この招待は可能な最低のビッドより2つ上のビッドをすることによって実行します(ダブルジャンプビッド)。 招待ができない場合や招待したくない場合は、このようなビッドはできません。
切札19の招待と同様のルールが適用されます。 (前項の切札19を切札18と読み替えてください)。
切札19や切札18の招待にはハイ・アナー(スキーズか切札21)が必要だと述べてきましたが、その代わりにパガートを持っていても行うことができます。
その場合は、デクレアラーがパートナーを指名した後、招待を行ったプレイヤーはパガート・ウルティモーのボーナスを、自分の最初の宣言の番で、宣言しなくてはなりません(この宣言については後で説明します)。
切札20の招待は、1人のプレイヤーがスリーをビッドし、他の1人のプレイヤーがツーをビッドし、他の2人のプレイヤーがパスをしたときだけ使うことができます(パスをしたプレイヤーの席順は関係ありません)。 最初にスリーをビッドしていたプレイヤーがパスをすると切札20への招待ということになります。
招待をする(パスをする)ためには、ハイ・アナー(スキーズか切札21のどちらか、パガートではだめ)と、切札20をもっていなければなりません。
切札20の招待を行える手札を持っていなかったり、行いたくなかったりした場合は、パス以外のビッドをしなくてはなりません。 (ホールドを行うか、ジャンプビッドして切札19や切札18の招待にするかです。)
この招待に対しては、これ以上のビッドはありませんが、ツーをビッドしたプレイヤーは必ず切札20を持っているプレイヤーをパートナーとして指名しなくてはなりません。
この招待のことを譲られたゲーム(engedett játék エンゲデット・ヤーテーク)とも呼びます。
招待については、次のルールがあります。
次のビッドは招待とはみなされません。
ビッドが終わると、各プレイヤーはタロンのカードと手札の交換を行います。
デクレアラーとデクレアラーから反時計回りに2番目、3番目、4番目のプレイヤーは、この順に次の枚数のカードをタロンからカードをもらいます。 最終ビッドにより、枚数が異なります。
最終ビッド | デクレアラー | 2番目 | 3番目 | 4番目 |
---|---|---|---|---|
スリー | 3枚 | 1枚 | 1枚 | 1枚 |
ツー | 2枚 | 2枚 | 1枚 | 1枚 |
ワン | 1枚 | 2枚 | 2枚 | 1枚 |
ソロ | 0枚 | 2枚 | 2枚 | 2枚 |
5人ゲームの場合には、ディーラーが各プレイヤーにこのカードを配ります 4人ゲームの場合は、各プレイヤーは自分でカードをタロンの一番上から引きます。
このあと、各プレイヤーはもらったカードと同じ枚数のカードを捨て札します。 デクレアラーは自分の前に捨て札を裏向きに置きます。 デクレアラーが捨て札したカードは、プレイのあとに、デクレアラーの取ったカードと同じに扱われます。 他のプレイヤーも裏向きに捨て札しますが、そのカードは集められ一か所に置かれます。 5人ゲームではディーラーの前に置かれ、4人ゲームではデクレアラーの捨て札の右横に置かれます。 デクレアラー以外の捨て札は、デクレアラーの相手チームが取ったものとして扱われます (デクレアラーのパートナーになるプレイヤーが捨てたものでも、デクレアラーのチームのものにはなりません)。
キングやアナー(スキーズ、切札21、パガート)を捨て札することは禁じられています。 招待を行った場合には、招待で示したカードを捨て札することもできません。 その他のカードは自由に捨て札できます。 (パートナー指名のため指定されそうな切札を捨て札することもできます)。
5人ゲームの場合には、ディーラーが各プレイヤーの捨て札を見て、切札が捨てられているときには3人の合計で何枚切札が捨てられたかを言います。 4人ゲームの場合には、各プレイヤーが自分が捨てた切札の枚数を言います(切札を捨てた場合)。
ディクレアラーが切札を捨て札したときには、枚数を言うだけでなく、捨て札した切札を全員に見せなければなりません。
カードの交換のあと、手札が次のような場合、誰でもディールを無効にすることができます。
2〜5の場合、自分が切札を捨て札していたら、ディールを無効にすることはできません。
ディールを無効にするためには、ボーナスやコントラなどの宣言が始まる前に、このような手を持っていることを宣言しなければなりません。
ディールが無効になったときは、ビッドで4人全員がパスをしたのと同じように扱われます (同じディーラーが次のディールを行い、次のディールからディーラーが一周するまですべての得失点が2倍になります)。
タロンとのカードの交換が終わると、ディクレアラーはパートナーを決めるために、切札の1枚のカードを指定して宣言します。 例えば、「切札20」と言うわけです。指定する切札はアナーであってはいけません。
指定したカードを持っていたプレイヤーがパートナーになります。しかし彼はその事実を発表したり、それらしい様子を示してはいけません。
デクレアラーは自分の持っているカードを指定することもあります。 この場合、デクレアラーは自分1人で3人と戦うことになります。 また、指定した切札が捨て札されていた場合も、デクレアラーは1人で戦うことになります。 1人で戦った場合でも48点以上のカードの点数をプレイで得なくては勝てません。
デクレアラーがどのカードを指定するかについては制限があります。
デクレアラーとそのパートナーをデクレアラー側のチームと呼ぶことにします。 残りの2人もチームを組み、ディフェンダー側のチームとなります。 同じチームのプレイヤーはそのディールでの得失点も共有することになります。
パートナーの指定のあと、デクレアラーから反時計回りに、コントラ宣言、ボーナス宣言、手役の発表を行います。 これについては後で詳しく述べます。
宣言が済んだらプレイを始めます。プレイはトリックテイキングゲームのルールに従いますが、次のように行います。
このゲームではプレイは常に反時計回りに行います。
まず、ディーラーの右隣のプレイヤーが自由に手札の中の1枚のカードを選んでテーブルに出します(これをリードと呼びます)。
つぎにその右隣のプレイヤーが手札からカードを1枚出します。
リードされたカードが切札であった場合は:
リードされたカードがそれ以外のスート(マーク)のカードであった場合には:
3人目のプレイヤーと4人目のプレイヤーも、リードされたカード(最初に出されたカード)に従って同じようにプレイします。
こうして4枚のカードが出されると1トリックが終わったことになります。 出されたカードの中に切札がある場合には、最も強い切札を出したプレイヤーがこのトリックに勝ちます。 切札がない場合には、リードされたスートで最も強いカードを出したプレイヤーがこのトリックに勝ちます。
トリックに勝ったら、勝ったプレイヤーが出された4枚のカードを回収しますが、 そのカードはそのプレイヤーの左の方の前に裏向きに置かれます。 パートナーでプレイする場合でも、プレイが終わって点数計算するまでは、各個人の前に置かれます。
トリックに勝ったプレイヤーが次のリードを行い(手札から自由に1枚を出し)、同様にプレイが続きます。
9トリックのプレイを行って、手札を使いきったらプレイは終了です。
デクレアラー側がカードの点数で48点以上を取った場合ビッドは成功となり、47点以下のときはビッドは失敗になります。 最終ビッドにより、成功/失敗したときのゲーム点は次のように変わります。 この得点をゲーム点とよぶことにします。 (なお、カードの点数はビッドの成功失敗を判定するときに使うだけで、ゲーム点とは違いますから注意してください。)
最終ビッド | ゲーム点 |
---|---|
スリー | 1ゲーム点 |
ツー | 2ゲーム点 |
ワン | 3ゲーム点 |
ソロ | 4ゲーム点 |
得点はポーカーチップなどを用いてる方法と、紙に記録する方法があります。 ポーカーチップを使う場合は、ゲームの始まる前に同数だけ配っておきます。 紙に記録する場合は、各プレイヤーの得点欄を作っておきます。
ビッドに成功した場合、デクレアラーはこのゲーム点(分のポーカーチップ)をディフェンダー側のプレイヤーの1人から受け取り、デクレアラーのパートナーもこのゲーム点をディフェンダー側のプレイヤーの1人から受け取ります。 (紙に記録する時には、デクレアラー側の2人はそれぞれこのゲーム点をプラスの得点として記入し、ディフェンダー側の2人はこのゲーム点をマイナスの得点として記入します。)
ビッドに失敗した場合には、この逆の向きに、ゲーム点の支払いが行われます。 (紙に記録する時には、デクレアラー側の2人はそれぞれこのゲーム点をマイナスの得点として記入し、ディフェンダー側の2人はこのゲーム点をプラスの得点として記入します。)
デクレアラーが1人でプレイして成功した場合には、デクレアラーはこのゲーム点を他の3人それぞれからもらいます。(紙に記録する時には、デクレアラーはこのゲーム点の3倍をプラスの得点として記入し、他の3人はこのゲーム点をマイナスの得点として記入します。)
デクレアラーが1人でプレイして失敗した場合には、デクレアラーはこのゲーム点を他の3人それぞれに支払います。(紙に記録する時には、デクレアラーはこのゲーム点の3倍をマイナスの得点として記入し、他の3人はこのゲーム点をプラスの得点として記入します。)
プレイの結果、デクレアラー側でもディフェンダー側でも次のボーナス得点(figurákフィブラーク) を得る可能性があります。 ボーナス得点はビッドの成否や他のボーナス得点とは別にそれぞれ計算します。
ボーナス得点は、デクレアラー側およびディフェンダー側の全員に関係するもので、点数の清算(または記入)のやりかたはゲームの得点の場合とまったく同じように行います。
なお、後で詳しく述べますが、ボーナス得点を取ることをあらかじめ宣言しておくと、ボーナス得点は2倍になります (失敗した場合、この点数が相手チームに与えられます。これを罰点とよんでおきます)。
どちらかのチームが3枚のアナー全部を取ったときに発生します。フランス語の“tout de trois”に由来します。 1ゲーム点です。宣言された場合は2ゲーム点です。
ただし、そのチームが全トリックを取ったら(下記のボラートのボーナスを得たら)、このボーナスは、宣言されていない場合にはもらえません。
どちらかのチームが4枚のキング全部を取ったときに発生します。 1ゲーム点です。宣言された場合は2ゲーム点です。
ただし、そのチームが全トリックを取ったら(下記のボラートのボーナスを得たら)、このボーナスは、宣言されていない場合にはもらえません。
カードの点数で71点以上(全点数の3/4より多い点数)を得たチームに与えらるボーナスです(相手が23点以下しか取れなかった場合です)。 通常のゲームの得点の代わりにその2倍のゲーム点が与えられます。 例えばビッドがワンであれば、ゲームの得点は3ゲーム点なので、ダブルゲームのボーナス得点は3x2=6ゲーム点となります。 宣言された場合は通常のゲームの得点の4倍のゲーム点です。
全部のトリックに勝ったチームに与えられるボーナスです。通常のゲームの得点の代わりにその3倍のゲーム点が与えられます。 宣言された場合は通常のゲームの得点の6倍のゲーム点です。
ダブルゲームの宣言をしたチームはそのあとボラートの宣言を行うことができ、どちらの宣言も有効になります。 しかし、この2つの宣言を同時に行うことや、ボラートの宣言のあとにダブルゲームの宣言を行うことはできません。
最後のトリックにパガートが出て、そのパガートが勝ったときに、パガートを出した側に発生します。 5ゲーム点です。宣言されていたときは10ゲーム点です。
最後のトリックにパガートが出てそのパガートが勝てなかった場合には、パガートを出した側の罰点となり、相手側にパガート・ウルティモーと同じだけのボーナス得点(5ゲーム点)がつきます。 最後のトリックのパガートがパガートを出したプレイヤーのパートナーに取られた場合にも罰点になります。
宣言していたときには、次のときいずれも失敗となり、10点の罰点となります:
なお、パガート・ウルティモーの宣言があったときで、宣言したプレイヤーかそのパートナーがパガートを持っていた場合には、パガートを持っているプレイヤーは、パガートを最終トリックまで出さないようにしなければなりません。 ただし、プレイの規則によって出さなければならないときは、プレイの規則を優先します。
相手側の出した切札21をスキーズで取ったときに発生します。21ゲーム点です。宣言していたときは42ゲーム点です。
宣言していないときは、パートナーの切札21を取っても、得点にも罰点にもなりません。
宣言していたときには、次のときいずれも失敗となり、42点の罰点となります:
宣言したのに切札21を自分のチームが持っていた場合、それを同じチームのプレイヤーが取ってもこれより多い罰点にはなりませんが、相手チームに取られると相手チームの得点が追加で発生します。
多くの場合、ゲームの前に帽子を用意しておきます(できるだけ奇妙な帽子がよい)。 相手側に切札21を取られたプレイヤーはその帽子をかぶらなければなりません。 そのプレイヤーは、次に切札21の捕獲が起きるまで、帽子をかぶり続けます。
デクレアラーがパートナーを指定したあとすぐに、宣言を行います。宣言には、コントラ宣言、ボーナス宣言、手役の発表の3種類があります。(説明の都合上、記述の順序がプレイの順序とは異なっています。)
これはデクレアラーから始まり、反時計回りに行われます。プレイヤーは自分の番の時にいくつの宣言を行ってもかまいません。コントラ宣言、ボーナス宣言、手役の発表のうち、どれをいくつ宣言してもかまいません。もちろん宣言しなくてもかまいません。誰かが宣言したあと、3人続けて何も宣言しなくなるまで、宣言は何周でも行われます。一度宣言しなかったプレイヤーも再び宣言に加わることができます。(あるいは、最初から全員が何も宣言しなければ、それで宣言は終了します)。
宣言はいくつも行うことができるので、宣言の最後にはパスと言って、それ以上宣言がないことを表します。全く宣言をしないときは、最初からパスと言います。
宣言があると、宣言を行ったプレイヤーだけでなくパートナーも共同責任となり、同じ得点を得たり失ったりします。(手役の場合を除く)。
ディフェンダー側のプレイヤーは、ビッドが失敗すると思ったら、ゲームに対するコントラ(kontra játék)を宣言することができます。これを行うと、このプレイヤーがディフェンダー側だということが明らかになります。この宣言があると、ゲームの得点は成功しても失敗しても2倍になります。
これに対してデクレアラー側のプレイヤーは、ゲームに対するレコントラ(rekontra)を宣言して、ゲームの得点を4倍にすることができます。この場合もデクレアラーのパートナーがこの宣言を行うと、彼がデクレアラー側であるということは明らかになってしまいます。
レコントラに対してディフェンダー側はスブコントラ(szubkontra)を宣してゲームの得点を8倍にすることができます。
スブコントラに対してデクレアラー側はヒルシュコントラ(hirskontra)を宣してゲームの得点を16倍にすることができます。
ヒルスコントラに対してディフェンダー側はモルドコントラ(mordkontra)を宣してゲームの得点を32倍にすることができます。(これで終わりです。)
同様に、相手側のボーナス宣言に対してもコントラを宣言することができます。例えばトルルに対するコントラというふうにです。これに対してもレコントラ、スブコントラ、ヒルシュコントラ、モルドコントラを宣言することができます。
交換のときに切札を捨て札したプレイヤーは、もしその切札をデクレアラーがパートナー指名として指定していた場合は、必ずゲームに対するコントラを宣言しなければなりません。
ボーナス得点を取ることを予告して成功すると、ボーナス得点は2倍になります。 これをボーナス宣言と呼びます。 つまり、トルル、フォー・キング、パガート・ウルティモー、切札21の捕獲、ダブルゲーム、およびボラートのうちのどれかを宣言します。
宣言を行うのに手持ちのカードの制約はありません。 例えば、パガートを持っていなくてもパガート・ウルティモーを宣言できます。
デクレアラー側であるかディフェンダー側であるかという帰属が明らかでないプレイヤーは、初めてボーナス宣言をしようとしても、できないことがあります。 (帰属はビッドにより明らかになることもありますが、コントラ宣言やボーナス宣言をすることによっても明らかになります。)
帰属が明らかでないプレイヤーがボーナス宣言を行うと、それ以前で最後にボーナス宣言またはコントラ宣言を行ったプレイヤーと同じ側のプレイヤーであることになります。 例えばプレイヤーA(デクレアラー)がボーナス宣言をして、プレイヤーBがコントラ宣言を行い、プレイヤーCがパスをして、帰属が明らかでないプレイヤーDがボーナス宣言を行うと、プレイヤーDの帰属がプレイヤーBと同じ(ディフェンダー側)ということになります。 このような帰属が正しくない場合には、ボーナス宣言を行うことはできません。
まだ誰もボーナス宣言やコントラ宣言を行っていない場合に、帰属が明らかでないプレイヤーがボーナス宣言を行うと、そのプレイヤーはデクレアラー側のプレイヤーであることになります。 やはり、これが正しくない場合、つまりデクレアラー側でない場合には、このようなときにボーナス宣言はできません。
コントラ等を行い帰属を明らかにして、同じときにボーナス宣言を行うことは自由にできます。
招待のビッドがあった場合は、最初から全員の帰属は明らかになっています。
ボーナス宣言をして成功したときには、前記のボーナス点(通常のボーナス得点の2倍)を得ることができます。ゲームの得点と同じように清算(または記入)を行います。
成功しなかった場合は、成功した場合と同じゲーム点(通常のボーナス得点の2倍)が罰点になり、ゲームの得点のときと同じようにして、相手側がそれだけ得点します。
宣言があった場合には、同じボーナスの得点と罰点の両方の計算がされることがあります。たとえば、フォーキングの宣言があったのに、宣言しかなったほうのチームがフォーキングを達成したら、宣言されたフォーキングの罰点と無宣言のフォーキングの得点が両方計算されます。
ダブルゲーム、ボラートおよび通常のゲームの得点の計算は次のように行い合計(または相殺)します。
1.ゲームを達成したほうのチーム(デクレアラー側で48点以上取ったチームまたはディフェンダー側で47点以上取ったチーム)について次の計算を行います。
2.ゲームを達成しなかったチームが、ダブルゲームやボラートの宣言をしていた場合は、それらの罰点の計算も行います。
3.ただし、ゲームに対するコントラ宣言があった場合は、上記でゲームの得点の計算を行わないことになっていたときも、コントラされたゲームの得点を計算します。(例えば、ゲームをコントラされてダブルゲームを達成したときは、ダブルゲームの得点のほか、コントラ宣言されたゲームの得点を得ます。上記ですでにゲームの得点を計算することになっていた場合は、それをコントラ宣言された得点に置き換えるだけです。)
なお、ゲームに対するコントラ宣言があっても、ダブルゲームやボラートの得点は変わりません。 ダブルゲームやボラートに対するコントラ宣言があった場合は、それぞれについてコントラ宣言されたゲーム点に置き換えます。
ボラート宣言があってもなくても、ボラートが達成されたとき(全トリック取ったとき)には、宣言されていないトルルやフォーキングの得点は計算されません。 (このため、全トリックを取らないほうが得点が多い場合もあります)。
手役にはエイトタロックとナインタロックの2種類があります(この場合のタロックとは切札のことです)。 エイトタロックは捨て札した後に8枚の切札を持っている場合で、1ゲーム点です。 ナインタロックは捨て札した後に9枚の切札を持っている場合で、2ゲーム点です。
手役の公表があると、直ちに、自分のパートナーを含めた他の3人のプレイヤーから上記のゲーム点を得ます。 (紙に記録する場合には、上記ゲーム点の3倍が手役のあるプレイヤーのプラスの得点となり、他の3人は上記ゲーム点だけマイナスの得点となります。)
手役を発表したプレイヤーは切札の札を見せたり種類を知らせたりする必要はありません。
手役を発表するかどうかはプレイヤーの自由です。ただし、9枚の切札を持っているプレイヤーがエイトタロックと発表することはできません。 また、手役があるのに発表しない場合には、パガート・ウルティモーを宣言したり、パガート・ウルティモーに対するるコントラを宣言したりすることはできません。
手役があるのに発表しなかったプレイヤーは、プレイ終了後にそれを公表して、自分のパートナーからだけ手役のゲーム点を得ることができます。
手役の発表は、デクレアラー側かディフェンダー側かの帰属とは無関係ですので、帰属が不明なプレイヤーでも発表することができ、発表しても帰属は明らかにはなりません。 手役に対するコントラなどはありません。
このゲームは各ディールが独立しているので、プレイヤーの合意により、いつ終わってもかまいません。しかし、伝統的には次のようにしてゲームを終えます:
誰かがゲームを終了したい場合には、(ディールの途中でも)次のディールが始まる前に、“スキーズがディーラーになって一周したら終わり”(“A skíz oszt, nem oszt”)と宣言します。
次のディールでスキーズを配られたプレイヤーが次にディーラーになったあと、残りのプレイヤーがすべてディーラーを行って、スキーズを配られたプレイヤーがもう一度ディーラーをやってから、ゲームは終了します。
次のディールのディーラーがスキーズを配られていたら、そのディールから初めてディーラーが1周してもう一度スキーズのプレイヤーがディーラーになったらゲームを終えます。
終了したら、紙に得点を記録している場合には、各ディールのゲーム点を合計したものがゲームの最終得点になります。 ポーカーチップなどを用いている場合は、手持ちのポーカーチップの数から最初に持っていた数を引いたものが最終得点になります。
2つの情報源からのバリエーションを紹介します。情報源は次のようになります。
D: ハートやダイヤモンドのAの代わりに4を使うことがある(このようがマークが隅のほうにあるので分かりやすい)。
B,D: 交換のときに切札を捨て札したプレイヤーは、その切札がパートナー指名のカードなら必ずゲームに対するコントラを宣言しなければならないが、コントラ宣言時にこのことを公表する必要がある。
2024年6月1日、なかよし村でプレイしました。
もう何度もプレイしているのですが、プレイの説明は必要で、かなり時間がかかりました。 ただ、細かいルールもそれぞれ意味があり、それを考えるだけでも興味深いものがあります。
どう考えても非常に面白いゲームだと思うのですが、時間がなくてあまりプレイできませんでした。