2005/4/2(2023/10/29改訂) 赤桐
シャーフコップはドイツのトリックテイキングゲームです。 バイエルン地方を中心として広くプレイされています。
現在のルールに近いものは18世紀の終わりごろに作られたようです。 スカートなど多くのゲームの原型にもなっています。
4人。決まったパートナーはありません。
通常の52枚のカードから、各スートの2〜6を除いた、32枚のカードを使います。
現地では、通常のクラブ、スペード、ハート、ダイアモンドのスートを持つカードの代わりに、ドイツ固有のスートである、どんぐり、木の葉、ハート、鈴のカードが使われます。このカードでは、クイーンはオーバー(Ober)、ジャックはウンター(Unter)となります。
各カードには次のような点数があります。
カード | 点数 |
---|---|
A | 11点 |
10 | 10点 |
K | 4点 |
Q | 3点 |
J | 2点 |
これ以外のカードは0点です。
切札のカードとその強さの順位は強いものから順に次のようになります。
Q、
Q、
Q、
Q、
J、
J、
J、
J、A、10、K、9、8、7
例えば、ハートが切札の場合は次のようになります。
切札以外の各スートのカードと強さの順位は強いものから順に次のようになります。
A、10、K、9、8、7
例えばスペードが切札ではない場合には、スペードは次のようになります。
ただし、後述する「ベンツ」のゲームの場合は切札が異なります。
最初のディーラーは任意の方法で決めます。次回からは、ディーラーは時計回りに交代します。
ディーラーはシャッフルしてから、右隣のプレイヤーがカットします。
ディーラーは、各プレイヤーに4枚ずつまとめて2回配ります。各プレイヤーの手札は8枚になります。
ディールの次にビッドを行って、次のゲームの種類のうちどれを行うかを決めます。
後ろに記述しているほどランクの高いゲームになります。
ハートが切札になります。パートナーを指名して、2人で61点以上取ることが目的となります。
切札が4枚のジャックだけになります。 つまり、切札のカードとその強さの順位は強いものから順に次のようになります。
J、
J、
J、
J
切札以外の4つのスートのカードと強さの順位は強いものから順に次のようになります。
A、10、K、Q、9、8、7
1人でプレイして61点以上取ることが目的となります。
切札のスートは自分で指定することができます。(ただし、どのスートを切札にした場合にも、最も強い切札は8枚のクイーンとジャックです。)
1人でプレイして61点以上取ることが目的となります。
ベンツと同じように、切札が4枚のジャックだけになります。
1人でプレイして、全トリック取ることが目的になります。
切札は自分で指定することができます。
1人でプレイして、全トリック取ることが目的になります。
4枚のクイーンと4枚のジャックが手札にあった場合にビッドできます。
自動的にプレイ成功となります。
左隣のプレイヤーから時計回りにビッドします。プレイヤーは「プレイ」をビッドするかパスをすることができます。 「プレイ」のビッドは、パートナーゲームのビッドと考えてかまいません(実際にはもっと高いランクのゲームをプレイすることもできます)。
「プレイ」のビッドがあったら、それ以降のプレイヤーは、「ベンツ」より高いランクのゲームなら何でもビッドできます。 ただし、いままでビッドされたゲームより高いランクのビッドでなければなりません。
実際のビッドは、勝ち抜き戦形式で行われます。
例えば、プレイヤーAが「プレイ」をビッドして、その後にプレイヤーBが「ベンツ」をビッドした場合、すぐにプレイヤーAがそれに対してビッドを行います。
プレイヤーAが「どうぞ(Gut)」と言うと、プレイヤーBがビッドに勝ち残ったことになります。
プレイヤーAが「私がプレイします(“Ich spiel auch”)」と言うと、そのゲームをプレイする権利はプレイヤーAが得ることになります。 これに対してプレイヤーBがパスをすると、プレイヤーAのビッドでの勝ち残りが決定します。 プレイヤーBは、それより高いランクのゲーム(例えば「ソロ」)をビッドして、プレイヤーAに「どうぞ」または「私がプレイします」というビッドをさせることもできます。
このようにして、どちらかがパスをするか「どうぞ」と言うまで2人でビッドを続けます。
そのあと、まだビッドまたはパスをしていないプレイヤーがいたら、時計回りの順にビッドの機会が与えられます。
そのプレイヤーがパス以外のビッド(今までビッドされたゲームより高いランクのビッド)をしたら、ビッドで勝ち残っていたプレイヤーとの間で上記とおなじようなビッド合戦を行って、どちらが勝ち残るかを決めます。
このようにして、最後にビッドに勝ち残ったプレイヤーがデクレアラーとなります。
1人が「プレイ」をビッドして、その後のプレイヤーが全員パスをした場合には、もちろん「プレイ」をビッドしたプレイヤーがデクレアラーになります。
全員がパスをしたら、配り直しとなります。ディーラーは交代します。
「プレイ」とビッドしたプレイヤーがデクレアラーになった場合には、どのゲームの種類にするかを宣言します。 他のゲームの種類をビッドしたプレイヤーも、それよりランクの高いゲームであれば、他のゲームの種類に変更することができます。
そのあと、「パートナーゲーム」の場合には、デクレアラーは切札以外のエースの1枚を指定して、そのカードを持っているプレイヤーをパートナーにします。 例えば、「クラブのエース」というように宣言するわけです。必ずエースを宣言しなければなりません。自分の持っているカードを指定することはできません。
指定されたカードを持っているプレイヤーはパートナーになりますが、そのカードをプレイするときまでは、パートナーであることを誰にも告げてはいけません。 (あるいは後述するように、ゲーゲンシュトースなどを宣言して、デクレアラーのパートナーであることが明らかになることもあります。)
パートナーゲームで、デクレアラーが切札以外のエースを全部持っている場合には、パートナーを指名できません。 1人で61点以上取る必要があります。それでもパートナーゲームとしてのゲーム点でプレイすることができます。
「ソロ」または「ソロ・トゥ」のビッドの場合には、どのスートを切札にするかを宣言します。
プレイが始まって2枚目のカードがプレイされる前に、デクレアラーでない側(防御側)のチームのプレイヤーは誰でも、「シュトース」と宣言して、ゲーム点を2倍にすることができます。
それに対して、デクレアラー側のプレイヤーは、「レトゥール」と宣言して、ゲーム点を4倍にすることができます(デクレアラーのパートナーがこれを行ってもかまいません)。
ディーラーの左隣のプレイヤーが最初のリードを行います。
通常のトリックテイキングゲームのルールに従ってプレイします。つまり:
なお、クイーンとジャックはそのカードに記されているスートではなく、切札のスートに属すことに注意して下さい。(ベンツやベンツ・トゥのゲームの場合には、ジャックの4枚だけを切札のスートとして扱います。この場合スートは5種類あることになります。)
また、パートナーゲームの場合、指定されたエースを持っているプレイヤーにはさらに次のルールがあります。
ベンツ・トゥやソロ・トゥの場合には、デクレアラーが1トリックでも負けた場合には失敗となり、直ちにプレイは終了します。
ビッドによるゲームの種類によって、次のゲーム点があります。
ゲームの種類 | ゲーム点 |
---|---|
パートナーゲーム | 1ゲーム点 |
ベンツ | 5ゲーム点 |
ソロ | 5ゲーム点 |
ベンツ・トゥ | 10ゲーム点 |
ソロ・トゥ | 10ゲーム点 |
ズィー | 20ゲーム点 |
デクレアラー(およびパートナー)が61点以上取った場合には、プレイ成功となります。 ベンツ・トゥやソロ・ベンツ・トゥの場合だけは、全トリック取らなければ成功となりません。
デクレアラー側が91点以上取るか、相手側が90点以上取った場合にはシュナイダー(Schneider)となります。ゲーム点が1点増えます。 (ベンツ・トゥやソロ・ベンツ・トゥの場合には当てはまりません)。
デクレアラー側または相手側が全トリック取った場合にはシュワルツ(Schwarz)となります。ゲーム点が1点増えます。 シュワルツになった場合にはシュナイダーも達成されているので、合計2ゲーム点の増加となります。 (ベンツ・トゥやソロ・ベンツ・トゥの場合には当てはまりません)。
最強の切札(Q)から連続して3枚以上の最も強い切札を持っているとき、1枚につき1ゲーム点が加算されます。 例えば、
Q、
Q、
Q、
Qがあり
Jがない場合には、4ゲーム点となります。
ベンツの場合には2枚以上でかまいません。もちろんJから数えます。
パートナーゲームのときは、2人の手札を合わせたもので数えます。
シュトースやレトゥールがあると、上記をすべて計算した結果をさらに2倍または4倍します。
デクレアラー側が成功した場合には、上記を計算したゲーム点を得ることができます。 パートナーがある場合には、それぞれのプレイヤーは相手側の1人のプレイヤーからゲーム点を受け取ります。 1人でプレイしていた場合には、他の3人からそのゲーム点を受け取ります。
デクレアラー側が失敗した場合には、そのゲーム点を相手側に払わなければなりません。 パートナーがある場合には、それぞれのプレイヤーは相手側の1人のプレイヤーにゲーム点を支払います。 1人でプレイしていた場合には、他の3人にそのゲーム点を支払います。
各スートの7と8のカードを除き、24枚でプレイすることも非常によく行われています。
ルールは、ズィーがないほかは、通常のシャーフコップと全く同じです。
また、9のカードも抜いて20枚でプレイすることもあるようです。
本文のゲーム点は「公式の」ゲーム点として参考資料にありますが、実際には次のゲーム点のほうがよく使われているのかもしれません。 (参考資料2のSocial gamesのルール、参考資料3のトーナメントルール、参考資料1のVariants(ベンツとソロの点数だけ記述)。 ポピュラーなスマートフォン用のゲームであるIsar Interactive Gmbh & Co. Kg社のものもこのような点数になっているようです。)
ゲームの種類 | ゲーム点 |
---|---|
パートナーゲーム | 1ゲーム点 |
ベンツ | 2ゲーム点 |
ソロ | 2ゲーム点 |
ベンツ・トゥ | 6ゲーム点 |
ソロ・トゥ | 6ゲーム点 |
ズィー | 8ゲーム点 |
実際、ソロのゲーム点が5点の場合は、パートナーゲームの収支が1ゲーム点なのに、ソロゲームの収支が3人からなので15ゲーム点となり、差が大きすぎるように思われます。 このような点数システムのほうが合理的かもしれません。
ランナーの点数はパートナーゲームの点数と同じなることが多いですが、もっと少なくすることもあるようです。
パートナーゲームを2ゲーム点、ベンツ・ソロを5ゲーム点、ランナーの点数を1ゲーム点とすることもあるようです。(10/20/50などと表記します)。
なお、このルール紹介ではゲーム点を最低単位で記述していますが、 ドイツでは少額の掛け金でプレイされることが多く、実際の掛け金の額で点数が記述されていることもあります。
ルールの旧版ではベンツ・トゥとソロ・トゥのトゥ(Tout)をトゥットとしていましたが、フランス読みが正しいようなので、“トゥ”に訂正しました。
なお、ドイツではこれを訛って“ドゥ(Du)”と呼ぶこともあるようです。
ドゥはドイツ語で2人称の「君」というような意味にもなりますが、2人称の敬称または複数形(「あなた」「君たち」)は“ズィー(Sie)”になります。 ゲームの“ズィー”という用語は、このあたりの洒落ではないかと思われます。
ルールの旧版は「バーバリアシャーフコップ協会のルール委員会が作った」というもの(現在はアーカイブにある)に基づきましたが、下記の参考資料に基づいて書き直しました。
このルールは競技会用のルールのようで、ランナーのルールがありませんでした。ランナーのルールは古くから今まで一般的なので、このルールはかなり特殊だったようです。
また、このルールにはゲーム点の記述がなく、旧版のゲーム点が何に基づいていたのか不明です。
なお、旧版は“バーバリアン・シャーフコップ”としていましたが、ドイツ国内でもシャーフコップといえば普通はバイエルンのルールを指すようですので、単に“シャーフコップ”としました。 (旧版はせめて日本で普通に通用している地名を使って“バイエルン・シャーフコップ”とすべきでした。)
このルールは主に次の参考資料を基に記述しました。
参考資料3(Schafkopfschule)では、ベンツ・トゥやソロ・トゥではランナーが1枚あたり2ゲーム点となります。
2004年4月2日になかよし村でプレイしました。カードに点数のあるトリックテイキングゲームとして標準的なゲームですが、面白いことは間違いありません。ダブルをかけることができるのが興味深いです。