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ロンバルディアの18-19世紀のタロットゲーム

 

2015/4/4 赤桐

 イタリアのロンバルディア州でプレイされていたゲームです。タロットカードはロンバルディア州で15世紀〜16世紀のころに発明されたと考えられています。ほかのタロットのゲームと同じように、トリックテイキングゲームです。

 ルールはMichael Dummett氏とJhon McLeod氏の"A Histry of Games Played with the Tarot Pack"という本を基にしました。ここで紹介するゲームは、18世紀〜19世紀の何冊かの出版物から収集したもののようです。


ロンバルディア・タロット

プレイヤー

 4人。向い合った2人がパートナーになります。

カード

 カードの種類については、別項のタロットのカードについてをごらんください。通常の78枚の カードをすべて使用します。

 各スートのカードを強い順に列挙すると、スペードとクラブ(あるいはソードとバトン)では:

  キング,クイーンカバロジャック10987654321です。

  CK CQ CC CJ C10 C9 C8 C7 C6 C5 C4 C3 C2 C1

 ハートとダイヤモンド(あるいはカップとコイン)では:

  キングクイーンカバロジャック12345678910です。

  DK DQ DC DJ D1 D2 D3 D4 D5 D6 D7 D8 D9 D10

 切札では、21が最も強く「世界(Mondo)」と呼ばれます。以下は、2019181716151413121110987654321と数字が小さくなるにつれ弱くな ります。切札は「バガット(Bagatto)」と呼ばれます。

 

T21T20  T16 T15 T14 T13 T12 T11 T10 T09 T08 T07 T06 T05 T04 T03 T02 T01

 さらに、次の愚者のカードが含まれます。このカードをイタリアではマット(Matto 狂人)と呼びます。

   Matto

ディール

 最初のディー ラー任意の方法で決めます。次回からは反時計回りの順に交代します。

 ディーラーはカードをシャッフルしで、左隣のプレイヤーにカットしてもらいます。そのあと、自分の右隣のプレイヤーから配り始めて、反時計回りに、カードを配り、 各プレイヤーの手札が19枚になるようにしたあと、自分に残りの2枚をさらに配ります。

 ディーラーは自分に最後に配った2枚と、他のプレイヤーに最後に配った1枚を表向きにします。自分の2枚のカードのうちに、キング、切札の21、切札の、愚者(マット)のカードがあった場合には、(既に表向きになっているカードも含め)これらのカード以外のカードが2枚表向きになるまで自分のカードを表向きにします。

 そのあと、全員がカードを取り上げて、手札とします。

モンテ

 このあとディーラーの捨て札がありますが、これが行われる前に、どのプレイヤーでも「モンテ(Monte)」を宣言することができます。これは、このディールを流す、つまりプレイを行わないようにするという提案です。他の全員がこれに賛成した場合だけ、プレイをしないで、次のディールを行います。この場合、ディーラーは交替します。

ディーラーの捨て札

 ディーラーは自分の手札から2枚を選んでテーブルの自分の左横に裏向きに捨て札します。捨て札には次の制限があります:

  1. キング、切札の21、切札の、愚者(マット)のカードは捨ててはいけません。
  2. 他の切札も捨ててはいけませんが、他に捨てるカードがないときは捨て札できます。切札を捨てるときも裏向きでよく、宣言する必要もありません。

プレイ

 プレイはトリックテイキングゲームの原則に従って行われます。プレイの目的はカードに含まれる点数をできるだけたくさん取ることです。

 まず、ディーラーの右隣のプレイヤーが自由に手札の中の1枚のカードを選んでテーブルに表向きに出します。これをリードすると呼びます。

 つぎに、その右隣のプレイヤーが手札からカードを1枚表向きに出します。出すことのできるカードは次の制限があります。

 切札がリードされた場合:

  1. 切札を持っていれば、持っている切札のうちどれでも1枚を出します。
  2. 切札を持っていなければ、どのカードでも自由に出します。

 切札以外のカードがリードされた場合:

  1. リードされたスートを持っていれば、その中のどれでも1枚を出します。
  2. リードされたスートを持っていなければ、切札のうちどれでも1枚を出します。
  3. リードされたスートも切札も持っていなければ、どのカードでも自由に出します。

 そのあとのプレイヤーもリードされたカード(最初に出されたカード)に従って同じようにプレイします。こうして全員が1枚ずつカードを出すと、1つのトリックが終わったことになります。

 出されたカードの中に切札がある場合には、最も強い切札を出したプレイヤーがこのトリックに勝ちます。切札がない場合には、リードされたカードと同じスートのカードの中で最も強いカードを出したプレイヤーがこのトリックに勝ちます。

 勝ったプレイヤーはこのトリックに出された全部のカードを取ったことになり、自分のところに裏向きに置きます(手札には加えない)。パートナーゲームですが、取ったカードは各個人のところに置くようにします。

 トリックに勝ったプレイヤーが次のリードを行い(手札から自由に1枚を出し)、同様にプレイが続きます。

 このようにプレイを続けて、手札を使いきったらプレイは終了です。

マット(愚者)

 マットは、上記のカードの出し方の規則をすべて無視して、いつでもプレイすることができます。

 マットがリードされたときには、2人目のプレイヤーは、どのカードでも出すことができます。3人目のプレイヤーは、2人目のプレイヤーの出したカードをリードされたカードだと考えてプレイしなくてはなりません。

 マットをプレイしたプレイヤーは、そのトリックには勝つことができません。ただし、そのプレイのあとで自分が既に取っているカードから1枚を出して、取られたマットと交換することができます。まだ1トリックも勝っていないときは、最初にトリックに勝った時にこの交換を行うことができます。最後まで1トリックも取れなかったら交換はできません。なお、自分のパートナーのカードを出して交換することはできません。

捨て札

 ディーラーの捨て札は、ディーラーの取ったカードとして扱います。ただし、ディーラー(個人)が1トリックも取れなかった時は、最後にトリックを取ったプレイヤーのものになります。

得点

 各プレイヤーはトリックで取ったカードの点数を数えます。

切札21(世界) 6点
切札1(バガット) 5点
マット(愚者) 5点
キング 各5点
クイーン 各4点
カバロ 各3点
ジャック 各2点
上記以外のカード 0点

 そのあと、取ったカードを4枚を1セットにして、それぞれのセットにつき次のように点数を修正します(どのようにセットを作っても結果の点数は変わり ません)。

点数のあるカード4枚 マイナス3点
点数のあるカード3枚とないカード1枚 マイナス2点
点数のあるカード2枚とないカード2枚 マイナス1点
点数のあるカード1枚とないカード3枚 修正なし
点数のないカード4枚 プラス1点

 2枚余るときは、点数のない2枚を残します。残ったカードの点数は修正しません。

 全部で72点になるはずです。36点より多く取ったチームが、取った点数から36点を引いたものを得点します。どちらも36点なら、どのチームも得点しません。

 ゲーム

 ディールを4回行います。モンテのときも1ディールと数えます。合計得点の高いチームの勝ちとなります。

 4ディールの点数差が35点以内なら通常勝ちで1ゲーム点の勝ち、点数差が36点〜71点ならレアレ(reale)勝ちで2ゲーム点の勝ちとなります。以降、72点〜107点なら3ゲーム点、というように36点きざみで1ゲーム点ずつ増えていきます。

 負けたチームが1点も得点していないときは、1ゲーム点を追加します。

 ディールで全トリックを取った時は、1ゲーム点が追加でもらえます(ゲームで負けたときも)。


レセギーノ(Reseghino)

プレイヤー

 3人。

カード

 ロンバルディア・タロットと同様に、通常の78枚の カードをすべて使用します。

ディール

 最初のディー ラー任意の方法で決めます。次回からは反時計回りの順に交代します。

 ディーラーはカードをシャッフルしで、左隣のプレイヤーにカットしてもらいます。そのあと、自分の右隣のプレイヤーから配り始めて、反時計回りに、カードを配り、 各プレイヤーの手札が25枚になるようにしたあと、自分に残りの3枚をさらに配ります。

ディーラーの捨て札

 ディーラーは自分の手札から3枚を選んでテーブルの自分の左横に裏向きに捨て札します。捨て札には次の制限があります:

  1. キング、切札の21、切札の、愚者(マット)のカードは捨ててはいけません。
  2. 他の切札も捨ててはいけませんが、他に捨てるカードがないときは捨て札できます。切札を捨てるときも裏向きでよく、宣言する必要もありません。

 ディーラーの捨て札は、ディーラーの取ったカードとして扱います。ただし、ディーラーが1トリックも取れなかった時は、最後にトリックを取ったプレイヤーのものになります。

プレイ

  ロンバルディア・タロットと同様にプレイします。マットの使い方も同じです。

得点

 各プレイヤーはトリックで取ったカードの点数を数えます。

切札21(世界) 5点
切札1(バガット) 5点
マット(愚者) 5点
キング 各5点
クイーン 各4点
カバロ 各3点
ジャック 各2点
上記以外のカード 0点

 そのあと、取ったカードを3枚を1セットにして、それぞれのセットにつき次のように点数を修正します(どのようにセットを作っても結果の点数は変わり ません)。

点数のあるカード3枚 マイナス2点
点数のあるカード2枚とないカード1枚 マイナス1点
点数のあるカード1枚とないカード2枚 修正なし
点数のないカード3枚 プラス1点

 全部で78点になるはずです。自分の取った点数から26点を引いたものが得点となります(マイナス点の場合もあります)。

 ゲーム

 3ディールでゲーム終了です。最も高い点数のプレイヤーが勝者となります。


タロック・オンブレ(Tarocc'Ombre)

プレイヤー

 3人。

カード

 このゲームでは、54枚のカードを使用します。

 各スートのカードを強い順に列挙すると、スペードとクラブ(あるいはソードとバトン)では:

  キング,クイーンカバロジャック10987です。

  CK CQ CC CJ C10 C9 C8 C7     

 ハートとダイヤモンド(あるいはカップとコイン)では:

  キングクイーンカバロジャック1234です。

  DK DQ DC DJ D1 D2 D3 D4     

 切札とマットのカードは、ロンバルディア・タロットと同じです。

ディール

 最初のディー ラー任意の方法で決めます。次回からは反時計回りの順に交代します。

 ディーラーはカードをシャッフルしで、左隣のプレイヤーにカットしてもらいます。そのあと、自分の右隣のプレイヤーから配り始めて、反時計回りに、カードを配り、 各プレイヤーの手札が17枚になるようにしたあと、自分に残りの3枚をさらに配ります。

ディーラーの捨て札

 ディーラーは自分の手札から3枚を選んでテーブルの自分の左横に裏向きに捨て札します。捨て札には次の制限があります:

  1. キング、切札の21、切札の、愚者(マット)のカードは捨ててはいけません。
  2. 他の切札も捨ててはいけませんが、他に捨てるカードがないときは捨て札できます。切札を捨てるときも裏向きでよく、宣言する必要もありません。

ビッド

 ディーラーの捨て札のあと、ディーラーの右隣のプレイヤーから反時計回りの順に、ビッドを行います。ビッドの時は、各プレイヤーは次のどれかのビッドまたはパスを宣言します。数字の大きいほうが強いビッドです。

  1. デュエ(Entro con due carte): 2枚のカードを交換できます。
  2. ウナ(Ad una): 1枚のカードを交換できます。
  3. ニエンテ(A niente): カードを交換できません。

 誰かのビッドがあったときは、それより強いビッドしかできません。ただし、席順が上位のプレイヤーは下位のプレイヤーのビッドと同じビッドをすることもできます。席順はディーラの右隣が最も上位で、ディーラーの左隣、ディーラーと続きます。

 ビッドは何巡でも行われますが、一度パスをしたプレイヤーはもうビッドには加われません。1人以外の全員がパスをした場合、残ったプレイヤーがデクレアラーになります。(全員パスをしたときのルールは書かれていませんでしたが、流れとなり、次のディーラーが次回のディールを行うものと思われます。)

交換

 デュエやウナのビッドでデクレアラーになったプレイヤーは、自分の持っていないカードをどれでも1枚指定して、そのカードを貰うことができます。代わりに手札から自由に1枚を誰にも見せないで渡します(捨て札のなかにこのカードが含まれていた時は、交換は成立しないで終わるものと思われます。)。

 デュエのときは、これを2回行うことができます。ウナなら1回です。ニエンテの時はこの交換は行えません。

プレイ

 ロンバルディア・タロットやレセギーノと同様にプレイします(ディーラーの右隣が最初のリードです)。

得点

 レセギーノと同様に点数を数えます。全部で70点になります。

 デクレアラーが36点以上取ったらデクレアラーの勝ちとなり、35点以下なら負けとなります。デクレアラーが勝った時は、デクレアラーは他の各プレイヤーから以下のゲーム点をもらいます。負けたときは以下のゲーム点を他の各プレイヤーに支払います。

デュエのとき 2ゲーム点
ウナのとき 3ゲーム点
ニエンテのとき 4ゲーム点
35点より5点多いか少ない毎に
1ゲーム点追加
(0:7ゲーム点、1-5:6ゲーム点、6-10:5ゲーム点、11-25:4ゲーム点、16-20:3ゲーム点、21-25:2ゲーム点、26-30:1ゲーム点、31-40:0、41-45:1ゲーム点、46-50:2ゲーム点、51-55:3ゲーム点、56-60:4ゲーム点、61-65:5ゲーム点、66-70:6ゲーム点)
カポット(cappotto)、つまりデクレアラーが全トリックを取った時 3ゲーム点追加

 なお、ディーラーがパス以外のビッドを行ったあとに他のプレイヤーがデクレアラーになった時に限り、デクレアラーはプレイが始まる前に降参をすることができます。この場合、基本点(2ゲーム点〜4ゲーム点)を支払うだけになります。これは、ディーラーのカポットなどを防ぐ目的で行われるようです。

 ゲーム

 ゲームの終了については書かれていませんでした。


オンブラ・アラビアータ(Ombra arrabiata)

プレイヤー

 4人。パートナー戦ではありません。

カード

 タロック・オンブレと同じ54枚のカードを使います。各プレイヤーに13枚ずつ配り、ディーラーにはさらに2枚配ります。

捨て札・ビッド・交換・プレイ

 タロック・オンブレと同様に行います。デクレアラーは他の3人と対戦することになります。

得点

 点数はロンバルディア・タロットと同じように数えます。全点数は66点になります。

 34点以上ならデクレアラーの勝ちとなり、33点以下なら負けとなります。得失点は次のようになります。

デュエのとき 4ゲーム点
ウナのとき 5ゲーム点
ニエンテのとき 6ゲーム点
33点より5点多いか少ない毎に 1ゲーム点追加
カポット(cappotto)、つまりデクレアラーが全トリックを取った時 4ゲーム点追加

タロック・オンブレ(5人ゲーム)

プレイヤー

 5人。

カード

 78枚のカードを使います。各プレイヤーに15枚ずつ配り、ディーラーにはさらに3枚配ります。

捨て札・ビッド・交換・プレイ

 タロック・オンブレと同様に行います。

パートナー指名

 デュエまたはウナのコントラクトのデクレアラーは、交換のあとプレイの前に、カードを指定して、そのカードの持ち主をパートナーにすることができます。パートナーとなったプレイヤーは、そのカードをプレイするまで公表してはいけません。

得点

 点数は切札21が5点になる他はロンバルディア・タロットと同じように数えます。4枚ずつで修正したとき、各チームで1枚〜3枚のカードが余りますが、点数のないカードを余らせるようにします。その修正点はありません。全点数は70点になります。

 35点以上ならデクレアラーの勝ちとなり、36点以下なら負けとなります。得失点は次のようになります。デクレアラーチームが勝った時、デクレアラーは他の2人からの得点を受け取り、パートナーは1人からの分を受け取ります。負けたときは、その逆になります。

デュエのとき 4ゲーム点
ウナのとき 5ゲーム点
ニエンテのとき 6ゲーム点
35点より5点多いか少ない毎に 1ゲーム点追加
カポット(cappotto)、つまりデクレアラーが全トリックを取った時 4ゲーム点追加

 注: 元の本には得点について何も書かれていないようです。上記はMichael Dummett氏とJhon McLeod氏の推測に、私の推測を加えたものです。


タロック・オンブレ(7人ゲーム)

プレイヤー

 7人。

カード

 78枚のカードを使います。各プレイヤーに11枚ずつ配り、ディーラーにはさらに1枚配ります。

捨て札・ビッド・交換・パートナー指名・プレイ

 5人ゲームと同様に行います。

得点

 5人ゲームと同じように行います。デクレアラーチームが勝った時、デクレアラーは他の3人からの得点を受け取り、パートナーは2人からの分を受け取ります。負けたときは、その逆になります。

 注: この得点方式も推測によるものです。


 2015年4月4日に、なかよし村でプレイしました。古いゲームでしたが、どれも十分面白く遊べました。ロンバルディア・タロットは非常に単純ですが、初めての人でもそれなりに楽しめそうですので、入門用に良いかもしれません(スカルトやここで紹介したレセギーノなどの3人ゲームより4人ゲームの方が楽しみやすいように思います)。