2009/6/6 赤桐
イタリアのピエモンテ州やロンバルディア州でプレイされているタロットカードのゲームです。トリックテイキングゲームです。
ルールはMichael Dummett氏の"Twelve Tarot Games"という本を基にしました。ルールはプレイされる場所によって少しずつ異なるようですが、これはピエモンテ州のピネロロ町(Pinerolo)のものです。
3人。
カードの種類については、別項のタロットのカードについてをごらんください。通常の78枚の カードをすべて使用します。
各スートのカードを強い順に列挙すると、スペードとクラブ(あるいはソードとバトン)では:
キング,クイーン、カバロ、ジャック、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1です。
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ハートとダイヤモンド(あるいはカップとコイン)では:
キング、クイーン、カバロ、ジャック、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10です。
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切札では、20が最も強く「天使(Angelo)」と呼ばれます。以下は、21、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1と数字が小さくなるにつれ弱くな ります。切札1は「バガット(Bagatto)」と呼ばれます。
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なお、切札20に天使の絵の描かれていないタロットでは、このカードを最強とするのは意味がないので、普通に切札21を最も強い切札にして、これを天使と呼べばよいでしょう。
愚者のカードのことをイタリアではマット(Matto 狂人)と呼びます。
各カードには次の点数があります。
切札20(天使) | 5点 |
切札1(バガット) | 5点 |
愚者(マット) | 4点 |
キング | 各5点 |
クイーン | 各4点 |
カバロ | 各3点 |
ジャック | 各2点 |
上記以外のカード | 1点 |
全点数の合計は129点になります。プレイの目的はカードの点数をできるだけ獲得することです。
プレイの前に同額のポーカーチップなどを配っておいて、点数のやりとりを行うことができます。
スコアシートで得点を記入することもできます。この場合、プラスの点数とマイナスの点数の合計が必ず0になるように記入します。
最初のディー ラーは任意の方法で決めます。プレイが行われた後は、反時計回りの順に交代します。
ディーラーはカードをシャッフルしで、左隣のプレイヤーにカットしてもらいます。そのあと、自分の右隣のプレイヤーから配り始めて、反時計回りに、各プレイヤー に5枚ずつまとめて配ります。
ディーラーが2回配り終わったとき、つまり各プレイヤーの手札が10枚になったとき、各プレイヤーは手札を見て1回目のビッドを行います。
ビッドがうまく成立すると、プレイは行われず、点数のやりとりだけが行われます。
各プレイヤーは次の4種類のビッドの1つを行います。
ディーラーの右隣から1人ずつ反時計回りにビッドが行われます。ビッドは何周でも行われます。1週目にはどのようなビッドでも行うことができますが、2度目以降のビッドでは、前回と自分の行ったビッドと同じかそれより自分に不利になるビッドしか行うことができません。たとえば、「5点受取り」とビッドしたプレイヤーは4点以下の受取りのビッドかゼロか支払いのビッドしかすることができません。ただしプレイのビッドはいつでも行うことができます。
1周以上ビッドして、3人のビッドの支払いの合計と受取りの合計が同じになったら、ビッドは終わりになり、このディールも終了します。ポーカーチップなどを使う場合は、実際に支払いと受取りを行います。スコアシートの場合は、各プレイヤーの得点欄にプラスまたはマイナスの点数を記入します。同じディーラーが最初からカードを配り直します。
だれかがプレイのビッドを行った場合にはビッドはただちに終了します。この場合は、ディーラーはディールを続けます。
次の5枚のカードが各プレイヤーに配られたら、2回目のビッドを行います。このときのビッドは最初のビッドとは無関係に最初から行います。2回目のビッドが成立しなかったとき(プレイがビッドされたとき)は、さらに5枚のカードを配り、3回目のビッドを最初から行います。
3回目のビッドが成立しなかったときは、さらに5枚のカードを配り、プレイが行われます。ただし、ディーラーには8枚のカードを配ります。
ディーラーは自分の手札から3枚を選んでテーブルの自分の左横に裏向きに捨て札します。捨て札されたカードはディーラーがプレイで取ったカードと同じに扱われます。
捨て札には次の制限があります:
各プレイヤーは、自分の最初のプレイの直前に、手役を宣言して得点することができます。手役は手札の中に次のカードがある場合に宣言できます。
10枚以上の切札があった場合です。このときに限り、愚者(マット)も切札として数えます。点数は切札の枚数と同じです。たとえば、10枚なら10点、11枚なら11点となります。
手札に4枚のキングを持っている場合です。点数は20点です。さらに、切札1(バガット)、切札20(天使)、愚者(マット)のどれかを持っていれば、1枚につき5点加算されます。
切札1(バガット)、切札20(天使)、愚者(マット)の3枚を持っている場合です。点数は15点です。さらにキングを持っていれば、1枚につき5点加算されます。
キング、切札1(バガット)、切札20(天使)、愚者(マット)のうち4枚以上持っている場合です。点数は4枚で10点、1枚増えるごとに5点増します。
キング4枚、ミティガーティ、オノリでは、同じカードを重複して別の手役に使うことはできません(加算用に使うこともできません)。タロッキとはカードが重複してもかまいません。
タロッキでは宣言した数の切札をほかのプレイヤーに見せなければなりません(見せた後は手札に入れます)。キング4枚、ミティガーティ、オノリでは、宣言のカードを見せる必要はなく、詳しい内容を述べる必要もありません(「ミティガーティにキング2枚プラス」、「5枚のオノリ」などで可)。
上記の点数は、ほかの2人のプレイヤーそれぞれからもらう点数です。したがって、スコアシートに記入する場合は、得点するプレイヤーは2倍の点数を記入し、ほかの各プレイヤーはマイナスの点数を記入します。
プレイはトリックテイキングゲームの原則に従って行われます。プレイの目的はカードに含まれる点数をできるだけたくさん取ることです。
まず、ディーラーの右隣のプレイヤーが自由に手札の中の1枚のカードを選んでテーブルに表向きに出します。これをリードすると呼びます。
つぎに、その右隣のプレイヤーが手札からカードを1枚表向きに出します。出すことのできるカードは次の制限があります。
切札がリードされた場合:
切札以外のカードがリードされた場合:
そのあとのプレイヤーもリードされたカード(最初に出されたカード)に従って同じようにプレイします。こうして全員が1枚ずつカードを出すと、1つのトリックが終わったことになります。
出されたカードの中に切札がある場合には、最も強い切札を出したプレイヤーがこのトリックに勝ちます。切札がない場合には、リードされたカードと同じスートのカードの中で最も強いカードを出したプレイヤーがこのトリックに勝ちます。
勝ったプレイヤーはこのトリックに出された全部のカードを取ったことになり、自分のところに裏向け向けに置きます(手札には加えない)。
トリックに勝ったプレイヤーが次のリードを行い(手札から自由に1枚を出し)、同様にプレイが続きます。
このようにプレイを続けて、手札を使いきったらプレイは終了です。
愚者は、上記のカードの出し方の規則をすべて無視して、いつでもプレイすることができます。
愚者がリードされたときには、2人目のプレイヤーは、どのカードでも出すことができます。3人目のプレイヤーは、2人目のプレイヤーの出したカードをリードされたカードだと考えてプレイしなくてはなりません。
愚者をプレイしたプレイヤーは、そのトリックには勝つことができません。しかし、愚者はトリックに勝ったプレイヤーのものにはならず、愚者を出したプレイヤーのものになります(手札に戻るわけではなく、取ったカードと同様に扱われます)。
各プレイヤーはトリックで取ったカードの点数を数えます。ディーラーの捨て札の点数もディーラーの点数として数え、愚者の点数は愚者をプレイした人のものになります。
各プレイヤーは自分の取った点数から43点(3人の平均点)を引きます。これがプラスまたはマイナスの得点となります。例えば77点ならば得点は77-43=34点、25点なら得点は25-43=マイナス18点となります。
いつゲームを終了するかは、プレイヤーどうしの取り決めによります。ただし、実際にプレイが行われて、ディーラーが最初のディーラーに戻るとき(直前)に終了しなければなりません。
2009年6月6日、なかよし村でプレイしました。
Michael Dummett氏の"Twelve Tarot Games"の12個のゲームの中で、プレイしていなかった数少ないゲームでしたが、もっと早くやればよかったと思える、面白いゲームです。
ビッドの方法が普通の近代的なビッドとはまったく違いますが、なかなか味があります。ビッドが成立しなくても、情報が得られるので、プレイのときに参考になります。
プレイ自体は、スカルトと同じ(点数が少し違う)ですが、ビッドを成立させていたほうが良かったかどうかなどと考えながらプレイするのも楽しいものです。