2023/5/25 赤桐
ポーカーは19世紀前半にアメリカのニューオリンズで生まれ、長い間アメリカの国民的なゲームと言われてきました。 インターネットでのプレイが盛んになったためなのか、2003年~2006年ごろにはポーカー・ブームと言われるほどの盛り上がりを見せました。 その後は少し落ち着きましたが、現在でも非常に盛んにプレイされています。
このゲームはまた、カードゲーム草創期からの伝統を伝えるゲームでもあります。 15世紀にドイツのポッホ(Poch)というゲームが記録されていますが、これが17世紀フランスでポーク(Poque)という名前になり、この名前がポーカーに変化したようです。 他にも16世紀ごろからイタリアを中心に人気のあったプリミエラ(Primiera)やフランスのブイェット(Bouillotte)やイギリスのブラッグ(Brag)というゲームなどの影響も受けています。
ポーカーはお金のようなもの(ポーカーチップ)を配られた手札に対して賭けていくゲームです。 勝ち負けはほぼ配られたカードだけ決まりますが、勝つときの収入をできるだけ多くして、負けるときの損失はできるだけ少なくするというのが、このゲームの作戦になります。
ポーカーにはいろいろなゲームの種類がありますが、基本的なルールは変わりません。 まず、共通のルールを説明します。
2人以上。ゲームの種類によって最大人数が変わります。
普通の52枚のトランプを使います。 ジョーカーを使うことも稀にあります。
ポーカーは各プレイヤーの5枚のカードを比べてどれが最も強いかを競います。この5枚のカードをポーカーハンドまたは単にハンドと呼びます。
ポーカーハンドにはカードの組み合わせによって役(やく)があります。
また、カードにランクがあり、同じ役でも強いカードを使ったものの方が強いポーカーハンドになります。役に関係しないカードでも、強いカードを持っているほうが強いポーカーハンドになります。
カードのランクは強いものから順にA、K、Q、J、10、9、8、7、6、5、4、3、2です。
ポーカーハンドの強さがまったく同じ場合には、引き分けになります(賭けられたチップを分け合うなどします)。
以下にポーカーハンドの役を強いものから順に記します。
同じスートの5枚の続き札です。続き順は、A-K-Q-J-10-9-8-7-6-5-4-3-2-Aとなります。 Aは2の下にもKの上にも続きますが、2-A-Kというように上下に続かせることはできません。
ストレートフラッシュどうしを比べるときは、その中の最もランクの高いカードを比べます。ただし、 5-4-3-2-AのときのAは最も弱いカードです。 したがって、A-K-Q-J-10が最も強く、5-4-3-2-Aが最も弱くなります。 A-K-Q-J-10のストレートフラッシュを特にロイヤルストレートフラッシュと呼びます。スートは強弱に関係しません。
同じランクのカードが4枚あり、残り1枚は別のランクのものです。 Aのフォーカードが最も強く、2のフォーカードが最も弱くなります。
同じランクのカードが3枚と、それとは別のランクで同じランクのカード2枚のあるポーカーハンドです。 3枚の同ランクカードのランクが強いほうが、強いポーカーハンドになります。 同じならば、2枚のカードのランクを比べます。
5枚全部が同じスートであるものです(ストレートフラッシュにはなっていない場合です)。 フラッシュどうしを比べるときは、各手札の最も強いカードを比べて、強いランクのカードがあるほうが強くなります。 同じランクならば2番目に強いカードを比べ、それも同じならば、3番目、4番目、5番目と比べていきます。スートの種類は強弱には関係ありません。
5枚の続き札です。スートは違っていてもかまいません(ストレートフラッシュにはなっていない場合です)。 続き順や強弱はストレートフラッシュと同様です。
3枚の同じランクのカードがあり、残りの2枚のカードのランクはそれぞれ別々の場合です。 スリーカードどうしでは、3枚の同ランクカードのランクを比べます。
2枚の同じランクのカード(ペア)が2組あり、残り1枚が別のランクのカードの場合です。 ツーペアどうしでは、強いほうのペアのランクを比べます。 同じならば、弱いほうのペアのランクを比べます。 それも同じならば、残りのカードを比べます。
同じランクの2枚のカード(ペア)があり、残り3枚が別々のランクのカードの場合です。 ワンペアどうしを比べるときは、ペアのランクを比べます。 同じならば、残りのカードで強いランクのカードがあるほうが強くなります。 それも同じランクならば、2番目に強いカードを比べます。 それも同じならば、3番目を比べます。
今までの役のないものです。 ハイカードどうしを比べるには、フラッシュと同様に強いカードから比べていきます。
特定のカードをどのカードの代わりにも使えるというルールにすることがあります。 このカードをワイルドカードを呼びます。例えば、2をワイルドカードとすることにすれば、どのスートの2でも他のどのカードの代わりにも使えます。 手に8-8-2とあれば、8のスリーカードとすることができるわけです。 ジョーカーを加えて、それをワイルドカードとすることもあります。
ワイルドカードがある場合には、ファイブカード(Five of a Kind)つまり同ランクの5枚のカードが最も強い役になります。
ポーカーハンドが最も強いプレイヤーがプレイに勝つのが普通ですが、最も弱いハンドのプレイヤーが勝つというルールもあります。 これをローボールと呼びます。 ローボールに対して、通常のルールをハイボールと呼びます。
また、最も強いハンドのプレイヤーと最も弱いハンドのプレイヤーが勝ち、半分ずつ賭けられたポーカーチップをもらえるというゲームの種類もあります。 これをハイロー・スプリットと呼びます。
ローボールには次の2種類があります。
エース(A)は最も低いランクカードとして扱われます。 このとき、ストレートとフラッシュを役として認めません。
5-4-3-2-Aが最良のハンドになります。
エース(A)は最も高いランクカードとして扱われます。 このとき、ストレートとフラッシュは役として認められます。
7-5-4-3-2が最良のハンドになります(すべて同じスートではない場合)。
5-4-3-2-Aはストレートになりません。 エース・ハイ(Aが最も高位)のハイカード(A-5-4-3-2)として扱います。
ポーカーでは、最も強いポーカーハンドになったプレイヤーが、賭けられたポーカーチップをすべて得ることができます。 ポーカーチップとは、各種の色の付けられているコイン状のもので、単にチップとも呼ばれます。 普通プラスチックで出来ています。 点数の書かれているものもありますが、そうでないものは色によって点数を決めておきます。 例えば、白:1点、赤:5点、青:10点、緑:25点、紫:100点などです。
普通に遊ぶときには、ゲーム開始前に各プレイヤーに同数のポーカーチップを配っておきます。
ポーカーチップを賭けるには、テーブルの自分の近くにポーカーチップを置きます。 これをベットと呼びます。 1つのディールでベットを行う回は何回かあります。 これをベットラウンド(Betting Round/Betting Interval)と呼びます。 ベットは1人ずつ時計回りに行いますが、1つのベットラウンドで何周かすることがあります。 各ベットラウンドでのベットの方法は次のようになります。
ベットラウンドの最初にベットを行うのがオープニングベットです。 誰がオープニングベットを行うかはポーカーの種類によって異なります。
何も言わないでチップを出すだけでかまいません。
最初のオープニングベットの番のプレイヤーやその次のプレイヤーが強制的に決められた額をベットしなければならないことがあります。 これをブラインドベットと呼びます。
最初のプレイヤーが小さい額のブラインドベットを行い、次のプレイヤーが大きい額のブラインドベットを行うとき、それぞれスモールブラインド(Small Blind)、ビッグブラインド(Big Blind)と呼びます。
ブラインドベットはブリングイン(Bring In)という呼び名になることもあります。
オープニングベットをする代わりに「チェック」と宣言してもかまいません(ブラインドベットがない場合に限ります)。 チェックとは、とりあえずベットは行わないということですが、次回ベットを行う権利は残ります。つまり0チップをベットするということと同じです。
チェックを行うと、次のプレイヤーにオープニングベットが移りますが、このプレイヤーもチェックを行うことができます。 このようにして全員がチェックを行った場合は、そのベットラウンドは終了します。
「チェック」と発言する代わりに、テーブルを手でたたいてもかまいません。
オープニングベットの後で、今までにそのベットラウンドでベットされた最高額と同じ額をベットすることです。 既にベットしていたチップがあれば、それに加えることで最高額と同じ額になるようにします。
単にチップを出すだけでもかまいませんが、「コール」と発言したほうが分かりやすいでしょう。
そのベットラウンドでベットされた最高額よりも大きい額をベットすることです。
上げるチップの制限などがあるので、まずコールを行ってそれにチップを上乗せしていくと考えたほうが分かりやすいかもしれません。
ただし、実際にベットするときには、コールしてからレイズするのでなく、一気にチップを出す必要があります。 あるいは、「~チップレイズする」または「~チップにレイズする」と宣言しておいて、ゆっくりコールの分とレイズの分のチップを出していってもかまいません。
「フォールド」と宣言すると、ベットを行わないでプレイから降りるということになります。 フォールドを宣言した時に自分のカードで表向きになっていたカードがあれば、裏向きにしてそのまま置いておきます。
次のディールが始まるまでは、ベットを行うことも、カードが配られることもありません。 また、今までに自分がベットしたチップも含めて、チップを受け取る権利は完全になくなります。
オープニングベットがあった後は、自分の番のときにコールもレイズもしたくなければ、フォールドを宣言しなくてはなりません。
なお、フォールドしていない状態を、ステイ(Stay)していると言います。
フォールドしたプレイヤー以外の全員のベットのチップ数が同じになると、ベットラウンドが終了します。
そのベットラウンドでベットされたポーカーチップはテーブル中央に集められ、まとめて置かれます。 これをポット(pot)と呼びます。
1人を除く全員がフォールドした場合は、残ったプレイヤーの勝ちとなり、ポットのチップはすべてそのプレイヤーのものになります。
最後のベットラウンドが終わるまでフォールドしなかったプレイヤーは、自分に配られたカードを表向きにして、誰が勝っているかを決めます。 これをショーダウンと呼びます。
勝ったプレイヤーはポットつまり賭けられたチップをすべて獲得します。
カードが配られる前に、全員が同じ額のポーカーチップを参加料としてポットへ入れることがあります。 これをアンティと呼びます。
アンティを行うかどうかは、ゲームの種類と取り決めによります。
ベットの額の制限です。主に次の4種類があります。 どれを採用するかと、実際のベットの額や細則は、プレイの前に決めておかなければなりません。
オープニングベットの額とレイズの上げ幅が固定のものです。 この2つは普通同じ額になります。 最後のほうのベットラウンドでは、その額が2倍になることが普通です。
フィックス・リミットは「10/20」というように記述されます。 この場合、オープニングベットは10チップです。 それより多くても少なくてもいけません。 また、レイズするときは必ず10チップ上げなければなりません。 例えば、場の最高額が20チップで、レイズしたいならば、必ず10チップ上げて30チップにしなければなりません。 ただし、最後の何ラウンドかでは、オープニングベットもレイズも20チップとなります。
フィックス・リミットでは、通常、レイズの回数の制限も決めておきます。 例えば、レイズの制限が4の場合には、4回目にレイズしたプレイヤーがいたら、それ以降はコールかフォールドしかできません (同じプレイヤーが4回ということではなく、そのベットラウンドで4回のレイズがあったらということです)。 この制限回数は3回か4回のことが多いようです。 また、フォールドしていないプレイヤーが2人しかいなくなったら、通常はこの制限がなくなります。
家庭で行うポーカーでは最も普通の方法であり、カジノでもよく用いられます。
フィックス・リミットに似ていますが、チップ数に幅を持たせるものです。 例えば「1-5/1-10」となっていると、通常はオープニングベットやレイズのチップ数は1チップ~5チップのなかで選べます。 最後の何ベットラウンドかは、1チップ~10チップの中で選びます。 通常、レイズの回数制限も行います。
オープニングベットやレイズの最低額は最初に決めておきます。最高額はポットの額になります。
この場合のポットの額には次のものをすべて加算します。
例えば、前回までのベットラウンドでポットに50チップあり、オープニングベットが10チップ、次のプレイヤーがコールして、その後にベットする場合、 50チップ(ポット)+20チップ(このベットラウンドのチップ)+10チップ(自分がコールするためのチップ=80チップ以内のレイズができることになります。 つまり、90チップ出してレイズすることができます。
オープニングベットやレイズの最低額は決めておきますが、最高額は無制限とするものです。ただし、このあと述べるオールインの制限を受けます。
カジノやポーカー大会でよく用いられます。
そのベットラウンドでそれまでになされた最高のレイズの額よりも小さい額のレイズを行うことは、普通、禁じられます。 これはどのリミットの方式のときでも適用されるルールです(フィックス・リミットでは無意味ですが)。
例えば、ノー・リミットのゲームで、オープニングベット10チップに対して次のプレイヤーが50チップレイズして60チップにした場合、 その次のプレイヤーは20チップのレイズなどはできず、レイズするときは必ず50チップ以上レイズして、110チップ以上にしなければなりません。 (もちろんコールはできますので60チップでコールしてもかまいません)。
1つのディールの間に自分のポーカーチップがなくなった場合、ポーカーチップの追加などはできません。
コールをしたいが十分なチップがない場合には、オールインを行います。これは自分のチップを全部ベットするということで、これでコールができます。 ただし、勝っても得ることができるのはそのプレイヤーがベットした額と同じ分の他のプレイヤーのチップだけです。 このプレイヤーはそれ以降、カードが配られたり交換したりするプレイには参加しますが、ベットは行いません。
他のプレイヤーはこのプレイヤーがベットしたのと同じ額のチップとそれ以外のチップを分けておいて、ポットに入れる時に分けて入れるようにします。 このプレイヤー分のチップをメインポット、それ以外をサイドポットと呼びます。オールインが複数回あったときは、複数の種類のサイドポットができます。 なお、他のプレイヤーにとってはコールに必要な額が少なくなるわけではありません。
また、レイズを行う時にも、自分の残りのチップを全部レイズに使ってオールインを行うことができます。 もちろんこの場合でもレイズの額はベットの制限以内でなければなりません。
オールインを行ったプレイヤーのハンドがフォールドしていないプレイヤーの中で最強の時には、そのプレイヤーがメインポットのチップを得ることができます。 サイドポットのチップは、フォールドしていないプレイヤーのなかで次に強いハンドのプレイヤーがもらいます。 なお、フォールドしたプレイヤーは決してポットを得ることはできないので、オールインの後でフォールドしたプレイヤーでもメインポットを得る権利はありません。
アンティのあるゲームでは、アンティの全額がメインボードに入ります。
誰かがカードをシャッフルして、1枚ずつ配り、最も強いカードを受け取ったプレイヤーがディーラーになる、という方法が良く使われます。 強さはポーカーハンドの場合と同じですが、同じランクのカードの場合、スペードが最強で、ハート、ダイアモンド、クラブの順に弱くなります。
ディーラーはディールごとに時計回りに交代します(必要なカードをすべて配って勝者が決定するまでは同じディーラーです)。
カジノなどでは従業員がカードを配りますが、ディーラーの位置を表すプラスチックの札をプレイヤーの前に置き、ディールごとに時計回りに回すことがあります。 これをディーラー・ボタン(Dealer Button)または単にボタン(Button)と呼びます。
ポーカーにはたくさんの種類がありますが、次のように分類して説明することにします。
プレイするポーカーの種類をディーラーが自由に決めることができる、というルールでプレイを行うこともあります。これをディーラーズ・チョイス(Dealer’s Choice)と呼びます。
複数の決められた種類のポーカーゲームを決められた順番でプレイしていくというプレイ方法です。